範馬刃牙 第87話 力比べ
勇次郎とピクルが肉薄する。
共に人外としか思えない所行を成し遂げている。
特に大型動物狩りに関しては両者共に超一流だ。
勇次郎は1トンの北極熊を始めに最近では怪獣象を倒している。
対するピクルは2億年前に名高いティラノサウルスを捕食済みだ。
対大型動物戦における実績は両者互角か。
というか、ティラノサウルスよりも怪獣象の方が強い気がする。
いや、100キロのカマキリと同じ強さらしいし、やっぱりティラノサウルスの方が上なのかなぁ…
「俺の言葉が理解(わか)らぬなら―――――」
「ワカらぬまま感じ取れ」
勇次郎は初っぱなから無理難題を仕掛ける。
しかし、他の格闘家たちがピクルに驚いて言葉ひとつかけられない状況だったので、例え無理難題でも言った勇次郎は偉い、かもしれない。
そうなるとピクルの寝床に蹴りを入れたジャック兄さんもけっこう偉いのかも。
人外に限りなく等しい範馬一族は同じく人外に等しいピクル相手でも怯まない。
刃牙は怯んでいたが無視。
しかし、勇次郎は凄んだだけで自傷行為に走らせることが可能な男だ。
本当に感じ取らせることができるかもしれない。
勇次郎が感じ取らせる言葉やいかに。
「言葉を解さぬ赤ン坊が―― 解さぬままに母親の愛を感じ取るように」
「貴様への想い―――― 芯に刻め」
「ここに集いし8名同様 この俺も――――」
「貴様とヤリにきた」
ゲッチュウLOVELOVEモードじゃん!
どうみても告白にしか聞こえません。本当にありがとうございました。
冬コミでは勇次郎×ピクルのホモ同人が大流行することは想像に難くない。
もう克巳×烈並みに流行りますよ。
こうなったらこれから出るギャルゲーあるいはエロゲーなんかでツンデレ娘が告白する時は「貴様への想い――芯に刻め」で確定だ。
その後、エロシーンへ移行する。
それにしても、この人が母親の愛とか言っても説得力がない。
父親の愛は生まれた直後の刃牙をコンクリートに叩きつけることだ。
言葉を解さぬ赤ん坊は解さぬままに父親の愛を感じ取れたでしょうか?
勇次郎の熱い告白にピクルを奪われると危惧したのか、寂海王は冷や汗を流す。
この人が汗を流してどうにかなるものでもないが。
二人の間に入ればムエタイ戦士より速く屠られてしまう。
いや、護身開眼ポーズを取ればあるいは…
ところで8名って、烈・鎬昂昇・独歩・ジャック・渋川・克巳・寂海王と7名しかいないぞ勇次郎。
自分を含めればたしかに8人だが、この言い回しでそれはちょっと不自然だ。
もしかして、8人目の挑戦者がいるのか?
ズールなんか出てきてやれ!現代の野生の寵児だぞ!
勝負になる気はしないが。
もしかしたら、表紙にいる刃牙を数えたのかも知れない。
今頃、家の中にいるというのに律儀な勇次郎だ。
「興味が尽きぬ」
勇次郎は食べるだけなら他にも動物がいるというのに、なぜにピクルがティラノサウルスを捕食したのか、強い感心があるようだ。
たしかに興味あるだろうな。
何せ勇次郎は巨大象を倒しても喰わなかった。
なぜ、わざわざもってティラノサウルスを食べたのか、気になるに決まっている。
なお、戦った理由自体については似たようなことをやった自分自身がよく知っているから興味の範囲外なのだろう。
勇次郎は拳をピクルへと突き出す。
ピクルは相も変わらず気の抜けた呆然とした顔のまま、勇次郎と同じように拳を突き出す。
ううむ。知能がないから真似っ子状態だ。
寂海王がもし護身開眼ポーズを取ったら真似をして、ピクルも護身開眼するんだろうな。
…ん?
あれって二人同時に護身開眼したら一体どうするんだ?
拳を突き出すピクルを見て、勇次郎は意図を理解してもらえたと白目で笑顔だ。
怖〜〜〜〜。この人、怖〜〜〜〜。
これは罠だぞ、ピクル。
ひどいことが起こるぞ!
尻穴を掘られるぞ!
カッ
両者の拳が触れあった瞬間に硬質音が響く。
拳と拳で二人は押し合っていた。
単純な力比べだ。あえて拳でやるのが範馬流の礼儀か。
勇次郎は前傾姿勢となり、ピクルを押していく。
勇次郎が不意打ち気味に仕掛けたためか、ピクルは若干押されているようだ。
片手がハンドポケットでスマートに押す勇次郎と、構えが定まっていないピクルと二人の関係が対称的だ。
ピクルより二回りも小さい勇次郎であったが、さすがは地上最強の生物。
パワーにおいてピクルを圧倒するのか?
その時、ピクルは巨大な口を想像する。
ピクルを丸ごと飲み込まんばかりに大きい口だ。
おそらく、ティラノサウルスのものだろう。
勇次郎の戦力がティラノサウルス級であることの証明だろうか。
そして、範馬笑いに酷似した笑みを浮かべる。
ピクルが現代に蘇って始めてみせる喜びに満ち満ちている笑顔だ。
ティラノサウルス級の好敵手に出逢えたことが嬉しいのだろう。
おそらく、今の今までティラノサウルスのような強敵がいないことに失望していたのだろう。
だから、何となくやる気がなさそうだったし、やる気なかったから何となく生殖してみたりした。
だが、ここで現代初の強敵に出逢えた。
戦士であるピクルにとって、強敵に出逢えた幸福は計り知れないものがあるのだろう。
ピクルは足を踏み込み、腕を伸ばす。
ここで本気を見せた。
さっきまで勇次郎に押されるだけだったが、ここで押し返した。
ムエタイ戦士なら間違いなく9人同時にジャガれるだけの圧力があると推測される。
その反撃になんと勇次郎の腰が落ちる。
単純な腕力で勇次郎を凌駕できた人物は今までに存在しなかった。
馬力だけなら相当あるであろうシコルスキーの蹴りだって片手で楽々と受け止めている。
勇次郎の腕力はバキ世界最高といってもいいくらいだ。おそらく、オリバですら勝てない。
そんな勇次郎がパワー負けするという長い連載の中でも初めての事態だ。
ついでに鎬紅葉にドアノブ合戦で押された過去は忘れておくといいだろう。
しかし、勇次郎はパワーだけの男ではない。
地上最強の肩書きは腕力の他にも、技術とかハッタリでも作られている。
パワーで負けるなら他の部分で勝てばいい。
そんなわけで野人に呼吸力を敢行だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
勇次郎は拳だけでピクルの体勢を崩しダウンさせる。
渋川先生顔負けの見事な合気だ。
消力をラーニングするなど、勇次郎の技術は恐るべきものがある。
パワー負けした時の対策も完璧だ。
(野郎……ッッ 俺を技術(わざ)に追い込みやがった……………ッッッ)
結果で言えばこの力比べはダウンさせた勇次郎の勝ちといえるが、勇次郎の内心は穏やかではなかった。
あの勇次郎が技を使わなければいけない状況に追い込まれたのだ。
今まで勇次郎は技術を用いることは幾度もあれど、どれも自慢の超暴力の前座といった具合だった。
バキ世界最高峰の技術の持ち主だが、技術で戦う男ではないのが勇次郎だ。
郭海皇や独歩を相手にした時も最終的には技術を捨て、力だけで戦い圧倒したほどだ。
純粋な力で押し切るのが勇次郎の本来のスタイルなのである。
だが、今回は力で負けて技を持ち出す必要があった。
地上最強街道まっしぐらの勇次郎にとって、人生最大級の屈辱だろう。
しかし、まだ勇次郎は鬼の貌を出してはいない。
鬼の貌を出せばピクルを凌駕できる可能性もある。
でも、最近刃牙のせいで鬼の貌の価値が著しく下がってしまったからなぁ。
ピクルのパワー有利は揺るがないか。
その強さがバキ世界においてどれほどなのか未知数だったピクルだが、勇次郎を上回るパワーという素晴らしい結果を残した。
勇次郎には技術とハッタリが残っているため、実際に戦えばどちらが勝つのかはわからないが、
どれかひとつでも勇次郎を上回る能力を持つというのは非常に大きい。
大抵の格闘家はあらゆる面で勇次郎に負けているから勝負にならない。
しかし、何かが上回っていればその部分で勇次郎を押すことができ、勝機が見える。
最近では郭海皇が技術において勇次郎を上回り、勇次郎と互角の戦いを演じた。
なら、ピクルも勇次郎と対等に戦える可能性が強い。
技だけの郭海皇ですらあれだけやれたんだから、力だけのピクルもかなりやれるのだろう。
でも、勇次郎を上回るパワーとなると刃牙は一体どうするんだろうなぁ。
刃牙は全能力において勇次郎に劣ってますよ。
オリバにパワー勝ちできたといえばできたけど、あれは技術が混ざっていたしなぁ…
ピクルに完全パワー勝ちできれば勇次郎の背中が見えてくるかもしれない。
そのために早々とチャンピオン誌上に出てくるべきなのだろうが、出てきても場の雰囲気を盛り下げるだけっぽい。
それにしてもライバルたちが盛り上がる中、一人だけ出てこない刃牙はすごく大物だ。
勘違い系だけど。
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