第247話 ルール



今号のチャンピオンの表紙は刃牙だッ!
しかし、今回も出番はありません。あしからず。
このまま1年くらい出てこなければ、みんなの想い出から消し去られるかもしれない。梢江とともに。


独歩の一撃がクリーンヒットしたJrは悶える。
ここまで苦しんでいるJrは初めてだ。
身体は踊り、ステップも乱れまくりだ。
神の拳だけあって破壊力は高い。奇妙に高い。

Jrはなんとか持ち直すが、冷や汗は止まらない。
独歩の技術に困惑している。
相手の攻撃を見切る反射神経と冷静さがJrの武器であるはずが、今はまったく機能していない。
独歩にとっては最大の好機だ。
だが、あえて攻めない。
反撃を警戒しているというわけでなければ、余裕というわけでもない。
そう。これはつまりアレだ。
グラップラー特有のある時間の始まりだ。

「外したのは俺(おい)らじゃない」
「坊や自らだ」

愚地独歩、驚天動地の解説タイムだ
闘士たる者ならば、自分が優位に立ち次第解説をしなければならない。
不利な場面でも解説する逆解説も有効だ。
最近の例では勇次郎が消力(シャオリー)の逆解説をしている。
だが、実に惜しい。
ここに加藤と本部がいたら、もっと盛り上がっていたことだろう。
「なッ、なんだありゃぁ…」「あ…あれを使いよるかぁッッ」みたいに。
今からでも遅くない。
独歩よ、加藤と本部を連れてこいッッ!!
しかし、本部はともかく加藤は解説できる体調なのかは怪しい。
本部もさりげなく毒手を触っていて、痩せこけているのかも。
だから、大擂台賽に解説にいけなかったのだろうか。
まぁ、単純に中国へ行く金がなかっただけなのかもしれない。
あの道場、儲けてなさそうだし、徳川のじっちゃんの援助もなさそうだし。

それはともかく、独歩が当たらなかった理由を解説する。
竹刀で闘っているようなものを真剣勝負に変えたらしい。
つまりは本気の本気になったということか?

「竹刀と真剣(ほんみ)で 自(おの)ずと生じる間合いの変化―――――――」
「それを おめェさんが見誤った」

独歩の本気にJrは知らぬうちに躊躇したらしい。
なんとなく原理というか気持ちはわかる。
わかるが、それならハンドポケットの意味はなんだったんだ?
まぁ、動いていないということを強調するための演出(パフォーマンス)だったのかもしれないが。
やっぱり派手好きだ。
演出しなきゃ気がすまない性格らしい。

なんにせよ戦いは殺し合いのレベルとなり、より緊迫した立ち合いになる
背景に日本刀とレイピアが見えるくらいだ。
これは刃牙と梢江の戦いがウォームアップから本番へ移ったのと同じことを意味するのだろう。
ごめん、それは嘘だ。

(頭一ツ分ホド小サク見エタ コノ男ガ……)
(今ハ――――――)
(ナント巨大ナ!)

独歩全開のオーラを出す。
虎殺しだけあり、相応の獣の姿が見える。
死合いを幾度も経験した男のみが出す気迫か。
というか心臓止められるわ、手斬られるわ、顔面爆破されるわと幾度も殺されかけている。
それでも実戦上等なのが独歩の怖さ、か。
渋川先生もこのモードに移っていたらJrに勝てていたのかもしれない。
達人の敗因はスポーツで戦ってしまったことか。

(初メテ人ヲ殺ソウトシテイル)

Jrは鉄砲玉のヤクザではない。
こういう事態になればさすがに緊張する。
だが、Jrは覚悟を決めて踏み込んだ。
全力全開の右ストレート。
ヤる気だ。このあたりも戦士たる証か。

だが、独歩は反応しきれないはずのJrの拳を受けた。
受け技の最高峰、廻し受け
ああ、また惜しいッ。
ここに烈海王がいたら、、「マ・ワ・シ・ウ・ケ…見事な」と感心したはずだ。
しかし、どうして「マ・ワ・シ・ウ・ケ」と言ったのだろうか?
ドイルの「ア・リ・ガ・ト・ウ」並に謎言語だ。
もしかしたら萌え単語なのかもしれない。

とにかく、独歩はJrの拳を受けきった。
受けきったのなら反撃タイムだ。

「シッ」

諸手で繰り出された掌底がJrの顔面と急所に命中した。
板垣漫画において急所攻撃ほど愛されている攻撃はない。
バキや餓狼伝を読んでいる人は思い出してください。(ここを読む人はどっちも読んでいると思うけど)
どれだけ急所攻撃が行われているのかをッッ。
とにかくこの勝負、必滅の一手を決めた独歩の有利かッ!?
勝負がわからなくなったところで次回へ続く。


悪いことをすればいつか報いにあう。
急所を責める者は急所を責められる。
そういうワケなのかJrも急所攻撃をついに食らってしまった。
除海王の急所をいぢめた罰として、独歩に責められることになってしまった。
あ、誤解されるような書き方はわざとしています。

なお、久しぶりに廻し受けが披露されたが、実はこのカット、非常に怪しい。
詳しくはチャンピオン本誌を見てほしいのだが、要約するとこうなる。

Jrが右ストレートを放つ

独歩がJrの左手を廻し受けで受ける(ページ上)

廻し受けをする独歩の全体像が描かれる。その時受けているのは右手(ページ下)

つまりはJrが打ったのは右ストレートのはずなのに、廻し受けされたらとたんに左ストレートになり、次の瞬間にはまた右ストレートになっているのだ。
どういうことだ?

1:単なるミス
バキによくあることです。
気にしちゃいけません。
ヒゲなし龍書文も単行本でも直されていなかったし。

2:実はワンツーパンチ
脅威の連続攻撃だったのだッ!
ナルホド、廻し受けでなければ受けきれないトコロだ。

3:青木直伝ダブルパンチ
Jrがボクシングマイスターならば、この男の技もラーニングしなければならない。
次回あたりたぶんよそ見をして独歩の気を引きます。
負けそうになったら死んだふりをします。

いずれにせよ、これには板垣先生の重厚な狙いがあるのだ。
次回以降でこの秘密が明らかにされるのは間違いない。たぶん。

しかし、まぁ、Jrが未曾有のピンチだ。
このままでは独歩が勝つビジョンしか思いつかない。
逆転するとしたら、範馬の血が覚醒みたいに魔法滅土の血が覚醒、なのか?
それだけは勘弁願いたい。
個人的にはJrがここから天性の才能で逆転策を披露しても、独歩は長年の経験でそれをねじ伏せてもらいたいところだ。
Jrがこれだけやったのならば負けても十分な華と得るものがある。
咲いて散るような徒花(あだばな)なんかじゃ、ない。
強くなるためには敗北もまた必要だ。
独歩に敗北したら、今度は死合いの場で渋川先生と戦ってまた負けたりして。
バキ世界屈指の曲者である年長者に喧嘩を売った罰は身体で支払うことになるか?

それにしても刃牙はナニをしているのだろうか?
目下のライバルが切磋琢磨している最中に無気力のままだろうか。
こいつ、本気で勇次郎と戦う気があるのか?
それともあまりに人気のない人生が嫌になって、勇次郎にその幕を降ろさせてもらうつもりなのだろうか?
大丈夫さッ、人類全てが敵でも梢江だけは君の味方だッ!
でも、梢江までもJrに奪われたら刃牙はどうするのだろう?
その時が彼の死期か。



Weekly BAKIのTOPに戻る