範馬刃牙 第278話 秘技 



カウントダウン勝負が始まった!
もっともシンプルなカタチ、ヨーイドンだ。
駆け引きも何もない。
反射速度が要求される単純なモノだ。
それだけにトップクラスの実力の持ち主が行えば何が起こるのか。
ただ殴り合うだけの展開には収まらないだろう。
それとも……あるいは……


[今!!!]

カウントダウンが終わり、勇次郎が動き出す時が来る。
不本意かつ混乱の中で始まった勝負だが、刃牙は即座に反応する。
さすがは実戦派だ。
まぁ、わりと油断してやられることが多いけど、今回はちゃんと反応できている。

その時、刃牙が選択した抜拳は手の位置をそのままに身を沈めることによる抜拳だ。
手の動きではなく身体の動きによる抜拳は龍書文も行っている。
参考にしたのか、あるいは自然とこの解を選択したのか。
ともあれ、刃牙は勇次郎の言う通りにちゃんと学んでいる。

この方法なら姿勢を完成させながら手を抜くことができる。
わざわざ居合いを行う意味は置いておいて、これならスピードが求められる場面にも対応できる。
それはあたかも柄を床に接地したまま、腰を切ることで抜刀する居合い抜きに似ている!
ごめん、あんまり似ていないと思う。

しかし、刀と違ってハンドポケットから手を抜くのに時間はかからない。
おとなしく普通にパンチすりゃあいいんじゃ……
あるいは同時に行うとか。
まぁ、今更か。

「ヤアァアァアアァ」

そんな最速のスタートを切った刃牙に対し、勇次郎はやる気のないスタートをした。
まず、声がやる気がない。
顔も緩みきったぶっちゃけキモい笑顔だ。
トドメにパンチは消力かと言わんばかりに遅い。

この最速に対する最遅に刃牙も困惑する。
そして、手が止まる。
勇次郎の拳が頬に触れるのを為す術もなく見守る。

が、勇次郎はそのゼロ速度の状態から急加速をする。
鬼の寸勁だ!
ただのスピードで勝負するだけでなく駆け引きを混ぜることで必中させた。
ちょっとセコ……いや、大胆な策だ。

結果として刃牙に命中し、全身が浮き上がる。
このまま、吹き飛んでしまうのか?
吹き飛ぶだろうな。
だって、刃牙だし。
が、ここで刃牙はまさかの行動に移るのだった。

[上顎と………]
[下顎………]


殴られた瞬間、刃牙の片脚が勇次郎の首にかかる。
予想外の反応に勇次郎でさえも驚く。
さらにもう片方の足が膝蹴りの体勢を取っている。
こ、この技は! もしかしなくても、もしかする……!

[噛み砕く 虎の顎になぞらえた 秘技]
[その名も 虎王!!!]


もしかしなくても虎王だー!
餓狼伝世界における最強格の技、虎王が勇次郎に完全に入った!
首を挟んだ状態での膝蹴りだけに留まらず、締めの極め技も行っている。
虎王完了!

まさかの反撃、そしてまさかの虎王に勇次郎は地に伏せる。
刃牙が完全な形で勇次郎のダウンを奪った。
勇次郎から完全なダウンを奪うのは連載史上、初の出来事だ。
そして、刃牙が完全に勇次郎の上を行った初の瞬間だ。
これにはただ虎王を当てた以上の価値がある。

今までの鬱憤を晴らすかのような一撃だった。
虎王! 餓狼伝を象徴する必殺技の輸入!
ちょっとこれには興奮せざるを得ない。
久し振りに刃牙のことを格好良いと思ってしまった。

かつて刃牙は勇次郎とのカウンター勝負で破れた。
今回の図式はやり方こそ異なるもののあの頃と酷似している。
だが、5年の月日を経て刃牙は勇次郎の上を行き反撃に成功した。
この虎王は刃牙の成長を物語る重要な意味を持っている。

これで勇次郎もダメージを負っただろう。
次回から本番か?
でも、勇次郎のことだから虎王には虎王でやり返しそうなんだよな。
あ、その前に本部の解説か。
本部は餓狼伝だと泉宗一郎の立ち位置ですよ。
老練の実力者に見えてわりとあっさりと負けたり、主人公に特訓をつけさせたり、解説役になったりするところが。
うむ、今度の今度の今度こそお前の出番だ、本部!
あ、梶原の立ち位置になっているのが加藤かな。
次回へ続く。


まさかの虎王だ!
板垣ファンなら興奮せざるを得ないシチュエーションである。
久し振りに刃牙が輝いている。
もう何年ぶりくらいだろう。
柳との初勝負で見せた「やっぱりこいつは強いんだな」的な空気はなかなかに格好良かった。
10年以上遡るじゃねえか!

まぁ、虎王ですよ虎王。
餓狼伝の必殺技ですよ。
丹波だって使った。姫川だって使った。長田だって使った。
みんな使ってますね。まぁ、それだけ普及しているということで。
両脚で挟み込むように出せば虎王認定されるし、けっこう判定は緩いのもありますが。

細かく言えば刃牙のは漫画版虎王だ。
実はこれはバキ本編でも既に行っている。
刃牙が徳川邸を襲った時に加納秀明相手に使ったのだ。
これが元となって漫画版餓狼伝に移植されたカタチになる。
(記憶が間違っていなければですが)
驚愕の餓狼伝からの輸入であると同時に、懐かし技でもあるのが虎王だ。

虎王は打撃部分の破壊力はもちろん、相手の腕を極めることで折ることができる。
刃牙は虎王を完了させ、最後の腕を極める部分まで遂行している。
バキ世界において、四肢を骨折などで使用不能にすることは大きな意味を持つ。
というか、大抵負ける。
以前、だったらイケるぜ様がまとめていましたので参考のほどに。

勇次郎は折られたのか? それともそこまで決まっていないか?
ついでにこの極め技はかつて刃牙が昂昇に行い、イスタスが克巳に行ったものと同じものだ。
昂昇曰く、あの体勢からは逃げられない。
克巳は片腕で逆立ち、そしてジャンプするという力技で抜けたが、勇次郎はどうするのだろうか。
普通に克巳と同じ方法はいくらでも取れるから、何か驚かせてもらいたい。

ともあれ、これで勇次郎も本気にならざるを得ないだろう。
うん、今度の今度こそ。
次回以降、もう茶番抜きの戦いが始まる……のか?
まぁ、次回は解説かな、うん。
本部、お前の出番だ。いや、そろそろ出てきてください。
多分、すげー盛り上がるよ。本部ェ!



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