範馬刃牙 第249話 最後の晩餐
刃牙が勇次郎に招待されてしまった。
そして、物々しいサブタイトルだ。
最後の晩餐…ストライダムが本部に賄賂をもらっていたりするのだろうか。
こいつらが結託して範馬一族に……夢くらい見せろよ!
刃牙が勇次郎に招待されたのは数十階という言葉では足りないくらいの高層ホテルだ。
その威容だけでなく、路上ではなかなか見られない高級車がこのホテルに訪れるのがいかなる人種なのかを示している。
それに対する刃牙の服装はTシャツにジーンズだ!
いつもとまるで何も変わらない。
前回のラストで服装に悩んでいた君はどこへ消えたんだ?
門前払いを喰らいかねないほどのラフな格好だ。庶民丸出しである。
勇次郎ならいつもの格好で余裕で入れるだろうが、刃牙はちょっとオーラが足りない。
これで門前払いを喰らったら携帯で勇次郎に泣きつくのだろうか。
親父……追い出されちまったよ……ハハハ……とか。
阿呆がッッッ。高い階級と書いて高級……それ相応の身なりを整えておけいッッッ。と怒られたりして。
しょぼーんと刃牙は刃牙ハウスに帰る。
しかし、刃牙を迎え入れたボーイは特に刃牙の服装については言及しない。
刃牙が聞いてみると個室だから大丈夫だとにこやかに迎え入れてくれた。
個室じゃなかったら大丈夫じゃないんだろうな…
忘れられがちだが刃牙は日本有数の富豪の一人息子だ。
贅には慣れているはず……なんだけど、実際のところはどうなんだろう。
幼少期は勇次郎と一緒に山で暮らしていたようだし、13歳になる頃には最低限の生活費で独り暮らしをしていた。
昔から質素な生活を嗜んでいたのだろうか。
高級と名の付く空間に慣れていないのかもしれない。
刃牙はふと目にしたメニューで驚く。
一品だけで6000円以上もするインフレ具合だ。
庶民には馴染みのない価格である。
漫画でしか見たことねェ……みたいな料理が跋扈することは想像に難くない。
……今のうちに逃げておくか?
刃牙は勇次郎が取っておいて個室まで案内される。
壁一面が窓の部屋だった。
絶景で高級感に溢れている。紛う事なき一等地であった。
こんな部屋でロシアの死刑囚を突き落としたことは忘れないでもらいたい。
ボーイ曰く、勇次郎はこの部屋によく来ているようだ。
そして、健啖家らしく、よく食べるとのこと。
肉・魚・野菜を分け隔てなくどれも食し、その上で牛や鶏などの家畜よりも鹿や猪などの野生の肉を好む。
何か刃牙の料理に満足したのがちょっと不思議だ。
野生、足りていないっすよ。だってメカブもパックだし。
そう語っていると勇次郎が突然現れる。
ボーイも刃牙もビックリだ。
いつだって勇次郎は突然現れる。
何のための正体なんだか。
勇次郎はボーイをマネージャーと呼ぶ。
実はボーイではなくホテルのマネージャーが自ら接客を行っていたのか。
とんでもないVIP待遇だ。
それとも勇次郎のマネージャーなのだろうか。
ハハ……ストライダムの立場がなくなるからそりゃないか……
マネージャーは勇次郎の趣向を勝手に言ってしまった。
勇次郎としては面白くないし、誰だって面白くない。
しかし、勇次郎の逆鱗に触れたとなれば意味合いは大きく異なる。
マネージャーと勇次郎の付き合いはそれなりにありそうだ。
如何に弁解するのだろうか。
「最愛の息子さまと伺っておりました――」
「……まァ親子ならばと………」
って、その弁解はダメェ!
ツンデレに対してデレ部分を突いても逆効果以外の何でもないぞ。
というか、勇次郎が最愛の息子って言っちゃったのか?
見えないところでとんでもないことが起きたのかもしれない。
刃牙の注目は勇次郎が羽織っているジャケットだった。
勇次郎とて、然るべき場所ならば然るべき服装をわきまえる。
そりゃあ飯時にはいただきますとごちそうさまの会釈をしますよ、ぽぽぽぽーん。
でも、ジャケットの下はいつもの胴着なのはありなのか?
刃牙もTシャツの上にジャケットを羽織っていたらイケたかもしれない。
「シティホテルで食事とくれば和・洋・中を問わず」
「ジャケットの着用は必然ッッ」
「それを十八(18さい)にもなろう大和男子(やまとおのこ)が」
勇次郎がまたも作法を語った!
とことんまともなことを言えば言うほど違和感しか漂わなくなる男である。
身だしなみはともかく、大和男子(やまとおのこ)とまで叱責されるのは予想外であろう。
……大和男子としてまで怒られるのか。勇次郎の深さを感じてしまった。
刃牙ハウスでの作法をたしなめられた程度だったが、今回は厳しく叱責された。
やはり、家の中と家の外では異なるということか。
もっともなのだが激しく違和感しかない。
勇次郎の作法シリーズはもはやギャグとして定型文化しているな。
刃牙はどう返すのだろうか。
最近の刃牙は勇次郎に従順だ。
反旗を翻す気がまったく感じ取れない。
おとなしく教育を受けるのだろうか。
「ゴメン…」
「ちゃんと教えられたことなかったし」
「イヤミか貴様ッッ」
まさか、刃牙が反論した!
しかも、教えてくれなかったアンタが悪いと嫌みを言った。
責任転嫁とも言えるが、最近の日和気味な刃牙としては珍しく攻撃的な返答だ。
勇次郎の返し方からも痛いとこを突かれたのがわかる。
刃牙の嫌みを嫌みとして捉えられるなんて、父親としての自覚が出まくりだ。
何のことだとすっとぼけても良かったのに。
刃牙にアンタは俺の親父だからちゃんと教育しないと……とか言われて、勇次郎は親馬鹿として悦に浸る。
勇次郎が声だけで下の階を揺らすほど猛った。
それほど父親として痛いところを突かれたのか。
今更になってちゃんと刃牙を教育すれば良かったと後悔していたりして。
特に保健体育はちゃんと教えるべきだったかも……とか、女性の趣味についてもちゃんと教えるべきだったかも……とか、
要するに梢江と付き合うのはどうかと思う……とか。
「もちろんイヤミだよ」
「正しい挨拶 正しい言葉遣い 正しい装い」「正しい接し方
正しいマナー……………」
「俺は一度だって」「教えられたことがない」
「……く…ッッ」
ぐぬぬと一切の反論が封じ込まれた勇次郎であった。
一緒に食事を共にして以来、急に保護者としての責任に目覚めているようだ。
たしかに勇次郎が教えなかったのは事実だが、学ぼうとしなかった刃牙も悪い。
親が何もかもを教えてくれるわけではないことは刃牙が一番知っているはずだ。
自分を棚に上げる見事な術であった。
親馬鹿な勇次郎の弱点を突いた形になる。
あの勇次郎が反論できない。
肉体でも地上最強ならず、口でも地上最強だったのが範馬勇次郎だ。
勇次郎の話術は異常な説得力に溢れ、思わず言葉を失ってしまうのが多数だ。
だが、今口において遅れを取ってしまった。
あの勇次郎が「……く…ッッ」なんて試合中にもなかなか言わない。
でも、勇次郎にとっては「悔しい……でも感じちゃう……!」状態かもしれない。
愛しの刃牙に責められるのならば、むしろ良し!
闘争は勇次郎にとってコミュニティだ。
である以上、これもまた家族同士の濃厚なコミュニティに違いあるまい。
「強くなれ」「強くあれ」
「それが父
範馬勇次郎が息子刃牙に発信し続けた」
「たった一つのメッセージだ」
「それは守った」
「“強い”」「その一点だけは教え通りさ」
「試してみたらいい」
「今ここででも」
そして、自分はアンタの教え通りに育ったよ。アンタの教え通りに育ったから作法が身に付いていないんだよと自己弁護だ。
話題のすり替え方はさすが言い訳大王刃牙だ。
ただここまで言ったら勇次郎と戦う以外に道がないのが唯一の弱点だ。
刃牙は最大の墓穴を掘ってしまったかもしれない。
今の刃牙はチョキに屈するくらいだし。
勇次郎は刃牙の挑戦を如何にするのか。
どうするかと思ったら、席に案内した。
……超親馬鹿モードの勇次郎は無闇に争わないらしい。
ちょっと前なら刃牙を吹き飛ばしていたであろうに偉い違いだ。
父として覚醒しつつあるのか……?
頼むからジャック兄さんも忘れないであげてください。
こうして親子二人の食事、勇次郎編が始まろうとしている。
まずは食前の飲み物だ。
刃牙はフレッシュオレンジジュースを、勇次郎はドライシェリーを頼む。
フレッシュにしているのが刃牙の精一杯な努力を感じる。
プリキュアだってフレッシュになればスタイルが良くなる。ただのオレンジジュースとは雲泥の差ですよ。
勇次郎は大きめのグラスに頼んだドライシェリーを一口飲む。
酒は一気飲みすることが多い勇次郎だが、珍しく一口に留めた。
「代表的な食前酒だ」
「飲(や)ってみろ」
ちゃんと教育しろと言われたから、食前酒について教えようと刃牙にも勧める。
これからはオレンジジュースじゃなくてドライシェリーを頼めというのが勇次郎流作法か。
そもそも代表的だからとドライシェリーを頼むこと自体が、スコッチストレート一気飲みの勇次郎らしからぬ行為だ。
本気で刃牙を躾ける気だ。
だが、勇次郎は大きな失態をしていた。
刃牙は未成年ですよ。酒は不味かろう。
無論、そんなことにこだわる勇次郎ではないだろうが、作法について説く以上はここも徹底することが必要だろう。
嫌だよ、会釈なんかしねェよとか刃牙が言い出したらどうするんだ。
それとも12歳で元服理論か?
そういえば、13歳の時点で花山と一緒に飲んでいたし、だったらイケるぜ?
「旨いや………」
「ん………」
……やっぱり、勇次郎は何かがおかしい。
「ん………」だよ、「ん………」。
まさか勇次郎がこんな初心い反応をするとは。
どちらかというと胸大きめツンデレキャラの返事ですよ。
海原雄山ですらこんな返事はしない。
「どうやら貴様もこの味がわかるようになったようだな……」くらいは言ってくれないと。
[こうして俺達親子の宴は火蓋を切られた]
……宴だよ、宴。
まぁ、実際問題、宴なんだろうな。
やたらと勇次郎が嬉しそうだし。
ここまではしゃいでいる勇次郎なんてなかなか見られない。
「親父……嬉しそうだね」が一番の嫌みだな。
イヤミか貴様ッッ。
かくして範馬親子の宴が始まった。
でも、この前の刃牙ハウス事件も宴という言葉に相応しい気がする。
あれは範馬親子の日常であり、今度のは範馬親子の宴なのだろうか。
範馬一族の機微は相変わらずよくわからないな。
外食……ということは、当然ホテルのシェフが作った料理が出てくるのだろう。
刃牙が驚いた一品数千円の高級料理だ。
しかし、果たしてそれが刃牙の望む勇次郎との一時なのか?
刃牙が望むのは勇次郎の作る料理だ。
シェフよりも勇次郎の料理が食べたいに違いない。
だが、それには勇次郎を倒さないといけない。
巨大な壁が待ち受ける。
これは決戦前夜なのだろうか?
胡散くせー。
そんな開幕が危ぶまれるというよりも怪しまれる範馬親子の決戦だが、どうやら4月28日より本気で始めるらしい。
特集がされているぞ! カウントダウンだ!
そして、それまでは範馬刃牙は休載だ!
手抜きか、貴様ッッ。
親子の決戦は間近に迫りつつある。
あるのだが、本当にやるのか?
そもそも、烈ボクシング編が放置されている。ボルトはどうしたんだ。
第2回最大トーナメントだってなかったことにされそうだ。徳川光成の病状もどうなったことやら。
放置されている展開が多すぎる。このまま、最終決戦に移って本当にいいのか?
ともあれ、(当サイトの)急場の問題としては1ヶ月の休載ですよ。
そんなに休載されると息できねえよ!?
とりあえず、来週は餓狼伝第1話が掲載されるそうな。
何故、餓狼伝……?
第1話といえば、丹波がビルを殴って横綱を倒して生卵をたくさん飲み干して道場破りしてFAWの道場に乗り込む話だろうか。
餓狼伝自体、秋田書店からコミックスが刊行されていくようだ。
餓狼伝に関わった雑誌はことごとく休載になっていった。
イブニングだけが餓狼伝を途中で切ることで沈没を避けた感じだ。
餓狼伝は雑誌的に厄い存在である。
行き場に悩み、それをチャンピオンが引き取った形になるのか?
作中だけでなく読者にも様々な思惑が孕む1ヶ月となりそうだ。
バキ感想を書いている私としてはどうやって耐えたものか。
1ヶ月後に続く。
勇次郎がまたまともなことを言った!
勇次郎の作法シリーズはいつの間にか勇次郎の持ちネタになりつつある。
ほんの僅かな期間でネタとして昇華しやがった。
さすがは地上最強の生物だ。
そりゃあ消力だってすぐにモノにしますよ。
勇次郎の作法シリーズに押されていた刃牙だったが、今回は珍しく反論した。
宴に際して刃牙には1日の猶予が与えられた。
この1日で刃牙が考えたこと……それは勇次郎の作法シリーズに如何に反論するかではないだろうか。
漫然と食事をするな……そいつはアンタが俺に心構えを教えなかったからだ!
親父! アンタが悪い!
そう刃牙は反論を徹夜で考えて、その果てに思いついたのかもしれない。
そして、身だしなみをどうするのかは失念してしまいました。
格闘技において、刃牙が勇次郎から学んだことは少ない。
我流で磨き上げた部分が大きい。
勇次郎から継承したものなんて範馬の血くらいだ。
その範馬の血のウェイトが非常に大きいのが残酷なのだが、それは置いておいて。
刃牙の成長に当たって勇次郎の直接的な影響はあまりない。
精神的な面では大きな影響を与えていることは想像に難くないのだが。
それでも、強さにおいては勇次郎が一目を置くレベルにはなっている。
しかし、作法ではまったく話にならなかった。勇次郎がまったく教えてくれなかったからだ。
だから、作法を巡って齟齬が生じてしまう。
……歪んだ親子の形として、ちょっと悲しくなるな。
勇次郎の作法シリーズの破壊力が高すぎて、思わず忘れてしまいそうだけど。
平和な時分なら教育パパになっていたのか?
それにしても勇次郎の作法シリーズは日常生活で早速使いたいものだ。
このシリーズの汎用性はかなりのものだ。
今回の例に漏れず使いやすい。
「魔法少女アニメと来れば主人公・親友・転校生を問わず魔法少女の変身は必然ッッ。
それを十四(14さい)にもなろう大和女子(やまとおとめ)が」
「ゴメン……ちゃんと契約してなかったし」
「イヤミか貴様ッッ」
(まどか☆マギカ。第11話を見られなくて魔女になりそうだ)
「ハーレムアニメと来れば幼なじみ・転校生・仇敵を問わず分け隔てなく愛でるは必然ッッ。
それを中国から来た第二幼なじみ(セカンド幼なじみ)だけは」
「ゴメン……いまいち人気なかったし」
「イヤミか貴様ッッ」
(インフィニットストラトス。とんでもないハーレムだよ)
「三つ子と来れば長女・次女・三女を問わず美少女キャラの立ち位置は必然ッッ。
それを長女(みつば)だけは大和雌豚(やまとめすぶた)に」
「ゴメン……みっちゃんは太ってこそだし」
「イヤミか貴様ッッ」
(みつどもえ。いや、みっちゃんは太ってこそだろう)
「可愛いキャラと来ればラブコメ・日常系・バトルものを問わず優しく愛でるは必然ッッ。
それをフクイタクミだけは女性暴行(リョナ)を」
「ゴメン……親父の趣味も悪いし」
「イヤミか貴様ッッ」
(ケルベロス。いつだってリョナ描写ばっかりだよ)
「最終決戦目前と来れば伏線回収・超展開・休載を問わず必ず実行は必然ッッ。
それを多くの格闘漫画は決戦放棄(先延ばし)を」
「ゴメン……だってこの漫画もそうだし」
「イヤミか貴様ッッ」
(……本当にこいつらはいつ戦うんだろう。それを考えると親父をあっさりと倒したタフはすごいな)
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