範馬刃牙 第231話 出迎え



烈、またピンチ!またピンチ!またピンチ!
どれほどやられれば気が済むんだ、この人は。
相手は経歴だけならアイアン・マイケル以下ですよ。
幼少時の刃牙ですら一蹴しかねない相手だ。


烈はガードを打ち破られクレーザーの4連撃を受ける。
右フックを顔面に一発、ボディに一発、胸部に一発、トドメの左フックを顔面に一発…
迫力満点だがボクサーにやられていることを忘れてはならない
ボクサーのパンチはジャブ以下の存在であったのに…

回復中の烈の脳震盪だったが再び脳が揺れる恐怖に襲われる。
烈はコーナーポストに背を預け倒れる。
2度もボクサーに殴った!と涙目である。
烈のダメダメは一時的なダメダメダメではなく永続的なダメダメダメダメなのかと不安になってくる。

倒れ果てた烈は負け犬にしか見えない。
品位も気位も落ちるところまで落ちた。
レイプ目状態でバッドエンド一直線に見える。
気が付いたら屈強な大男に囲まれていますよ。

ここで再び烈は回想する。
今度はこの前の回想の老師ではなく、中国武術の大御所郭海皇が講義を行っている。
講義の内容は脳震盪のもので、器と豆腐を持っている。
まずは劉海王はどうしたのかと問いたくなってくる。
烈の師匠は劉海王ですよね…郭海皇は実は百林寺出身だったりするのか?
よくわからん人だ。

「打撃によって受けた脳の揺れ なまなかのことではおさまらぬ」
「ただ待ち続けるならば 回復までに5分間………」
「あるいは10分……」
「生殺与奪は敵にある」

劉海王は置いておいて、郭海皇ならばどうやって脳震盪に対処するのか。
ポイントは回復まで時間がかかることだ。
そして、その間に敵が黙っているわけではない。
待つことは抜本的な対策にならない。
烈がくるくる回ったことはあまり意味がないのだが、それはわかりきっていたことである。

郭海皇は揺れる器を再び揺らす。
すると豆腐の動きが止まった。

「揺れ動くものを――――」
「止めるには―――――」
「自ら揺れて」
「こちらから迎える」


振動に別の振動を与えることで、揺れを無力化するのが郭海皇の理屈らしい。
老師が如何に打たれないかを教授していたのに対し、郭海皇は如何に打たれた後の対処をするかを教授している
郭海皇の方が実戦的である。
そして、脳震盪に陥った烈が参考にするべきも郭海皇の方のはずだ。
何いきなり回転しているわけ?

反動を反動で相殺するのは無反動砲と同じ理屈だ。
先鋭的にもほどがあるが、理屈としては間違っていないのかもしれない。
とりあえず、関節を多重化するよりは現実的だ。

ついでに脳震盪中に衝撃を与えると脳が損傷する恐れがあるので非常に危険だ。
まぁ、そこはちゃんとやれば大丈夫ということか?
郭海皇クラスになると体重が消え去るわけだから、イケるに違いあるまい。

郭海皇が勇次郎に殴られまくっても、特にどろどろになっていなかったのはこうした対策をしていただろうか。
実績を残しているかもしれないし、郭海皇の論は正しいのかもしれない。
…かもしれないばかりが続くが。

カウントが行われる中、烈は両目を閉じ脳の揺れを聞く。
振動を振動で相殺する理屈はタイミングを間違えれば、振動が倍増する結果に終わってしまう。
無反動砲も撃ち終わった後、あるいは撃つ前に何かしても無意味どころか余計体勢を崩す。
まして脳は目視できないために感覚が唯一の指針となる。
精妙な一打が必要とされる。

何とも言えない困った表情を見せる深町コーチは突如愕然とする。
ダウンしていた烈が腕を掲げた。
普通のボクサーならやらない行動だ。
いや、烈のやること為すことは普通のボクサーならやらないというか、普通の人間ならやらない行動ばかりだけど

(揺れ(ダメージ)を…………)
(迎えにッッ)


烈は自分の頭を殴った!
深町コーチもカイザーもビックリの奇行だ。
というか、殴るのかよ。頭を振って相殺という発想はないのか。
あるいは殴られたから殴って相殺という考えか?
何とも原始的というか何というか。

レフェリーがナインまで数えた刹那、烈はバババと格好良い起き上がり音と共に立ち上がる。
予備動作がなく、起き上がった時の直立は真っ直ぐで美しい。
一流格闘家が見せる見事な起き上がりだ。
脳震盪の後遺症がまったく見受けられない。

(揺れ(ダメージ)よ……)
(ようこそ)


烈を苛んでいた脳の揺れは完全に収まる。
…あんなんで治っちゃったよ。
何にせよ烈が抱えていたダメージは回復したぞ。
ピクルに殴られた時はそんなの関係なかったのに…

でも、脳震盪って揺れが継続しているから脳震盪なのか?
メカニズム的には脳が揺れた結果、頭骨に激突して脳細胞が痺れて通常の働きができなくなるものらしい。
当たり前のことだが脳震盪中=脳が揺れているわけではないようだ。
つまり、殴っても振動が増すだけで、むしろ逆効果に…
いや、あえて言うまい。

何にせよ復ッ活ッ。
烈海王復活ッッ×6と深町コーチも万歳三唱したい気持ちだろう。うん、そうに違いない。
これで烈が危惧していたグローブの優位性はある程度だが無力化した形になる。
烈の拳技で反撃する時が来たか?

ただ今回無力化したのは脳震盪だけだ。
冒頭でボディに2発食らっていることを忘れてはならない。
次はいきなりボディのダメージに苦しんだりして。
こっちも殴って無力化しておくか?
そのうち、烈がダメージを受ける度に自分を殴る変態になったりして…
何かそんな漫画が昔あったなぁ。
次回へ続く。


烈は第二のピンチを潜り抜けた。
とはいえ、このままだと専用の個室を剥奪され、朝食がジャガイモだけになるかもしれないので、いい加減反撃して欲しいものだ。
烈はディフェンスに不安を見せたが、オフェンスはバキ世界随一のはずだ
いざとなれば靴を脱ぐし、グローブだって突き破る。

烈はボクシングの技術に対し、中国武術の技術で対抗している。
これは当たり前の流れだが、そもそも技術VS技術の対決は久し振りだ
範馬刃牙になってから規格外の対戦相手と如何に戦うかという流れが主体だった。
ピクルとか100キロのカマキリとか。
この1戦はある種のインフレに歯止めをかけるための1戦なのか?

しかし、何とも地味な展開だ。
烈がトンデモなのはいいけど、クレーザーにトンデモがないんだよな。
トンデモがない相手にやられるのは不覚の極みだ。
SSS級のトンデモであるピクルを迎えた後だからなおさらだ。

だから、クレーザーもトンデモが欲しい。
変態揃いのバキ世界において、常識人というのはマイナス要素に他ならない。
このままだとクレーザーは敗北後に忘れ去られてしまう。
せめて猛吹雪の中、サンドバッグを叩くことで鍛えていたとか、イロモノ要素が必要だ。

クレーザーは常識人ということで常識外の立ち回りが烈の勝利の鍵なのかも。
烈はイロモノ要素がたくさんあるし、いくらでも翻弄できる。
競うな!持ち味を活かせ!
首の骨を外して殴りかかればインパクト抜群だ。
凄すぎてレフェリーストップで負ける。

脳震盪の治療はできるようになったが、何度もできるものでもあるまい。
タイミングをミスったら不味いことは烈も感じていた。
ミスを帳消しにしただけで、次にミスれば致命傷になりかねない。
地力で上回る必要がある。
地力なら烈の方が圧倒的に上だ!と言いたいところだが、ここまでの描写はクレーザーの方が上としか思えないんだよな。
如何にしたものか。

グローブの使い方も郭海皇は教えなかったのだろうか。
脱力することでグローブと腕の重量差を大きくし破壊力増大!とか。
烈流グローブに目覚めてもいいぞ!
もちろん、変態的に使う。
でも、クレーザーってロクなリアクションしないから面白くないんだよなー。
クレーザーがチャンピオンになれないのは興行的に地味だからなのかもしれない。



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