範馬刃牙 第219話 ちゃぶ台返し
勇次郎がこのコーヒーを作ったのは誰だと猛った!
闘争はいつだって唐突に始まる。それがバキ世界だ。
親子喧嘩もこうして始まるのか?
(きた…ッッ
いきなり…ッッ)
(とってつけたような些細なキッカケッッ)
こう来るのは予想外だったのか、刃牙は困惑する。
明日からやる男が刃牙だ。
さすがに今日勇次郎とやる気分ではないのかもしれない。
「お父さんごめんなさい」
ここで刃牙は土下座した!
予想外のぶち切れには予想外の謝罪で対応だ。
これには逆立った勇次郎の髪が落ち着きを取り戻す。
あれって錯覚とかじゃなく、物理的に起きていた現象だったんだ…
勇次郎がお父さんなんて言われるのはいつ以来だろうか。
刃牙は昔は父さんと言っていた。
それが親父になり、勇次郎になって、親父に戻った。
もうお父さんなんてコンクリートにぶつけられた以来か?
親馬鹿としては「お兄ちゃん」や「ご主人様」並みに破壊力のある言葉に違いない。
「わざわざお父さんが訪ねてくれたのに……」
「不覚にも不味いコーヒーを淹れてしまいました」
「これからは気を付けます どうかご容赦ください」
極めて丁寧な謝罪は続く。
勇次郎が目を見開いて驚いているようだ。
あの勇次郎が手玉に取られている。郭海皇と戦った時以来のことだ。
今の刃牙は意外性という点において、勇次郎と張り合えるのか?
「……って親父ィ…」
「ダメだよウソは…」
「たとえ小さく些細でも…… ホンモノのトラブルじゃなくちゃ」
刃牙は謝るだけでなく憎まれ口も叩く。
たった二口で飲み終えた。だから、コーヒーは美味かった。
刃牙は真の家族団欒は嘘では成り立たない。親子喧嘩も嘘からは成り立たないと言いたいのだろうか。
勇次郎と団欒という状況がそもそも嘘っぽいが、刃牙なりに本当に勇次郎と家族団欒をしたいのかもしれない。
図星だったのか、勇次郎の顔は悔しさで歪んでいるように見える。
口だけとはいえ、刃牙は勇次郎と張り合っている。
何だか成長しているんだなと思ってしまった。
成長している描写はゴキブリくらいだったが。
「家庭の和み
さしたる興味もなく―― 理解もできぬ」
「それだけのことだ」
勇次郎の人生は闘争ばかりだった。
親馬鹿ではあるがそこに家族愛など入る余地もなかった。
だから、刃牙の求めるものが理解できない。刃牙の望むことをできなかった。
何とも悲しい話でもある。
勇次郎は飾りも何もなく刃牙と父親として向かい合わなければ、家族団欒は達成できないのかもしれない。
刃牙は勇次郎にコーヒーを飲みたいと要求する。
本部が言おうものなら即刻裏拳が飛ぶ要求だ。
仮にでも不味いと言った。じゃあ、その勇次郎の作ったコーヒーは?
刃牙にはそんな好奇心があったのかもしれない。
要求に対し、勇次郎は立ち上がる。
背景を歪ませながら。
…押忍。それはコーヒーを作るのには不要な気合いなのではないでしょうか…
意外にも勇次郎は拒否せず、コーヒーを飲めると言う。
そう言いながらちゃぶ台を手に取る。
二本の指のみで持ち上げているのが勇次郎流だ。
押忍…それはコーヒーとは関係ないのでは…
「それは――」「淹れさせる」
「嫌がる範馬勇次郎の――― 首根っこひっつかまえ」
「無理矢理淹れさせる」
勇次郎との戦いに勝たなければ、コーヒーを淹れさせることはできない。
要するに実力行使だ。
それが唯一にして絶対の方法である。
というか、それ以外に淹れさせる手段がない。
勇次郎はちゃぶ台を両手で掴み二つに割る。
ちゃぶ台の繊維に沿っているからか、特に力むこともなく綺麗に割れた。
無論、普通なら繊維の方向関係なく、割れることはない。
勇次郎の怪力と技術が合わさったからこそ、真っ二つに割れたのだろう。
さらに割れたちゃぶ台を2つに重ねる。
今度は暑さが2倍、繊維の方向が違う。
これにはさすがの勇次郎も力む。
力んだら、端から引き裂かれていく。
「張り倒し―――― 服従するまで――」
「ブン殴り続け――」
「淹れさせる」
「嫌も応もない」
「生木を裂くが如く無理矢理だ」
勇次郎はちゃぶ台を4等分にする。
最初にちゃぶ台を割ったのが技による破壊なら、2度目は力のみによる破壊だ。
相変わらず力と技を合わせた破壊が上手い。
勇次郎なら興業不可解とか言ったりしなそうだ。
むしろ、積極的にアピールする。
この力技には刃牙も冷や汗を流す。
新聞紙を手の中に隠すなんてパフォーマンスに入らない。
これくらいはやらないと。
刃牙もコーヒーをもうちょっと派手に作れば良かったんじゃないか?
水とコーヒー豆を握って、握力のみでコーヒーを作るとかどうよ。
「そうすりゃ刃牙よ…」
「飯だって炊かせられる」
勇次郎は破顔する。目を白く輝かせながら。
…裏があるというレベルじゃないな。
刃牙よ…お前さえ良ければ生涯の父親になってやってもいいぞ…いや、ならせろ!
そんな意志が秘められていたりして。
そして、勇次郎は戸を閉めて出て行く。
ちゃんと靴も履いていったことだろう。
当たり前のことだが、普段は当たり前じゃない入り方や出て行き方をするから違和感がある。
いつの間にか夜這いの傍に立っていた勇次郎なんて伝説だ。
刃牙に言葉を残し力を見せつけた。
ある意味、挑戦とも言えるものだ。
本部だったらこの時点で団欒は諦める。むしろ、勇次郎の名前を聞いた時点で諦める。
諦めない場合は公園に呼び出してやられる。
(なんだ……… いいんだそれで…………………)
刃牙が何か勘違いした!
いや、いいんだそれでってものじゃない。
勇次郎に力尽くで物事をやらせるなんて、バキ世界で一番難しいことだ。
勇次郎との家族団欒というものがどれほど困難なのか、改めて知ったはずなのに…
ともあれ、家族団欒は仮ながらでも終わった。
次に刃牙に待ち受けるのは勇次郎との戦いだ。
とはいえ、そこまでが長いのがバキ世界だ。
勇次郎と戦う時が来た、俺と戦ってくれ、そんな発言から早くも5年は経過している。
また、5年経過しても何の不思議があろうか。
そして、タイトルも変わる。
次回へ続く。
家族団欒完結!
ハッキリ言って異常だ。
一緒にコーヒーを飲むだけでこの有様だ。
勇次郎が料理なんてしようものなら、刃牙ハウスが崩れてもおかしくはない。
まぁ、梢江がいなかったことが唯一の救いだ。
ただでさえカオス度が高いというのにさらにカオスが加速する。
ゴキブリ師匠も出張らなくて良かったな。
勇次郎にやられて親子喧嘩を即勃発だ。
うん、何を書いているんだ、私は。
違和感溢れていたが、勇次郎の家庭の機微を理解できないでいたのは何とも鬼の悲しさを見た。
勇次郎は家族の営みをまったく知らないのだろう。おそらくは刃牙だって同じだ。
家族愛を知らない者同士が家族団欒をやろうとしている。
家族団欒を求めるのは家族愛に餓えているからかもしれない。
勇次郎が刃牙の提案を頭からはねのけないのも、本人も知らないうちに家族愛を求めているからか?
そこに至るまでに闘争を経るのが範馬流か。家族計画ならぬ範馬計画だな。
結局、勇次郎に勝たないと家族団欒はない。
つまり、勇次郎との家族団欒は遠い未来の話になった。
次は烈のボクシング編を片付けるのか、あるいは第2回最大トーナメント(仮)に触れるのか。
枝分かれしていた話の流れも収束するのはいいことだ。
話が分かれすぎて道を見失っていた感もあるし。
これでボクシングなり最大トーナメントなりに集中できるというものだ。
ボクシングの強者と地下闘技場で戦うのが妥当の流れか。
アイアン・マイケルがチャンピオンの時期があるくらいだから、表ボクシングには何も期待できない。
前チャンピオンのワーレフですらご覧の有様だよ。
烈はおとなしく地下に潜りましょう。
第2回最大トーナメントが行われれば再びムエタイが出てくるのだろうか。
今現在、ボクシングがものすごい勢いで貶められている。
第2回最大トーナメントではムエタイがすごい勢い貶められそうだ。
かませ犬はやはりバキ世界に必要だ。
いっそのこと、ムエタイVSボクシングという伝説の一戦をやってみるか?
ムエタイ使いはロシア人で元ヘヴィ級チャンピオン、
ボクシング使いは元ムエタイチャンプで巨漢胸毛にしておけばバランスが取れるのではないだろうか。
ムエタイ側のセコンドはサムワン、ボクシングは当然アイアン・マイケルだ!
あまりのドリームマッチに徳川光成は寿命が伸びる。
そして、最大トーナメントの意義を見失うのだったとさ。
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