範馬刃牙 第255話 絶大なる激痛
刃牙が勇次郎に対して鞭打を放った!
勇次郎に激痛が襲いかかる。
あらゆる打撃のダメージを耐えうる勇次郎が鞭打を受けたらどうなるのか。
気になるところだし予想もできない。
さて、どうなる。
その前に皮膚について語られる。
過去、幾度も言及されてきたように、いくら鍛えても皮膚で負うダメージは変わらない。
皮膚の面積は成人でおよそ2平方メートル……(らしい)
ミリ単位の急所とは段違いに広い。
そんな皮膚を狙い撃つのが鞭打だ。
ただ平手を決めるだけではなく、極限まで脱力することで重さと柔らかさを得て痛みをさらに増す。
技術の宝庫、中国武術だって褒めてしまう高度な技術である。(第165話)
それが勇次郎に放たれた。
刃牙の鞭打は柳を屈服させ、ピクルを苦しませている。
柳だけならまだしも、ピクルにも通用しているのだ。
刃牙の鞭打は勇次郎には劣るだろうが十分以上に本物だ。
(痛がりやがれ!!!)
(嫌がりやがれ!!! 激痛(いた)がりやがれ!!!
苦痛(いた)がりやがれ!!! 辛苦(いた)がりやがれ!!! イタがりやがれ!!!)
(あの苦痛(いた)みは――――)
(耐え難い……ッッ)
(全てを忘れ去る…………………)
鞭打をぶち込んだ刃牙は実に悪い顔をする。
なかなか主人公とは思えない悪い顔だ。
刃牙はマゾであると同時にサドでもある。
いたぶるという行為が大好きなのだ。
まして勇次郎が激痛に喘ぐという姿を想像すれば、刃牙も悪い顔をするというものでもある。
普通なら勇次郎が怖くてそんなことを思いもしない。
ストライダムも爆薬を当てる気満々だったのに、結局自爆芸で楽しませちゃうし。
とんでもない捨て身だ。
金的食らっても知らんぞ。
(忘我の境――……)
(……地……?)
勇次郎のリアクションを期待し笑みを浮かべていた刃牙だったが、その笑みが突如止まる。
何が起きたのか。
刃牙の驚きは勇次郎の表情にあった。
おお、ナムアミダブツ……!
勇次郎は顔面に血管と筋肉の筋を浮かべていた。
まるで顔面の筋肉が剥き出しになったような異形の表情である。
すっごい変な親父が相手だ!
皮下脂肪がどこかへ消えたかのような不可解な現象だ。
顔面そのものが筋肉だ。
喜怒哀楽の何もかもが見えてこない壮絶な表情である。
鬼の貌ならぬ筋肉の貌だ。
でも、勇次郎って感情が筋肉に宿っていそうだし、意外とこれが本物の表情なのかも。
顔面のみならず、腕や脚の筋肉までが張っている。
大擂台賽で勇次郎の筋肉は金属のようだと観客に評価された。
その印象と同じように筋繊維が金属に変質したかのように硬質化している。
もしや、これがピクル最終形態に対抗した勇次郎最終形態か?
超筋肉筋肉。
予想してもいなければ想像してもいなかった未知のリアクションに、ピクルの超変化を見てきた刃牙でさえも言葉を失う。
私だって言葉を失った。
同時に何かを吹き出した。
[事態(こと)は――]
[単純明確]
不可解な事象だが、実は単純なことらしい。
消力みたいなものか?
完全なる脱力を実現することで、壁にクレーターを作るほどの破壊力を生み出すみたいな。
ごめん、まったく単純じゃない。
[右手を叩いた痛みが―――]
[左手を叩くことで軽減するように]
普通の人は右手が痛いからってそんなことはしないが、実際にやってみると何となく痛みは引く。
というよりも、新しい痛みに誤魔化される。
痛みの上書きだ。
無論、健康的な行為とは言い難い。
[鞭打による激痛(いた)みを]
[分散…]
[目力もいっぱいに][歯を食いしばり]
[拳…………][全力で握り][同等(おな)じ力で開き………]
[腕………][全力で伸ばし][同等(おな)じで縮め]
[脚………][全力で踏みしめ][全力で引き上げ]
[腹………][撓め………][腰………][反り………]
[胸………][絞り………][背………][閉じ………]
[さらには各部位捻りに戻しを拮抗させ…… 要するに――――――]
[そう]
[動かぬまま五体に五体全ての筋繊維を一気に駆動!]
[全身運動の苦痛により][皮膚の苦痛(いた)みを分散]
うむ!
なるほど!
そういうことか……
それは単純にして明確だ。
実によくわからん!
……だって、本当によくわからないんだもん……
ゴウランガ!
とにかく、全身で力んだらしい。
力んだ結果、全身の筋肉が浮き上がったらしい。
力んだら身体中が痛くなって鞭打の痛みが相殺されたと見ていいのだろうか。
でも、開くと閉じるみたいな相反した運動を同時に行えるのか?
そこは範馬勇次郎、筋肉に関しては超一流だからやれるのかもしれないが。
ううむ、何度読み返してもよくわからん……
これほどよくわからん理屈も久し振りだ。
だが、全身の筋肉が浮き上がった勇次郎は迫力満点だ。
そして、バキ世界は迫力があるから説得力のある世界観だ。
何だかわからんがとにかく良し!
……ん?
でも、全身を痛ませたってことは、もしかして……
[かろうじて無表情を保持(キープ)していた]
やっぱり、痛かったんだ!
烈の予想は正しく、鞭打は勇次郎にとっても相当痛い技だったようだ。
鞭打は勇次郎に通用する!
でも、全身使って必死に耐えるぞ。
痛みが引いたのか、筋肉の緊張を解いた勇次郎の表情は心なしかホッとしているように見える。
見方を変えれば刃牙の鞭打は勇次郎をここまでするほどの威力があったのだ。
さすがと言うべきか、刃牙は侮れない。
(痛くないのか…!!?)
(あの苦痛(いた)みが………!!!)
痛いからこそあんなことになったのだが、刃牙に悟られないことには成功したようだ。
相手にダメージを悟られないようにするのは大事だ。
もしも、勇次郎が苦痛に喘いでいたら、調子に乗った刃牙は鞭打を連続で繰り出していたのかもしれない。
勇次郎、ファインプレイである。
しかし、洞察力のない男だ。
勇次郎があんな変貌を見せた理由くらい考えてもらいたい。
と思ったが、あんな無茶苦茶な理由を考えられるのは板垣先生くらいだ。
刃牙が唖然とするのも無理はなかった。
「半人前の分際で急所を狙わぬ愚」
「如何に出来の悪い頭にも」
「多少なりとも理解できたことだろう」
「狙ってこい……」
「親の仇のつもりでこいッッ」
あ、勇次郎が話題を逸らした。
急所を狙わない鞭打でも効果があったのだが、通用しなかったことにした。
実際は通用したけど、刃牙がそれに気付いていないようなので押し切ろうとしている。
勇次郎とて何度も鞭打を食らうのは嫌らしい。
この巧みな話術が勇次郎の武器でもある。
そこまで言われたらいい加減刃牙も腹を決めるしかない。
急所を狙わない攻撃など通用しないのだ。
鞭打は通用していたけど。
通用していたけど!
すっげえ痛かったんだけどな!
すっげえ我慢したけどな!
「言われなくともそうするさ…」
「実際カタキだし…………」
[少年のとる]
[今宵初めての戦闘態勢(ファイティングポーズ)]
ついに刃牙が恒例のファイティングポーズを取った。
あとはいつものトランクス一丁になれば地下闘技場チャンピオンの完成だ。
そういえば、この大一番にTシャツ+ジーンズなんだよな。
バキは早く脱ぐことが求められる。
さながらバキSAGAのように!
とんでもない一幕だったが、これで戦いはお仕置きから闘争にステップアップするのだろうか。
急所を狙えという勇次郎……大きく開いた股……
これはあの部位を狙えということだろうか。
あそこを殴られたり蹴られたりすれば勇次郎はどうなることやら。
また、全身の筋肉を浮き立たせて耐えるか?
次回へ続く。
勇次郎に鞭打は通用する!
実に意外な事実であった。
その対処法は意外というレベルではなかったが。
いやいや、NONONO。
刃牙がもうちょっと嫌らしい性格だったら、追い打ちの鞭打で痛みはさらに加速していたのだろう。
汚いな、さすが刃牙汚い。
まぁ、そうなれば勇次郎も本気の鞭打で反撃したりして。
……痛みを与え合う不毛な試合にならなくて良かったのかもしれない。
てっきり消力なんかを使って鞭打の完全無効化をやるかとも思っていたけど、まさか逆に全力で力んだ。
さすが、力み至上主義の勇次郎だ。
力めば無力化できるものだ。
でも、全身痛いんだよね、あれ。
むしろ、痛いって感覚があったんだ、勇次郎……
次回から戦いは本番なのだろうか。
もう急所を狙おうが狙うまいがあまり関係ない気もするが。
急所を突いて勇次郎を倒せるのなら苦労はしない。
人中なんて通用するわけがないんですよ。
急所に当てはまるかは怪しいが、カスりパンチなんかはどうなのだろうか。
脳震盪はバキ世界においては即死級のダメージだ。
勇次郎に通用するかどうか……
全身を力ませて対処したりして。
しかし、勇次郎がとんでもなく面白いことをしただけに、解説役や驚き役がいないのが本当に寂しい。
何とかならんものか。
ついでに今回はさりげなく第一空挺部隊がホテルに駆けつけた。
正直、何をやるんだという話だが、何かを期待していいのだろうか。
もしガイアがいれば解説役や驚き役を務めて万事OKだ。
なお、ガイアが解説、ノムラが驚き役をやります。
……ガイアじゃダメだな。
近年の解説王、烈は設定さえ忘れそうになるが今ベガスにいる。
古代の解説王、本部はこの二人を見ただけで失禁してしまいそうだ。
となると、やはり、ストライダムの出番であろうか。
解説役も驚き役もこなしてくれる!
……ストライダムはストライダムで「〜〜〜〜ッッッ」「バカな……ッッ」くらいしか言わないか。
適任かつ適材が待たれる。
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