範馬刃牙 第99話 対人間(ヒト)
覚醒した烈の前にピクルがダウンした。
金的までしたんだ。
これでダウンしなければもったいない。
しかし、郭海皇のように生に打ち込んで一発ダウンさせていないのが惜しい。
やはり、海皇にもなれば金的技術は海王とは比較にならないほど高くなるようだ。
面ではなく点で陰嚢に打撃を打ち込むのが極意だろうか。
「手応え……… あり……」
烈は必殺中華クラッシュ(仮称)にたしかな手応えを感じていた。
鍛えられた肘と膝を同時に打ち込んだのだ。
軟体である悪魔将軍とかじゃないとダメージは免れないだろう。
でも、冷や汗を流しているのが不吉だ。
対するピクルはまったく流していない。
烈は攻めているはずだが、逆に追い詰められている印象すら受ける。
一見文化遺産の頭蓋骨骨折の危機に対し、徳川のじっちゃんは大喜びをする。
烈が一方的に喰われる場面ではなく、野生に対し中国拳法を爆発させるのを見たかったに違いない。
もはやモラルの欠片もねえ。
何度も突っ込んだが。
「フム…… その点は認めざるを得まい」
「確かに凄いものだな武術とは」
試合開始前は格闘技はシマウマにすら勝てないと暴言を吐いていたペイン博士だったが、
烈の健闘についに格闘技の凄さを、武術を認めた。
中国拳法をちゃんと身につければ146歳まで生きられるし、体重をないことにできるし、
物理法則を無視したパンチもできるし、自発的に心臓を止めたり動かしたりもできるんですよ。
嘗めてはいけない。
もし、目の前に烈海王がいたら貴様は中国武術を嘗めたッッッといろいろ投げつけられるところだった。
でも、なんでペイン博士は「認めざるを得まい」と武術を本当は認めたくないような言い方をしているんだ?
野生万歳派なのだろうか。
「ここまで喰い下がるとは予測できなかった」
しかし、ペイン博士は不敵な発言をする。
あくまで烈は劣勢であると主張する。
何だよその余裕。文化遺産が叩く蹴るの暴行受けてるし、加害者だって喰われかけているぞ。
あとこれは不適な発言でもあるな。
だって、この言い方だと烈がいっそ喰われてもしょうがないと思っていたと告白したようなものだ。
ペイン博士の言葉に徳川のじっちゃんとストライダムは同時に反応する。
共に野生を凌駕するグラップルの結晶を見てきた男だ。
夜叉猿を倒す空手家とか、アナコンダを倒すアマレスとか、100キロのカマキリを倒した18歳とか。
3つ目は直接見ていた保証はないが、倒したという事実を知っている以上、何らかの形で見たか聞いたことは確実だ。
いや、100キロのカマキリはそれ以前の問題だが。
徳川のじっちゃんは喰い下がるどころか圧勝だと反論する。
ペイン博士は即否定する。その姿に冷や汗はない。
格闘家のターンから自分の専門分野のターンに移ったからだろうか。
闘技場で格闘家vs野生の戦いが繰り広げられている中、観客席でも格闘技関係者vsピクル関係者の戦いが行われている!
「あの打撃でいったい ピクルの脳はどれほど揺さぶられたことかッッ」
徳川のじっちゃんは中華クラッシュの効力を元にペイン博士を論破しようとする。
しかし、脳を数千回揺らされても平気なのがピクルだ。
脳震盪でダウンしたと説得しようとしても無駄だ。
ちょっと反論失敗だ。
むしろ、あの打撃は脳震盪よりも頭蓋骨骨折の方が心配な気がする。
あと直前の打撃による陰嚢破裂。
その時、ピクルの顔が起き上がった。
しかも、顔には笑みが見える。
その笑みは勇次郎を前にした時に見せた歓喜の笑いではなく、残虐性すら伴いそうな冷酷な笑みだった。
真に捕食する価値のある強者を目の前にした笑みなのか。
こいつは危険度が高い。
あとダメージもない。
そろそろ青竜刀取り出した方がいいんじゃないだろうか。
ペイン博士はピクルの脳は揺れていないと言う。
徳川のじっちゃんは驚く。ストライダムに至っては目が血走っている。
そんなにペイン博士の言葉が気に入らないのかお前。
そんなペイン博士は解説のターンに入ったことで、落ち着いて自分の考えを述べる。
[とりわけ異彩を放つのが頸椎]
[その太さ………
頑強さと言ったら………
二足歩行に甘んじる人間とは構造的にも比較の対象ですらなく――――]
ピクルの首の骨は異常な太さであった。
普通の人間の2倍か3倍はありそうな太さだ。
これだけの太い首に支えられればちょっとはそっとの攻撃では脳は揺れないだろう。
頸椎破壊の代表技、転蓮華すらも効かないのは確実だ。
94話の廻し蹴りが通じなかったのも、95話のアゴ連打が通じなかったのも、この異常な首によるものなのだろうか。
でも、96話の頸動脈蹴りが通じなかったのは不思議だよな。あれ、絶対めり込んでいたよ。骨ごと。
ともあれ、脳震盪が効かないとなれば、ピクルをどう攻略するのだろうか。
ピクルの腹筋がオリバクラスだと仮定するとボディへの攻撃は効きそうにない。
刃牙だってオリバにダメージを与えられたのは顔面への攻撃だけだった。
となると…鬼の力で顔面を殴るしかないか?
ううむ。烈は人間だ。大ピンチだ。
まぁ、金的を狙えばいいのかもしれないが。
君が!泣くまで!叩くのを止めない!
バッファローのような四足歩行の大型獣にしてやっとピクル並みの頸椎を持つとペイン博士は述べる。
待て、それは人間か?
もう立派な人外だ。
そりゃあ、ペイン博士もピクルを人外扱いするよ。
人類ではなくピク類だ。きっと、宇宙からやってきたんだよ。範馬のように。
ピクルに意識があるとわかった烈はすかさずピクルに追い打ちの蹴りを放つ。
しかし、当たらない。地面を蹴った。
烈が見上げるとピクルは倒れた状態から数メートルも上空に跳ね上がっていた。
背中の力だけで飛び上がった範馬一族もすごいが(68話)、これはこれで異常だ。やっぱり人外だ。
この異常な跳躍には烈も驚く。4000年の歴史にすらない超大技だろうな。
「ピクルは―――――」
「おそらくはその人生は――――」
「ある時期まで――――――」
「四足歩行だった!!!」
ペイン博士はピクル秘話をついに公開する。
頸椎が太い=四足歩行というのも何か間違っている気がするが。
って、いや、待てよ。
人間が二足歩行できるようになったのは二足歩行用に骨格が変化したからですよ。
まぁ、ピクルは猫背気味だし、無理して立っているかもしれない。
でも、今まで四足歩行していた生物が常時二足歩行できるようになるかよ。
猫が立ったまま、長時間歩けるかという話だ。
ピクルは人外どころか進化の枠からも外れている。
人外というか生物外だよ、これじゃ。
そういえば、夜叉猿も二足歩行と四足歩行を使い分けていた。
夜叉猿の数倍の野生を誇るピクルなら、それくらいできる!
できるんだッッッ。
夜叉猿はもしかしたらピクル血族の末裔なのかもしれない。
外見の野生度は圧倒的に上がり、中身の野生度は圧倒的に下がる。
…退化?それとも進化?
「古代中国より連綿と受け継ぎし4000年の秘術 その体系はただただ見事と言うしかない」
「しかしその無数の技術の矛先はつまるところ――――――」
「対
人間!!!」
「対ッ 二足歩行!!!」
ピクルが四つんばいになり四足歩行の構えを取った!!
ピクルの本当の構えにして、本当の本気だ。
格闘技の常識にはない未知の体勢だ。
ここから出せる技は中国拳法にだって想定されていないものだろう。
口を大きく開けているし、喰う気満々だ。
むしろ、殴りにくそうな体勢だし、喰うことに専念するための構えだろうか。
烈海王、一難去ってまた一難である。
しかし、ピクルは本来四足歩行だったのにどうして立つようになったのだろうか。
人間が二足歩行になった理由はざっと見てみたところ、環境の変化が原因らしい。
だが、ピクルはピクル一代のうちに二足歩行になっている。
そして、二足歩行を気まぐれではなく、基本動作として行っている。
異常だ。生物外だ。
もしかしたら、本来の四足歩行を取るピクルの前にかなう好敵手はいなかったのかもしれない。
自分に立ち向かってくる相手しか喰わないピクルにとって、これは食糧危機だ。
2ヶ月くらい飯抜きになったかもしれない。
そこであえて不自然な立ち方をすることでハンデを与えていたのだろうか。
だとしたらなかなかの知能だよな。
だから、喰わないでやれよ。
[築けるのか……ッッッ 4001年目ッッ]
ピクルの本気に烈は緊張の念を隠せない。
やっぱり餌になるとか言わない方が良かったとか思っていそうだ。
烈は今や中国拳法No2とも言えるし、死ぬようなことがあれば中国拳法1年分は進化が遅れそうだ。
本当に4001年目が危ない。
でも、刃牙17歳時代を4000年と仮定すると18歳の今年が4001年目だよな。
正しくは4002年目を築けるかどうかである。烈、ピンチながらボケる。
いや、1年違うとかそういうツッコミどころでもないが。
しかして、ボケたところでヤバいことには変わらない。
スタンドの勝負で何とか互角レベルにまで持ち込めるほどだった。
ピクルが本気になればかなり危ない。
まず、ピクルの攻撃にどう対処するのかが怪しい。
打撃対策はともかく、押さえ込まれるだけで普通に手詰まりだ。
そして、攻撃は通用しない。脳震盪しないとなれば鬼の筋力で殴るしか勝ち目はなさそうだ。
でも、中国拳法は対四足歩行を想定していないけど、対二足歩行用技術で猛獣を倒せるのが刃牙世界だ。
ガーレンだって対人間用技術で足のないアナコンダを倒せている。
中国拳法ならば四足歩行にだって遅れを取らない!…のかなぁ。
ともあれ次回範馬刃牙連載100回目にして烈海王、そろそろ人生の岐路だ。
あと連載100回目なのに刃牙が出てくる気配がまったくない。
次回へ続く。
ピクルが本格的に人外だと明らかになってきた。
あんな骨格の人間、いるか。範馬だって骨は普通だよ。骨は。
なお、今回明らかになったピクルの異常な頸椎はピクル2話の扉絵で密かに公開されている。
あれは密かに伏線だったのか。
この扉絵を見れば背骨の曲がり方なども人間離れしている。
これも四足歩行の伏線だった。意外とピクルの身体には伏線が存在した。
何だか烈は人外を相手にしているんだなと実感せざるを得ない。
バキは格闘漫画なのに、もはや人間vs人外の領域に踏み込んでいる。
また、範馬一族だってアゴを打たれれば脳震盪を起こす。
ちょっと前の話になるがジャックがJr.にやられている(バキ253話)。
しかし、ピクルには脳震盪が効かない。
範馬一族は肉が人類と違うのなら、ピクルは骨格が人類と違う。
範馬一族とピクルが戦えば一体どうなるのだろうか。興味は尽きない。
あとピクル騒動に参戦しなくて良かったね、Jr.。
得意の脳震盪攻撃が効かないし、四足歩行の体勢を取られればパンチできない。
梢江に感謝しろ、Jr.。
それにしても何でペイン博士はこんなに落ち着いているんだろう。
「ピクルが本気を出したぞッッ。早くあの中国人を逃がせッッ」とか、烈の命を心配する発言をした方がいい。
まぁ、命を心配した方がいいのは徳川のじっちゃんもストライダムもだけど。
スリージジイは呑気すぎる。
ところでビッグ烈はどこへ行ったのだろうか。
ピクルが本気を出したんだから、烈と一緒に(気持ちだけでも)戦ってやればいいのに。
「あの…ピクルが四足歩行になったんですけど、四足歩行との戦い方知らないっすよ」
「アリガトウ4000年…もう技術は使わない…」
「いや、あんたが諦めるなよ」
…もしかして、こんなやりとりがあったのだろうか。
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