範馬刃牙 第155話 醒悟 



ついに刃牙はピクルとの戦いを目前にした。
目前にして座っているけどな!
新作ゲームの発売日前から店の前で座って待つ。
それが俺のやり方だ!
警察を呼んで追い払ってもらいます。


そんなわけで刃牙は座っている。
座って待っている!
積極的なのか消極的なのか、さっぱりわからない男だ。
いや、殴りかかれよ。

でも、刃牙が強者に不意打ちしても成功する確率は非常に低いんだよな。
オリバに殴りかかっても通じなかったし、ゲバルとオリバに不意打ち気味に乗りツッコミしたら気絶した。
ならば、待つ!
刃牙の行動はこれ以上ないほどに整合性に満ち満ちていた。
ねーよ。

(これ以上――……)
(俺以外の誰かがピクルと闘うことに―― 我慢したくない)


座って待つ男が言うか!?
何という範馬イズム…いや、ここまで来ると刃牙イズムだ。
今まで座って待つどころか寝て待つ勢いだったくせにこの台詞!
自らを省みない超強気スタイルだ。

特に何もしないが刃牙の独占欲だけは凄かった。
お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!
こういう男がストーカーになりそうで怖いぜ。
ピクルを追い詰めるといきなり腹黒の本性を剥き出して来るぞ。
ピクルちゃん天然だからわかんな〜いとか言っていたいつもの姿はどこへ行った。

(先んじる――――ではなく 最初(はな)っから居りゃーいい!!!)

急ぐのではなく座って待つ理論!
ジャックの時はとんずらを使って普通ならまだ付かない時間できょうきょ参戦しても手遅れだった。
だったら、最初から待っていればいい!
「もうついてたのか!」「はやい!」「きてた!刃牙きてた!」「主人公刃牙きてた!」「これで勝つる!」と大歓迎状態になる。
寂海王に勝ったと思うなよ…と嫉妬されそうだ。

しかし、刃牙よ。
志望校に入りたいからって学校の前で座って待っていても入学できないぞ
相手から評価されなければ望みはかないません。
ピクルの前で座って待っていてもピクルが刃牙を気に入るのかは別問題なのだ
やってることはストーカー同然だ。

烈も、克巳も、ジャックも自らの想いをピクルに告白したからこそ、ピクルの敵になり得たのだ。
黙って座っているだけだと遊び相手扱いに終わるぞ。
そういや、好きって言われてなかった。
ドジ。

そんなわけで戦いの時が来るまで待つのであった。
刃牙はすっかり新婚の蜜月状態を味わっている。
戦いが訪れるまで同じ空気を吸って、眠くなったら眠って…
いや、眠くなったら眠っているのはいつものことじゃないか?
ニートに昼夜の概念はありません。
こうして学校を投げ捨てて座っているくらいだし…

刃牙は腹が減ったことも想像する。
もう脳内にはご飯にするお風呂にするそれとも…状態なのだろう。
だが、その瞬間、刃牙はあることに気付きハッとする。

(そーだよ……ッッ)
(喰うんだよピクル(こいつ)は…ッッ 腹が減ったら俺をッッ)


気付くの遅ェ!
ピクルとの戦いはただの戦いではない。
勝った方が生き残る生存競争に等しい。
並みの覚悟では生き残れない。腕一本骨にする覚悟があっても殺されかける。
…刃牙よ…一旦家に帰ってみてはどうか。

でも、そんな刃牙も安心だ。
ピクルは襲い掛かってくる相手以外は食わない。
つまり、このまま座っているのなら刃牙に危害は及ばない!
ピクルは1ヶ月絶食した状態で獲物が現れても、襲い掛かってこない限り食わないほどの自制心を持つ。
隙だらけで寝ていても安心だ。
そして、両者共倒れでダブルKOである。

逆に言えば、刃牙はただ待っているだけでは相手にもされないということだ
俺は中立の立場で見てきたけどやはりピクル中心で行った方が良い事が判明した。
刃牙は居座ってまでピクルの恋人役を確保したいらしいがピクルに相手されてない事くらいいい加減気づけよ。
ピクルは刃牙よりも高みにいるからお前のイタズラにも笑顔だったがいい加減にしろよ。


さて、一方で徳川光成はペイン博士と高級そうなレストランで食事をしていた。
絶食中の戦士2名とは対称的にリッチにステーキを食している。
何というマイペース…
現代の戦士が既に何人被害に遭ったと思っているんだ?
よもや刃牙だから別にいいやと考えているわけではあるまいな…

二人の会話の内容は当然の如く、ピクルの食糧問題だ
ピクル編が始まって早1年半。
未だその解決策に悩み、そのために現代の戦士たちが食われていった。
ピクルの命題なのだ。

だが、ペイン博士はあっさりと解決していると言い放った
ば、馬鹿な…
やはり、トラック衝突法か?
ピクルの身体が心配だが、トラックの直撃を受けて出血何もなしだ。
余裕だろう。

「あのT-レックスかいッッ 米国(アメリカ)に保存されているッッ」

ティラノサウルス肉!そういうのもあるのか。
何という盲点…冷凍ティラノサウルスを食わせれば良かったのだ
冷凍ティラノサウルスは既にピクルが仕留めたものだ。
だから、襲い掛からずとも食う。それはアレン君の犠牲によって証明されている。
正確には白亜紀に仕留めてから冷凍されたのか、冷凍されたから果てたのか、
前後関係は怪しいがピクルが食べる以上良しとしよう。

賞味期限が心配だけど塩漬けだ。
塩漬けだから新鮮だ。
問題一切なし!
でも、塩漬けじゃなくなった今はただの冷凍保存だ。
…賞味期限、近いかも…

あのティラノサウルスならピクルも食べる。
量もトンクラスだ。申し分ない。
だが、ティラノサウルスの冷凍保存…その価値は計り知れない。
易々と与えていいものなのだろうか。

「あの恐龍の死体が重要文化財―――――議論の余地はない
 しかしピクルに代えられようハズもない」
「彼は……… 生きているのだから…」


ペイン博士が文化財といった後付けの価値観よりも、ピクルの生そのものを優先した。
…何ともマッドサイエンティストなペイン博士らしくない。
ピクルと現代の戦士を何度も目撃して、価値観が変わってきているのだろうか。
今のペイン博士にとってピクルはただの研究材料以上の存在なのかもしれない。
研究材料の確保のためのピクルの生とか夢のない真相は止めてください。


というわけで、ピクルにティラノサウルスの肉が届けられる。
正確には闘技場から100メートルの地点に置かれる。
肉の運び屋はアレン君だ!
ピクル復活最大の立役者アレン君がまさか再登場した。
てっきりもう出番がないものだとばかり…
今度こそ最後の出番ですね!わかります!

ティラノサウルスの肉、40キロ…
金に出来ないほどの価値を秘めている。
その膨大な価値を知る研究員は冷や汗を流す。
だが、アレン君は涼しげな顔をしている。
俺たちの知っているアレン君がそこにいた。
さすが、ティラノサウルスステーキを作る男だけはある。
あれ、結局バレてないよな。もしも、バレたら…こんなところにはいないか。

しかし、40キロはいくら何でも与えすぎだろう
トンクラスの貯蔵量があるとはいえ、それはいくら何でも豪快すぎる。
大量と無限では意味が異なりますよ。
1キロか2キロくらいで良くないか?
足りないだろうけど食えるだけ良しということにしておけ。

そんな敬意があって食料補給に至るピクルであった。
無邪気な笑みを久しぶりに見せる。
さすが主食にして好物?だ。
一方で刃牙は話しと違うじゃねえかと驚いている。
驚いて思わずピクルの目の前まで来る。
…警戒心ないな。

襲い掛かる者しか食べない。
それが刃牙の聞いていたピクル像だったのだろう。
でも、餌食ってるじゃん。話と違うじゃん。
じゃあ、俺も食われないな!
そんなゆとり思考に染まっていそうだ。
いいや、食うね!

と、ピクルは刃牙に肉を差し出した
肉をおごってやろう。
…意外だ。意外というか、信じられない。
せっかくの戦利品を他者に差し出すとは…
ピクルにも友情というものがあるらしい。何で刃牙に友情を抱いているのかはわからないけど。
それよりも刃牙はゾンビ扱いされていない。良かったね、刃牙。
あるいは肉は魔除けの供物して捧げたとか。

でも、生肉ですよ、これ
日本人は生魚を好むけど、生肉を食す習慣はあまりない。
少なくとも魚の刺身を出す感覚で肉の刺身を出す家庭はなかなかないだろう。
刃牙の文化外からの不意打ちだった。
野生度高っけ〜〜〜〜ッッ。
まぁ、範馬だし生肉程度喜んで食うだろう。

「だってコレ…………… 生だろ……?砂もついてるし

刃牙が普通に突っ込んだ!
まぁ、生ですよね。
生肉ですよね。別の意味でも生ですよ。
だって、肉にはピクルがかじった後がついている。
つまりは間接キス!
刃牙のうぶなハートが悲鳴を上げてもしょうがないのだ。
バキSAGAは忘れろ。

また、砂もついているということは、もしかしたらピクルが出した小便も…
何か地下闘技場がトイレ代わりに見える
おあつらえ向きに砂場だし。

躊躇う刃牙にピクルは構わず差し出す。
いいから食えと。
何という牽引力…受動的だったピクルが初めて積極的な一面を見せた。
このワイルドさに誰だって惚れざるを得ない。
白亜紀では同族の子供たちにこうして肉をおごってやっていたのかもしれない。
9枚で良い。
…って、もしかして刃牙って子供扱いされてる?

「そ… そこまでいうなら」

いや、ピクルは何も言ってねえよ。
ちょっと混乱気味の刃牙君だ。
喜んで受け取らないこの謙虚さが人気の秘訣。

そんなわけで肉の素性は知らないなれど食うことを決意する!
まずは匂いを嗅ぎます。
…いや、失礼だろう、それは。
次に冷や汗を流しながら見つめます。
…いや、失礼だろう、それは。
やっと食べます。
何ですか、この強気ヒロインが料理を作ったのはいいけど、見た目が毒々しいから警戒している態度は。

さて、ティラノサウルス…そして、生。
感想は如何に。
何だこの肉はァ!女将を呼べェ!とピクルに投げつけることも十分予想できる。
怒りの猛反撃を受けるぜ。

「なんか……… ウマいじゃんこれ」

今度は普通に味わった!
味わっちゃったよ。
うん!これはうまい。これはいい肉だ。実に美味しい…昔食べたものよりずっとうまい…そんな気がする。

美味いのはいいけど中にはどんな細菌が潜んでいるのか、わからないぞ。
生だから危険度もアップだ。
刃牙は腹痛に苦しむことになるか。

「ワルいねなんか」
「マジイケる 何の肉?」


美味いとわかった刃牙は喜んで食う。
すっかり座ってリラックス状態だ。
手に持った肉はピクルにもらったものよりサイズが大きい。
つまり、おかわりをしたということだ
ティラノサウルスの刺身はカップヌードルを食う刃牙にとっても逸品なのであった。
ついでに雑談もする。言葉通じないけど。
モノを食べる時は誰にも邪魔されず自由で何というか救われてなきゃあ駄目なんだとピクルからアームロックを食らってしまえ。

ピクルの食糧問題は意外なところで解決した。
食われた烈などの戦士たちがちょっと可哀想だが、ティラノサウルス肉は変化球で稀少品だ。
致し方あるまい。

これで刃牙もピクルも万全な状況で戦うことが出来る。
本当の意味でフェアな勝負と相成った。
そして、食糧問題が解決したから刃牙が食われる可能性が減った!
ということはないな。うん。
次回へ続く。


ピクルの食糧問題がついに解決だ。
そうか、ティラノサウルスの肉を出せば良かったのか。
盲点だった。
何か一度も考えもしなかった。
冷静に考えればそれが一番単純な答えなのに…
食われた現代の戦士たちは不幸だったと目をつぶろう。

結局、刃牙が待つ時が何なのかわからないまま、戦いになりそうだ。
とりあえず、腹減りを待つのはなかったことになりそうだ。
ピクルが自発的に襲い掛かるのを待つか?
それはそれで遊び相手扱いの気も…

これで満足した刃牙は一旦家に帰ってみては如何だろうか。
腹減るまで待つ必要ないじゃん。
わざわざ居座る必要もよく考えるとないじゃん。
戦いたくなったらじっちゃんに予約入れておけばいいし。
無論、先取りされる。

敵と一緒に飯を食うという戦闘前とは思えない和やかムードだ。
いいンすか、それで。
それとも烈VSドイルの時のようにいきなり目潰しを狙うのか?
ピクルには通用しなそうだけど。

刃牙とピクル…お互いにベストの体勢で戦うことになりそうだ。
ベストであろうとベストでなかろうと、刃牙の勝機はほとんどないように見えますが。
それどころか未知の細菌で腹痛に苦しみそうだ。
そうなるとさらに危ういな…

なお、来週、再来週の2号は休載となります。
って、2号もかよ!
ちょっと困る。バキ感想をメインコンテンツに据えているサイトとしては特に困る。
わりと切実な問題ですよ、これ。
とりあえず、休載している間は別のチャンピオン漫画の感想でも書いてみようかと。
狙いはイカ娘かみつどもえで。



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