範馬刃牙 第298話 範馬たるもの…
ついに梢江とエンカウントした!
梢江ですよ、梢江。
梢江かよ、梢江。
常在戦場とか防人とか言う人よりも萌えるのが難しい雌系女子だ。
雌系女子ってなんじゃい。
梢江曰く、ネットでもテレビでも話題の親子喧嘩だった。
テレビでも話題になっているんだ。
もしかして、刃牙と勇次郎の戦いは全国放送でもされているのだろうか。
ある意味、お茶の間には流せない絵ばっかりだけど。
梢江の口ぶりからするとテレビを見てからここに駆けつけたらしい。
どうやら戦い始めてからそこそこ経過してから現場に駆けつけたようだ。
だが、疑問点が浮かぶ。
遅れてきたのにどうやってこの大勢の観客を越えて二人の側までやってこれたのかだ。
これほどの人数をかき分けて前に進むのは困難だろう。
と思ったけど、梢江が来た時点でさながらモーゼのごとく民衆が避けていったのは想像に難くない。
何せ刃牙は都市伝説になっている。
ならば、梢江が妖怪として七不思議になっているのは疑いようもない。
疑るなァ!
「やるならやる」「止めるなら止める」
「一つ叩いてはペラペラ」「二つ蹴ってはイチャイチャ」
「見てらんないよッまどろっこしくてッッ」
野郎、タブー中のタブーに触れやがった……
神さえ恐れぬ、いや鬼さえ恐れぬ梢江イズムである。
かつて花山に投石をし、今は範馬親子に物申している。
本部がやったら命知らずだと鼻で笑えるところだが、梢江が言うのだからその重みは凄まじい。
漬け物石として使えば漬け物がぺらぺらになってしまうほど重い。
思えば展開が遅いのも、殴っては何か喋ってを繰り返していたからだ。
ぬう、さすが梢江。恐るべし。
喋ったり何やらするだけでなく、エジプトに話が飛んだりもしていたことも突っ込んで上げればいいのに。
勇一郎が出てきた時に梢江がいたら、一喝して吹き飛ばしていたかも。
梢江ならあり得る!
抑えきれない雌に観客は皆戦慄する。
時が経っても衰えない梢江の存在感だ。
刃牙と頻繁にデートしていた時期なんて、そりゃもう平成のエイリアンと恐れられていたに違いない。
「親子だからね」
「そりゃ喋るさ」
「いちゃいちゃもする」
「親子だからね」
「しかも嬉しいことに」
「親子だからこそ出来る“遊び”がある」
刃牙は梢江の言っている肯定した。
親子だから仕方がないのだ。
相手は憎悪すべき仇敵ではなく愛すべき親子なのだ。
二人の関係は進んでいる。
梢江の知る範囲の刃牙と勇次郎ではないのだろう。
恋人、置いて行かれました。
この時、刃牙と勇次郎は二人とも同じように手を腰に当ててドヤ顔だ。
こんなところで仲の良さを見せんでも。
梢江にスネ蹴られるぜ?
石投げつけられるぜ?
ジェラしい気持ちが沸騰すると、この雌はとんでもないことをしでかす。
それもバキ世界基準でのとんでもないことをしでかす。
「今夜俺が使った技術」
「そのほとんどは」「親父だから使用した」
「他人(ひと)にはとうてい使用(つか)えない」
「死んじゃう技術(わざ)だ」
「親父に至っては」
「繰り出す技術
そのどれもが」「兵器並だ」
親子だからあえて使用する技を刃牙は使っていた。
昂昇が言っていた兄弟ならば使えない技の先を行くものだ。
それほどの信頼が勇次郎にはあるということか。
たしかにゴキ哭拳と言わずにゴキブリコンビネーションだけで春成辺りは殺せそうだ。
刃牙と言えどそう易々と人を殺すわけにもいくまい。
シコルスキーを叩き落とした時は殺意100%だったけど。
そんなことを話していたら唐突に勇次郎が刃牙に拳を振り回した!
まったく遠慮も躊躇もない不意打ちだ。
そして、刃牙はそれを当然のようにかわす。
範馬脳、目覚めっぱなしだ。
「だからこそ君は止めたのだろう」
「“会話する余地があるのなら”
“イチャつく愛しさがあるのなら”」
「“戦闘(たたか)うなんて………ッッ”
“止めたらいい”」
「“死んじゃうくらいなら……” “殺しちゃうくらいなら…”」
「“「敗北(まけ)」なんて受け入れちゃえばいい”」
刃牙は梢江の恋人だけあって、その心情を理解していた。
なるほど、そうなると梢江の言いたいことがよくわかる。
最大トーナメント決勝戦で叫んだ言葉と一緒だ。
この辺、梢江はブレていない。
それでも戦闘は続行される。
さらに勇次郎はフックを行い刃牙に襲いかかる。
刃牙はそれを逆立ちして回避だ。
逆立ちかよ!?
明らかなオーバーアクションだが、オーバーアクションするだけの余裕が刃牙にはあるということだろうか。
その刃牙の着地際に勇次郎は一本拳を合わせる。
大振りだった先ほどの2連撃と比べると随分コンパクトな一撃だ。
バキ世界の急所の王道、人中狙いか。
勇次郎らしからぬ小さくまとまった一撃だ。
それほど今の刃牙を警戒しているということだろうか。
「女性の君には」
「或いは理解し難いだろう…」
「準備(そな)え続けた技術を……」
「積み上げ続けた苦痛(いた)みを……」
「存分に発揮できる幸せを………ッッ」
「思うさまに解き放つ喜びをッッ」
その一撃を刃牙は合気でいなす。
勇次郎の姿勢が崩れ、その身体は宙に舞う。
見事なまでの合気だ。
合気の達人、渋川剛気でさえもこうはいかないかもしれない。
やはり、今の刃牙は勇次郎よりも一歩上か?
そう思いきや勇次郎は空中で姿勢を変えてオーバーヘットキック気味の蹴りを刃牙に放った。
ピンチを即座にチャンスに変えた。
何という切り替えの速さ、瞬発力であろうか。
それを刃牙は騎馬立ちで受け止める。
かつてピクルの打撃を受け止めたのと同じ型だ。
それでも勇次郎の打撃の威力は凄まじく、刃牙の足が地面に埋まる。
立ち回りでは一歩上を行かれっぱなしだが、その破壊力は健在か。
今度は刃牙の番と顔面に蹴りを放つ。
それはかわされる、がフェイントだった。
足指で相手の髪を掴む烈の技を刃牙は勇次郎相手に行う!
これには勇次郎も予想外だったのか、すぐさま引っ張られ体勢を崩してしまう。
相変わらず恐ろしい技だ、足指。
何せ脚の力だけで体勢の崩れていない相手を強引に崩してしまう。
強烈な足の臭いとかを漂わせているのか?
だが、勇次郎は両拳を地面に叩きつけることで、強引に体勢を保つ。
そして、首を振ることで今度は刃牙の体勢を崩した。
何という首の力!
何という髪の力!
ピクルでさえ足指を使われた時は毛が抜けたというのに!
さすが髪が逆立つだけのことはある。
実に剛毛です。
「俺にとっての親父は」
「親父にとっての俺は――――――」
「そんな我儘が許される」
「唯一無二の存在なんだ!!」
範馬脳に目覚めエンジン全開となった刃牙を、勇次郎もまたエンジン全開で迎え撃っている。
翻弄されるばかりだったが、今では刃牙の攻めと守りに対応している。
絶技繚乱の高度な技術の応酬だ。
まさに相手を殺すだけの技術の全てをぶつけられる唯一無二の相手だ。
強さの世界に生きるだけにそのような相手と戦える喜びは、とても梢江には想像もできないし梢江には制止もできない。
梢江の介入の後にお互いの全てをぶつけ合う。
刃牙VSジャックでも同様の展開があった。
そして、10年以上の時を経て、再び梢江が引き金となり正真正銘の全力の戦いへとシフトした。
梢江はアテネか何かですか。
むしろ、這い寄る混沌か。
次回へ続く。
刃牙も全開なら勇次郎も全開。
刃牙はついに勇次郎と同じステージに踏み込み、全力と全力による闘争に親子喧嘩はシフトした。
実に長かった。1年経っちゃったよ。
というか、まだ続くんだ。
うーむ、まったく終わりが見えない。
刃牙の進化に対して勇次郎の進化がないとも言い切れないし、まだまだ長引く要素はあるぞ。
刃牙得意技、他の格闘家の模倣が炸裂した。
合気に足指と特に高等技術である。
この調子でパクり技で勇次郎に対抗するのだろうか。
真マッハマックシング千春流なんてどうだ。
副作用で刃牙は死ぬ。
こうなると様々な秘技が出る見栄えのいい展開になりそうだ。
是非解説が欲しいな。
本部、お前のことだよ。
私が何度お前のことをネタにしてきたと思っている。
本部なら的確な解説で場を盛り上げてくれるし、格闘技に疎いであろう梢江を支えられるかもしれない。
「あの技はシコルスキーの一本拳?
本部さん、あれはどういう技なんですか?」
「人間じゃねえ……」
「あの技はスペックの無呼吸連打?
本部さん、あれはどういう技なんですか?」
「人間じゃねえ……」
「あの技はドイルのブレストファイヤー?
本部さん、あれはどういう技なんですか?」
「人間じゃねえ……」
「あの技は龍書文の居合い?
本部さん、あれはどういう技なんですか?」
「人間じゃねえ……」
「あの技は寂さんの護身開眼?
本部さん、あれはどういう技なんですか?」
「人間じゃねえ……」
「あの技はJr.さんの蹴り?
本部さん、あれはどういう技なんですか?」
「人間じゃねえ……」
「あの技は郭海皇の消力?
本部さん、あれはどういう技なんですか?」
「人間じゃねえ……」
「アンタ、何も知らないじゃん!」
「アンタが人間じゃねえ……」
うーむ、本部はブランクが長すぎて不安だ。
頼みの烈も地球の裏側だ。
案外、二人の戦いを見られなくて一番残念がっているのは烈なのかも。
ボクシングするなんて言い出さなければ良かったと後悔していたりして。
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