範馬刃牙 第282話 佳き夜
刃牙の成人式が始まるぞ!
でも、アンタ、18歳だよね。
かつては15歳で元服だったけど……
勇次郎に一人前の男として認められたということか。
さて、ここで語られるのが勇次郎出産の瞬間だ。
勇次郎は出産時から赤ん坊とは思えない屈強な肉体と明確な意志を持って生まれてきた。
その意志は暗闇の中に光を認識した時から、つまり出生直後からあった。
名も無き赤ん坊が範馬勇次郎になったのではなく、範馬勇次郎は生まれた瞬間から範馬勇次郎だったのだ。
勇次郎は産婆の小倉ツネ(微妙に懐かしキャラ)が敵かどうなのかの判別から始める。
生まれた直後から敵という概念を知っていた。
本能レベルで戦う相手を知っている。
まさに戦うために生まれてきた男、いや生物だ。
(出せ)
(無事に取り出せッッ)
(失敗(ミス)は許さんッッ)
小倉ツネが敵ではないと判断したら早速命令する範馬勇次郎だ。
0歳児にしてこのワガママ!
これには小倉ツネも冷や汗が止まらない。
ただでさえミスが許されない出産という行為が、さらに困難なものになっているのだ。
……失敗を許さないならそんなにビビらせなきゃいいのに。
腕力に傾向したどこか不器用な勇次郎の生き方はこの時点で完成している。
(心を込めろ……)
勇次郎さん、そこまで要求するの!?
美味い料理を作るだけじゃなく、愛情を込めろと言う美食家のようだ。
勇次郎の接待は大変だ。
ストライダムも心を込めることを要求されているのかも。
ストライダムの凄さを改めて知った。
モノローグで勇次郎の強さについて語られる。
もう何度も語られたことだ。
ライオン、北極熊、シベリア虎、アフリカ象などは軒並み制覇済みらしい。
シベリア虎も狩っていたんだ。
独歩もピクルも倒せたんだから、勇次郎も楽勝と言うことか。
ならば、サメやクジラなどの海の生物は?
それらでも相手にならないというのが見立てらしい。
外伝とはいえサメは花山も倒している。
勇次郎も楽勝だろう。
そして、ウィルスやバクテリアもかなわないらしい。
刃牙が勇次郎にはがん細胞でさえ敵わないと言っていたことがあった。
ともかく、劣るモノなし負けるモノなし。
それが勇次郎であった。
そんな勇次郎が優しげな顔をしている。
こんなに優しい笑みは初めてのような……
勇次郎は喜怒哀楽の怒に9割を注いだ人だからな。
それ以外の感情は喜以外はなかなかない。
珍しく見せる感情に刃牙だって驚く。
リアル鬼であることを知っているのは刃牙本人だ。
子にさえこの信憑性である。
海原雄山といい、偉大な父は理解されないものである。
「オマエの裡に眠る遺伝子をな……」
「叩き起こす覚悟をした」
刃牙の持つリーサルウェポン、範馬の血を目覚めさせる!
勇次郎はそう決意した。
範馬の血はなかなか扱いが難しいものだ。
主に刃牙が使った時はややこしくなる。
オリバやピクルに押した時はそうとしか思えない理不尽さがある。
そういえば、刃牙は範馬の血を発動させてからまともなトレーニングをしていない気がする。
成長エピソードがはぶられている。
昔は飛騨で修行したり、昂昇を倒すために空手を学んだりしたのに……
成長エピソードがやってきたと思ったらSAGAだったりと散々だ。
戦士たちは戦いが一種のクライマックスに来たことを悟り、ピクルさえも汗を流す。
ピクルの立ち位置がその他観客になっちゃったな……
やはり、刃牙に関わったからか。
まさに巨凶だよ。
(退屈で埋めつくされた 俺の生涯に…………)
(初なるときめきを 与えたるが)
(よもや我が子だけだったとは………)
勇次郎は孤高故に並び立つ者がいなく退屈だった。
ムエタイを初めとした格闘家を喜んで壊していたから、退屈はなさそうだったがそうでもなかった。
昔はそんなことをたくさんやっていたが、ここ数年ではめっきりなくなったから飽きたのかもしれない。
唯一、勇次郎に食らいついた郭海皇とはそれなりの友情も芽生えた。
……と思ったが、それでも勇次郎を満たすほどではなかったようだ。
あとピクルさんなら勇次郎を満足させられるとも思ったが、そうでもなかったようだ。
いや、戦っていないだけだからかもしれないが。
戦えばもう刃牙なんてどうでもよく感じたりして。
そして、哭いた。
背中の鬼が哭いた。
これは勇次郎最終必殺鬼哭拳!
一度出した必殺技は二度通用しないことが多い黄金聖闘士なバキ世界において、唯一必殺であり続けている技である。
いや、技じゃないけど。
あと郭海皇は不発気味だったけど。
新年初からとんでもないモノが出たぞ。
鬼哭拳を知る独歩とみっちゃんは戦慄する。
オリバなんて「クレイジー」なんて呟いている。
ピクルさんは……反応がない。
ティラノサウルスを連想するくらいはしてもいいのに。
「生きろ……」
「佳き夜をアリガトウ………………」
これは刃牙を殺す気だ!
独歩は実際に殺され、郭海皇でさえ絶命は免れないと諦めた。
その鬼哭拳を以て刃牙を殺す気でいる。
間違いない。食らえば死ぬ。
本当の意味で必殺が鬼哭拳だ。
勇次郎は上半身を捻る。
身体の動きが少ないはずなのに、観客が透けて見える。
相変わらず恐ろしいスピードである。
これには刃牙も困り顔である。
勇次郎の必殺技を見せられて、焦る前に困ってしまった。
「お父さんを喜ばせなさいッッ」
その時、刃牙の脳裏によぎるのは母の言葉だ。
以前は喜ばせようと思って、喜ばせられないまま終わってしまった。
今度は大丈夫か?
そもそも、鬼哭拳対策はできているのか?
鬼哭拳は最高峰の技術を持つ郭海皇でさえさじを投げた。
擬態という盤外戦術に逃げ込むくらいだった。
刃牙はどうする。
もう漏らせる尿はないぞ?
あ、うんこか。うんこなら出せる。
おしっこ出したのはうんこを出すための伏線だったんだ!
「馬鹿かテメエは!」と拳を止めてもらえます。
とりあえず、新年早々から大ピンチの刃牙だった。
事実、いきなり鬼哭拳を出されて困り顔だ。
だが、困ってばかりはいられない。
0.1秒後には殺されるかもしれない。
刃牙の全てを振り絞って乗り越えなければならない危機だ。
死に際の集中力を出して、ゴキブリダッシュで逃げちゃうか?
しかし、この段階で鬼哭拳を使われたということは、これでさえこの親子喧嘩においては途中経過に過ぎないということか。
刃牙はこれを乗り切れば鬼哭拳の先にある勇次郎と戦うことができる。
それは前人未踏の境地だ。
乗り切れずに吹っ飛ぶ可能性も大いにあるが。
次回へ続く。
もう鬼哭拳だ!
速ェよ!
これっぽっちも出し惜しみがない。
肝心要の刃牙は鬼の貌を出し惜しんでいるのだが。
鬼の貌を忘れたんじゃないか?
でも、半年以上は戦っていた。
それを考慮すると出す頃合いなのかもしれない。
半年以上戦っているのに、まったく話が進んでいないけど。
お互いにまったくダメージが見られない。
範馬一族はタフネスと回復力に優れる。
その一族同士が戦うとグダグダになるということか……
鬼哭拳は至極単純なパワーだけの攻撃だ。
郭海皇の技術をもってしても投了だった。
刃牙は技術で郭海皇に劣っているだろうし、筋力でも勇次郎にかなわない。
どうすればいいんだか。
刃牙は超筋力のピクル相手に戦った。
仮想勇次郎にはこれ以上ない相手だった。
その経験が生きる時が来るのだろうか。
あの時はピクルの超筋力に為す術もなく、気絶するのみだった。
だが、刃牙が本気で格闘技を使えば鬼哭拳も!
……勇次郎なら格闘技対策もできるか。
ただピクルに殴られまくっても刃牙は特に大きな傷を負わなかった。
ジャックでさえぐしゃぐしゃになったと言うのにだ。
案外、鬼哭拳を耐えきるかもしれない。
いや、無理か?
ともあれ、毎度のことながら先が読めない。
回り道で牛歩な親子喧嘩だが先の読めなさならすごい。
ボルトを出しておいて親子喧嘩をする先の読まなさもすごい。
要するに板垣先生に常識は何も通用しないのだった。
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