EPISODE12 シンフォギア
クリスが絶唱を歌いフィーネの野望を阻止した。
だが、それと引き替えにクリスは流星になった。
現がMeteorLight。
「『さよなら』も言わずに別れて、それっきりだったのよ」
「なのに、どうして……ッ!」
怒濤の展開を物語るようにOPなしで物語は展開される。
BGMは流星となったクリスを物語るようにMeteorLightだ。
MeteorLightはクリスの結末を予期していたものなのか?
流星になったクリスを見て未来は震える。
クリスの頑なな心を溶かしたのは未来の力が大きい。
二人とも再会を臨んでいたに違いない。
クリスなんてあれで寂しがり屋だから、未来と再会すれば嬉しさ溢れてさくらやに行くに違いない。
で、安さが爆発していると大はしゃぎ。
しかし、ここからクリスの最期が見えるのか。
恐ろしいカメラ機能だ。
二課の情報収集能力はとんでもない。
「お前の夢……そこにあったのか」
「そうまでしてお前が夢の途中と言うのなら俺たちはどこまで無力なんだ……ッ!」
弦十郎もまた慟哭する。
弦十郎はクリスの夢を見届けた。
それを守るのが大人(OTONA)の仕事であるというのに、傍観することしかできない自分を不甲斐なく感じる。
……あれで見届けたことになるのかな。
OTONAの観察眼は凄まじい。
「雪音……」
翼もここに来て初めてクリスの名前を言う。
名字だけど。
立花といい名字で人を呼ぶ翼だ。
そんな中で奏だけは名前で呼んでいた。
これが距離感というものか。
そして、響が絶叫し前回のラストに繋がり、サブタイトルが描き出される。
初めて見た時はやけくそ気味なフォントだと感じたものだが、
シンフォギアの怒濤の展開に耐えるにはこれくらい力強くなければ不可能だろう。
むしろ、シンフォギアのロゴの真の姿とも言えよう。
この別れを示唆する場面から始まる構成は第1話と同じものだ。
最終話を目前にして原点に立ち返る演出である。
シンフォギアの演出において繰り返しと比較が多用されている。
ならば、これもその一部であろうか。
「そんな……せっかく仲良くなれたのに……」
「こんなの、嫌だよ」
「嘘だよ……」
戦う覚悟はすれど、別れる覚悟はしていなかった響はがっくりとうなだれる。
その最期を見せられただけに、いつの間にか壊れていたリディアンよりもショックは大きいのだろう。
同時に心臓が毒々し色を伴って鼓動する。
幾度も繰り返されてきた演出である。
これがここに来て再び行われるということは……
「もっと、たくさん話したかった」
「話さないと喧嘩することも今よりもっと仲良くなることもできないんだよぉ……ッ!」
「クリスちゃん、夢があるって言っても」
「わたし、クリスちゃんの夢聞けてないままだよぉ……」
うなだれながらも心臓の鼓動は止まらない。
僅か2ヶ月で戦士と呼べるだけの精神力を求めるのは酷か。
根は年頃の女子高生に過ぎないし、翼語を使ったりもしない。
適合者の中でも響だけ戦場(いくさば)と言っていないのだ。
言えばどうにかなるものでもありませんが。
そして、目に光彩が踊り、表情は黒くなる。
響が戦士として戦うようになってからは、すっかりなりを潜めた暴走描写だ。
感情がネガティブな方向に爆発することがなくなった。
だが、今は思いっきりネガティブな感情を抱いている。
「見た夢も叶えられないとはとんだ愚図だな」
「嘲笑(わら)ったか」
「命を燃やして大切な守り抜くことを、お前は無駄とせせら笑ったかッ!」
SAKIMORIにしてTSURUGIの翼は仲間が果てても、そのメンタルを崩さない。
クリスの姿から思い起こすのは奏が絶唱した時のことだ。
何だかんだで心身共に鍛え上げただけのことはある。
一時期不安定でしたが今は大分安定している。
こうなると翼語も映える。
不安定な時期は常在戦場と言わんばかりに翼語を言っていたから手強い。
「ソレガ……」
「夢ゴト命ヲ握リ潰シタ奴ガ言イウコトカァッ!!」
ここで響が全身真っ黒になった!
明確な暴走描写である。
響が黒くなるのはただ演出ではなく明確な意図が存在していた。
こうなると壁パンするほど危険だ。
ブドウさんだってガン逃げする。
「融合したガングニールの欠片が暴走しているのだ」
「制御できない力にやがて意識が塗り固められていく」
ここ数話で相当量の説明をしているフィーネさんが今回の現象についても教えてくれる。
ガングニールとの融合はけっこうな副作用をもたらしていた。
それを了子として響に関わってきたフィーネが知らないわけもなく、また隠蔽してきたのだろう。
しかし、ガングニールはじゃじゃ馬聖遺物だ。
奏も薬物と吐血なしでは使えなかったし、結構な曰く付きだ。
それを乗りこなしていた奏の技量はかなりのものか。
「まさかお前……立花を使って実験を……」
「実験を行っていたのは立花だけではない」
「見てみたいとは思わんか?」
「ガングニールに翻弄されて、ヒトとしての機能が損なわれていく様を」
「お前はそのつもりで立花をッ!
奏をッ!」
立花(翼語)のみならず奏もフィーネの実験対象だった。
奏の吐血混じりの実験の中で、了子は躊躇いもせず実験を行っていた。
最初からその気であった。
そうなると翼にとってはますます他人事ではない。
ついに暴走状態の響がフィーネに襲いかかる。
今までの戦果はノイズをぶにーっと引き裂いたくらいだ。
大物相手に暴走響がぶつけられるのは初めてである。
弦十郎から学んだ武術が片鱗も見られない原始的な攻撃だ。
それだけにフィーネには届かず吹き飛ばされてしまう。
弦十郎との戦いから戦闘は不得意かと思ったが、案外そうでもなく適合者二人相手に対等に戦えたように十分な戦力を持っている。
弦十郎の戦力が異常なだけだったのか。
「もはやヒトに非ず」
「ヒトのカタチをした破壊衝動」
四つん這いで破壊衝動丸出しの響だ。
破壊衝動と言えばWA2のナイトブレイザーである。
ヒーロー要素盛りだくさんのシンフォギアとWA2だけであり、こうした細かい単語も似通ってくるのだった。
破壊衝動のまま突っ込んで来る響をバリア技「ASGARD」で迎撃だ。
ASGARD……つまりはアースガルズだ。
WAシリーズ皆勤賞のゴーレムの名を冠した技である。
シンフォギアはWA6である以上はアースガルズが登場するのも必然!
この大一番でのアースガルズだ。
前回はロックオンしたし、次はアクセラレイターか?
だが、ASGARDは破られフィーネの肉体はぱっくりと裂けてしまう。
常人なら絶命間違いなしの状況でもフィーネは嗤う。
これには現がSAKIMORIの翼も引く。
今のフィーネはリアル人外だ。
同じ人外の弦十郎と良い勝負である。試合に勝って勝負に負けたけど。
「もう止せ、立花ッ!」
「これ以上は聖遺物との融合を促進させるばかりだッ!」
ただならぬ響の様子には翼もうろたえる。
だが、響の反応は悪い。
それどころか睨まれた。
もはや敵味方関係ない状態だ。
本当に暴走状態である。
そんなわけで翼にも襲いかかる。
タイミングとポイントとスピードを合わせた肘打ちで迎撃するが、制止するには至らない。
響が相手である以上、本気で戦うわけにはいかない。
が、暴走状態の響はフィーネを真っ二つに裂くくらいの攻撃力を持つ。
許されるのは防戦のみであるし、このままだとやがては大ダメージを負ってしまう。
「立花ァッ!」
制止も聞かずに響は翼に突っ込んでくる。
バラバラだった適合者3人が心を合わせ戦うようになったのも束の間、クリスが落ちて今は響が暴走してしまった。
一つになるのに時間がかかったが、それが分け隔てられるのは速い。
「終わりじゃないッ!」
「響だってわたしたちを守るため――」
「あれがわたしたちを守る姿なのッ!?」
その響の姿の評判は翼のみならずクラスメイトにも滅法悪く、アニメ子こと弓美はそれを責める。
前回からダメなところばかりが目立つ弓美であった。
さすが公式メンタル脆弱。
戦う友人を信じられなかったのは未来も通った道である。
未来の時は友人がヒーローだから何とかなったが、今は友人がジャガーノートくらいの衝撃か。
「わたしは響を信じる」
それでも未来は響を信じていた。
かつて喧嘩したから、響の裡にある心を知ったからこそ、より強い気持ちで信じることができる。
助けられる方も一生懸命信じて諦めない。
響の胸の響は未来にたしかに届いている。
一方で翼は響の猛攻を受け確実にダメージが蓄積されていく。
防戦一方では削られていくばかりだし、反撃するわけにもいかない。
盾ではなく剣だし……
それでも耐えている。響を受け止めている。
「どうだ、立花響と刃を交えた感想は」
「お前の望みであったな」
翼の黒歴史を引っ張り出す。
さすが、二人のことを間近に見てきただけのことである。
傷をえぐり出すのが上手い。
ついでに「戦場とか常在戦場とか言うのはおかしい」とか言えばいいのに。
間違いなく「何がおかしい」ってみんなからそう突っ込み受けるけど。
え、常在戦場って常用単語ですよね?
「人の在り方すら捨て去ったか……ッ!」
「私とひとつになったネフシュタンの再生能力だ」
「面白かろう?」
以後の流れからわかるのだが、フィーネはネフシュタンと融合を果たしている。
傷を再生していたのはネフシュタンの力を借りたのではなく、ネフシュタンと融合していたからできたもののようだ。
クリスの時以上のパワーも融合した結果、もたらされたものだろうか。
こりゃ弦十郎であっても手に余……天ノ逆鱗並みの破壊力を持つパンチがあるし、あれを何発も打ち込めば滅ぼせるか。
再生能力など飛び抜けた破壊力など些細なもの。
「カ・ディンギルがいかに最強最大の兵器だとしても、
ただの一撃で終わってしまうのであれば兵器としては欠陥品」
「必要がある限り、何発でも撃ち放てる」
「そのためにエネルギー炉心には不滅の刃デュランダルを取り付けてある」
「それは尽きることのない無限の心臓なのだ」
再びカ・ディンギルが動き出す。
クリスの絶唱で一撃逸らすことはできたが、それで全てが終わったわけでなかった。
そうなると絶唱でカ・ディンギルを狙い撃っていれば……
その場合はフィーネに妨害されていただろうからあれしか選択肢はないか。
無限の心臓もさりげないWAネタだ。
WAシリーズ最強モンスター、ラギュ・オ・ラギュラの心臓部「ヴォイドジェネレイター」の別名が「無限の心臓」だ。
ラギュ・オ・ラギュラはABYSSにいる。デュランダルもABYSSにあった。
ABYSS繋がりでの無限の心臓である。
ついでに「無限の心臓」の初出はたしかWAシリーズ10周年記念ファンブックである。
そのファンブック内の怪獣図鑑(金子彰史書き下ろし)で記された。
RPGのファンブックに怪獣図鑑というのも狂っているが、そんな人がシンフォギアを作っています。
誇りに思ってください。
バカだけど。
「立花」
「私はカ・ディンギルを止める」
「だから――」
翼はどこか悲しそうな表情と共に決意する。
もう戦えるのは自分一人だ。
ある意味では2ヶ月前に戻っただけとも言える。
剣の日々に戻っただけだ。
けれど、ハッキリとした喪失を抱えている。
そんな翼の心情は関係なしに響の腕が振り下ろされる。
それに対してかつて大人げのない天ノ逆鱗を放った翼は……
アームドギアを捨ててのノーガード、棒立ちである。
真っ向から響の打撃を受け入れる。
そして、抱いた!
暴走した響を受け入れるばかりでなく受け止めた。
一時期の翼には決してできないことである。
各々の成長を如実に感じ取れるのがシンフォギアの魅力だ。
「これは、束ねて繋げる力のはずだろ?」
血に濡れた響の手を掴む。
アームドギアを持たないからこそ、できることがある。
その道を見つけてそう言ったのは響自身であるのに、怒りに任せ脱線してしまった。
決戦に至っても弱さを抱えている。
だからこそ、少女の歌には血が流れているのか。
「〜だろ」という言い方は奏に似ている。
言い方のみならず、響を受け止めるのも年長者としての奏の立場にそっくりだ。
エアー奏を裡に秘めているのみならず、奏を自分の生き方に組み込んでいる。
それは復讐者としての奏ではなく、誰かを守って自分を引っ張っていた奏であり、翼の好きな奏である。
一瞬、響の動きが止まり、そこに久し振りの影縫いだ。
影がある限り、動きを止められるけっこうなバランスブレイカーである。
暴走状態の響をも例外なく止められるようだ。
シンフォギア格ゲー化したら、影縫い起き攻めに気を付けい。
「立花」
「奏から継いだ力をそんな風に使わないでくれ」
響自身に戦う理由があると認め、今は奏からガングニールを継承したと認めた。
こんなことになりながらも、響を信じているのを伺える。
かつて拒絶されただけに響にとって何よりも待ち望んでいた言葉なのかもしれない。
だからなのかはわからないが、響から涙が零れ落ちるのだった。
「待たせたな」
「どこまでも剣と往くか」
「今日に、折れて死んでも、明日に人として歌うために」
「風鳴翼が歌うのは戦場(いくさば)ばかりでないと知れッ!!」
「ヒトの世界が剣を受け入れることなど在りはしないッ!! 」
そして、フィーネと対峙する。
久し振りの剣モード解禁だ。
おお、超格好良いぞ、風鳴剣。あいや、風鳴翼。
今の翼はただ戦うためではなく、戦いの先に待っているモノのために戦っている。
だからこそ、自分の夢のために海外進出を決意した。
翼もクリスも歌に夢を賭けている。
かつてよりも強い決意でいつかを目指せるというものだ。
ここでサキモリズム溢れる戦歌(いくさうた)、絶刀・天羽々斬だ!
翼のバトルシーンでは欠かさずに流れた歌だけあり、決戦の場においても歌われた!
決戦に使われたことでボルテージ鰻登りである。
もはや壮絶な中二病を物語る歌詞も場を盛り上げる要素にしかならない。
戯れるには飽きた。ああ、否、緋の藻屑と消えよ。
まずは空中逆羅刹からの翼の十八番、蒼ノ一閃だ!
逆羅刹による防御から蒼ノ一閃による攻撃に繋いでいる。
適合者の中では随一の戦闘技術を持つだけに攻防共に隙のない連携である。
最近は雑魚退治しかしていなかったけど。
それでもネフシュタンの出力には敵わず蒼ノ一閃は破られてしまう。
だが、すかさず前に出てフィーネを吹き飛ばす。
そこから第3話以来の天ノ逆鱗だ。
かつては過去に縋り付き囚われて放った天ノ逆鱗だが、今は過去に囚われず未来を切り拓くための天ノ逆鱗だ!
翼の変化と決意が表れている一撃だ。
重い!
重さが爆発しすぎている!
前述した通り、シンフォギアの演出には繰り返しと比較が多用されている。
この天ノ逆鱗もその一部であることは疑いようもない。
だからこそ、ひとつひとつのシーンに意味と感動が生まれていると言えよう。
だが、天ノ逆鱗は三重に貼られたASGARDを貫くことは敵わなかった。
ネフシュタンは防御に優れているだけあり、必殺技も防御向きのものだ。
NIRVANA
GEDONは攻撃技だったけど、それはクリスの性格によるものなのだろうか。
だが、天ノ逆鱗は囮だった。
本命は炎鳥極翔斬によるカ・ディンギル狙いだ!
って、ワイルドアームズ6thシンフォギアらしからぬ名前のノリだ。
テイルズシリーズですか。
炎鳥極翔斬はアームドギアを二刀生成し、それを翼に見立て特攻する必殺技だ。
初めての二刀流である。
そして、それを武器ではなく推力扱いとして扱う。
ツヴァイウィングとして歌ってきた翼らしい必殺技である。
「初めから狙いはカ・ディンギルかッ!」
――が、ダメ!
無防備な背中をフィーネに晒すリスクは大きく、翼はあっさりと迎撃されてしまう。
剣が折られてしまったか?
「やはり――私では――……」
早速、精神世界に旅立つ翼である。
出来損ないの剣、生き恥を晒すだけの防人状態である。
せっかく強く成長したのに、未だに届かず足りずか?
「何弱気なこと言ってんだ」
「翼」
「私とあんた、両翼揃ったツヴァイウィングならどこまで遠くへ飛んでいける」
ここでエアー奏が登場だ!
奏は笑っている。
笑ってと願っても笑わなかった奏が笑って翼を見守っている。
戦いの先にあるモノを見据え、そのために戦い歌うことを決意した翼に奏が笑わない道理はない。
(そう、両翼揃ったツヴァイウィングなら――)
(どんなものでも、越えてみせるッ!)
「――立花ァッッ!」
そして、再び炎鳥極翔斬だ。
両翼揃ったツヴァイウィングならどんなものでも越えてみせる!
例え一人でも奏が心の中に生きていると今なら胸を張れる。
迷わずに夢に向かって歩いて行けると断じることもできよう。
どんなときでもあなたはひとりじゃない!
そして、カ・ディンギルを破壊!
すげえ規模だよ!?
第1話冒頭での荒れ果てた町はカ・ディンギル崩壊の余波なのか。
ともあれ、命を犠牲にカ・ディンギルの破壊に成功した。
防人としての使命を果たし、フィーネの野望を阻止したのだった。
「私の想いはまたも……ッ!」
この事態にフィーネはさすがに焦る。困る。
思えば焦って困りっぱなしだった気もするが、まぁそれは置いておいて。
月を穿ち損ねたと言うレベルではない。
せっかく隠れて建造したのに……僥倖に等しき要素をかき集めて起動させたのに……
意外と気苦労していそうだ。むしろ、癖の強い了子のふりしていたくらいだし、気苦労は当然か。
「ぁ……ぁ……翼さん……」
立花響、折れました。
心が折れた表情だ。
友達になれると思ったクリスが死んだ。
憧れて自分を認めてくれた翼が死んだ。
心が折れるには十分な心折設計である。
「天羽々斬……反応途絶……ッ!」
「身命を賭してカ・ディンギルを破壊したか、翼……」
「お前の歌、世界に届いたぞ……世界を守り切ったぞ……ッ!」
二課の面々も翼の最期を見届ける。
付き合いの濃さはわからないが、付き合いの長さなら響以上だ。
各々、駆け巡る想いがあるのだろう。
おそらくもっとも身近にいたであろう弦十郎にとっては、翼の喪失は大きいだろう。
翼の夢を知っていただろうし、二課の活動の合間にアーティスト活動を許可していたのも夢を応援するためだったのだろう。
大人として子供の夢を応援し守るのは義務である。
「わかんないよ……」
「どうして、みんな戦うのッ!?」
「痛い思いして、怖い思いして、死ぬために戦ってるのッ!」
翼の壮絶な最期に弓美は涙して疑問を漏らす。
ただ戦うだけでなく、命と引き替えに戦う。
それは何故か。
アニメならわかるがリアルではわからない。
アニメ好き設定があるからこそ、こうしたアンチテーゼを掲げられるのだ。
「わからないのッ!」
「わからないの……」
SAKIMORIが命を賭ける理由がわからないのかと未来は問う。
かつて響を拒絶した時とほぼ同じアングルながら、その立ち位置は大きく違っている。
未来は響と翼とデートを経験した。
その結果、響も翼も防人であれど普通の人と変わらないことを知った。
クリスも友達がいないと漏らす寂しさを背負った人間だと知っている。
戦っているのは怖い思いも痛い思いも、怖くて痛いほど感じている同じ人間なのだ。
「どこまでも忌々しいッ!」
「月の破壊はッ!
バラルの呪詛を解くと同時に重力崩壊を引き起こす」
「惑星規模の天変地異に人類は恐怖し、狼狽え、
そして聖遺物の力を振るう私の元に帰順するはずであったッ!」
「痛みだけが、人の心を繋ぐ絆ッ!」
「たったひとつの真実なのにッ!!」
フィーネさん、ガチギレである。
終わりの名を意味する者……
地面殴って怒りに任せて計画を吐露する。
月の破壊による重力変動も計算に入れていた。
既存の政治が意味を為さない状況になれば、より強い力を持つ者が頂点に立てるという算段であった。
平成の拳王だな。
痛みだけが人の心を繋ぐ絆。
その痛みを持って統治しようとしたが、翼の懸命の一撃で頓挫してしまった。
フィーネは言語の分裂によって争う人々を見てきたのだろう。
そして、数千年が経った今でもひとつにならずに争っている。
だからこそ、痛みが人を繋ぐという論調になったのだろうか。
何か世知辛い人にも見えてきた。そりゃ地面殴るよ。
「それを、お前は――お前たちはッ!」
腹蹴って髪を掴む。この後、投げつけた。
計画が丸ごと崩されたとはいえ、もはや戦意のないレイプ目の相手を蹴って投げ飛ばして憂さ晴らしをする。
フィーネも弱さを抱えていた。
弱さというか小ささになるかもしれないが。
「翼さん……クリスちゃん……二人とももういない……」
「学校も壊れて、みんないなくなって……」
「わたし、何のために……何のために戦ってるの……」
「みんな……」
心折れた響はフィーネに抵抗も何もできない。
うわごとのように呟くのが精一杯だ。
レイプ目だしヤバい。ちょっとエロい。
響は凹んでも折れない心で戦っていたはずが、今や完全に折れてしまっている。
さて、ここで緒川が避難に成功した人を発見して集める。
相変わらずすごい有能だ。
目の前の戦いに流されるだけでなく、裏方仕事もきっちりやっている。
強さでは弦十郎に敵わないまでも、立派な大人である。
その避難民の中にはかつて響に助けられた幼女がいる。
ここで再び幼女が出てこようとは!
さすが響フィギュアの特典として検討されただけのことはある(金子彰史の頭の中で)。
「うちの子はあの子に助けていただいたんです」
「自分の危険を顧みず助けてくれたんです」
「きっと、他にもそういう人たちが」
「響の人助け……」
幼女の母親は響のことを語る。
響の人助けによって残ったものを弓美は見る。
響は痛くて怖い思いをしただけではないのだ。
「ねえ、格好良いお姉ちゃん、助けられないの?」
「じゃあ、一緒に応援しようッ!」
「ねえ、ここから話しかけられないの?」
幼女はうちひしがれた響を見ても格好良いと言う。
そして、助けたいと望んだ。
助ける方も一生懸命なら助けられる方も一生懸命。
ならば、助ける側が助けられる側になって、助けられる側が助ける側になることもあろう。
痛み以外のモノで響と幼女の心は繋がって絆となっている。
……いい話だから幼女以外の呼び方ないかなぁ。
「ここから響にわたしたちの声を、無事を知らせるにはどうすればいいんですか?」
「響を助けたいんですッ!」
幼女の願いを聞いて未来はただ黙しているわけにはいかない。
ただ助けられるだけでなく、その一生懸命を受け止めた結果を伝えようとする。
そこで校内のスピーカーを使えば、その動力さえ確保できればとなる。
できるならやるしかない。
助けられる側も一生懸命!
「もうずっと遠い昔――あのお方に仕える巫女であった私はいつしかあのお方を、
創造主を愛するようになっていた」
「だが、この胸の内を告げることはできなかった」
「その前に私から、人類から言葉が奪われた」
「バラルの呪詛によって唯一創造主と語り合える統一言語が奪われたのだ」
「私は数千年に渡りたった一人、バラルの呪詛を解き放つため抗ってきた」
「いつの日か、統一言語にて胸の内の想いを届けるために……」
さて、今回のフィーネさんの設定説明タイムである。
あのお方は創造主で、創造主と語るには統一言語が必要となる。
が、そのためにバベルの塔めいた何かを建造していたら、バラルの呪詛により統一言語が失われたというのが大体の流れか。
頼んでもいないのに語りたがり屋である。
だから、あのお方にも想いを言いたがるわけか?
そんなわけでフィーネのコイバナだ。
奇しくもそれは響が了子に聞いたものだ。
時間が経ったとはいえ、ちゃんと問いに答えている。
案外、根は真面目な人なのか?
真面目すぎないと数千年も一人を想い続けないか。
「胸の、想い……」
「だからって……」
「是非問うだとッ!」
「恋心を知らぬお前がッ!!」
胸の中の想いを伝える術として、フィーネはみんなを悲しませる選択肢を取った。
そこに思い切り殴るを選んだ響があれこれ言っても仕方ない気もするが、何か物申したくもなる。
そうしたら涙混じりに怒られた。
これは響が悪いか。
彼氏以内歴が年齢と同じ人間が数千年愛しい人を想い続けてきた人間の気持ちがわかるわけがない。
怨讐にも等しき恋慕だよ。
歪んでいるとはいえ、フィーネにも背負っているモノがある。
その重さだけならば、響たちに匹敵するものがあるかもしれない。
「大人じゃ無理でもあたしならそこから入っていけるッ!」
「アニメだとこういう時身体のちっこいキャラの役回りだしね」
「それで響を助けられるならッ!」
動力を回復させる部屋の小さな穴に緒川は入れない。
そこで弓美が立候補だ!
響を恐れて理解できなかった。
だが、響に助けられた幼女を見た。響の戦いによって残されるものを知った。
それは尊いモノだ。
ならば、それを応援する道を選んだ。
「でも、それはアニメの話しじゃないッ!」
「アニメを真に受けて何が悪いッ!」
「ここでやらなきゃあたしアニメ以下だよッ!」
「非実在青少年にもなれやしないッ!」
「この先、響の友達と胸を張って答えられないじゃないッ!」
アニメキャラがアニメを真に受けて何が悪いと言った!
ものすごい説得力だ。
アニメを真に受けてもいい。シンフォギアはそれだけの力があるド直球であることは疑いようもない。
そして、アニメでありながらアニメを越えた何かがシンフォギアに込められているのではないだろうか。
シンフォギア見て毎週震える心は非実在青少年のものではない。
シンフォギアの魂が入っている名言だ。
「私もお手伝いしますわ」
「だね」
「ビッキーが頑張っているのにその友達が頑張らない理由はないよね」
「みんな……」
弓美のみならず創世も詩織も賛同する。
WA2のフィナーレのような一体感だ。
全てのキャラクターが決戦に向けて動き出している。
だが、肩車しろ!
いい話だなーと思わせておいて、突っ込み所を残すのはさすがシンフォギアである。
だが、それがいい。
シンフォギアは心に引っかかる何かがたくさんあるからこそ、特別なモノになっているのではないでしょうか(チラッ
「シンフォギアシステム最大の問題は絶唱使用時のバックファイア」
「融合体であるお前が絶唱を放った場合、
どこまで負荷を抑えられるのか研究者として興味深いところではあるが」
「もはやお前で実験してみようとは思わぬ」
「この身も同じ融合体だからな」
「新霊長は私一人がいればいい」
「私に並ぶ者は全て絶やしてくれる」
さて、解説が止まらないフィーネさんです。
立ち位置的に博士キャラだから解説したがるのは性分であり自然だ。
また、絶唱については了子の時に既に触れている。
その時の口ぶりからは、むしろフィーネサイドよりも了子サイドに立っていたように思える。
消えたと言っているが了子としての性格が残っている証左なのか?
それにしても誰も並ばぬあのお方と同じ高みに立とうとしたから制裁を下されたというのに、いまいち反省が見えないフィーネである。
実はいっぱいいっぱいということか。
余裕のない態度はその表れか。
(響、わたしたちは無事だよ)
(だから、負けないで)
響がフィーネにトドメを刺されようとしている中で、復活したスピーカーからリディアン校歌が聞こえてくる。
男塾……シンフォギアだッ!
リディアンは響の帰ってくる場所、そのリディアンに場面が移る時は校歌が幾度も使われていた。
リディアンの校歌は響の日常の象徴である。
「どこから聞こえてくる」
「この不快な――歌」
「歌、だと……」
校歌と共に粒子が地面より浮かんでくる。
歌はフィーネにとっては深いなものらしい。
リアル歌が大ッ嫌いなんだの人か。
だが、歌であることに気付くと絶句する。
歌に何か嫌な思い出でもあるのか?
「聞こえる……みんなの歌……」
「わたしを支えてくれているみんなは、いつだって側に……」
「みんなが歌っているんだ……」
「だから、まだ歌える」
「頑張れる」
「戦えるッ!!」
みんなの歌を聴き無事を知る。
支えてくれるみんなは側にいる。
だから、戦える!
立花響、解いた拳を再び握り完全復活である。
響は誰かを支え続けられるほど強くはない。だから、支えられて戦ってきた。
その響が支えられることで復活するのは道理だ!
「まだ、戦えるだとッ!?」
「何を支えに立ち上がるッ!?」
「何を握って力と変えるッ!?」
「鳴り渡る不快な歌の仕業か?」
「そうだ、お前が纏っているモノは何だ?」
「心は確かに折り砕いたはず」
「なのに、何を纏っている?」
「それは私の作ったモノか?」
「お前の纏うそれは一体何だッ!?」
「何なのだッ!?」
予定外にして予想外の出来事に絶句する。
全て疑問形であることがフィーネの混乱を物語っている。
どんどんシンプルな疑問になっているし、リズムもいい。
ここで主題歌Synchrogazerだ!
そして、第1話で出た変身時の柱が3つ立つ。
響の復活に伴い剣さんとクリスも復活した!
変身しながらのSynchrogazerは第1話のラストを締めくくった演出である。
まさか、ここで第1話衝撃のラストを繰り返そうとは……!
「シ・ン・フォ・ギィィッ――ヴウゥワアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
(本来の発音に修正しました)
もはや言葉はないし、あっても足りない。
それでも――少女の歌には、血が流れている。
次回へ続く。
最終回を間近に控え、過剰なまでの盛り上がりだ。
はい、私は落涙しました。超涙流した。
へへへ……
今回の構成は第1話と酷似している。
悲劇から始まるスタート、暴走響という未知の脅威、ツヴァイウィングとその犠牲、響の諦めない心、そしてSynchrogazerをバックに変身……
それらはここまでの流れがあったからこそ、それらはいずれも彩りを増している。
この破壊力はアニメ史上に残ると言っても過言ではない。
シンフォギアはマジとネタのどちらでも壮絶な破壊力を誇る。
常在戦場で爆笑し、シンフォギアで落涙する。
これこそが本当の意味での泣きあり笑いありではないだろうか。
シンフォギアそのものを象徴する作風である。
そして、今は1000000000000℃に匹敵する熱が与えられた。
来週まで真剣に死にたくないナァ。
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