範馬刃牙 第96話 流るる涙
もう止めてピクル!烈のHPは0よ!
背骨破壊に加えて噛みつきという凶悪コンボだ。
烈の命が本気でやばい。
止めても「HA☆RU☆RU」と弾き飛ばされるだろうし、もう当事者にしか解決の道は残されていない。
やばい、やばいっすよ全国の皆さん。
烈の安否やいかに。
でも、烈の肉って筋肉ばっかりでかなり不味そうだ。
脂肪が乗っていませんよ。
あ、でも、アメリカ人は赤身のステーキを好むというな。
脂肪の味よりも肉本来の味を好むらしい。
そんなピクルの出身はアメリカ地方だ。
…もしかしたら、絶妙な食材かもしれない。
「噛んだ…ッッ」
ジジイ3人衆、仮称スリージジイは同時に驚く。
謎だった噛んだ箇所は烈の左首筋の筋肉だった。
比較的肉厚なので危険度の低い部位だ。
とりあえずは延命だ!
ピクルは噛みつき、一気に食いちぎる。
烈の首筋に明らかな凹みができた。
あ、やべえ。
致死に至るほどのダメージではないようだが、大量出血だ。
何よりも痛い。
烈、やっぱり大ピンチだ。
噛みちぎった肉を早速ピクルは口に含む。
噛みちぎる=食事が野生だ!
なんか闘争=食事にも等しいのは勇次郎と似ている。
勇次郎が積み上げてきた技術や肉体を叩き伏せて喰らうのならば、ピクルはそのまんま喰らう。
ベクトルはやや異なるものの、この共通点は最強同士のシンパシーであろうか?
ピクルはもぐもぐと烈の肉を噛みしめる。
バキの食事シーンは大抵美味しそうなのだが、これはさすがにダメだ。
ちょっと食材がグロい。
「カツッ」
痛みで意識が覚醒したのか。
即座に烈はボディにヒザ蹴りを当てて反撃する。
ムエタイばりのゼロ距離ヒザ蹴りだ。
烈はムエタイ世界でもやってける。
いや、それは当然だ。
しかし、怯むことなくピクルは左肩の肉に噛みつき噛みちぎった。
ところで「カツッ」というかけ声には助けて克己という意図はあんまりないだろう。
「あひゅッ」
首筋よりも筋量の多い肩だ。豪快に肉がちぎれる。
これはやばいと烈はすかさず反撃する。
ボディにヒザ蹴りしても効果がなかったので、今度はテンプルを肘で撃つ。
ジュラ紀に受けたことのないピンポイントな攻撃のためか、ピクルはよろめき烈を手放す。
もっとも、手放した理由はダメージよりも十分な量の肉を摂取できた満足からかもしれないが。
でも、「あひゅッ」ってなんだ?
「カツッ」といい、追い詰められた烈先生は奇声をあげている。
言ったのがアイアン・マイケルだったら完全にネタだが、烈海王なので真剣味がある。
とりあえず、伝統派空手の栗木君の「はひいいいい〜〜〜〜」の数倍は危機的だ。
あひゅッ。
何とか危機は免れたものの、肉が2箇所噛みちぎられる大打撃だ。
肩の肉が丸々なくなっている。ピクルサイズの人間が一口に噛んだのだから当然か。
大量出血で非常に痛々しい。
烈は激痛によるものなのか、膝を地面につく。
もう背骨のダメージを忘れてしまう大惨事だ。
(通用しない…ッッ 俺の拳が…ッッ)
烈海王大動揺!
思わず「俺」なんて言っている。
いつもは一人称に「私」を使っている烈が飾りっ気なしの「俺」を使った。
連載史上最大級の動揺が垣間見える。
範馬一族の一人である刃牙にだって中国拳法は通じた。
だが、ピクルには一切通用していないことに絶望の念すら抱いているのか。
技術そのものよりも相手が悪すぎるだけの気もする。
数千回脳みそ揺らしても立っている星人が相手だし。
(食べてる…… 俺を……ッッ)
いや、お前、食べられることを覚悟で戦ったんじゃないのか。
でも、やっぱり、生で見ると違うのか。
一口丸ごと噛みちぎっただけあり、相当の肉量なのか。
ピクルはもぐもぐとゆっくり噛んでいる。
もっきゅもっきゅ食べれば16位黒セイバー並みの完全な萌えキャラになっていたのだが。
惜しい。
いや、惜しくねえよ。ピクルは雄だし。
今まで食べた肉の中では未曾有の筋密度をじっくり味わっているようにも思える。
そして、未だに泣いている。
涙の意味やいかに。
「グローブを外したのだ」
「靴(シューズ)というグローブを外し――――――…… 素手(ベアナックル)になったのだ」
瀕死の重傷を負いながら、烈の闘争心は衰えない。
しかし、左首筋と左肩はピクルに噛みちぎられて大ダメージを負った。
左腕は動くだろうが動かすたびに激痛が走るだろう。
この状況で腕を使った攻撃は厳しいはずだ。
そんな烈は最後の武器を取り出すように靴を脱ぐ。
グローブを外し素手になった。
スリージジイも見事にシンクロして驚く。
徳川(驚愕)→ペイン博士(疑問)→ストライダム(解説)の完璧な流れだ。
うむ。いい仕事をしたぞ、お前ら。
そろそろ、本気で烈の心配もするべきなのだが。
靴を脱いでからが本番の烈海王だ。
足技に関しては格上の郭海皇以上の鋭さがあるだろう。
刃牙すら追い詰めた驚愕の足技がピクルに炸裂するか!
「キサマ…… 俺を………喰っておいて…」
「泣くなッッ」
喰うなら泣くな。泣くなら喰うな。
泣いて謝るくらいなら鉄骨から突き落とすなとカイジばりにキレながら、烈は飛び上がる。
鋭く尖らせた裸足でピクルの頸動脈付近に跳び蹴りを当てた。
烈の足がピクルの首筋にめり込む。
100%殺す気の一撃だ。
並みの格闘家なら間違いなく頸動脈を貫かれる。
腰が落ちたところに廻し蹴りしてもダメ。脳みそを数千回揺らしてもダメ。
ならばと出した武器は究極の急所攻撃だ。もうなりふり構っていない。
刃牙に強く握り固めた足をのど仏にめり込ませても十分以上の破壊力だったが、今回の蹴りは明らかにそれを上回る危険打だ。
鍛え上げた足に狙い澄ました一撃。
もう海王5年分を出したような攻撃に野生はどう反応する!
バシッ
あひゅッ。ダメです。平手で叩き落とされました。
ハエを叩き落とすがごとく、だ。
ピクルの前には烈ですらハエ同然なのか。
ジュラ紀2億年に比べると中国四千年は1/50000だから、ハエ扱いもしょうがない。…のか?
[技術が……]
[武術が……]
[歴史が……ッッ]
[4000年に及ぶ時間(とき)が……ッッ まるで通じない……!!!]
[無念だッッ]
[よもや…… 武術の通じぬ世界があったとは……ッッ]
[無念だッッ]
烈、またまた大ショックだ。
いくら最上級の野生が相手でも、中国拳法は十分通用する算段で勝負に望んだのだろう。
でも、いざ戦ってみたらまったく攻撃が通じない。
もう人生否定された気分だ。
海王40年分は使い果たした勢いだ。
とりあえず、倒れたままじゃやばいので這いながらピクルとの間合いを離して立ち上がる。
烈海王らしくない格好の付かない姿だ。
対するピクルは無情にも間合いを詰める。
足音は「ズチャ…」で範馬っぽい。
でも、武術が通用しない世界は勇次郎VS郭海皇で見た気がする。
序盤こそ翻弄出来たものの、鬼の貌を出した勇次郎の前に中国拳法はまったく通じなかった。
4000年の英知が詰まった郭海皇の技術が力だけで蹂躙されてしまったのだ。
そんな絶望的な状況で郭海皇が引き出したのは郭海皇オリジナル拳法だった。
烈海王は何を引き出す。
[アリガトウ…4000年……… もう技術(わざ)は使用(つか)わない……]
[武が及ばぬを見ることは―――もうできない]
人生を賭けて磨き上げた中国拳法が通用しないというあまりに辛すぎる現実に烈は泣いた。
そして、武との決別を決意する。
まったく中国拳法が通用しない相手に中国拳法を振るうことは身を引き裂かれる思いなのだろう。
ピクルは肉を喰うだけじゃなく誇りまでもを破壊している。
巨凶範馬並みに厄い。
[烈 海王…]
[皆伝を機に師より賜ったこの武名……ッッ]
[わたしの全てだったこの名を…ッッ]
[烈
永周が護るッッ]
[父が与えてくれた名――― 母が与えてくれた名―――]
[烈 永周が烈
海王を護るッッッ]
烈の本名は烈小龍じゃなく烈永周らしい。
小龍は海王前の称号みたいなものだろうか。洋王みたいに。
烈海王、あいや、烈永周は腕を上げる。
花山のようなボディががらあきの構えだ。
武術を捨て、本来の自分そのものを引き出した姿がこれだった。
烈は烈海王を捨て、烈永周として戦うことで中国拳法の歴史を守るつもりなのだろうか。
それはそれで試合放棄で不名誉の気もする。
しかし、4000年の進化が原始に敗北するのは積み重ねてきた歴史が無意味であることを物語ってしまう。
烈にはそれを精一杯否定したい気持ちがあるのか。
[無念…]
涙を流し続ける烈であったが、ひときわ無情さを感じる涙を流す。
そして、ピクルに向かって踏み出す。
烈永周が見せる烈海王を守る術とは!
「ウワアアアオオオオ」
だだっこパンチでございました。
………
……
…
わ、笑えねえ…
悲痛すぎてまったく笑えない。
烈の悲しみがありありと伝わってくる。
これだといくら何でも「烈海王がやっているのだ。中国拳法以外の何ものでもない」と肯定出来ない。
ピクルには絶対に通用しない攻撃だ。
わかっていて、あえて出した攻撃でもある。
死を覚悟しているのだろう。
しかし、死に立ち向かうのではなく死ぬための覚悟だ。
悲しくてたまらない。
一体、烈はどうなってしまうのだろうか?
次回へ続く。
絶望的な戦力差を見せつけられ、そして勝負は悲壮な展開になってきた。
烈海王が子供扱いとかそういう次元を超越している。
圧倒的すぎる野生だ。
圧倒的すぎて現代人の誇りを完全に破壊している。
こうなると出すもの出し尽くした感のある烈先生はどうなるのだろうか。
やはり、喰われるのか。
しかし、ピクルは勝負を放棄した相手には興味を持たない可能性もある。
生き残る可能性半々、死ぬ可能性半々か。
もうキャラクター的に死んでる感がある。
あの烈海王がグルグルパンチ…できればツンデレモードの時にやって欲しかった…
「克己〜グルグルパンチッ。あひゅッ。あひゅッ。あひゅッ」
やべ。鼻血出た。
まぁ、それでもできれば生き残って欲しいなぁ。
肩の肉なくなっても1ヶ月すれば元に戻るよ。
しかし、打撃力に関しては範馬以外ではトップクラスの烈の攻撃が効かないとなると、他の7人はどうするのだろうか?
範馬であるジャックはピクルと渡り合える可能性は十分あるが、打撃系の独歩・克己・昂昇・寂海王の未来は暗い。
独歩の攻撃も通用しないだろうし、昂昇の斬撃拳も頸動脈蹴りが通じなかった以上、ダメージにならないだろう。
片手の烈と互角以下の寂海王も話にならないだろうし、得意の心理戦も通じないことだろう。
克己は論外ということで。
技術畑の渋川先生と特殊な戦いをするガイアは打撃以外でやり合えるだろうが、渋川先生はジャック戦の二の舞となりかねない。
超パワー+噛みつきと属性も似ている。
ガイアは今のところ、一番ピクルを翻弄できそうな人材だ。
でも、ピクルに砂をぶつけても絶対ダメージにならないよな。
姿消しても野生で感づかれるだろうし。
ピクルは範馬以外には勝てない空気がひしひしと伝わってきている。
良くも悪くも強すぎる。
実力者中の実力者の烈ですら相手にならないのはまずい。
勇次郎の出番も近いか?
刃牙もピクルと戦うフラグが立っているけど勝負になるのだろうか。
ピクルを倒せれば勇次郎の背中が見えるかもしれない。
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