第242話 一番



バキ第3章魔法滅土Jr地獄変の開始だ。
とりあえず、刃牙にフラれたJrは梢江に目をつける。
ダメです、Jrさん、頭から喰われますよ、みたいな。

「お待たせしました」

「ウェルカム」

どうやらJrは梢江にファミレスに来いッッ、との挑戦、もとい誘いをしたようだった。
もっと爆発的な惨事を予想してしまったのだが、思ったよりも普通な感じだ。
Jrの死期は伸びたらしい。
梢江を相手にするということは、安全ピンを外した手榴弾を胃の中に入れるのと同じくらい危険だ

「君の彼ト…闘ウ」

Jrは梢江に告白した。
二人とも一流の格闘士(グラップラー)だ。
戦いの結果、どちらかが再起不能になるかもしれないし、最悪の場合死ぬのかもしれない。
(刃牙世界でそういうのはまずありえませんが)
そういう背景があるのか、Jrは告白したのだろう。
完全な時後承諾ですが。
刃牙くん戦う気ありませんよ、って。

「ど…どうしてそれを私に…?」

大擂台賽の観戦をしたくらいだ。
梢江はJrの実力を一流だと知っている。
刃牙の強さを狂信者のごとく信じているとはいえ、不安というものがあるのだろう。
だが、梢江に彼らを止めることができない。
大擂台賽においても勇次郎に向かおうとした刃牙を止めることができなかった。
その恐怖が震えとなって現れている。

「ヒトツハ…バキサンガ君ニトッテカケガエノナイ大切ナ人ダカラ…」
「ソシテモウヒトツ」
「僕ニトッテ君ガ大切ナ人ダカラ」

いつあんたにとって大切な人になったんだ?
Jrの考えることはわかりません。
天才の精神は理解できないとはこのことか。
むしろ梢江は大切にしない方がいいと思います。
ゴリラを都会の環境では育てられないのと同じ理由で。

「ミス・コズエ……」
「僕ト結婚シテ欲シイ」

なんだってーーーーッッッ!!!
Jrは完全に死ぬ気だ。
梢江と一生を添い遂げるのはかなりキツい。問答無用にキツい。
何せ初体験をしたら、その勢いで数日間ノンストップバトルをした烈女だ。
そんな女と結婚したら、初夜の時点で完全に精を吸い尽くされてしまいそうだ。

だが、Jrの心配をしなければ、梢江はJrと結婚するのも悪くはない。
とりあえず、刃牙よりJrの方が生活力がありそうだし、性格も誠実だ。
花嫁を幸せにしてくれそうなタイプに見える。
ダメ押しは大好きですが。

「あの…あの…わたしと?なんで?」

「僕ノ知ル一番美シイ女性ガ君ダカラ」

Jrの攻勢は止まらない。
まるで勇次郎に突っ込んで行ったサムワンのような暴挙だ。
「一番美しい」という部分には当然共感できない。
梢江を素で美しいと思う人は勇者の刺客がありますので、モロッコにでも行ってみましょう。

だが、彼ら格闘家たちの美的感覚というのは独特だ。
彼らにとっての美しいとは強いということと同義なのだ。
つまりはストロングイズビューティフルだ。
そういう観点で考えると「一番美しい」という言葉の意味がわかってくる。
梢江は『地上最強の雌』と一部で称されるほど雌度が高い。
その部分を取って「美しい」と言ったのかもしれない。

また、これらは全て方便の可能性もある。
Jrは刃牙と戦いたいだけなのだ。
その目的のためだけにこれらの言葉を語っているのかもしれない。
用が済んだら梢江をポイっと捨てるのだろう。
そうでなければ、こんな無謀な挑戦はできません。

「いやいやいやいやいや」
「ノーノーノー」

梢江は面白い顔をする。
この顔はどうみても美しいとはいえない。Jrも心の中では「シマッタッッ」とでも呟いているのだろう。
でも、面白い顔です。
ヒロインの顔じゃねェ…
ヒロインなら清純そうに「そんな…私は…」とか戸惑うべきだ。
はすっぱなヒロインなら「あんた、何言ってんの?」とかだろうか?
そんな反応を梢江がしたら、チャンピオン読者のトラウマになるかもしれませんが。

「君ノ仕事ハ”女性”デス」
「ソシテソノ目的トスルトコロハ……」
「ナンバーワンノ男ト出会ウコトデス」

熱い殺し文句だ。
Jrには策略家の面もある。
勇次郎や名もなき中国拳法家との戦いで不利なアライ・猪狩状態をそれぞれ妙案で潜りぬけているのだ。
肉体的な強さだけではなくクレバーな強さも持っているのがJrだ。
そして、今は刃牙と戦うために言葉巧みに梢江を揺さぶっている。

「あなたは……ナンバーワンなのですか?」

「ソレハ僕ガ決メルコトデハナイ」
「証明スルダケデス……君ニ」

つまりは刃牙殺すだ。
読者的にも刃牙殺害を希望する者は多い。
コロセコロセコロセコロセココロセな勢いをJrは味方につけられるのだろうか?

しかし、梢江は惑わされやすい人物のようだ。
最初はJrの言葉に疑いを持っていたが、今やすっかり乗り気だ。
こういうオツムがちょっと弱い部分はヒロインらしいかもしれない。
思い返えせば刃牙の本能丸出しロマン皆無の言葉にすらトキメキを感じていた。
ごめん、全然ヒロインじゃねえや。


場面は夜に変わる。
Jrはジャージを着ている。
このジャージは父のと同じものだ。
魔法滅土家の正装なのだろうか?

「バキ・ハンマガ…アナタヲ尊敬シテイルト聞キマシタ」
「私ト闘ッテクダサイ」

どうやらJrは誰かと戦う気らしい。
昼の言葉の戦いの後は、夜の肉体の戦いだ。
某17歳も見習ってください。
もっとも、この人の夜の戦いは…いや、言うまい。

ともかく、刃牙と戦えないのなら他の格闘家と戦う。
そんなJrは用意周到だ。
また、刃牙関係の人物を狙ったのには、刃牙に対する挑発の意味もあるかもしれない。
どうやらJrはあらゆる部分から刃牙を責め立てるつもりのようだ。

「いいものですな…」
「若いということは…」
「始めましょか」

なんと渋川先生が登場だッ!!
Jrは渋川先生と戦うつもりらしい。
刃牙が渋川先生を尊敬しているのかは…思い当たる節はいくつかある。
渋川先生の技術は高度に完成されたものである。
また、範馬の血族に勇猛果敢に挑み、柳戦で刃牙とタッグを組んだ時はしたたかなところを見せるなど、精神的な強さも備えている。
そういった部分を刃牙は尊敬しているのかもしれない。
もちろん、これも方便の可能性が高い。
刃牙と関係のある人物の情報を集め、その結果渋川先生と邂逅したのかもしれない。
尊敬しているという下りも単なる理由も正当化なのかもしれない。
だが、そんなことは渋川先生にはまったく関係ないのだろう。
勝負を挑まれたら戦うのが渋川先生だ。
負ける勝負にも、逃げずに挑んでいた。
そこには誇り高き格闘士の姿がある。
刃牙も見習え。

それにしても実に予想外の展開だ。
戦いの結果もまったく予想がつかない。
Jrの実力は大擂台賽で存分に披露された。
披露されすぎて読者の反感を買ってしまったくらいだ。
しかし、格下の相手と戦いすぎて、実際にどの程度の強さを持つのか今だわかっていない。
つまり強さの限界点がわからないのだ。
そのため渋川先生との一戦でJrの真価が問われるのかもしれない。

対する渋川先生は死刑囚編で目立った活躍はなかったが、オリバを圧倒するなど今だ底知れぬ実力を持つ強者だ。
大擂台賽に出ていたら、かなりいいところまで上り詰めていたであろう。
Jrの対戦者と戦えば、おそらく瞬殺できるはずだ。
柳に2度敗北した過去は忘れてください。
あの人の弱体化っぷりは激しかったなぁ。

二人の得意分野は方や相手の力を利用する合気、方や正確で速い攻撃をするボクシングの究極系。
技術とスピードの究極の戦いとなるだろう。
この勝負どちらが勝つのだろうか?
繰り返すようだが、まったく予想がつかない。
渋川先生がやられれば、Jrの実力が明確になる。
だが渋川先生は最大トーナメント編から持ち上げられてきたキャラだ。
簡単に負けるとは思えない。
簡単に負けたら春生瞬殺事件以上の反響が起きるのは間違いない。
しかし、Jrがやられたら、あんた何のために日本にいるの?って感じになる。
だからこそ難しい勝負だ。
板垣先生も「やっちゃった?」って思っているんじゃないだろうか。
大擂台賽でいきなり劉海王を潰してしまったように。
渋川先生の代わりに本部が出てきたら、展開がかなり読めたのになぁ。
この場合、先があまり楽しみじゃありませんが。
あ、もちろん、本部の大敗です。
だが、本部が武器を使えば…あるいは…

何はともあれ新章開始と同時に非常に目を引く勝負が開始された。
次号のチャンピオンが気になりすぎるッッ。
これからは新キャラと旧キャラの話が主に展開されることになるようだ。
この戦線にオリバや烈先生、独歩や花山などの旧キャラに、大擂台賽に出てきた実力者、寂海王や龍書文などが戦うのも盛り上がりそうだ。
花山VS龍書文の裏格闘家対決、ジャックVSオリバのパワー対決、独歩VS寂海王の顔が似ている者対決などが行われれば面白そう。

しかし、その勢いで除海王VSサムワンの噛ませ犬対決、範海王VS毛海王の何のために大擂台賽へ来たんだ対決、シコルスキーVS春成の廃品利用対決などが行われたら俺はキレる。
でも、シコルスVS春成はなんだか見てみたい気がする。
どっちも刃牙にボコボコにされてるし、きっと共有感(シンパシー)を感じることができるはずだ。



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