範馬刃牙 第172話 玩味
刃牙さんが今一番気になることはなんですか?
俺がどうやってピクルを倒すかってことさ!
…バカでしょ?
ともあれ、刃牙とピクルの本格勝負が始まった。
もう妖術も魔法も使えない。使えるけど使っちゃいけない。
ここでまた妖術を使おうものなら刃牙の株価は確実に割れる。
GONZOの株価のようにひどいことになる。
ピクルは刃牙に向かって蹴りを放つ。
刃牙をまた30mの高さまで飛ばすような一撃だ。
それを刃牙はバク転でかわす。
ガード不能の致死の一撃だ。受けるわけにはいかない。
刃牙なら食らっても平気そうだけど(とりあえず、ガードしておけば平気)、設定上はそういうことなんです。
かわしながら刃牙は自分の人生18年を思う。
刃牙は18年間ただ生きてきたわけではない。
ここ最近の刃牙を見るとただ生きてきただけにしか見えないが、そういうわけではないのだ。
[勝つために……………]
[地上最強の生物 父――――
範馬勇次郎]
刃牙の人生は勇次郎に勝つための人生だった。
目の前に人生を終わらせかねない怪物がいるというのに、想うのは勇次郎のことだよ。
ちょっとピクルさんは舐められていますよ。
というか、ピクルを前にしてもこんなことを考える余裕があるんですね。
これが天才というヤツですかよ…
勇次郎のことを想ったついでに刃牙は自分が勇次郎を追う理由を考える。
即座に思いつかない辺り、複雑な理由なのであろうか。
[何故だと!!? なんてことだ!!?
理由―――― 俺は範馬勇次郎と闘う理由を探しているのか……!!?]
ナニ言ってんの、この人!?
…この期に及んで一体ナニを言っているんだ。
人生の目標への道標はなかったのかよ。
だが、刃牙が勇次郎を倒そうとする理由はバキシリーズのテーマとも言えるものだ。
これが主人公、範馬刃牙最大の行動理由である。
刃牙を象徴する要素なのだ。故に難しいものである。再確認しても損はない。
これがないと刃牙はただのニートになってしまう。
…ただのニートにしか見えませんがね。
あとピクルと戦っている最中に再確認するな。余裕ありすぎだろう。
刃牙が勇次郎を倒そうとする最大の理由…
それは母、朱沢江珠の仇である…はずだった。
刃牙もその憎悪の念をすぐに思い浮かべる…が、憎悪も霞のように消えてしまう。
刃牙が勇次郎を倒そうとする理由は母の仇だけではないのだ。
非常に大きな事実がついに作中で明言された。
大擂台賽の仲良しっぷりを見るに、勇次郎を恨んでいるようには見えなかった。
息子大好きパパ大好きっぷりはお互いに見せていたが、確定的に明らかになった。
刃牙と勇次郎の家族関係は歪んではいるが、お互いに憎み合うほどのものではないのだ。
母の仇という理由は形骸化しているのかもしれない。
そして、憎悪の次に浮かんだ勇次郎への想い…それは憧憬(あこがれ)だった。
これには刃牙本人も驚く。かつて人間じゃないと批判した相手にどうして憧れているんだと。
読者から見れば好意的な感情を抱いているのはミエミエなんですけどね。
お前らは水と油じゃなく、S極とN極だよ。くっつき合うよ。
そんな考え事をしている間にピクルのパンチが放たれる。
このパンチの危険度の高さは幾度も証明されている。
だが、刃牙さんはなんなくかわすのであった。コンビネーションのアッパーもかわしますよ。
何という回避技術…しかも、考え事をしながら…
相変わらずズルい刃牙であった。
[一つだけハッキリしていることがある]
[範馬勇次郎の強さ]
[否定のしようもない 徹頭徹尾
非の打ち所がない]
[それはある意味]
[信用とさえ言える]
刃牙は強さの世界に一応生きている。
一応とか捕捉せざるを得ないことが何ともアレだが、強さの世界に生きているのだ。
である以上、勇次郎の絶対的な強さに憧れるのも当然である。
強さと絶対的なモノを見せつけられたからには、憎悪が薄れてもしょうがないことであろうか。
人間としての感情と、強さという絶対的な存在…刃牙は後者を優先したのだった。
最強というモノは一般的な倫理観に囚われていては掴めない称号なのかもしれない。
まぁ、そんなことを思いながらピクルの攻撃を相変わらずかわし続ける刃牙であった。
両手を組み打ち下ろす。かわされる。
再度蹴り上げる。これもかわされる。
たしかにピクルの攻撃は烈でも対処するだけなら出来ていた。
なら、刃牙も出来るということか…
でも、考えごとをしながらなのはどうかな!
[あの背中を追ってきた]
[あの拳に準備(そな)えてきた]
[あの迅(はや)さを想定(おも)ってきた]
[だから躱せる これなら躱せる]
勇次郎に勝つために生きてきた。
勇次郎と戦うことを考えてきた。あの強大な力と向き合うことを考えてきた。
だから、ピクルの攻撃もかわせる!
って、ふざけんなァアア!
そんな気持ちだけで何とかなるなら苦労しない。
そんな気持ちだけで何とかなっているけど。
なっているから納得できねえ。
いやいや、刃牙さん。
あんた、勇次郎と戦うことを考えていたのはいいよ。
でも、勇次郎と戦うための特訓をさっぱりしてなかったじゃん。
どうみても目立ったトレーニングはしていない。
絶対的な力の差を見せつけられた大擂台賽での廊下から、刃牙は目立った進化をまったくしていない。
なのに…こいつ…
これが天才と言う奴か。妬ましいってレベルじゃねーぞ!
さらにこの刃牙、ピクルの攻撃をただかわすだけではない。
大きく身を翻すかわし方から髪の毛に触れる程度の見切りへ、
そして、皮膚に触れるくらいとギリギリでかわしていくようになる。
この様子を後日、烈は武というよりも舞…マタドールだと語る。
…刃牙にかかっちゃ生物史最強の猛獣、ピクルですらマントに突っ込む猛牛扱いですか…
さて、ピクル自慢の打撃が一切当たらない。全て逸らされてしまう。
真っ向勝負とか言いながらアウトファイトに徹する刃牙である。
そんな刃牙を目の前にして再びピクルは冷や汗を流す。
刃牙戦では流しすぎてその価値が大暴落したピクルの冷や汗だ。
…まぁ、まだピクルには鼻血が残されていますから。冷や汗くらいどうってことないぜ。
刃牙ならただ殴っただけで鼻血を流させそうだから困る。
刃牙の速さはピクルにとっては未知のものだった。
陸海空、全ての速さを体験してきたピクルにとっても、未知の代物である。
もしかして、また妖術ですか?
いや、これが妖術ならJr.のフットワークも妖術になっちまう…
きっと、妖術じゃないに違いない。きっと、そうだ。きっと、そうなんだよ…
打撃は当たらない。
ならば、どうするのか。
烈相手に幾多のパンチを振り分け、ジャック相手にストレートからフックのコンビネーションを用いたように、ピクルの攻撃は合理的である。
不発だったが妖術師刃牙には改良型ピクルタックルを放っている。
原始の知恵がピクルにはある。
そんなピクルの選択肢は…打撃ではなく掴みかかることだ。
原始的な選択肢だ。だが、左右から同時に襲い掛かれば…
ピクルのタフネスを持ってすればカウンターにも耐えきれるだろう。原始的でありながらも効果的な選択肢である。
[またしてもの初体験]
[速度の概念を越えた速度]
だが、掴みかかった瞬間、ピクルは刃牙を通り抜けた。
直前の刃牙には何も動きはない。
一体何が起きたのだろうか。
トランザムライザーですか。もう粒子化しても何も文句は言わない。ツッコミはするけど。
それとも、刃牙自体がリアルシャドーだったというオチか?
ならばよし!
「通り抜けるというより」
「透り抜ける」
この様子を後日烈は説明する。
刃牙が透明になったような錯覚を第三者にも感じさせる…
謎の技術である。
つまり、また妖術を使ったわけである。
「もういいだろ 手品は終わりだ」
「T-レックス
トリケラ… チョットやりすぎた」
「原点回帰」
「ホモサピエンス同士―――――」
「人間として戦闘(たたか)おう」
…お盆前に言った台詞はどこへ行ったんだよ。
スカラの次はマヌーサかよ。
もう刃牙は信用出来ない。
数話前から信用していなかったけど。
その時、ピクルの脳裏に浮かんだのは蝶だった。
蝶のように幽雅にかわしたということか。
マヌーサ食らっちゃさすがのピクルもしょうがないよね。
史上最強の男は舐められすぎである。
次回へ続く。
刃牙の得意技、妖術が再び炸裂した。
お盆前に言ったことはまるで無視である。
お盆参りの最中に詐欺師の霊でも憑依させたのか?
いや、詐欺師なのは元からだった。
刃牙の妖術においては置いておく。
これだと密かにパリングしていてもおかしくない。
実はもうピクルは脱臼しているかも。
続行不可!勝負あり!
こうなってもおかしくはないと思う。
今の刃牙は余計なことを考えながらピクルと戦う余裕がある。
もう何なんだよ、この人。
天才以外に形容出来る言葉がない。あるいは妖術師。
…ちょっとどうなんだ、この人。
凄まじい才能ばかりを見せつけている。凄すぎて異次元の才能だ。
刃牙はピクルの攻撃を受けることも出来れば、かわすことも出来る。
防御面は万全だ。
攻撃面は…まぁ、何とかなるんでしょうね。
真マッハ突きにもマックシングジャックにも屈しなかったピクルだけど、鬼の貌で殴れば何てことないぜ!
…刃牙…もうちょっと家の中でぐったりしていても良かったんじゃ…
1ヶ月後にやる!でもよいぞー。
妖術使い放題の刃牙に対抗するにはどうすればいいのか。
やっぱり、ピクルも妖術を使わざるを得ないのだろうか。
しかし、惜しむらくはピクルは文化のない時代の生まれであることだ。
妖術なんて考えるはずもない。
いや、文化人でも妖術は考えないけど。
もう乱れ噴水とか言って(言えないけど)尿を吹き散らしてみるか?
きっと、刃牙の尿フィールドによる幻覚作用がピクルの空振りの原因なのだ。
本物の刃牙は柵の後ろでティラノサウルス肉を食べている。
そんなわけでピクルの尿で埋め尽くせば刃牙の妖術も封じられる。
さらにはピクルの尿の量は刃牙の数倍!楽勝だ!
しかし、この展開は明らかにピクルが主人公だ。
というか、別作品を建てて主人公になったくらいだ。
さりげなく刃牙VSピクルは主人公対決なのだ。
そんなわけでピクルには主人公らしく頑張って欲しいところである。
憎らしいほどの強さが刃牙に完全に封じられているのが口惜しいけど。
ここまで来ると刃牙がピクルをどう仕留めるかよりも、ピクルが刃牙をどう仕留めるかの方がずっと興味がある。
いかに刃牙の妖術を破るのであろうか。
力だけでは破れない。ピクルも技に目覚める時が来るのか?
それは即ち人間としての進化を果たす時だ。
進化を果たした時、ピクルは刃牙を妥当出来る存在になるのだ!
…やっぱり、主人公はピクルだよなぁ…
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