第245話 結婚





結婚。
「バキ」とはあまり縁のない言葉だが、これが今回の副題となっている。
何せ松本梢江の話題だからだ。
そりゃあ副題にする。
そして、読者はシコルスキーならずとも勘弁してくれェッ、オレが悪かったァッ、と叫んでしまう。
いや、これはショウくんだったか。

「どうよ ハンマ バキ」
「わたしの結婚…」

さすが、松本梢江だ。
恋人との会話――しかも結婚という話題で「どうよ」はないだろう。
まるで喧嘩を吹っかけているようだ。
さすが、松本梢江だ。(復唱)

とにかく、梢江がいきなり仕掛けた。
これはもう烈海王がいきなり武器を取り出したのに匹敵するほどの危険度だ。
なお、裸になると勇次郎が鬼を開放した時並みの危険度です。
…SAGAとか。

「もしそれが……」
「ホントのハナシなら」
「スゴく動揺するよ」

だが、刃牙は落ち着いていた。まったく動揺していない。
さすが、巨凶の血を引き、同じ巨凶と闘争しただけのことはある。
これが並みの人間だったら、勇次郎に睨まれた小坊主のごとく膀胱中にある液体を全て垂れ流していただろう

しかし、刃牙は梢江の証言を信じていないようだ。
それでいいのか、松本梢江の恋人よ。
心の奥底にある最後の良心を使ってでも、信じてあげましょうよ。
もっとも、信じられない気持ちはよくわかるが。
俺が刃牙の立場にいたら信じません。それ以前に梢江の眼光が怖くて逃げ出すかもしれませんが。

それにしても刃牙にはなんかやる気が感じられない。
それでいいのか主人公。
こんなのだから人気がないのだ。
もちっとシャキシャキしてもらいたいところだ。
勇次郎と戦うのを決意したのだが、それを詭弁として人生を投げ捨てているように見える。
どうにも無気力な現在(いま)の若者の姿を象徴しているようだ。
それでいいのか主人公。(復唱)


そんな戦いを前に無気力な主人公から、戦いを前に精力的なライバルの話へ移る。
舞台はまたも公園だったが相手が異なっている。
戦いを前に戦いを重ねているようだ。
まるで主人公のようなことをやっている。
本当の主人公も見習ってください。

「信じられねェ…まさに生き写しだ」

Jrの相手となる背広の男はつぶやく。
我々はこの男を知っている。否、この背広と眼鏡を知っているッ!!(ジョジョ風)

「M(マホメド)・アライのファイト見る度」
「思ったものさ」
「一度でいいから…」
「こいつと喧嘩してみてェ」
「…ってな」

今宵のJrの対戦相手はまたも大物愚地独歩だ。
渋川先生を倒して大物食いの味を覚えてしまったのだろうか?
今まで小物ばかり食べてきたので、その反動もあるのかもしれない。

しかし、マホメド父と戦いたかったと言うあたりが独歩らしい。
勇次郎に一度殺されても、また戦おうとしただけのことはある。
右手を切り落とされ、顔面を爆破されても、なお現役であろうとする戦いへの飽くなき執着心が独歩の強さなのだろう。
まさに武神の名に相応しい漢だ。
だからJrには丁重に扱ってもらいたい。
最低1ヶ月は戦ってくださいよ?

(蹴りは――)
(ナシ……か)

Jrのステップを見ただけでファイトスタイルを見抜いた。
さすが烈海王が百戦錬磨と称した格闘家だけのことはある。
経験に関しては「バキ」世界の中でも、トップクラスに位置するだろう。
だから丁重に扱ってください。

そんな読者の想いを吹き飛ばすようにJrは先制攻撃を仕掛ける。
独歩はそれを全てかわす。
それもボクサーのような動きで。
独歩が意外な技術を炸裂させた。
さすが、武神だ。まだまだ底知れない技を持っているようだ。
だから丁重に(以下略)

Jrのジャブを見て力量がわかったのか、独歩が全力の構えを取る。
天地上下の構えだ。
勇次郎、渋川剛気、ドリアン――
強敵と相対するとき、独歩はこの構えを取る。
今の独歩は間違いなく全力だ。
だから(以下略)

独歩は足元に落とした帽子を蹴った。
Jrの頭に一直線に飛んでいく。
それをJrは…受けた。涼しい顔だ。
さらに眼鏡が飛んでいく
これもJrは…受けた。またも涼しい顔だ。
Jrは達人との戦いでこの類の奇襲に対する免疫をつけていた。
それゆえに動じることなく受け止めた。
奇襲でない奇襲は単なる凡策だ。これほど対処しやすい策はない。
Jrは勢いよく迫る独歩に冷静に右のカウンターを合わせる。
これにはさすがの独歩ものけぞる。

「へェ…」
「勉強してやがンなァ………」

しかし、独歩には余裕があった。
鼻血は流しているが、その顔には笑みが宿っていた。
Jrがただのスポーツマンではないと実感できて嬉しいのだろうか。

この奇襲も独歩にとっては前菜にすぎないのだろう。
次週、武神の底力をJrに見せ付けることになるのか。
前菜だけで敗北してしまった達人が少し不憫です。


とりあえず、独歩が不利か。
渋川先生の例を鑑みると敗北は必死、かもしれない。
せめて武神の意地を見せてもらいたいところだ。

このまま瞬殺されると独歩ファンの自分は怒るかもしれない。
渋川先生の瞬殺ですでに致命的なダメージを受けているし。
板垣先生はモハメド・アリが好きだからといっても、ここまでひいきされると困る。
Jrがなんだか範馬化しています。

しかし、やりたいことを好きにやってこその板垣先生だ。
やたら増幅してしまった勇次郎の強さ、好きなように弄られるロシア人とムエタイ、そしてバキSAGA――
どれもが板垣先生の横暴といえるものだが、それに反論できないのが板垣ファンの辛いところだ。
この横暴が板垣作品における最大の面白みだからだ。
でも、ほんの少しでもいいから、3日に1度は読者のことは思い出してください。



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