範馬刃牙 第69話 刹那



刃牙の背中に鬼が浮かび上がった。
それでいて看守ボブ・マッカーシーには、宮本武蔵の姿が刃牙に重なる。
今の刃牙は力みと脱力を両立しているということだろうか?
力と技の究極合体技鬼の消力パンチが炸裂するかもしれない。
両立しようとしてへっぽこな威力になってしまい、力120%のオリバにボコられる展開を希望。

「宮本武蔵の自画像と言われているあの姿――――――
 識者の眼から見ると単なる人物画の域を超越(こえ)るものと言う」


ボブは宮本武蔵の自画像の秘密を語る。
東洋武術に興味を持っているのだろうか?
そういった事柄について、日本人以上の見識を持っているようだ。
鬼の貌が古武道から派生したものだとか、かなり間違った見識だけど。

「射抜くように見開かれた眼光」「理想的に脱力がなされた握り」「重心を読ませないそれでいていつでも踏み出せる備え」が、
宮本武蔵の自画像に存在し、それら全てが表現されているらしい。
…なんか深読みの気がしないでもない。
とりあえず、武道家としての理想体が宮本武蔵にはあるらしい。
さらにボブは調子に乗って、宮本武蔵の身体能力は金メダリストを遙かに凌駕するとまで言い出す。
こ、根拠を示してくれ!

スポーツ選手はある一つの目的のためだけに身体を鍛えるのに対し、
武道家は生き残るという目的のためを達成するために多方面に身体を鍛える。
例えば、速く走るためなら下半身だけを鍛えればよく、上半身は重要視されないが、
武道家なら下半身だけ鍛えるわけにもいかず、上半身も鍛える。
スポーツ選手と武道家が戦えば武道家が勝つが、ある身体能力一点のみを競うとなればスポーツ選手が圧勝するだろう。
そんな中、宮本武蔵が金メダリストを凌駕するのも嘘くさいが、バキにそんな野暮なことを突っ込んでも意味ないので止めておく

ともあれ、理想的な武道家である宮本武蔵の姿が刃牙に重なっている。
ゑー…刃牙って武道家らしいところがあるか?
たしかに刃牙は常時臨戦態勢にある。
いついかなる状況でも戦い抜ける点は武道家らしいといえる。
でも、刃牙の強さは武道家の強さというよりも、範馬の強さだ。
鬼が鬼たる強さで勝っている。特に最近は。

ともあれ、宮本武蔵は置いておこう
問題は刃牙が鬼を出した。
オリバがそれにどう立ち向かうのか、だ。
オリバは刃牙の変化を察したらしく、軽々とは踏み込まない。
一定の間合いを維持する。

動かぬ刃牙とオリバにボブは日本の侍映画を重ねる
本当、昔の日本文化が好きだなぁ、ボブ。
ボブが見た映画は侍同士がじっと長い間向き合い、動き出すと同時に決着するというものだった。
静と動が織りなす戦いと決着をボブは刃牙VSオリバにも期待しているらしい。
ええい、期待するな。
どうせ、オリバが負けるならなるべく粘ってから、さすがオリバと納得させる戦いを繰り広げてから負けてほしい。
一瞬で決着なんて、どこの郭春成とJr.だ。
「範馬刃牙」というか「バキ」が連載されてから、刃牙は五分五分の白熱する戦いを繰り広げていない。
一番五分っていたのがカマキリという始末だ。
オリバくらい、ちゃんと戦ってください。

オリバは刃牙の潜在能力を解放してしまったことを悟る。
焦りか動揺か恐怖からか、攻撃を受けてもいないのに、一筋の汗が流れ落ちる
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ。
汗を流すのはまずい。
敗北のフラグだ。
この段階で流すなんて、むしろ虐殺のフラグか?

「小細工は性に合わない」
「いかせてもら――――」


だが、オリバはじっとしていられない。
相手が何であろうと筋肉で押し切るつもりか。

ドッシアアア……

オリバが刃牙へと一歩踏み込もうとした瞬間、オリバは頭から前屈みにダウンする。
これは絶対に起き上がれないダウンの仕方だ。
刃牙の右拳は上がっている。一瞬のうちに攻撃したのだろうか?
って…
…え?
ちょっと待てお前。
何一瞬でオリバをダウンさせているんだ。
オリバはバキ世界最強格の一人だ。
2〜3ヶ月は殴り合わなきゃダメだろ。
何、1発?で倒そうとしているんだ
テメエ、範馬アアアアァァッッ!!!!!
シコルスキーを引き立て役にして、ゲバルをも倒して無敵っぷりをアピールしたオリバの積み重ねを
僅か1週間で噛ませ犬に堕落させるつもりかァァァ!

とにかく、ダウンした。
オリバがダウンした。
なんか非常に嫌な予感のするダウンだ。
勝負ありと言われそうなくらいやばい。
というか、春成かJr.ならすでに医務室に運ばれている
ダメ押し大好きな刃牙だが、ダメ押しの必要すらないほど、見事にダウンさせている。

これが普通のバトル漫画だったら、「ヘッ、それがお前の全力か…面白ェ!」と立ち上がるのが基本だが、これは板垣漫画だ。
このまま勝負ありなんて展開も覚悟しなければならない。
正直、自分はオリバは最悪もう死んでると思っている。
逆転にまったく期待できません。
期待を刈り取る力が範馬刃牙にはあった。

勇次郎は対戦相手を完膚無きまでに叩き潰すがなんだかんだで華は持たせる
愚地独歩然り、郭海皇然り、勇次郎の強さをアピールするが、相手も十分強いという認識を持たせている。
独歩や郭海皇を弱いという人はまずいないだろう。
だが、刃牙は対戦相手の株をこれでもかというほど刈る
春成然り、Jr.然り、問答無用に虐殺して相手の立場というのも粉々に粉砕している。
春成やJr.は弱いという認識を持っている人はいくらでもいるはずだ。
その点、刃牙は勇次郎よりもはるかにタチが悪い
余計巨凶だ。
悪い意味で巨凶だ。
戦った相手との絆はどうした。
まぁ、勇次郎だってムエタイを弄りまくっているがそれはムエタイだからしょうがない

オリバダウンの真相は監視カメラが密かに捉えたようだ。
次回明らかになるのだろう。
…明らかになってもオリバは立ち上がらないんだろうなぁ…
この調子で勇次郎すらワンパンで倒しそうな勢いだ。
あ、それは無理か。
ワンパンで返り討ちに遭うのなら納得できるけど。


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