範馬刃牙 第258話 時速270キロ
ついにゴキブリダッシュの実戦導入だ!
あ、千春のはなかったことにしてください。
ゴキブリダッシュはピクルとの戦いを経て開発された必殺技だ。
ピクル以上を想定して作られたのだ。
それだけでその効果のほどがわかるのだが、ゴキブリだしなぁ……
[脱力を越えた脱力…………]
[潜在意識下に残る筋繊維の強張りを][溶かし……]
[もはや少年の意識には―――]
[筋繊維は繊維ですらなく][液化へ……]
[さらに意識(イメージ)は][液化から気化へと]
[超…脱…力…]
とろける刃牙はとろけるを通り越して気化のレベルに達していた。
ゴキブリダッシュは消力や真マッハ突きと似たようで違う技術体系のようだ。
消力の破壊力はあるが遅い、真マッハ突きの破壊力はあるが四肢を犠牲にすると言った弱点を補える技となるのだろうか。
脱力が打撃のファクターとなっているが、脱力自体は勇次郎が既に否定している。
……大丈夫か、刃牙よ。
しかし、刃牙はとろけすぎだ。
気化まですれば逆に攻撃力なくなるだろうに。
もしかして、怨霊で攻撃する精神攻撃なのか?
妖術師刃牙ならばあり得る!
十二分に!
そして、ついにゴキブリダッシュが始動する。
極限の脱力から一瞬で最高速に達する!
史上最強の生物、ピクルでさえ(多分)辿り着いていない境地だ。
原理は未だによくわからんがすごいぞ。
(いかがですか父上…)
(あなたの息子があみ出した)
(時速270キロ!!)
(蜚蠊タックル…ッすッッ)
刃牙の新必殺技は時速270kmのゴキブリタックルだ!
やはり、言うまでもないが字面が最悪だ!
もしかして、ゴキブリが迫ってくるという嫌悪感さえも味方につけているだろうか。
今の刃牙はゴキブリそのものなのだ。
しかし、そのまんまタックルとして使うんだ……
どうにもピクルタックルの二番煎じ感が否めない。
ゴキブリタックル自体、ピクルタックルを参考にして編み出したものなのだろうか。
ピクルタックル自体は成功率25%と低めだけど、破壊力という点においては超一級品だ。
刃牙はそこに目を付けたのかもしれない。
時速270km。
100mを1.33秒で駆け抜ける速度だ。
金メダルなんてレベルじゃない。
でも、真マッハ突きの音速の後だとちょっとしょぼく感じてしまう。
ピクルタックルも同じくらいの速度には達していたんじゃないだろうか。
それを刃牙が達したということに評価すべき点があるのかもしれないが。
駄目出しはこれくらいにしておいて、ゴキブリタックルが勇次郎に入った。
勇次郎は床を削りながらこらえるが、勢いに負けガラスを突き破る。
勇次郎の腕はフリーな状態で、ゴキブリタックルを下半身だけで受け止めている。
並みの格闘家ならタックルの勢いに負けて押し潰されていたところだ。
だが、勇次郎は倒れずに立っている。
下半身だけで270kmの衝撃に耐えうる恐るべし足腰の強さだ。
勇次郎は再度ガラスを突き抜け、壁まで達する。
あの刃牙が勇次郎を押している!
それだけでもゴキブリタックルの凄まじさがわかるというものだ。
でも、勇次郎はそれに耐えている。
……何かヤバい香りが……
「裸足のまま」
「夥しいガラスの欠片を踏み蹴って…」
「一滴の血も流さぬとは……」
「並みの修行では―――」
勇次郎は押されながらも冷静に分析した。
って、それだけの余裕があるということか?
せっかくのゴキブリタックルであったが勇次郎にとってはあまり有効ではないのか?
ガラスを踏んでも出血していないという大道芸じみた結果しか残せていない。
克巳がやった濡れた紙を破らない演舞レベルだ。
勇次郎は体重の全てを刃牙に預けている極端な前屈みの姿勢になっている。
ノの字の姿勢だ。
そんな状態で刃牙は一歩下がる。
勇次郎は当然倒れるだけだ。
その時、珍しく勇次郎が驚いた。
あれ……そんなところで驚くんですか……
下がると同時に刃牙は飛び蹴りを勇次郎に放つ。
顎部、あるいは喉を狙った飛び蹴りだ。
ついに急所を狙い始めたことが伺える。
勇次郎は壁にのけぞり、軽くクレーターができた。
もう当たり前のようにクレーターができているな……
刃牙の追撃はこれでは終わらない。
さらにドロップキックで追い打ちする。
すると勇次郎は壁を貫いた。
それだけではなく壁の向こう側にあったトイレの個室を次々に砕いていく。
馬鹿な!
刃牙が勇次郎のような現象を引き起こしている!
それは勇次郎の芸だ!
お前の芸じゃない!
明らかに演出過多なのだが、これが今の刃牙の身体能力なのか?
あるいはゴキブリダッシュ理論を用いた攻撃なのだろうか。
たしかに勇次郎に挑むのに十分な資格があるが……
本当にいつの間に強くなる男だ。
徳川光成の言った通りにホテルを破壊する勢いで戦っている。
こりゃたしかに第1空挺団の力が必要となる。
避難が必要な規模の戦いだ。
範馬一族の戦いの危険度の高さが伺える。
刃牙とジャックが戦った時も失禁の銃弾爆撃が行われたし。あ、ゲロもあったな。
「あァ〜れェ〜(はぁと)」
だが、全然効いていなかった!
……え。全然効いていないんだ……
そりゃあたしかに勇次郎にゴキブリダッシュはバレていたし。
ゴキブリタックルも勇次郎を押したくらいの結果しか残せていない。
時速270kmと半端な数値なのがハッタリ不足だったのかもしれない。
嘘でも500kmくらいと言っておけば良かったのに。
せっかくの必殺技だったが不発気味だ。
だが、ある意味、チャメシ・インシデントとも言える。
バキ世界ではせっかく用意した必殺技が不発に終わる可能性は非常に高い。
真マッハ突きも決定打にはならず、刃牙だって磨き上げたカウンター浴びせ蹴りはあっさりと破られた。
歴史は繰り返している。
今もまた刃牙の必殺技は破られるのか?
用意した必殺技よりもその場でアドリブで出した技の方が有効なのがバキ世界だ。
地球拳よりも名も無きパンチが強いのだ。
ある意味、必殺技を用意した時点で刃牙は失敗していたのかもしれない。
5年前の反省を活かせ!
いや、だからといってサボり続けても困るが。
刃牙はいきなり手がなくなってしまった。
5年前はそのまま敗北した。
しかし、今ならどうか。
刃牙は奥の手の鬼の貌を残している。
ピクルとの戦いでさえ使わなかった秘密兵器だ。
でも、刃牙の鬼の貌ってオリバと互角レベルだった。
素の状態で差が付けられている以上、勇次郎も鬼の貌を解放すれば差が埋まらない。
鬼の貌を越えた鬼の貌に目覚めてみるか?
背中と脳に続いて睾丸まで鬼!
もしかして、脱力することばっかり考えていたら、鬼の貌のことを忘れちゃったりして。
ゴキブリの貌は得たが鬼の貌は忘れた!
悩んだ刃牙は時間稼ぎとして鞭打を使い始めたら嫌だな……
鞭打、今のところ、勇次郎に一番有効だし。
次回へ続く。
ゴキブリダッシュ不発か!?
まぁ、その効果のほどが千春でしか実証されていなかったのは不味かった。
もうちょっと実力者相手に試さないと。
正直、勇次郎と言わず花山にも止められてしまいそうだが。
そもそも、ゴキブリだけで勝とうとしたのが不味かったか。
ゴキブリでイケる!
と思った刃牙もクレイジーでポイントが高かったのだが……
相手は鬼ですよ。ゴキブリとは比べものになりませんよ。
獣全般が勇次郎に勝ち目がなさそうだから、そうしたものを模倣した時点で負けフラグだったのかもしれない。
まぁ、ゴキブリダッシュ自体は勇次郎の気に召したようだ。
それだけでも十分マシだ。
良かったね、刃牙。
勇次郎と言えば相手の技を真似ることも大好きだ。
勇次郎の嫌らしいところでもある。
ゴキブリダッシュを勇次郎が真似たりして。
刃牙の自信が完膚無きまで粉砕されそうだ。
いや、さすが親父と感服しそうだから、精神的なダメージは少ないか?
そう考えていくと勇次郎に何をやられても刃牙はダメージが少なそうだ。
いや、状況は悪くなる一方だけど。
このまま、刃牙は勇次郎に押し潰されてしまうのだろうか。
逆転するには勇次郎を車にはねてもらうしかなさそうだ。
今から高速道路に駆け込め!
……刃牙がはねられそうだけど、それはそれで。
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