範馬刃牙 第161話 安全物 



刃牙の怒りがダメージをかろうじて上回った!
贅肉にまみれた心にも揺れ動くものがあるのだ。
頑張れ刃牙。明日から、頑張れ!
今日は…まぁ、帰っておこうか。


(俺のために―――)
(祈ってんじゃねェェッッ)


ピクルを殴り飛ばし刃牙が咆えた!
だが、声にならない。
肺が押し潰されているのだから当然であった。

その執念にギャラリー一同も驚く。
一流格闘家であるが故に刃牙のダメージも推測できるのだろう。
刃牙はダメージから復帰しただけで客を呼べる格闘家になっていたのだった。
…かなり玄人好みだけど。

「祈ってんじゃねェェッッ」

刃牙は息を吸い込み、無理矢理肺を膨らませ、今度こそ叫ぶ。
大事なことなので2回言いました。
そんなに祈られたことが悔しかったらしい。贅肉がぷるぷる震えるぜ。
だが、空しきことにピクルは言葉を知らない。
頑張って叫んだけど届かないよ。

これにはピクルも驚く。
だが、刃牙に殴られたダメージはないようだ。ダウンもスリップに等しいものなのだろう。
そして、起き上がる。目は白目だ。
ピクルはやる気になったかもしれない。

「こいッッ」
「バカヤロウがァ………」


刃牙はいつものファイティングポーズを取る…が、雰囲気が駄目駄目…っ
ジャックに上腕動脈を噛み切られた時に、このポーズを取った時は格好いいと思った。
が、今は駄目駄目だ。
冷や汗も吐血も流して、全然ピンチなのに来いと言われましても…どうみても虚勢だ。
こんな時に来られたら一発で終わりかねないぞ。

だが、このピクル、容赦せん。
ジャックを屠った拳を振り下ろす。
瀕死の刃牙に対して容赦のない攻撃だ。
それに対する刃牙の顔は…相変わらず冷や汗だ。
全ッ然ッ、駄目。全然覚悟が出来ていない!
食らえばそのまま…運ばれてしまうか?

ピタッ

だが、目の前まで迫りピクルの拳は突如静止する
一同、皆揃って驚愕する。
なお、刃牙は全然反応できていなかった。
もしも、拳が止まることがなかったら…前歯が丸ごとなくなっていたのは確定的に明らか。
今のがリアルじゃなくて良かったな。リアルだったらお前死んでるぞ。

止まった後にピクルの拳は再び動き出す。
…ただし、ゆるゥ〜といかにも遅い効果音と共に。
効果音通りに遅く刃牙に迫り、ゆっくりと頬に衝突する。
当然、これほど遅いとピクルの拳とはいえ、殺傷力はゼロだ。
さらなる驚愕に一同は包まれる。

再びピクルはゆっくりとした破壊力ゼロの拳を刃牙にぺたりと当てる。
さらにもう一度、ぺたり。
冷や汗をかきながら、でも、どこか笑いながら…明らかにピクルには戦意がない。
これは間違いなく餌に行うような行為ではない。敵にだってやらない。
やるとしたら…遊び相手くらいだ
ゆっくり殴っていってね!!!

「な…」「なにやってんじゃピクルは」

「これは………ッッ」

「見るに耐えねェ…」


[気付いたのは]
[徳川氏を除く現役3名だった]


相変わらずのKYっぷりを発揮するみっちゃんとは違い、格闘家である3名はピクルの行為を理解しているようだ。
寡黙な花山ですら見るに耐えないとまで言った。
相当、ひどいことになっているらしい。

さりげなく烈が現役扱いされている
片脚を失った程度じゃ引退できませんか。
克巳も右腕を失ったけど引退できないのだろうか。
バキ世界は146歳の郭海皇が現役で戦うほどの修羅の国だ。
グラップラーである限り、引退という言葉とは無縁なのかもしれない…

ピクルはさらに刃牙を殴る。…ゆっくりと。
消力の類ではないのでダメージなどあるはずがない。
表情は子供をあやすような笑顔…
本当にただの手加減だ。

[自らの凶器を―――][安全物と偽る超手加減!]

刃牙が全力で嘗められた!
本気で戦うに値しないと、大切に扱うべきものだと。
お前なんて所詮遊び相手なんだと挑発を返された
元々、挑発は刃牙が仕掛けたものだから皮肉である。因果応報とはこのことか…

[ね(はぁと) だからボクと遊ぼう(はぁと)]

さらにピクルはおどけたポーズにおどけた笑顔を向けて、自分が安全だとアッピルする。
こ、これはムカつく…
あのピクルさんが普通にムカつくよ。
強靱三乗、最強三乗、無敵三乗のアルティメットハクアキゲンジーンが、ムカつき属性を手に入れやがった…
対戦相手を食うまでとことん潰すけど、戦いにはフェアでムカつき属性とはほど遠かったあのピクルが…!
刃牙は変なモノを教えてしまったようだ。

だが、どこかスカッとした。このムカつきが心地よい。
何せそれが刃牙に向けられたものだからだ。
これを腕を骨にするまで戦った克巳に向けられたものだったら、ピクルが憎くてたまらなかったことだろう。
だが、ターゲットにされたのは明日からやる!もう誰にもピクルを渡したくない!文化の戦い!…の刃牙なのだ。
だからこそ、心からスカッとしてしまった。
ざまあ!刃牙マジざまあ!

恐竜を合理的に破壊することだけに集中した二十と幾年(多分)…
一切の挑発技術を持たぬ20数歳(多分)。
情報を持たぬが故に本能的…ッッ。
本能的が故…純粋…ッッ。
純粋故に的確(ただし)かった。
そんなわけでピクルは最大級の挑発をやってのけた。
敵を敵として挑発するのではなく、遊び相手…それどころか赤子同然の者として挑発した。
見方を変えると怒らせるための挑発ではなく、傷付けるための挑発だ
これはキツい。

刃牙は…怒りに震える。
だが、相手を力で叩き潰すだけじゃなく、誇りに触れて傷付ける…
まさしく文化の為せる技だ。
うっかり文化の戦いとか言い出した結果がこれだよ。
良かったね、文化の戦いをしてもらえて。

だが、刃牙は激情に任せて殴りかかることはしない。
挑発されたら我慢するのが大人の醍醐味。
まさしく文化人だ!
ここから上からがっかりだよ、ピクル…とか言い出せばまさに範馬刃牙である。

[過去―――肉体の緊急事態でのみ発動した 少年の脳内麻薬(オリジナル)]
[その脳が―――― 肉体のダメージを経ずして反応した]


その時、エンドルフィンが発動した!
烈戦のことは全力で無視するとして、ダメージに関係なくエンドルフィンが発動したのは初めてだ。
ピクルの挑発は耳をくいっとひねるほどの破壊力だったらしい。
あれ、どういう原理なんだろう。刃牙の耳はエンドルフィンの蛇口なのか?

[ピクルが放った?蠅も殺せぬ安全パンチが―――――]
[雄(オトコ)の持つ最大の弱点(ウィークポイント)]
[気位(プライド)という急所を深く捉えた]


今回は肉体のダメージではなく心のダメージでエンドルフィンが発動したのだった。
妄想王、範馬刃牙だ。その精神力は妄想を具現化するだけあり、とんでもないものがある。
それが傷付くということは肉体のダメージにも匹敵するのだろう。
もう既に吐血しているからわからないが、心が傷付けられた時に血を吐き出したかもしれない。

刃牙のインチキパワーはいつもエンドルフィンと共にある。
エンドルフィンが流れ込む時こそ、範馬一族として覚醒する時なのだ
もしかして、ジャックにはエンドルフィンが少なかったのかも知れない。
その分をステロイドで補おうとして失敗しちゃったり。

そんなわけで、嘗められはしたがこれからが範馬一族の本番だ!
貴様は範馬一族を嘗めたッッ。
と猛ることに違いあるまい。

さて、目覚めた刃牙は…はい、ピクルに背中を向けます。観客席の階段を登ります。
…何やってんだ、この人は。
エンドルフィンを出したと思ったら、刃牙は刃牙だった。
このまま、家まで帰って明日からやり直すのか?

「よせ…」

「バカなッッ」


そんな刃牙の奇行だったが、刃牙と付き合いの長い花山と烈はすぐに察する。
常人には刃牙の行動を理解することは出来ない。
何せ地下室に棒立ちになったと思ったら100キロのカマキリと戦う男だ。
理解できる方がおかしい。が、二人にはわかった。
これが友情という奴であろうか。何か、すごいな…

本気になったけどピクルにはがっかりだ!俺から何を学んだ!今日は帰る!寝て明日からやり直す!
背中を向けた刃牙はこんなことを言い出しそうな勢いだ。
でも、何も言わずに観客席の最上段に昇ります。
誰よりも高いところにいるアタシを積極的にアッピルだ。
バカは高いところを好むという奴か?

(誰のせいじゃない…………)
(俺が……)
(俺が弱いから…ッッ)


ピクルに凄まじい挑発を受けたのは…刃牙の実力が不足していたからだった。
誰が悪いと言われれば、まぁ刃牙かもしれない。
自暴自棄になった刃牙は最上段から飛んだ
主人公が自殺か!?
hai!プロバイダを呼んデ!

(アホウ…)

刃牙の暴挙を見た花山は視線を逸らした。
うん…たしかにアホだ…
既に飛び降りて瀕死のダメージを負っている。
また、飛び降りれば…ダメージの上塗りだ。意味がない。
文化の戦いが見られると思ったら自殺行為を見せられた。
そりゃあ。ツッコミいれるよ。

再び30メートルからのダイブを試みて刃牙は何を狙っているのだろうか。
心が傷付いてエンドルフィンが発動した。
ならば、次は身体を傷付ければさらに進化できるかも…そんな狙いがあったりして。
戦闘力を上げるためにクリリンに致命傷を与えてもらうことを企てたベジータ並みにしょぼいけど。

とりあえず、エンドルフィンが発動した以上、ダメージ耐性は上がっていそうだ。
落下のダメージに耐えられるかもしれない。
内臓のダメージは無視できないだろ、というツッコミは置いておく。
エンドルフィンが発動すれば内臓も強くなるんです。そうなんです。

でも、それに耐えて何になるのだろうか。
無事起き上がって俺は遊び相手じゃねえ!と凄んでも…意味ないな。
むしろ、ピクルは遊び相手をここまで追い詰めてしまったと自分の行いを悔い涙を流してしまいそうだ。
何にせよ遊び相手からの脱却は難しいと思う。
それとも、ピクルに隙が生まれた瞬間に必殺のその間実に2秒ラッシュであろうか。
…やっぱり、がっかりしそうだ。
次回へ続く。


子供は悪いことを見ると思わず真似してしまう。
子供のような純粋な心を持つピクルは思わず刃牙と同じような行動で挑発した。
皮肉なことに刃牙と同じく蠅も殺せないような一撃だった。
…まぁ、因果応報ということで。

刃牙は殺す気でピクルを攻撃したが、結局は最底辺の扱いを受けた。
ピクルにとってはじゃれついたようなものらしい。
主人公のくせに扱いの悪さが相変わらずひどい。
いや、むしろ、主人公だからか?
刃牙は不思議なことに強いけど、扱いの悪い星に生まれたのだった。

刃牙の攻撃が駄目だったのか、ピクルが満腹だからか、それとも両方揃ったのか、刃牙はピクルに遊び相手以下の扱いを受けている。
もしかして、ティラノサウルスの肉がそんなに美味くてその幸せ感が残っているのか?
私は数日前に高級そうなスイーツを食べた。その後は幸せになって微笑みながら更新作業をしたものだ。
だから、ピクルの気持ちがわかる!スイーツを食した後の婦女子状態なのだ、今のピクルは。幸せ光線発射中です。
刃牙なんてまともに構っていられないよ。

じゃあ、その幸せを汚すのはどうだ!
飛び降りた刃牙は立ち上がってティラノサウルスの肉を奪いに行く。
ティラノサウルスの肉にピクルの目の前で小便でもかけるのだ。
一番大切なモノを汚すのが最大の挑発!
文化人として最上級の挑発を見せつけるのだ。
ミンチにされても知りません。

刃牙の自殺(仮)には一体どんな意味があるのだろうか。
何かこの人、最近という最近は奇行ばっかりだよ。
挙句の果てに前代未聞の試合中に自殺だ。
アナウンサーがいたらヒートアップしていたに違いあるまい。

もしかして、自殺ついでにピクルに攻撃を加える気だろうか。
30メートルの高さから跳び蹴りだ!
これならピクルの筋肉の鎧を貫くぜ。マッハで貫いた克巳に謝れ。
ただし、ピクルがよければただの自爆で終わる。
その後、再び瀕死になった刃牙をピクルは祈る。刃牙怒る。安全パンチされる。最上階まで昇る。かわされる。瀕死になる。
…ループしそうで怖いな。刃牙だからループしてもおかしくはない!

というか、刃牙は過ちを反省していないのでループしている気がする
遊び相手扱いされて運ばれた終わったことを忘れたのか!
それとも、運ばれたから過ち扱いじゃないのだろうか。
今のうちに刃牙を運んでおけばまた面白いものを見られるかもしれない。



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