範馬刃牙 第306話 対峙する相手



前回のサブタイは「闘いが停止(とま)る時」だった。
そんなわけなのか、今回は戦いが止まっている。
前回のサブタイが今回のサブタイだったら良かったのに。
しかし、まさか殴り合いして終局が見えた直後に戦いが止まるとは……
いや、よくあることか。


[弱き民の前に立つ]
[鬼がいた]


世情が不安定な中東付近だろうか。
皆、肌の色が黒く誰もが貧困にあえいでいる。
金もなければ物もない。
このジゴクめいた光景はマッポーの世の一側面である。
そんな人たちの前に勇次郎は立っていた。

思えばベトナム戦争の時もアメリカ軍と対峙していた。
弱い勢力の味方をしている。
勇次郎は弱者を叩き潰すことはあれど、弱者を否定することはしない。
アライ父を弱者の希望だと賞賛したほどなのだ。
弱者を弱者として認めている。
その上で対峙するようなら叩き潰すのだが。

頬に肉がついている若い頃の勇次郎だ。
16歳の頃にはベトナムで大暴れしていただけのことはある。
しかし、まぁ、どれだけのコネを用いたことやら。
いや、勇一郎の息子ならそれだけのコネがあって当然か?

[弱き者の味方…?]
[否(ノン)…ッ]
[正義の味方…?]
[さらさら否(ノン)……ッッ]
[彼等 弱き者の正面(まえ)には必ず……]
[そう]
[強き兵士達がいた]


勇次郎が弱き者の側についていたのは、大義や正義などなくただ強者と戦うためであった。
ただ強者といえど兵士には武器や資本力の強さが多分に反映されている。
勇次郎の求める強さとは少し外れるかもしれない。

そんなわけでアゴを吹き飛ばしたり目玉をえぐったりと、最近ではあまり見られないグロ表現が行われる。
やりたい放題だ。
人体をこれほど容易に破壊できるとなると相手に困る。
巨漢じゃ足りない。

[男の肉体(にく)は飢餓(うえ)ていた……………]
[裡なる“戦力(ちから)”の解放に!]


つまりはただ暴れたかっただけらしい。
強さに目覚め、それに気付いてからはそれを発散する場を求めていたということか。
やがて、充足し自分と対等に渡り合える個体としての強さを持つ人間を求めたからこそ、
近年は格闘家との戦いを求めるようになったのだろうか。
これ自体はよくあることか。
ただ勇次郎の場合はスケールが異なるのだが。

もしかして、ムエタイ戦士をボコボコにするのはその時の名残なのだろうか。
昔はまっていたシリーズに飽きたけど、何となくそのゲームをやってみたくなるとか。
ムエタイ戦士なら兵士たちと互角の戦力!
互角止まりかよ!

やがて、勇次郎は国家の指導者の前に辿り着く。
その頃には勇次郎の頬の肉が減っている。
ある程度、年を取ったということだ。
勇次郎といえど国のトップの前に立つのには時間がかかったようだ。
それとも戦場で暴れるのに満足したから、国のトップに顔を出そうとしたのか。

で、指導者は聖書を前に服従を誓っていた。
オズマ大統領と同じである。
鬼を前にしては神を引き合いに出さざるを得ないか。
勇次郎は神と匹敵する存在とも言えよう。
さすがはピラミッドの壁画に描かれるだけのことはある。

で、息子はどうなのさ。
神に匹敵する父に対し、都市伝説でさえ刺身のツマ扱いだ。
刃牙には神話の類が足りないな。

[莫大な“金銭(ドル)”で取り入った]

そして、金である。
金で取り入れちゃうんだ。
まぁ、勇次郎だって人の子である以上は金は欲しかろう。
ワガママに暮らせるのは相応の収入源があるからか。
そういえば、烈とかはどうやって暮らしているんだろう。
あんまり収入なさそうなわりに贅沢しているし……

[迫害(おい)つめられる“弱き民達”は]
[強大国家にとっての最大の“脅威”を]
[“神”と崇め…………… “天使”のように愛した………]


こうして勇次郎に祈りを捧げる外人の真相が明らかになった。
かつて故国で勇次郎に救ってもらった人間なのだろう。
日本にまで出張ることができたということは、勇次郎の戦いによって生活が改善されたということだ。
世の中人のためにそっと這い寄る勇次郎であった。

この土壇場で勇次郎の神話が語られた。
都市伝説というレベルではない。
神である。ガンダムになれるぞ。
俺がガンダムだ。

勇次郎エールに対し刃牙はどう対抗する。
こいつ、神話の類が何もないからな……
今更地下闘技場チャンピオンの設定を持ち出してみるか?
次回へ続く。


光速に近づくほど時間の流れが遅くなるということで、展開がゆっくりになっている。
こりゃあ残り10回(未満か)のんびりと殴り合いできそうだ。
方法としてどうなのかは置いておく。

勇次郎は恐れられるばかりでなく、敬愛されている。
怖いけど頼りになる人の典型ですね。
しかも、媚びることがない。
理想的なアイドルですよ。
そりゃあ慕う人が出てくるわけだ。
ストライダムだって年に1回襲えと無理難題を言われても、それを遂行して勇次郎に付き従っている。
みんな勇次郎のことが好きなんだ。
刃牙だって大好きだ。

勇次郎は強さに目覚めた時からやりたい放題。
その時点で既に崇め奉られるほどだ。
対して刃牙は不良100人負けるわで挫折が多かった。
両者を分かつのは挫折の量だろう。

刃牙は挫折を多くしてきた。
それだけに、挫折から立ち上がってきた。
それは勇次郎にはない力だ。
負けた数だけ強くなってきたのだ。
負け犬の意地を見せつけろ!

でも、勇次郎に喧嘩を売る刃牙は全然反省が見られなかったんだよなー。
何かノリで噛みついてかなわないを何度繰り返してきたことか。
挫折しすぎてその重みを忘れているかもしれない。
うーむ、不安でしかないな……



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