範馬刃牙 第304話 比較(くら)べっこ



原点に立ち返り正面からの殴り合いを開始した。
技術を用いず、駆け引きを用いず、ただの殴り合いだ。
だが、鬼の貌を持つ者同士で行う地上最高の殴り合いでもある。
その殴り合いに持って行けただけでも、範馬勇次郎の思惑通りか?
パワーとタフネスの勝負になれば刃牙は勝てんて。


[拳骨が]
[顔面を打つその音は――]
[今宵2人が放った一番大きな音だったろう]


刃牙と勇次郎の殴り合いが起こした音は鬼哭拳よりもドレスよりもゴキ哭拳よりも大きかった。
お互いに全力を超えた全力で殴り合ったことが伺える。
パワーとタフネスの勝負になると勇次郎が有利、と思っていたが、両者同時にのけぞる。
破壊力は互角だ。
ここに来て刃牙もさらなる進化を果たしているのだろうか。

よろめきながら二人はこらえ、同時に身体を横にひねる。
これだけで地面がえぐれた。
もう二人の筋力の前にはアスファルトもカステラの如くだ。
これで地下闘技場で戦っていようものなら無数の破片が観客に飛んでいたかもしれない。
うむ、地下闘技場でやらなくて良かった。

ガキン

今度は同時にフックが決まる。
親子ならではの息の合った攻撃だ。
攻撃の種類、タイミング、部位の全てが釣り合っている。
二人にはズレがまったく見られない。
勇次郎はこの領域で殴り合える強敵が現れることをどれだけ待ち望んでいたのか。
想像に難くない。

このフックの打ち合いで二人の腰は同時に崩れる。
あの勇次郎でさえもだ。
今の刃牙はパワーもタフネスも勇次郎と互角なのか?
何年にも渡って溜めてきた勇次郎ともうすぐ決着パワーが爆発しているのだろうか。

遡ると鎬紅葉を倒したすぐに勇次郎が目の前だと言っていた。
あの頃か勇次郎ともうすぐ決着パワーを溜めていたのかもしれない。
溜めて、決着しないで、溜めて、決着しないでを繰り返したのだが、今は完全に解放する時が来ている。
今度は詐欺はないぞ!
多分だけどな!

[我が身を危険から遠避けつつ 敵を制す]
[それが武]
[それが格闘技]


観客が耳を塞ぎ目を逸らすほどの殴り合いを見て、独歩はため息を漏らす。
武術や格闘技のセオリーから外れた単純な殴り合いだ。
普通なら鼻で笑えるかもしれないが、地上最高レベルの戦力を持つ者同士による殴り合いである。
独歩としては武に捧げた人生の全てに異議を唱えられたような心持ちなのかもしれない。
いや、勇次郎はそれに異議を唱える人だけど。
刃牙も唱え始めるかもしれない。ノリで。

[急所が集中する人体前面を――]
[防御をかなぐり捨て]
[刃に晒す]
[最早それは 武術ではなく 格闘技ですらなく]
[強さ比較(くら)べ]
[男雄漢(おとこ)比較(くら)べ]


男雄漢と書いて「おとこ」と読む!
すげえ、キラキラネームってレベルじゃないぞ。
「お」くらいしか合っていないぞ。
もはや範馬一族の無理矢理は漢字の読み方さえ侵略している。

その無茶に答えるように刃牙と勇次郎のアッパーが交差する。
そして、二人の腰が同時に崩れる。
極限にして互角の殴り合いだ。
もっとも殴られた時の顔の面白さなら刃牙が上だ。
勝つべきなのか、負けるべきなのか、微妙なところだが。

その殴り合いを恐れながらも見守る観客の群れをかき分ける人物が現れる。
徐々に最前面に近づきつつある花山と柴千春か?
と、思ったら眼鏡の黒人男性だった。
細い体躯を見る限り、格闘家でないことは明らかだ。
ちょっとオバマ大統領に似ている。
と思ったが、もうオズマ大統領として出てた。

「アレガオーガ」

謎の男は勇次郎を見るなり、落涙をする。
そして、跪き祈りを捧げるのだった。
戦いは終局へ向けて歩み始めている。
だが、周りはそうもいかないらしい。
そのうち、勇一郎がまた現れてもおかしくはないな。
次回へ続く。


殴り合い! そして、謎の男!
体つきの貧弱さと勇次郎は初見らしいことから格闘技関係者とは思えない。
勇次郎を崇拝する人物なのだろうか。
決着を間近にしてオーガ教の人たちが大挙して押し寄せたりして。

殴り合い自体は不思議にも互角だ。
刃牙の進化は止まらないということか。
相変わらず汚い男だ。
汚いなさすが刃牙きたない。
殴り合いの轟音で耳を痛めないために、勇次郎は刃牙の鼓膜を破ったりして。
無駄に親切。

このまま殴り続ければどちらが勝つのか。
神のみぞ知る領域だ。
順当に勇次郎が勝つのか、刃牙が底力を見せるのか。
刃牙は数多のインチキを使ってきたし、また使うかもしれない。
その可能性は極めて高い。

なお、残り10回以内で決着及び範馬刃牙の完結を迎えるようだ。コミックナタリー
作品内のみならず作品外からも決着を告げられた。
まぁ、刃牙と勇次郎の戦いという大一番をやった。
「範馬刃牙」はひとつの完結を迎えると見るのが妥当か。
もっとも新シリーズはあるようだし連載終了だと悲観的になる必要はなさそうだ。

そうなると烈ボクシング編と第2回最大トーナメント(仮)はどうなるのだろうか。
どちらも盛大に忘れ去られているよ。
地味なところだと徳川光成の病と格闘家たちの殺生本能も忘れ去られている。

バキシリーズの大きなテーマとなっていた刃牙と勇次郎の親子関係はひとつの完結を迎えつつある。
それはバキという物語にもひとつのピリオドを打つこととなるだろう。
そのため、新シリーズは刃牙以外のキャラにスポットが当てられるのかもしれない。
ならば、烈ボクシング編なども自然に掘り下げられそうだ。
……と思ったが、刃牙自身が主役となる話はあまりなかった。
新シリーズも何も変わらずいつも通りになりそうだ。
あと新シリーズということでムエタイの復権に期待したい。
サムアイアン・海王とか。



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