範馬刃牙 第292話 信頼の礎



範馬脳が覚醒しようとしている。
主人公に覚醒はつきもので、刃牙は追い詰められても途端に強くなって逆転する。
対戦相手としては厄介極まりない。
一方で対戦相手が覚醒するとそれをあっさりと潰す。
文句を言われても仕方がない。


「喧嘩じゃない」
「公開殺人だ」


ワゴン車に叩きつけられる刃牙を見て、観客は呟く。
もはや格闘でも喧嘩でもなく惨劇の趣だ。
人間が鈍器になるなんて処刑以外の何でもない。

だが、刃牙はガードしていた。
やられるばかりと思われたドレスであったが、今は対応している。
意識がないとばかり思っていたが、範馬脳が目覚めて意識を取り戻したのだろうか。

何だかんだで刃牙は勇次郎の信頼に応えている。
恐ろしいまでの信頼だ。
そりゃあ全幅の信頼を持って殺しにかかるわけだ。
でも、最大トーナメントが終わるまではけっこう冷たかったような。
実力十分と見たら溺愛するようになったのか?

「こいつらを相手に……」
「俺は対応している」
「護身(まも)りきっている」

ワゴン車にはガラスや機関部様々な突起物が存在する。
別に範馬一族なら大丈夫だろうと思っていたけど、よくよく考えれば非常に危険だ。
刺されば大怪我である。
刃牙がぶつける

それを刃牙は弾いてスカしてかわして破壊して対応していた。
常人離れした反射神経と運動能力だ。
ブン回されても範馬一族である。
叩きつける方も一生懸命なら、叩きつけられる方も一生懸命!

「こんな目にあいながら」
「俺は回復しつつある」


やがて刃牙は地面に降り立つ。
ついにドレスから逃れた。
ダメージを受けていたと思いきや回復していた。
相変わらずの回復力だ。
こりゃズルい。常にベホマがかかっているようなものだ。

鬼哭拳でもドレスでもダメ。
これほどの必殺技を使っても刃牙を仕留めきれない。
範馬一族が培ってきた奥義は一定のダメージは与えられども致命傷には至っていない。
由々しき事態だ。
万策尽きたのは勇次郎の方なのかも。

こうなると刃牙を仕留めたピクルの凄さが改めてわかる。
史上最強にして勇次郎以上のパワーは伊達ではなかった。
刃牙の回復速度を上回る打撃だ。
勇次郎に求められているのはそれなのか?

ここで刃牙は勇次郎に教えてもらっていた時期を思い起こす。
13歳よりも以前の話だ。わかっている範囲では6歳の話である。
随分と昔のことだが、その頃に教えてもらったものは刃牙にとって大きな意味を持っていた。
死に際の集中力に始まり鞭打などの小技も教えてもらっている。
ジャックはそうしたレクチャーが存在していなかったのが成長に悪影響を与えたのか?
あと最大トーナメント編最後に出てきたジェーンは何だったのでしょうか。
むしろ、何でジェーンを刃牙が知っていたのでしょうか。

「跳べ」

珍しく胴着を着ている勇次郎は命じる。
刃牙の真後ろには断崖絶壁だ。
断崖絶壁に身を投じて死に際の集中力を身に付けるトレーニング(?)だ。

「持って生まれたのか」
「或いは置いて来ちまったか」
「五体に流れる赤き液体」
「それが如何なるものなのか…」
「見つけてこい」


言うなり勇次郎は刃牙にデコピンする。
刃牙は重力に従って谷の真下へ向かって落ちていく。
谷のところどころにある隆起をかわしながら蹴りながら激突を避け、何とか落下点にある川に辿り着き命を取り留める。
死に際の集中力関係だと思いきや、勇次郎の口ぶりからは範馬の血の覚醒を狙ったもののようだ。
範馬の血を鍛えることはそれほど重要らしい。
最近、出てくるのは範馬の血の話題ばかりだ。
それほど範馬の血のウェイトが大きくなったということか。
ある意味では原始人と同格のトンデモだし仕方がないか。

しかし、これって記憶を間違えていないか?
断崖絶壁に身を投じるのは刃牙一人でやったことだ。
こんなことをやったことがあるのなら、飛騨で躊躇することもなかったような……
ドレスによる脳内出血の影響で記憶が混乱しているのかもしれない。

夜叉猿も刃牙を振り回して叩きつけていた。
ドレスもどきをやっていたのだ。
それで記憶が混在した可能性も無きにしも非ずだ。
もしかしたら、安藤さんを本部と勘違いするかも……

「おいおい」
「いつまで仲良く手を繋いでいる」
「散歩にでも出掛けるか…………?」


茶化しながらも勇次郎の表情は超嬉しそうだ。
何かもう、すごい嬉しそう。
全力を出してドレスをしても刃牙は耐えた。
今の刃牙は自分の全てをぶつけられるだけの存在になった。
もう嬉しいにもほどがある。
親馬鹿を隠すことになくダダ漏れですよ。

「いいや」
「お礼と言っちゃなんだけど」
「親父にプレゼントを」

チャラ


血涙を流しながら範馬脳が鼓動する。
そして、繋がっている刃牙と勇次郎の手のうちで「チャラ」と謎の音が鳴る。
刃牙は手の内に何を隠しているのか。
ドレスから無事生き残った。
ならば、反撃のターン……なのだが、何を考えていることやら。
次回へ続く。


勇次郎からの信頼により刃牙が復活だ!
これだけなら美談のように思えますが物のように叩きつけられていました。
まぁ、範馬一族は普通じゃないから仕方ないか。

米国に勝った技を使っても刃牙が戦闘不能にならないと勇次郎は信じていた。
その信頼に刃牙は応えて見せた。
こりゃすごい信頼だ。
イロイロとトンデモない親子喧嘩だが、その根元には親子愛が見える。
……親子愛ですよね?

刃牙は手の内に何かを握っている。
「チャラ」という音から硬そうなものではあるけど……
勇次郎へのプレゼントらしいから相当なものなのだろうか。
握り込んだ車のパーツを鬼の貌に加工していたとか、お父さん誕生日おめでとうとプレートにしていたり。
後者なら思わず勇次郎も涙ぐむ。

でも、いずれにしても小技のような……
小技から逆転の一手に繋がるのか。
あるいは小技のままなのか。
小技に見せかけて大技になったりして。

しかし、脳の覚醒してどうなるのだろう。
あくまでもやることは格闘戦だし、脳の覚醒が戦闘力の強化に繋がるのか?
急に頭が良くなって状況判断力が上がってもどうにもならんような……

ただ、人間の進化において脳の変化と肉体の変化は同じものだ。
脳が変化することで肉体も変化していった。
じゃあ、刃牙の脳が変化すれば肉体も変化するのは道理だ。
まぁ、本来ならば長い時間がかかるところだが、そこは範馬一族のパワーで補う方向で。
……何かクリーチャーじみた話で嫌だなぁ。

今、チャンピオンではバイオハザードが連載しているし、クリーチャー繋がりという意味ではぴったりか。
ゴキブリバキ。ゴキブリと同じ速度で近付いてくる危険なクリーチャー。
最近、活発に行われているコラボネタのひとつとしてどうでしょうか。
わりと違和感ない気がするのですが。



サイトTOPに戻る Weekly BAKIのTOPに戻る