第244話 ハンドスピード



熱い戦いが続いているがとりあえずアライ父が登場だ。
この流れは柳との戦いの最中、突如歯科博士が出てきたのと似ている。
そう、バキの見所のひとつである解説のシーンだ。
大擂台賽編において何かが足りないと思ったらこれがなかったのか。

ジャーナリストはアライ父の拳の速度を人間の反射速度を凌駕していると賞賛する。
その反射速度を超えた速度が、2秒間に17発の連激を可能とするらしい。
1秒間に12連激の某少林寺の人は忘れろ。

とにかく、拳の攻撃が主となるボクシングにおいてその速度は重要だ。
人間離れしたハンドスピードがあったからこそ、アライ父は『神』と称されるようになったのだろう。

どうでもいいが、二人は大擂台賽中、ずっと話し込んでいたのか?
さすが、10年間マホメド・アライを追いかけていたジャーナリストだ。
その執念は半端じゃない。


場面は公園に戻る。

「この」

Jrの拳は達人のあごに届く寸前だった。
だが、達人はJrの腕を掴めていない。
達人、大ピンチだ。

「この渋川に情をかけるかァッッ」

Jrが行ったのは寸止めだった。
寸止めしていなければ、Jrの拳は達人のあごを見事に打ち抜いていただろう。
そして、達人はその寸止めに怒りを感じていた。
当然だ。
彼らにとって、手を抜かれることは侮辱に等しい。

「徒(いたずら)ニ傷付ケル愚ヲ避ケタカッタノデス」

寸止めは手を抜く技ではなく、自分と相手の力量差を傷つけずに示す技術だ。
そういう意味でJrが行ったことは理にかなっている。
この言葉にも手加減以外の意味がある。
しかし、達人にとって、そういった心遣いは無用だ。
全力で叩き潰されることを望む人だ。
それゆえに寸止めは侮辱へとなっている。

「タダ…」
「アナタハ偉大ナ武術家(マーシャルアーチスト)」
「情ヲカケル無礼ハ」
「許サレナイ……」

Jrは自分の行った達人への侮辱の意味もわかっていた。
達人の怒りも予測できていたのだろう。
それらをわかったうえであえて拳を止めたのか。
それは達人の技術を尊敬したからだろう。
尊敬できる相手だからこそ、無駄に傷つけることができなかった。
しかし、そのように戦わなければいけない相手だった。

Jrはアーチストという言葉を使った。芸術家だ。
たしかに達人の技は芸術の域へと達している。
Jrは達人の技を認めていた。

ブン

Jrが達人に放ったのは寸勁だった。
中国拳法がJr流に昇華されていた。
どうやら中国へ行ったのは無駄ではなかったらしい。
長身海王や名前だけ海王の犠牲も無駄ではなかったんですよ、OK?

アライ流寸勁は達人のあごを打ち抜いた。
達人の脳が揺れる。まぎれもない脳震盪だった。
ジャックの一撃を食らってなお立っていた達人もこれには無力だったのか。
静かに崩れていった。

脳が揺れる演出はなんだか今回の餓狼伝的な演出だ。
餓狼伝で使った技術をバキに活用したようだ。
こうやって板垣作品はさらなる高みへと行く、のかもしれない。

(いい歳ぶっこいて―――――
 なんの危機感も持たず)
(立ち合ってしまうワケだ……)
(なんたってこの小僧……)
(こんなに優しく やっつけてくれるんだもの……)

達人がJrの攻撃を防げなかったのは優しい攻撃だったからだった。
攻撃には敵意や殺意がつき物だ。
そして、達人はそのような攻撃から身を守るための技術を身につけている。
自らが極度の危険にさらされるようなら、護身レーダー(仮称)が発動して、危険への道を幻影で阻む。
しかし、Jrの攻撃はそういったものとは無縁だった。
さすがの達人もこれには一本取られただろう。
負けを自覚しているし。

と、まともなことを書いてみる。
率直な感想だと、バカかテメェッッ、ふざけんなぁッッ、というところだ。
お前、また瞬殺かよ?
もういいよ、Jr。
とっとと噛ませ犬を倒す人生を終えて、バキと戦ってください。

まぁ、ともかく、Jrの次の標的は誰になるのだろうか?
候補に挙がりそうなのは、独歩、花山、烈のアンチ死刑囚軍団か。
誰と戦ってもいい勝負になりそうだ。否、いい勝負にしてください。
個人的にはスピード勝負ということで、龍書文と戦いが見てみたい。
春成をどれだけ速く倒せるのかでも可。
2秒以内に倒せないと刃牙には勝てません。

とにかく、達人VSJrはあっさりと、かつ意外な形で終わってしまった。
もう少し盛り上げてもらいたかったが…
では、来週のバキをお楽しみに。


…というわけで、餓雌伝が始まります…

梢江はひざを丸めて刃牙にプロポーズされたことを告げた。
その仕草は可愛い。否、仕草だけ見れば可愛い。仕草自体が可愛い。
モデルがいくない。全然ッ良くないッッ。
巨凶松本がこのような仕草をやると妖気すら漂う。
たぶん、一般人がこの構えと相対すると死にます。

「どんな気持ち……?」
「わたしが結婚て」

まずい、非常にまずい。松本梢江は殺る気だ。
次回のバキでは大擂台賽中にはあまり行われなかったバカップルっぷりを見せ付けられることは必死だ。
刃牙もさりげなく生命の危険にさらされている。
巨凶松本がどう猛るのかは、刃牙の反応次第だ。
せめてまともな反応をしてください。いきなりSAGAらないようにしてください。

達人VSJrとは別の意味で予想がしにくい展開だ。
否、予想したくない。
業界初全然可愛くない膝丸めを見せられたからには予想したくありません。
それにしても、どうして可愛くないのだろう。仕草自体は十分可愛いのに。
なんだか男性がこういったポーズを取った時も似たような感情を覚える。
そんな梢江に萌えた人はご一報を。
バキSAGAを10冊くらいプレゼントします。



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