第264 誠意


ついに範馬刃牙VSマホメド・アライJr.のカードが組まれようとしている。
しかし、ここに来るまでに回り道をしすぎだ。
今や満身創痍だし。
やはり、達人と独歩に喧嘩を売ったのがまずかった。
花田と加藤に喧嘩を売っていれば、こんなヒドいメには遭わなかったのに。

「おぬしに………」
「あの怪物と戦う勇気があるかのォ」


徳川のじっちゃんはJr.に問いかける。
怪物といっても、範馬勇次郎やガーレンのことではない。(ガーレンを怪物と呼べる時代はかなり前に過ぎ去りましたが)
現在、やる気がミジンコほどくらいにしかない刃牙のことを指しているのだ。
夜の戦いにおける刃牙はまさしく『怪物』の名に相応しい。
ティッシュ箱をいくつも空にするまで、ヤり合う。
そして、別空間にいる読者に再起不能のダメージを与える。

ご老公の口ぶりからするにJr.が戦うとはあまり思ってはいないようだ。
それとも挑発されたらついついノってしまうJr.の弱点を突くためにこういう言い方をしているのだろうか。
おそらくはそうかもしれない。
背後のアライ父が邪悪な笑みを浮かべているし。

「Mr.トクガワ」
「残念ダガソノ男ニソンナ勇気ハナイ」


すかさず、アライ父の援護が入った。
本気でそう思っているのか、それとも挑発するためなのか。
いずれにせよ、Jr.を侮辱する言葉だ。
アライ父は建前だけかもしれないが、Jr.が戦いを断ると考えている。
前回といい、とことん嫌な親父を演出している。
これが勇次郎なら…親馬鹿爆発だ。

それにしても、日本人のご老公を相手にしているからか、いつも通りのカタカナ語に戻っている。
板垣先生らしいわりと細かい演出だ。
ドリアンがカタカナ語になったりならなかったりだった過去は忘れよう。

「戦イヲ避ケル理由ハ無限ニ用意デキル」

アライ父はJr.が言い訳の達人だと暗に言った。
怪我をしているから、熱があるから、時期が来れば――などは言い訳らしい。
過去、Jr.はもう勝ったから(渋川戦)、怪我をしているから(独歩・アライ父戦)という言い訳をしている。
さすが、父。息子の言い訳を把握している。

なお、「時期が来た」や「勝つ負けるは関係ない」という言い訳も有効だ。
そんな立派な御託を並べて、240話以降まったく戦っていない主人公がいます

「ソレハチョットダケ違ウ」

Jr.が父の言葉をちょっとだけ否定した。
前科3犯のため、全てを全て否定できないようだ。
これが範馬刃牙なら、話術で全てをねじぶせそうだ。
話術においては刃牙の方が一歩上かもしれない。
それよりも親子同士の会話くらい、平仮名で話そう。

「無謀ナ戦イヲ避ケルタメトハイエ」「僕ハ適当ナ理由デゴマ化シタクハナイ」とJr.は続ける。
つまりは立派な言い訳で誤魔化すということか?
「だからヤる時期が来た」と言いながら、刃牙とまったく戦わないつもりだろうか?
何にせよ、「適当ナ理由デゴマ化シタクハナイ」という言葉自体が、そもそも言い訳に感じる。
まぁ、ベストコンディションでない以上、無謀な戦いを避けるのも武術だ。
前にも書いたが、堂々と逃げればいいのだ。

「コノ国デハ最上級ノ誠意トハ」
「コノ姿勢(フォーム)ダトイウコトハ知ッテイマス」


Jr.がご老公に誠意を見せるべく正座する。
正座は外国の人にはない東洋独特の文化だ。
MMRではモアイが正座していただけで東洋文化が関係している証明になるほどの独特の文化だ。

MMRは置いておいて、とにかく自分の知らない文化で自分の意を示すというのは、立派な誠意だ。
そして、Jr.は正座だけではなく敗北のベストオブベスト土下座をした
凛々しく達人や武神を屠っていた時には想像もできなかった姿だ。
しかし、今はそんな姿が妙に似合う。
なんだかシコルスキー並みだ。
この調子で土下寝をするかもしれない。

「徳川サン」
「アナタハコンナ僕ニ」「期待シテクレマシタ…………」
「ソノ…」「期待ニ…………………………………」


「全力デ」「応エマスッッ」

逃げるかと思ったら、Jr.は真っ向から戦うことを決意した。
これにはさすがのアライ父もご老公もビックリだ。
…もしかして、戦わないと素で思っていたのだろうか。
イロイロな意味で恐ろしい二人だ。

Jr.はさすがにもう逃げられないと思ったのだろう。
だから、刃牙との戦いを決意した。
また、逃げては梢江と結婚できないと思ったのだろう。
いや、梢江とはそもそも結婚する必要はない。

「……………………………ソレガ…」
「父ノ教エデス」


アライの血筋の武器は強きハートだ。
その強きハートこそが、父が教えたモノだった。
Jr.はこのことを父との戦いで思い出したのか。
そして、父は息子の言葉に驚く。
これでこそ我が子、と心の中では親馬鹿炸裂中なのかもしれない。

「君の勇気と誠意」
「しかと受け取った」


戦士の表情(かなり主人公っぽい)になったJr.にご老公は敬意を表した。
誠意200%の土下座だった。
これで誠意がないなんて言ったら、Jr.のストレートかアライ父の掌底が飛ぶところだ。

しかし、勇気というのはどうだろう。
対等の相手に挑む時に勇気なんて言葉は普通使わない。
格上の相手に挑む時に使うべき言葉だ。
ご老公は満身創痍のJr.が刃牙に勝てるとはこれっぽっちも思っていないのか?
読者的にはこれっぽっちも勝てるとは思えない。

「私ノ予想トハ」
「チョットダケ違ッテイタナ」
「チョットダケド」


アライ父はつぶやく。
Jr.が刃牙との戦いを断ると予想していたのなら、Jr.の決意はちょっとだけの違いでは済まされない。
あんなことを言っていたのだが、Jr.は刃牙と戦うと心の中では思っていたのだろう。
ちょっとだけ違っていたのは、やはり土下座だろうか。
さすがに土下座して挑戦を受けるなんて誰も予想がつかない。

とにかく、Jr.は刃牙との戦いを決意した。
アライ流の武器、拳と脚を失っていても、なお決意した。
グラップラーならこれくらいの怪我だと数日で治ることだろう。
だが、それでも勝てる勝負なのかは怪しい。
今のJr.は完全に落ち目だ。どうしても、刃牙には勝てそうもない。

だが、肝心なのは刃牙の方だ。
あっちが受けてくれなければどうにもならない。
戦いを避ける理由を無限に用意して挑戦を反故にしそうな気がする。
現に今までそうだったし。



そんな不安が渦巻く中、徳川邸でご老公と刃牙のマネージャー?が会話していた。
会話の内容は当然刃牙がJr.と戦う意志があるか否かだ。
でも、お先は真っ暗だろうな。
あのやる気のなさはもうどうしようもない。

刃牙のマネージャー?は21巻などに出てきた人とは異なる。
前の人は黒髪だが、こっちは白髪だ。
知らぬ間に人事異動が起きたのだろうか。
なお、新マネージャー?の髪型や髭はドリアンに似ている。
もしや、洗脳されたドリアンなのか?
大擂台賽でポイ捨てされた後にご老公が改造したのだ。たぶん。

「刃牙はなんと…」

「受諾いたしました」
「全力で迎え撃つと…………」


え?刃牙が挑戦を受けた?
これには読者もご老公もビックリだ。
ご老公も刃牙が戦うとは思っていなかったのが、なんだかなぁな感じだ。
それだけ今の刃牙は傍目から見てわかるほど腑抜けているのだろうか。

まぁ、きっと今の刃牙はJr.の怪我の具合を梢江から聞いているのだろう。
そして、ご老公は半死人の男とは戦うことはないだろう、と予想した。
だが、外れた。刃牙は半死人にとどめを刺すことにしたのだった。
範馬は容赦がない。ロシア・ブラジル・ムエタイの3大かませ犬を遠慮なく叩き潰している。
そのため、Jr.も遠慮なく陵辱することだろう。
主人公の役目じゃねェ。

とにもかくにも、刃牙が出てこないところで刃牙VSアライJr.のカードが成立した。
というわけで、刃牙は今回も登場しません。
…大丈夫か、主人公。



場所はTAKE BUILDINGへ移る。
ここはJr.が初登場時(第160話)に訪れた懐かしい場所だ。
同時に梢江とJr.の出逢いの発端にもなった場所である。
…読者は数年後にJr.×梢江に悶絶することになるとは誰が予想できたであろうか…

タケビルのジムの一室を借りたのだろうか。
Jr.はサンドバックに向かっている。
背後にはJr.初登場時に生贄になったかませ犬デイヴがいる。
うわ、スゲェッ!デイヴが復活しているよッ!!
デイヴ久し振りの登場にバキファンは歓喜の声をあげたことだろう。
デイヴのことを忘れてなかったんですね、板垣先生。
そのついでにたまにはサムワンやシコルスキーのことも思い出してあげてください。
今更あいつらが復活しても、なんだかなぁ、といった感じですが。

完治していない拳でJr.はサンドバックを叩く。
だが、叩くというほど力を入っていない。
サンドバックに触れるという表現の方が正しいくらいの貧弱な打撃を繰り返している。
それだけのことでJr.の拳には激痛が走り、顔面は冷や汗に包まれる
…刃牙との戦いが不安になるバッドコンディションだ。

だが、それでもJr.はサンドバックを叩く。
冷や汗まみれで叩く。後ろのデイヴも冷や汗で応援しているぞッ!
というか、鬼の子と神の子、どっちが主人公だっけ?
刃牙VSJr.のカードが暗雲に包み込まれる中、次号へ続く。



刃牙とJr.、双方のやる気は問題なさそうだが、どうにも片方が重傷というのがマズイ。
このままだとその間実に2秒で戦いが終わりそうだ。
こんな結果になると地下闘技場はマズいことになるだろう。
大擂台賽よりも数倍下品な客がいるのだ。
当然のごとく暴動が起きる。
観客VS範馬刃牙の戦いが勃発するッッ。
…これがJr.の狙いなのか?

梢江の関係ないところでJr.の(かつての)望みは叶った。
最初からご老公にお願いしていれば良かったのに。
結果的には梢江に結婚を申し込む必要はまったくなかったのだ。
そして、梢江が出てくる必要もなくなる。
Jr.は父に負けたのにオーガストで梢江と逢おうとしていないので、これは実にいい傾向だ。
そもそも、刃牙と戦うのにどうして梢江と結婚する必要があるのだろうか?
おそらく慣れない日本語だから、使い方を間違えたのだろう。

今の刃牙はチマチマ出てくるどころか、出てくるべき場面で出てきていない。
いったい、ナニをやっているのだろう?
…きっと、何もやっていないんだろうなぁ。
もしかしたら、勇次郎に挑んで満身創痍状態なのかも。
とすれば、条件は五分。Jr.にも勝機はある。
しかし、刃牙はジャックとの戦いの最中に解放性骨折をしたのに、戦っている最中にただの骨折になったという恐るべし回復力の持ち主だ。
大怪我くらい数日で治ってしまう。
やはり、Jr.不利か。
倒すためにはここぞとばかりにデイヴの力を借りるしかあるまい。
それにしてもデイヴの顔は変わったなぁ。
今のデイヴはかなり丸い顔になってしまっているように感じる。

デイヴといえば、Jr.にボコボコにされた経験ありだ。
そのため、相応の恨みを持っていることだろう。
そして、Jr.は今都合良くバッドコンディション。
そう、復讐のチャンスだ、デイヴッ!!
いくらデイヴといえど、サンドバッグを叩くのが精一杯の男くらい楽に屠れるだろう。
それともJr.の傷を癒すべく、デイヴSAGAが開始されるのか?
ウホッ…いいアライ…やらないか?状態をどう潜りぬけるJr.。
今の脚だとデイヴのナイスタックルを自慢のスウェーでかわせないぞ。
そして、グラウンドの勝負になればデイヴの有利だッ!!


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