範馬刃牙 第9話 異”種”格闘技



蟷螂拳の始祖周亜門はスズメに勝つカマキリの姿を見たことで、カマキリの強さに心打たれ、蟷螂拳を編み出したという。
スズメとカマキリのウェイト差は数十倍以上は軽くあるだろう。
その絶対的すぎるほどに絶対的なウェイト差を跳ね返してカマキリが勝利がした。
その強さの秘密を格闘技に組み入れることで蟷螂拳が誕生した。

無論、これは板垣設定なので信憑性は微妙だ。
毒手の設定とかE-!!と叫んでしまうほどのものだったし。
何にせよカマキリは偉大だ。
例えバキ世界の中だけかもしれないが偉大だ。
だからって、100キロのカマキリと戦うのはどうかと思うけど。
しかも、妄想体。


そんな100キロのカマキリと刃牙は数年ぶりに必死に戦っていた。
こんな刃牙を見るのはジャック戦以来のような気がする。
範馬>カマキリ>アフリカ象≧その他多勢の格闘家、がバキ世界のパワーバランスらしい。

「オワッ」

刃牙はアイアン・マイケルを(反則で)倒した必殺のハイキックを放つッッ。
だが、かわされたのか、通じなかったのか、ハイキック直後に刃牙は演技とは思えない必死な顔をしながら後ろに後退(さが)る。
(あ、これ、演技じゃなくてリアルシャドーだっけ)
思わず壁にぶつかってしまうほどなので、その後退っぷりは必死中の必死だ。
もし、拳王様がいたらドブネズミと殺されそうなくらいのチキンっぷりでもある。

[バキさんが緊張してるッッ]
[見えない………バキさんの脳が造り出した想像上の蟷螂に緊張している]


刃牙はカマキリに驚異を覚える。
バキ世界において緊張するということは、実に大きい出来事だ。
シコルスキーがオリバの身体能力に驚いた瞬間、負けムードが漂った。
シコルスキーがセックス直後の刃牙の強さに驚いた瞬間、負けムードが漂った。
シルコスキーがジャックのパワーに驚異を感じた瞬間、負けムードが漂った。
言い方を変えれば緊張してしまったら負けだ。
どれも同じロシア人の例だけど、あまり気にしないように。

まぁ、そんな緊張云々以前にこれは一歩間違えればイッちゃった人たちの舞台なのだが。
一人で吹っ飛ぶ変態18歳と、その変態性を真正面から受けとめる少年が主演だ。
公演は夜中の地下室という非常に怪しい空間で行われる。
…一歩間違っちゃった人たちがいるからこそ、こんな空間が展開されているのか?

ドン

刃牙とカマキリの戦いが白熱する中、地下室に突如轟音が鳴り響いた
この変態ショーに怒りを感じた歴戦の勇士が登場したのかッ!?
だが、現実は違った。
この音はおそらくはカマキリの攻撃によって壁にクレーターができたことで発生した音だった
…あの…すみません…
これは妄想なのか、現実なのか?
それとも妄想が現実世界に影響を及ぼし始めたのか?
何だかとんでもないことになっている。
ついに刃牙の妄想は現実まで侵食し始めた。
イロイロな意味でヤバい。
もちろん悪い意味で。

刃牙は壁にクレーターを開けるほどのカマキリの攻撃を回転してかわす。
この動きはまるで消力(シャオリー)だ。
郭海皇の得意技をいつのまにラーニングしたのだろうか?
範馬ってずるい。

[バキさんの言う通りだ………ッッ]
[体重100キロの蟷螂は]
[200キロ以上の虎やライオンより遥かに強いッッ]


たしかに虎やライオンの力では、コンクリートの壁に穴を開けるほどの力はない。
カマキリは百獣の王よりも強いのかもしれない。
だが…ルミナよ…いい加減気付いてくれないかな…
これはもう強い強くない以前の問題でおかしいという事実を。
このまま、観戦を続けると間違いなく戻れなくなってしまう。
今すぐこの刃牙ハウスから逃げて、今日あった出来事の全てを忘れた方がいい。

そんな異常空間の中、刃牙はマジでカマキリと戦っていた。
膠着した状況を打ち砕くべく、起死回生の廻し蹴りを放つ
だが、刃牙の動きが突然止まる。足が中空に浮いたままになる。
「くッ」なんて言って、ピンチムード全開だ。
これだけだとただの危ない、否、危なすぎるお兄さんだが、ルミナにはこのピンチの理由が見えていた

[捕まっている!!?]
[蟷螂に!!!]


刃牙はカマキリの手や足によって押さえつけられていた。
人間VS人間の構図にはありえない超異常事態だ。
そもそも、この戦い自体が異常だと思うけど、もう何度も突っ込んだので止めておく

「オワァッ」

刃牙はピンチを抜け出すべく、飛び膝蹴りでカマキリの顎(チン)を攻める
ありえない状況に追いこまれても、即座に最良の脱出策を実行する。
刃牙のセンスは凄まじいものがある。
だが、カマキリの能力はそれをはるかに上回っていた。
次の瞬間、刃牙は壁まで投げられた
その衝撃で壁にはまたもクレーターができる
…って、待て。
お前どうやって壁まで吹っ飛んだ。
というか、カマキリって得物を投げるか?
何かを投げる昆虫なんか聞いたことがない。
飛騨山のみに生息する夜叉蟷螂とかそういうのじゃないだろうな?

[なんて自分に厳しいんだ]

圧倒的戦力を持つカマキリと真っ向勝負をする刃牙を、ルミナはこう評した。
自分の妄想としか戦わない人間のどこが自分に厳しいのだろうか?
いや、たしかにすごいけど!!
カマキリと戦っていること自体よりも、こんな超常現象を起こすことの方がすごいけど!!

[ホンモノの蟷螂に――――]
[フツウの格闘技は通用しない]
[バキさんの動きは徐々に]
[格闘技ですらなくなっていた………]


ついにルミナも刃牙の妄想に侵食され切ったらしい。
100キロのカマキリなんてどうみても偽物です。本当にありがとうございました。
それに妄想体にフツウの格闘技は通用しないだろう。
スタンドにはスタンドでのみダメージを与えれるのだ。
ティナーサックス持って来い。

進退極まった刃牙は逆立ちしながら、蹴りを連発する。
これは通常の格闘技じゃない。
バキ世界でものすごく悲しい格闘技カポエラの動きだ。
…刃牙はかなりヤキが回ってきたらしい。
もう、再起不能だ。
おとなしく病院へ行こう。
狙いは精神科だ。利尿科でもいいけど。


カマキリVS人間という構造はメチャクチャだが、その戦いはさらにメチャクチャだった。
なんかバキという漫画はトンデモナイ位置にいってしまった。
読者の97%を置いてけぼりにしている。
なんかもう、その間実に2秒とか、消力の領域じゃないぞ、コレ?
もはやギャグ漫画として成立するだろう。
それを大マジでやるのが板垣先生の怖いところだ。


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