範馬刃牙 第176話 失ったもの 



ピクルが最終形態に変形した!
驚愕の関節変化である。
そして、決着は直後!
もはや刃牙がボコボコにされる姿しか想像出来ない。
それ以外の結末をどう想像しろというのだ。


ピクルは関節の構造が明らかに人類とは異なる異形の姿を見せた。
恐怖のスライド式関節だ。MS臭いな。
しかし、問題はこの関節変形にどんな意味が秘められているのかということだ。
ただ位置をズラしただけでは意味がない。
というか、関節が脆いということじゃないか、それ。

そんなわけで関節変形の真相が気に掛かるところだ。
どんな謎と秘密が秘められているのだろうか?

[呼び覚まされた原始の記憶は――]
[既に頑強(つよ)かった部分をより堅牢(つよ)く]
[強力(つよ)かった部分を―― より凶暴(つよ)く]
[強健(つよ)かった部分を―― より強靱(つよ)く造り変化(かえ)た]


以上、説明終了。
いや、それだけかよ!?
関節変形の具体的な原理が一切合切説明されていない。
変形1週間にして見事に放置された。

たしかに強そうになったけど、強そうになっただけで押し通しやがった。
理屈よりも迫力で語るのが板垣漫画なのである。
何せ関節を多重化すればマッハを出せるのだ。
細けェこたぁいいんだよ!

ともあれ関節変形には一体どんな意味があったのか、結局はわからなかった。
とにかく、異形なのだ。
異形ならば攻撃力が上がることは鬼の貌で証明されている。
いや、その理屈はおかしい。

しかし、肩の関節が奧の方にズレていると肩を非常に動かしにくそうだ。
股関節もそうだ。手首も外れやすくなっている気がする。
もしかして、最終形態にはあんまり意味なかったりする?
まぁ、人間の理屈にピクルを当てはめてもどうにもならないが。

「アリガトウなピクル…… その変身 その変貌」
「最大級の評価…… 友情と受け取った」


刃牙はピクルの変形を評価していた。
異形の筋肉を持つ家系だけあり、異形の骨格にシンパシーを感じたのだろうか。
死亡寸前だというのにエラく余裕がある。

しかし、刃牙に対しての友情はけっこう前から感じたいたと思う。
友情を感じていない相手に肉をおごりませんよ。
むしろ、妖術で惑わされた挙げ句、金的を食らわせた相手に普通は友情を感じない
正面からぶつかったのならともかく、刃牙は脇道ばっかりだ。
友情というのはかなり都合の良い評価だと思う。

それとも殺し合ってこそ友情というのが範馬一族なのか?
ぬう、範馬一族の考えていることは難しすぎてよくわからん。
それとも刃牙はマゾだから、相手がより強く痛めつけようとすることが友情の表れだと考えているのか?
何だかそうとしか思えません。
マゾだから刃牙は硬いのか?硬すぎるよ!

烈はピクルの変形を見て人類史について考える。
人類は時代を経るにつれと共に多くの武器を手に入れてきた。
石から核まで…人類の歴史は文明の進化の歴史だ。

しかし、烈が語るには肉体自体は退化していっているようだ。
それに一般人で言えば、生存するために必要な能力…
身の安全を守るための身体能力だけではなく、食料を奪い取る力なども古い時代の人間と比べれば下がっている。
本当の意味で自分の身ひとつで生き抜く力を現代人は失ったことだろう。
文明の進化と同時に一個の生物として失ったものが現代人にはあるのだ。

だが、そんなことを言い出せば、そもそもピクルは人類とは種からして異なっていそうだ。
関節の構造を変えた時点で何かがおかしい。
烈はピクルを人類の一人だと考えない方がいい。
しかし、言いたいことは何となくわかる。
家にPCがあってネットに繋げられれば、身体を動かさないようになってメタボるようなものですよ。
それ、俺だよ。

さて、前置きはここまでである。
ピクルが上体を振った。
そして、勇次郎のようにオーバーアクションからのフックを放つ。
異形の関節から生み出される恐怖の打撃だ。
食らえば死ぬ。それほどの迫力がある。

(この距離……………… この場所で………………)
(友情に報いる……ッッ)


そのフックを目の前にして刃牙は動かない。妖術を使わない。
その場に留まり受け止める気でいる。
ピクルとの戦いが始まってから、初めて堂々とした態度を見せた。
相手が強ければ強いほど、正面から受け止めてみせる。
刃牙が主人公としての矜持を見せた。
圧倒的に手遅れ気がするが。

そして、ピクルフックを正面から受けた。
刃牙は横に吹き飛ぶ。だが、倒れない。
地下闘技場の地面に跡を残しながらも踏みこたえる。
何なんですか、この人?
ピクルの全力に全力な打撃を受けておきながらもこれかよ。
ジャックだったら何回転もするほどの打撃なのに…
関節をズラしたから本来の力を出せていないのか?

刃牙には冷や汗ひとつない。
もう余裕で受け止めましたよって感じだ。
忘れてはいけないが、ピクルの打撃力は異常だ。
ジャックですら一発で戦闘不能にするほどなのだ。
それを受け止める…
妖術を使っている時以上に、刃牙は普通におかしい。
忘れてはいけないが、まだ鬼の貌を出していない。

ピクルはさらにアッパーを放つ。
食らえばジャックだって人生を諦めてしまうアッパーだ。
そのアッパーに対して刃牙は…僅かに飛んだ。
そして、両脚で蹴り迎撃する。
狙うポイントは手首付近…力のかかりにくい場所を狙いすましている。

これは烈がピクルのアッパーを迎撃した技術と同じものだ(第97話)。
才能が爆発している刃牙ならば、烈と同じ技術も使えるということか。
かつての強敵の技を使うなんて実に主人公らしい。
…主人公らしいだと?
実に刃牙に似合わない言葉だ。

だが、今のピクルのパワーはあの時とは桁違いだ。
本気の怒りに、本当の姿になっている。
そんなわけで刃牙の防御に関係なく腕を振り抜いた
ピクルの体勢が崩れる。後先をまるで考えない歪なフォームによる原始の打撃だ。
当然、腕に乗る形の刃牙は吹き飛ぶことになるだろう。
30m飛んでまた落下しやがれ。

だが、刃牙は何事もなかったようにそこにいた
え?何?やっぱり、妖術ですか?
私は刃牙をまるで信用していない。
密かに妖術を使ったんじゃないだろうな。

飛ばされていない刃牙を見てギャラリーも大驚きだ。
どうやら飛ばされると思っていたようだ。
ふむ、あの刃牙ならこれくらいはやるだろうななんて誰一人として言わない。
やっぱり、信頼されていない刃牙であった。
…あ、勇次郎だけはそんなことを言いそうだ

刃牙はその場から動かずにピクルのアッパーを対処した。
恐るべき男だ。
だが、刃牙は冷や汗は流している。
一見たやすく流したようだが、それなりに大変だったらしい。
あくまでもそれなりに。

「全力でブッ叩いたのに― この小さな俺を飛ばせない………」
「なんちゃない………………
 よりスピーディーにより鋭角的に同じ力量(ちから)で迎え打っただけのこと」


男ならアレくらいチョロイことと刃牙は防御の原理を説明する。
いや、ピクルは言葉をわかりませんがな。
それにスピーディー…鋭角的…そこまでは問題ない。
しかし、同じ力量って一体どういうことだ?
ピクル全力のアッパーと同じ力があの蹴りにはあったというこだろうか。

脚部の筋力は腕力の3倍と言われる。
さらにピクルアッパーは腕一本に対し、刃牙は両脚で防いだ。
つまり、腕6本分のパワーがあるのだ!
…ないな。

そもそもピクルの腕は振り抜かれている。
どうみてもパワー負けしている。
どうやって力量が同じって証拠だよ!
ぬう、やっぱり詐欺師なのか?

刃牙の言葉が通じたのか、獣のような表情をしていたピクルも思わず呆然としてしまう。
…白目で。
けっこうキモい。

「これが技術…」
「これが進化だッッ」
「俺達は格闘技を手に入れたッ 何も捨てちゃいないッッ」
「ここは一歩も譲らねェッッ」


刃牙が吠えた!
ついさっきまで技術の悪用をしていた男が吠えた!
格闘技を使ってどこまでもセコく戦っていた男が、格闘技を使って堂々と戦う男に化けた。
言っていることはかっこいいが今まで行ってきた行為と見合っていないのが致命的だ。
金的を打って頭の中が変わったのか?

烈はピクルの獰猛な力を見て、人類は進化の過程で失ったものがあると思った。
それに対する刃牙の答えがこれだった。
ピクルのような暴力的な力は失ったのかもしれないが、格闘技という新しい力を手に入れた。
格闘家としてそれは誇るべきことだ。
格闘技を使って惑わしてきたのは恥じるべきことかもしれないが。

刃牙の言葉に感動したのか。
ピクルに無言の拍手を送ったように、ギャラリー三人は拍手を送る。
しかし、表情が微妙すぎる。
ええ?お前がそれを言うの?って感じに微妙な顔だ。
いや、あんたら。いいこと言っているんだから普通な顔をしようよ。
何で余計なところで空気を読むんだ、あんたらは。

刃牙の言葉に担当も感じ入ったのか、アオリで「なんて少年誌な言葉なんだ〜!!!」とベタ褒めだ。
それって今までは少年誌らしくなかったってことか?
とりあえず、金的に丸々1話をかけたのは少年誌らしくない。

勇次郎は郭海皇との戦いで闘争において創意工夫は不要と断じた。格闘技の否定だった。
力のみで戦う。それが勇次郎のスタンスであり、ピクルの戦いもそれに酷似している。
勇次郎の背中を追う刃牙はどうなのだろうか。
その答えが格闘技を捨てず、格闘家として格闘技で戦うことだった。
ここ数年の刃牙は否定しようもないほどにダメだったが、志は本物だった!…かもしれない。

刃牙は範馬としての突然変異的な筋力に加え、人類が積み重ねてきた格闘技の融合でピクルに立ち向かおうとしている。
暴力と格闘技の融合系だ。
それを考えればオリバとの殴り合いで技術を用いていたのも納得出来る。
格闘家として正面から戦う…それが刃牙の意志だったのだ。
何か詐欺っぽいけど。

次回から範馬+格闘技の融合系がピクルに牙を剥くのだろうか。
ピクルが異常な骨格を見せたのだから、刃牙もそろそろ異常な筋肉を見せる時だ。
戦いのクライマックスはこれからだ!
ところで決着は直後だったんじゃなかったんですか?
あの野郎…タブーに触れやがった…
次回へ続く。


関節変形の意味はわからないが強い!
とりあえず、ピクル最後の謎が力技で押し切られてしまった。
そして、この謎を普通に迎撃しやがった。
カッコイイことを言ったのはいいが、盛り上げ方を知らない刃牙であった。

刃牙はピクル最終形態をも破ることに成功した。
ガードすれば耐えられます。技術を使えば無力化出来ます。
いや、やりすぎだろ。
勇次郎以上のパワーを持つピクルをこうして無力化出来たのだから、勇次郎戦も刃牙は平気か?
忘れてはいけないがこの主人公、まったく働いていない。

今回の刃牙は久しぶりにかっこいい刃牙だった。
あくまでも格闘家として戦う姿は主人公らしい。
この姿をもっと速く見せていれば…
そんでもってちゃんと特訓していれば…
何かとダメ出しせざるを得ないのがつくづく刃牙らしい。

でも、そろそろ刃牙の歯の一本や二本が折れてもらいたい。
ここに至るまでまったく傷付いちゃいねえ。
いや、2回も飛び降りたけど。あとモロに食らったけど。
目に見えるダメージにはなっていないから、無傷に見えてしまう。
そういえば、殴られた部分が急所になるんじゃなかったのか?
何だか普通にガードしているあたりが嫌らしくてたまらない。

次回から刃牙とピクルが本格的にぶつかるのだろうか。
野生VS格闘技の最終決戦が始まりそうだ。
刃牙はどんな戦いを見せることやら。いい加減真面目に戦って欲しい。
野生の嗅覚は鋭い!とか言いながらウンコ投げつけるのは勘弁願いたい。

そして、当然の如く、決着は直後という言葉が流された。
いや、本当に直後なのかもしれない。
この直後にピクルが刃牙を吹き飛ばして決着!
あるいは刃牙がピクルを吹き飛ばして決着!
…後者だったらブーイングってレベルじゃないな。



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