第251話 一分
とりあえずは恒例の解説タイムの始まりだ。
アライ父&ジャーナリストの解説&驚愕コンビはすっかり定着してしまった。
ホスト本部&加藤の領域まで踏み込めるかッ!?
今後の楽しみのひとつだろう(たぶん違います)。
ジャーナリストはアライのファンだ。
ファンなら当然のごとく、アライの復活に期待する。
そうッ!Rやグリチャンの復活に期待しない走り屋が存在しないようにッ!
ともかく、アライが壊れた原因のひとつにボクサーから受けた何万ダースのパンチをジャーナリストはあげた。
殴られて壊れるボクサーは多い。
パンチドランカーになったり、パンチ恐怖症になったり、とにかくいろいろだ。
アライ父が壊れた原因はやはりこのあたりが妥当なのだろうか?
そんなジャーナリストの言葉にアライ父が反応した。
震えながら、よだれをたらしながら、それでもなおファイティングポーズを取る。
そして、お約束のジャーナリスト大慌てだ。
もはや、立っていることすら怪しいアライ父にこのようなマネをさせるのは酷だろう。
最近、やたら元気なのは気にしないでください。
ボッ
次の瞬間、アライ父のジャブがジャーナリストの髪をかすめた。
かすっただけでジャーナリストの髪がパラパラと落ちる。
バッ ババッ バッボッ
脅威の連打が次々とジャーナリストをかすめる。
普段はやばげなアライ父からは想像もつかないようなパンチだった。
これは引退した選手のパンチではなく、現役の戦士のパンチといっても差し支えないだろう。
「助け…ッッ」
ジャーナリストはお約束の言葉を叫んだ。
これはショウくんの台詞と同様のものだ。
ジャーナリストとショウくんは実は兄弟なのか?
雰囲気的に似ている部分があるし、同じ日本人なのでその可能性は否定できない、かもしれない。
とにもかくにも、ジャーナリストの悲鳴を聞いたアライ父はアゴに当たる直前にアッパーを止める。
このままだったらジャーナリストが失神しそうな勢いだった。
失神したら足元の鉄パイプで起こすんだろうなぁ…
「誰が信じる……?」
「60歳を超え病に侵されたチャンプに…」
「まだ全盛期の動きが出来るなんて…」
やっぱり驚愕するジャーナリストであった。
ここ数週間驚きっぱなしだ。
夢見たインタビューが驚愕の連続なのは幸せなのかは当人にしかわからない。
しかし、60歳を超えた格闘家が全盛期の動きができるのはすごいことなのだろうか?
いや、現実的に考えればすごいことです。
だが、バキ的に考えれば事情は大きく変わってくる。
なにせ75歳の柔術家や97歳の死刑囚や100歳の拳法家や146歳のムエタイ潰し海皇がいるくらいだ。
いまひとつインパクトに欠ける。
これがマホメド家の最大の弱点か?
少なくとも世間的にはそうです。
「一分だけなら…」
「わたしは今でも世界チャンピオンだ」
アライ父は萌えグッズに向けて全力疾走した後のヲ○クのように疲れていた。
…ごめん、表現が悪かったです。
とにかく、アライ父は1分しかまともに動けないようだ。
これでは現役復帰は無理っぽい。
だが、中国拳法を習い延命技術を習えば…あるいは…
「そして…」
「ボクシングはわたしを壊しちゃいない」
「Jr.(息子)が…」
「息子がわたしをブッ壊した」
アライ父が衝撃の新事実を述べた。
アライ父を破壊したのはJrだったらしい。
一見さわやかなJrに黒い過去があることが明らかになった。
アライ流完成のために自分の肉体を捧げた父とその贄によってアライ流を完成させた息子。
マホメド家は実は範馬並みに暗い家系だったのかもしれない。
自分を破壊した張本人を告白したアライ父の顔に憎悪の念はなく、どこか満足げだった。
格闘家としてダメになったことよりも、息子がアライ流を完成させたことの方が嬉しいのだろうか?
おそらく、そうなのだろう。
アライ流は修羅道だ。
その頃、父親を破壊したJrのパンチがジャックの顔面にクリーンヒットしていた。
だが、おかまいなしに数多の格闘家を屠ってきたジャックの得意技殺人アッパーが炸裂するッ!
しかし、Jrはいつもどおりにスウェーでかわす。
アッパーのスキを狙い、アゴに一発ッ!
ワンツーの原理で頬にもう一発ッ!
カウンターからの連続技という高度な技術をJrは見せる。
だが、ひるむジャックではない。
これまたおかまいなしに強力な右フックを放つ。
しかし、この強引な一撃をもJrはスウェーでかわす。
Jrは攻撃の後はすぐさま回避の体勢に移っている。
完璧なまでのヒットアンドアウェイ。完璧なまでのJrペースだ。
(イッタイ………)
(ドウイウ男ナノダッッ)
Jrには汗が流れていた。
余裕がないのか苦しい顔をしながら必死になってジャックを殴る。
Jrのパンチを食らった相手は例外なく大ダメージを受けていた。
当たり所が悪いとワンパンチKOになるくらいだ。
だが、ジャックは一向にひるまない。
この異常なタフネスにさすがのJrもあせったのか。
ついにジャックの前蹴りがどてっぱらに命中する。
Jrは壁まで一気に吹っ飛ぶ。
かろうじてガードしたようだが、ダメージはまったく軽減できていないようだった。
(コンナ怪物ヨリ……ッッ)
(バキ・ハンマハ強イノカ!!!)
血と胃液?をJrは吐き出す。
今までに見せたことのない苦悶の表情だ。
やはり、範馬はナニかが違うようだ。
このままジャックがJrを叩き潰すのか?
次回へ続く。
前回とは打って変わってジャックが優勢だ。
というか、Jrの攻撃がまったく効いていない。
前回のダウンは演技だったのか?
何にせよ驚異的なタフネスを盾にこれまた驚異的な打撃力で攻めるのはジャックの真骨頂だ。
この調子で押して押して、Jrの連勝をストップさせてもらいたい。
しかし、刃牙はジャックよりも強いのだろうか?
とりあえず、試合結果としては勝っている。
でも、自分は刃牙の方が弱いと思う。
決勝戦で勝てたのは地力よりも、その場の勢いというか運のおかげだと思う。
まぁ、あの時は地力で勝てたとしても、今はジャックが勝つと思う。
ジャックはステロイドを食らい、骨延長をし、ステーキをたらふく食らってストイックに肉体改造をした。(あ、ステーキは関係ないか)
しかし、刃牙は…
SAGAした。毒が裏返った。砂糖水14リットル飲んだ。
以上のプロセスで強くなっている。
こんな範馬でなければ許されないようなトレーニングにジャックが劣るのは認められない。
おそらく、全国のバキファンのほとんどがそう思っていることだろう。
ジャックは刃牙が梢江とイチャイチャしている間に、陰日なたでトレーニングしていたのだ。
苦労をカタチにしてJrに勝てッ!ついでに刃牙をボコれッ!!
しかし、父親壊しのJrにもまだ武器は残っていそうだ。
ジャックはまだまだ油断できない。
でも、Jrの技は地味なのが多いから、特に見せ場もないままやられるのかもしれない。
ただのパンチでアライ父を壊したのなら、なんだかちょっとだけ寂しい。
もしくはひそかにマスターした消力(シャオリー)でジャックの打撃を無効果するとか。
でも、壁が周りにあるから消力の効果はあまりなさそうだなぁ。