範馬刃牙 第28話 徒手
3日間の独房生活を終え――
通常の生活へ戻される
前回の後、特に何事もなかったようで、刃牙は囚人らしく肉体労働に励んでいた。
だが、内容も囚人らしく過酷だ。
炎天下の中で道路を通すための基礎工事、大きな杭をハンマーで打ち込む作業をしている。
一般人なら数個打ち込んだだけで音を上げそうだが、そこは範馬刃牙だ。
たった2発で杭を地面の奥深くまでめりこませている。
そんなハイペースで作業をしているから、他の作業員の数倍は進んでいる。
きっと負荷をイメージしながら杭を打ち込んでいるんだろうな。
過酷な作業をさらに過酷にして、トレーニング及びマゾ本能を満たしているはずだ。
「あのマイケルでさえ3発は必要だってのによォ」
出た―――――――――――――――――――
元ヘヴィ級ボクシング世界チャンピオンアイアン・マイケルだぁ!!!
看守に殴られた後、そのまま寝込んでいるかと思ったら違った。
普通に囚人として生活している。
ただのオブジェにならなくて良かった。
俺たちのアイアン・マイケルは(落ちぶれたけど)生きているッッッ。
だが、登場したということは何らかの不利益を被る可能性が高い。
ムエタイが出れば潰されるように、アイアン・マイケルが出てくれば潰される可能性が高い。
おそらく死兆星が輝いている。
「聞きましたよマイケルさん」
「来月出所(でる)って…」
休憩時間に刃牙はアイアン・マイケルに話しかける。
何が原因で刑務所にいるのか、結局わからないままだけど、来月には出所できるようだ。
満面の笑みを刃牙に向けるあたり、刑務所から出れることが相当嬉しいようだ。
刑務所にいればゲバルや刃牙に弄られる可能性がある。
それから開放される幸福というのは我々には想像しがたいものがある。
「え?」
「狙ってる……って」
「タイトルさ」
「統一ヘヴィ級タイトル」
ええええええええええええええええええ。
この人、まだボクシングするつもりだよ!
いや、ボクシングをするのはいい。健全だ。
だが、噛まれる可能性が高くなるぞ!
諦めて空手にしておけ。
バキ世界の外国人空手選手は大抵弱いけど。
狙っているだけでなく、出所3ヶ月後にすでに第一試合は決まっているようだ。
準備は万端だ。
刑務所内での重労働もこなしているようだし、肉体も衰えていないだろう。
本当に準備は万端だ。
何だかアイアン・マイケルが妙に輝いている。
妄想体が刃牙にハイキック1発で敗北し、囚人として現れた時には哀れを通り越した悲しい存在だと思ったが、今のアイアン・マイケルは普通に輝いている。
ボクサーはボクサーらしくなければいけないらしい。
妄想とか囚人とかに付き合っちゃだめだ。
ところで、ハゲ頭のまま復帰すると、往年のファンが失望しそうだから、髪を生やしておきましょう。
そんな未来がある以上、アイアン・マイケルは刑務所内でのランキングに関わっていられない。
ヘタレと呼ばれそうが、哀れと呼ばれようが、駄目な人と呼ばれようが、おとなしく看守に殴られる。
普通にランキングに関わっても話にならないと思うけど。
[世界があなたを待っているんだもの……………………]
刃牙はアイアン・マイケルに向かってつぶやく。
背景は遠い遠い青い空だ。
なんか非常に悲しい台詞だ。
世界はアイアン・マイケルを待っているかもしれない。
だが、刃牙を待ってくれるのは勇次郎くらいだ。
最愛の恋人梢江はJr.と駆け落ちだ。
観戦くらいはしてくれるだろうけど、応援はしそうにない。
今の刃牙は世界にひとりぼっちだ。
そんなちょっといい話がある中、刑務所内では陰謀が渦巻いていた。
アイアン・マイケルの現役復帰は喜ばしいことだが、IBA(国際ボクシング教会)会長はそうは思っていないらしい。
刑務所から復帰、チャンピオンになったボクサーがいた時代の興行成績は非常に悪かったようだ。
どうやら、元犯罪者がチャンピオンになることは、ビジネスとしてまずいようだ。
そこでIBA会長はアイアン・マイケルにボクシングを出来ない身体にさせることを看守たちに依頼した。
ボクシングをさせなければ、チャンピオンになれない。つまりは興行成績の悪化を防ぐことができる。
って、久し振りに出てきたと思ったら、早速これかよ!!
やっぱり、アイアン・マイケルは可哀想な人だ。
つまりは噛まれる人なのだ。
「彼はヘヴィ級のチャンピオンだった男ですよ」
「並のケンカ自慢など及びもつかぬ戦闘力を持っているのです」
「勝ち目のある2人――――オリバもゲバルも我々の相談に乗ることなど間違ってもあり得ないッ」
なんかアイアン・マイケルの実力が過大評価されているのですが…
日本のストリートキッズに負けた男ですよ。
並の喧嘩自慢じゃ勝てないかもしれないけど、上等の喧嘩自慢ならきっと普通に勝てますよ。
オリバとゲバルを勝ち目のある人物にあげるなんて、まるで烈海王並みのVIP待遇だ。
アイアン・マイケルは範海王の位置にいることに気付いてやってください。
「マウスを呼べ」
アイアン・マイケル打倒策として、所長はマウスという人物を使うことにした。
その名を聞いた瞬間、部長っぽいツラをしている人物が冷や汗を流し驚く。
マウスとはA級の危険人物らしい。
「唇(リップ)」「歯(トゥース)」「舌(タング)」
「彼ら3人なら我々の気持ちをくみ取ってくれる」
「そしてマイケルにも確実に勝てる」
「しかも彼等は最初から我々の側の人間だ」
マウスとは所長お墨付きの3人組みのようだ。
部長は「わたしは責任を持てませんッッ」とマウスについて恐れている。
看守にとっても手に余る存在なのだろうか。
こりゃあアイアン・マイケルなんて相手になりそうもない。
「なにかありましたか所長」
「いいのかな3人揃っちゃって」
「ワカっていて呼んだのなら――――」
「いずれにしろ緊急事態だッッ」
そんなわけでマウスが勢ぞろいする。
なんとその正体は看守だ。
3人とも同じ顔つきのため、三つ子だろうか。
三つ子ならではのコンビネーションがこいつらの武器か?
「君ら3人が揃うと……」
「化学反応を起こす」
「しかし今
その化学反応こそが必要になった」
マウスは3人揃うと何かを発生させる人物のようだ。
刃牙と梢江が出逢えばセックスが起こるような存在なのだろう。
ごめん、そういうのは勘弁。
さっき書いたように息の合ったコンビネーションが予想されるけど、板垣先生だからもっとすごいことをやるんだろうなぁ。
本当に化学反応を起こすに違いない。
3人が合体するとか普通にありえそうだ。
腕6本でアシュラマンだ。
「やるなら今夜すぐがいいですね」
暴力世界に生きる人間なのか、マウスはやる気満々だ。
そして、アイアン・マイケルの死亡フラグ確定だ。
避ける手はない。おとなしく殺されよう。
そんなわけでアイアン・マイケル大ピンチである。
やっぱり、噛まれる人だった。
素晴らしく噛まれるんだろうなぁ。
さようなら、アイアン・マイケル。
これからの展開はアイアン・マイケルがボコられる→刃牙が敵討ちの少年漫画王道コンボになるのだろう。
多分、やることは少年漫画らしくないけど。
友人を痛めつけた3人集に刃牙の怒りが爆発するッッッ。
「アイアン・マイケルが強いとか弱いとか――――」
「もうそんなことには興味がないんだ」
最悪だこいつッッッ。
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