範馬刃牙 第59話 追う者、追われる者



「飯喰って出直してこいッッッ」

刃牙が言われているんじゃない。
オリバが言われている。
なんで怒られているのか全然わからない。
なんで怒っているのかも全然わからない。
ただひとつわかることは、刃牙だから怒っているということだ。
理不尽にキレる勇次郎の血が脈々と受け継がれている証拠だろう。
…いや、勇次郎の怒りと違って、刃牙の怒り方はなんか癪に障るけど。

で、空気を読まずに怒ってる。
そりゃあ、チャンピオンの表紙でも「お笑い軍団バキを包囲!」と空気を読まないアオリが貼られるだけはありますよ。
この空気の読まなさ加減がチャンピオンだなぁと一人郷愁に耽る。

[飯喰って出直してこい]
[飯喰って出直してこい]


刃牙の言葉が何度も頭の中で反復される。
反復する度に顔に浮かぶ血管の数は増えていく。太くもなっていく。
なんか血管破裂するってくらい、オリバは怒っていた

看守一同はオリバの逆鱗に1ナノメートルでも触れたくないのか、背中を見せて逃げる。
看守だって人間だ。とばっちりは受けたくない。
刃牙はさすがにやばいのかと感じたのか、唾を飲み込む。
きっと、今が夜なら死兆星が見えているところだろう。
頭の上に数字が浮かんでいる可能性もある。
0になったら、オリバに殴り殺されます。

「ナルホド…」
「君の言う通りだ」
「わたしはまだ朝食をすませてなかった」


耐えた〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ。
耐えましたよ、オリバさん、耐えましたよ。
溜め込むと毒だから発散させてもいいのに。
いや、発散させてもらった方が嬉しい。
目の前の黄色人種を朝食代わりにするくらいの気概を見せてもいいくらいだ。

「元祖ミスターアンチェイン(繋がれざる者)としては」
「新参者のアンチェインに挑発されて いちいち反応していたのでは元祖の沽券にかかわる」
「ここはひとつこみあげる怒りを封じ込め カンロクを示さねばならない」

「いい大人がガキに踊らされたくないもんな」


刃牙の口は減らね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ。
何があったのだろうか。
刑務所に入ってきた初期の友情を大切にする普通の主人公っぷりはどこへ消えたのか。
ただの嫌な奴になっている。
梢江とイチャついていた頃は何もしていなかったから腹が立ったが、今の刃牙は普通にムカつく仕上がりだ。
…イロイロな意味で刃牙らしいとは思うけど。

こんな台詞を言ってもいいのはかませ犬くらいですよ。
かませ犬ならビックマウスでも、即反撃されるから問題ない。
でかい態度と弱さがうまい具合に味になる。
だが、刃牙は強い。
強いからビックマウスとの釣り合いが取れない
うん、ムエタイになろう、刃牙。

オリバは刃牙の暴言を寛容な心で――さっきまでブチキレかけていたけど――で受け止め、フレンドリーに接する。
心の中では刃牙を刑務所に入れなきゃ良かったと思っていることだろう。
まぁ、入れたのは大統領だけど、オリバには拒否権があったはずだ。

というか、普通にキレた方が問題が速く解決する気がする。
大擂台賽の時に勇次郎は刃牙に喧嘩を売られた。
そして、売られた直後に壁ごと吹っ飛ばして刃牙を圧倒した。
オリバもこうすればいいんじゃないだろうか?
勇次郎が「元祖地上最強としては新参者の地上最強に挑発されて いちいち反応していたのでは元祖の沽券にかかわる」とか言われたら、
考える前に殴りますよ。
オリバも考えるな!感じるんだ!

で、相変わらず刃牙はアンチェイン=刑務所を自由に出入りできる、という前提を元に自分のアンチェインを主張する。
前から書いてきたけど、そもそもこの時点で刃牙は間違っている気がする。
まぁ、オリバを挑発するためだから、何言ってもいいんだろうけど。
そして、オリバは策略にはまってしまっている。
規格外の知力はどこへいった。

「バカバカしい……………」
「世界一自由でなければ自由を感じられない……って」
「なんて不自由な男だい」

刃牙は思うままに暴言を吐いて、刑務所の中へと戻っていった。
実力ではなく、口で攻めるキャラになってしまった。
うーん、主人公らしくない。
この調子で勇次郎にも地上最強でなければ(ryと突っかかってほしいところだ。
…絶対、酷い目に遭える。

侮辱されたオリバはじっと佇む。
もうキレてる。
壊せるものがあったらとっくに壊している。
楊海王がいたらジャガっている。
1回ジャガっただけでは飽き足りないので、戻してもう1回ジャガる。
何度もアコーディオンのようにジャガることだろう。

「これ… 車庫に入れときますネ」

職員は放置されてたオリバイクを車庫に入れておくと親切心から進言――
って、馬鹿か、テメエは!!
崩れかけているビルに入るアホがいるか。
いや、この場合は目の前に置かれてある地雷を踏む、か。
とにかく、この職員の寿命は一瞬でなくなってしまったようなものだ。

オリバは振り向く。
繰り返すようだが、楊海王がいたらジャガっている。
いや、職員を楊海王のようにジャガりそうな勢いだ。
でも、怒りを抑えるのがオトナのスマートなところだ。
バイクは自分が車庫に入れると言う。

オリバはハンドルを握るが、動かない。
時が止まる。
思わず職員は「あの…」と本日二度目の失言をする。
2回は死んでるぞお前。

バオ

オリバがバイクを車庫へ向かって投げた。
重量300kgは楽に越えているようなビックサイズのバイクがまるでボールか何かのように吹っ飛ぶ。
思わず笑ってしまう。
もうしっかりと怒っていますよ、この人。


とりあえず、刃牙とオリバの敵対は決定的なものとなった
ゲバルのフラグを完全になかったことにするくらいだ。
刃牙は何がやりたいのかいまいちわからないが。

とりあえず、これからはアイアン・マイケルが危ないと思う。
刃牙の代わりに殴られる可能性が大いにありそうだ。
悲惨な姿になったアイアン・マイケルを見て、刃牙は怒りを…
絶対、覚えないな。
マウスにボコられたアイアン・マイケルを心配するどころか、ゲバルに喧嘩売ってたし。


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