範馬刃牙 第8話 初戦
刃牙が象よりも強いと指摘したのは、カマキリだった。
えー、何かのギャグか?
刃牙の精神に何らかの異常が発生しているのか?
そもそも妄想としか戦わない時点で怪しむべきだった。
今の刃牙は現実にいながら、夢の世界を生きているのかもしれない。
[象より強い…………………………って]
[こいつかよ!!?]
ルミナ、思わずツッコむ。
まさに読者の気持ちを代弁している一言だ。
きっと、ムエタイ戦士やロシア人が出てきても、同じような台詞を言っていたことだろう。
「あの…」
「これ?」
「そう」
「蟷螂(カマキリ)だ」
思わず刃牙に問いかける。
そりゃあ、18歳の高校生がいきなりカマキリと戦うなんて言ったら、誰でも疑問に思う。
対する刃牙は自信満々に、何がおかしいと言わんばかりに断言する。
やばい。
ものすごいペテンの匂いがする。
ボクシングは大地を蹴る格闘技どころのペテンじゃなさそうだ。
「こと闘うという一点において昆虫はプロ中のプロだ」
「猛獣なんてめじゃない」
刃牙は昆虫の優れた身体能力を語り始める。
自重の7〜8倍の餌を巣までノンストップで運ぶ、人間換算で10階建てのビルを飛び越える跳躍力などなど。
そして、これらの身体能力を人間と同じ体重で考えたらどうなるのか?
たしかに恐ろしい能力になる。
なるのだが、ものすごく騙された気分になってくるのは自分だけだろうか?
さらに刃牙はカマキリの優れた能力を解説する。
肉体面の強さだけではない。
今の刃牙には精神面というかペテンによる強さも兼ね備えている。
勇次郎との戦いでもペテンを炸裂させそうだ。
まぁ、勇次郎も勇次郎で破天荒なペテンで対抗しそうだけど。
あれ?なんで宿命の対決なのに、ペテン合戦しそうになるんだ?
刃牙曰く、カマキリは打撃・抑え込み・咬みつき・凶暴性、何をやらせても超一流の完全格闘家らしい。
さらには100キロを越えるカマキリがもしいたのなら、アフリカ象を捕食すると断言する。
…いや…刃牙さん…その…何というか…
もう、ツッコミどころばかりでどこをどうすればいいのかわからなくなってきた。
そんなわけで刃牙はアフリカ象すら捕食できるという体重100キロのカマキリとリアルシャドーを開始する。
刃牙とほぼ同じ体躯のカマキリが見開きで現れたッッ。
…これ、何のギャグですか?
この漫画は範馬刃牙になったことで、格闘漫画からファンタジー漫画に変わったようだ。
でも、トランクス一丁で巨大カマキリに立ち向かう人間の姿は、ファンタジー漫画としてどうだろう?
なお、次の見開きでは、刃牙が何もない空間に構えている姿が描かれているため、非常に悲しい。
悲しいまでに道化です。この主人公は。
質量を伴った妄想ではなく、人間と戦ってくれ。
[動いたッッ]
ともあれ、カマキリが仕掛けたのだろうか。
刃牙が動き出した。
夜叉猿と戦うことで格闘漫画の常識をぶち壊した刃牙だが、今度は昆虫と戦うことで再度ぶち壊そうとしている。
自分の妄想とばかり戦う時点で、格闘漫画の常識はぶち壊れているけど。
何だかもう、これからどうなるのか一切予想できない。
「範馬刃牙」という漫画は一体どっちに進むのだろうか?
板垣先生の頭の中は相当アレな方向へ進んでいるようだ。
無論、これは賛辞だけど。
なんか、この理屈をぶっ飛ばしたネタ度の高さが、この漫画の魅力なんだろうなぁ。
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