EPISODE13 流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そして――



1シ・ン・フォ・ギィィッ――ヴウゥワアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!
3ヶ月を全力で駆け抜けたシンフォギアもついに最終回だ。
歌の可能性とアニメの可能性をとことん見せつけられた。
その締めもまた可能性に満ちたものであることは間違いない。



「お姉ちゃんたち、かっこいいッ!」

生まれ変わったシンフォギアは幼女にも評判がいい。
そのかっこいいお姉ちゃんたち、剣とかヤンキーいるぜ?
ともあれ、趣味の良さが伺える。
将来はどうなることやら。



「やっぱ、あたしらがついてないとダメだなッ!」

「助け助けられてこそ、ナイスですッ!」

「あたしたちも一緒に戦ってるんだッ!」

クラスメイトも熱い声援を送る。
弓美はすっかりいつもの調子を取り戻している。
「打たれ弱いが立ち直りも早い」という設定の通りであり、不思議でも何でもない。
助ける側も一生懸命なら助けられる側も一生懸命。
響が奏から受け継いだ想いはみんなに伝わっている。



流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そして――
それが最終回のサブタイトルだ。
シンフォギアの副題、「Meteoroid-falling, burning, disappear, then...」の和訳である。
副題にもなったほどだ。
その意味の大きさは推して知るべきか。



「みんなの歌声がくれたギアが、わたしに負けない力を与えてくれる」
「クリスちゃんや翼さんにもう一度立ち上がる力を与えてくれる」
「歌は戦う力だけじゃない」
「命なんだッ!」


神聖衣……じゃなくて、新生シンフォギアは適合者の歌ではなく、みんなの歌で作られたもののようだ。
リディアン学院の生徒から歌などのデータを集めていた。
そうなると生徒の適合係数は一般人よりは高いことが予想される。
その生徒たちが歌ったのだから、それが力と変わるのはごくごく自然だ。

歌は戦う力だけではなく命。
フィーネは歌を自分の野望を達成するための道具としてしか使ってこなかった。
対して響たちにとっては戦う力のみならず、命でもある。
――少女の歌には、血が流れている。
それは歌は命そのものということである。

さりげなく新生シンフォギアには飛行能力があることがわかる。
スカイタワーの戦いで特に飛べないことについて描写されていた。
あの戦いにはそうした意味もあったのだ。



「高レベルのフォニックゲイン……こいつは2年前の意趣返し……」

落ち着きを取り戻したのか、ちゃんと説明してくれるフィーネだ。
2年前のライブでは観客を利用してフォニックゲインを高めていた。
フォニックゲインを高めるには様々な要素、要因があることは間違いないが、その中には物量も含まれていることはわかる。
そこにみんなの歌があればパワーアップだ。

フィーネはネフシュタンの起動及び強奪のためにこの現象を利用した。
だが、時は巡って野望を妨げる要素として立ちはだかった。
シンフォギアの最初の物語と最後の物語で立ち位置が真逆になっている。
フォニックゲインだけでなく、響の立ち位置や守られる側の立場もだ。



(んなこたどうでもいいんだよッ!)

「念話までも……」


出し惜しみのなさには定評のあるシンフォギアだが、ここで新たな設定「念話」だ!
口を動かさずにクリスはフィーネに話しかけている。
心の中に思うだけで相手に伝わるということか。
さて、この念話、非常に重要な設定である。
詳しくは後述。



「限定解除されたギアを纏ってすっかりその気かッ!」

ここでノイズさんを呼び出す。
困ったらノイズさんなのはクリスの元保護者らしい行動だ。
クリスも困ったらノイズを呼び出していたし、これがフィーネ式戦闘術なのだろうか。



(ノイズとはバラルの呪詛にて
 相互理解を失った人類が同じ人類のみ殺戮するために作り上げた自律兵器)

(人が、人を殺すためにッ!?)

(バビロニアの宝物庫は扉が開け放たれたままでな)
(そこからまろびいずる10年1度の偶然を私は必然を変え、
 純粋に力と使役しているだけのこと)


さらにノイズの設定についても教えてくれた。
何でも知っとるわー、この人。
ノイズは人の手によって作り出されたもののようだ。
人間だけを殺す災害かよ!

バビロニアの宝物庫という初出設定も出てくる。
ノイズは存在を異なる世界にまたがらせることで通常の物理法則を無効化する能力、位相差障壁を持つ。
そこから考えると本来は別次元に存在している可能性が高い。
バビロニアの宝物庫はその次元のことを指しているのかもしれない。
超先史文明のテクノロジーの高さが伺える。

その超先史文明の人類はフィーネの血族を除き絶えてしまっているようだ。
御する人間がいなくなったから、ノイズは制御不能の災害となったのか。
フィーネもノイズの操作はソロモンの杖がなければできないようだし。
その原因はノイズが作られた経緯にあるように争いだろうか。
それにしても金子彰史は既に滅んだ先史文明が大好きだ。
WAシリーズも先史文明が出てこないのはWA4くらいである。
オカルト大好きですから……



「墜ちろォッ!!」

フィーネがソロモンの杖から発した閃光は花火のように炸裂する。
今までにない現象だ。




何が起こるかと思ったら大量のノイズが発生だ!
地はノイズで寿司詰めになり、大型ノイズも登場し、空中にも沸いている。
最終回記念のノイズノイズノイズ尽くしだ!
再生怪獣軍団は金子彰史が大好きな特撮のお約束シチュエーションである。



ドヤ顔である。
いや、まぁ、これくらいやればドヤりたくなる気持ちもわかる。
何か自慢したくなる。
この重課金め。

フィーネの前に大量発生したノイズを撃破するべし。
一切気落ちすることなく適合者たちはノイズ撃破に動き出す。
クリスなんて特にノリノリだ。
制圧力なら適合者屈指である。
好き勝手ぶっ放せるのはクリスとしても望むところか。



「翼さん」
「わたし、翼さんに――」


その前に響は暴走したことを翼に言おうとする。
衝動に操られてしまい、翼の胸に拳を突き立ててしまった。
響の弱さが引き起こしてしまった事態なのか。



「どうでもいいことだ」
「立花は私の呼びかけに応えてくれた」
「自分から戻ってくれた」
「自分の強さに胸を張れ」

だが、翼はそれを弱さではなく強さだと賞賛した。
悲劇を引き起こした弱さではなく、悲劇を留めようとする強さを褒めた。
加点法の人だ。

今の翼は包容力溢れている。
やはり、奏の域に達している。
両翼揃ったツヴァイウィングならどこまでも飛んでいけるぞ。



「一緒に戦うぞ、立花」

「はいッ!」

ここでついにやっと共闘宣言だ!
かつてはそれを拒否したが、やがて響を認め、力を貸して欲しいと協力を願い、そして今は共に肩を並べて戦う仲間だと信頼した。
これこそが第2話の響の言葉に対する答えなのだろう。
波乱に満ちあふれた二人の関係だったが、戦いの月日を経て対等の仲間へと行き着いたのだった。




そして、隠し球とも言える合唱「FIRST LOVE SONG」だ!
ついに合唱だ。3人の歌だ!
やるかやるかと思っていたが、実際にやられるとその破壊力はとんでもない。
3人の道のりが険しかっただけになおさらだ。
皆が皆、衝突から始まった。
そこから融和に至るまでの経緯を知るだけに感動もひとしおである。



新生シンフォギアは飛行能力と念話が可能になっただけでなく、その出力も大幅に上がっている。
新生ワイルドバンチ(仮称)で大型ノイズを2枚抜きだ!
かつては大型ノイズには翻弄されるばかりだったが、今は一蹴する強さを身に付けている。



クリスも負けじと大暴れだ。
大型外部ユニットを用意しての「MEGA DETH PARTY」だ。
実弾からビーム兵器に変化している。
ガンダムWのツインバスターライフルやガンダムXのツインサテライトキャノンの次は
ガンダムSEEDのミーティアあるいはガンダム00のGNアームズだ。
とことん平成ガンダム要素の詰まったキャラクターである。

私見ではあるけれど平成ガンダム(正確には非宇宙世紀ガンダム)はわかりやすい格好良さを追求している。
それが顕著だったのはガンダムSEEDで、まぁ後先考えずに格好良さだけを追求していた。
シンフォギアもそうなんじゃないだろうか。
何せスタッフ一同の感じて信じる格好良さがこれでもかと言わんばかりに詰め込まれている。
ならば、クリスが平成ガンダム要素を感じさせるのは必然か。



(すごいッ! 乱れ打ちッ!)

(全部狙い撃ってんだッ!)


響とクリスは歌いながら念話で会話する。
歌いながらというのがポイントである。
念話が可能になったことで歌を中断せずに会話ができるようになったのだ。
それはシンフォギアにおいて非常に大きな意味を持つ。

シンフォギアは「歌いながら戦う」という表現を終始徹底してきた。
歌っている時は口パクが行われ、逆に歌っていない時は口パクが行われていない。
会話する時はBGMで歌が流れていない。
だからこそ、歌ったまま会話するということがシンフォギアの表現の進化になっている。
ここに来てシンフォギアの表現は新たな次元を迎えたのだ。



(だったら私がッ! 乱れ打ちだァッ!)

響は飛び道具も使えるようになっている。
制圧力が大幅向上だ。
そういえば、響には飛び道具系の技がなかった。
OPテーマで遠当てはしていたが、これがその技なのだろうか。

しかし、火薬の量が凄いな。
倉庫に余った火薬を持ち出したのだろうか。
市街地であることをちょっとは考慮してください。



翼も蒼ノ一閃で二枚抜きだ。
10話では飛行する相手に手間取ったのが嘘のようにあっさりと片付けている。
過去のエピソードがあるからこそ響たちのパワーアップを感じ取れる。




本気で後先考えない火薬である。
って、ブドウさーん!?
シンフォギア屈指の人気キャラ、ブドウノイズが再登場したと思ったら一瞬で!
そもそもこのカット自体が一瞬!
火薬も出し惜しみないがノイズも出し惜しみない。
出し惜しみのなさがシンフォギアの真骨頂だと感じさせる戦闘である。



「どんだけ出ようが、今更ノイズッ!」

もはやノイズでは響たちに敵わない。
精々火薬を使わせる程度か。
街を埋め尽くすノイズとて相手にならない。
あのドヤ顔は何だったんだ?



ここでフィーネは奇行に走る。
ソロモンの杖で自分を貫いた。
(さりげなく、ソロモンの杖の形状が変化している)
痛そうだ。痛いんだ。まぁ、痛いよね。
サドであると同時にマゾでもあるのか?



が、今のフィーネは聖遺物との融合体だ。
肉がソロモンの杖に伸びている。
ソロモンの杖と融合しようとしているのか。



「ノイズに取り込まれて……?」

「そうじゃねえ……あいつがノイズを取り込んでいるんだッ!」


ソロモンの杖と融合したフィーネにノイズが集まってくる。
街にいたノイズのみならず、追加で召喚してノイズと合体だ。
街に散布したノイズはこの策のための下準備であり時間稼ぎだったのだ。



「来たれッ! デュランダルッ!」

さらに半ば放置気味だったデュランダルも引き寄せる。
(来たれとか言いながら自分で拾いに行く。聖遺物は自分から取りに行かないとダメ)
デュランダルはABYSSにある無限のエネルギーを生み出す無限の心臓……
これは……これはついにWAシリーズでおなじみのあいつが来るか?
トニーに始まりあいつに終わるのがWAシリーズのおなじみだ。
ならば、シンフォギアも!



……さすがにラギュ・オ・ラギュラではありませんでした。
ともあれ、合体して超巨大ノイズ怪獣の誕生だ。
ううむ、特撮の盛り上げ方をわかっている。
童心に、男心に訴えるものがある。



「街がッ!?」

超巨大怪獣のビームでこれまた大爆発だ。
新生シンフォギアも真っ青の破壊力である。
火薬の出し惜しみ、本気でゼロ!
これこそ最終回ですよ。後先考えない爆発こそ最終回の醍醐味だ!



「逆さ鱗に触れたのだ」
「相応の覚悟はできておろうな」

完全な一体化ではなく内部からの操縦式であった。
逆鱗ではなく逆さ鱗と言うのが金子節だ。
やはり、格好良いぞ金子節。
ラスボスに相応しい巨躯を手に入れた。
これは強敵だ。



「このぉッ!」

まずはクリスがイチイバルフルバーストを発射するが通じていない。
ネフシュタンの防御力を引き継いでいるのか。
そうなると一発一発が軽そうなイチイバルでは分が悪いか。




ならばと攻撃力に優れる翼と響の一撃だ。
だが、貫くことには成功したものの回復されてしまう。



(いくら限定解除されたギアであっても所詮は聖遺物の欠片から作られた玩具)
(完全聖遺物に対抗できるなどと思うてくれるな)


豪華な重課金装備にフィーネもご満悦だ。
ネフシュタンの防御力と再生力にビーム攻撃にはデュランダルの無限エネルギー、制御系統はソロモンの杖か。
3つの完全聖遺物の力を兼ね備えた最強怪獣だ。
一つだけでもシンフォギア装者3人と互角以上の力を持つ。
(ただし、弦十郎には負ける)
それが3つ揃ったというのだから……



(聞いたかッ!?)

「チャンネルをオフにしろ」

「もっぺんやるぞッ!」

「しかし、そのためには――」

フィーネの言葉を聞いて翼と響は何かを閃き、その策を念話せずとも言葉にせずとも行おうとする。
響ほど密着した付き合いがないとはいえ、実に息が合っている二人だ。
これが戦場(いくさば)の絆か。
そして、その策の要は響らしい。



「黙示録の紅き竜、緋色の女『ベイバロン』」
「伝承にあるそいつは滅びの聖母の力だぞ、了子君ッ
!」

フィーネの完全聖遺物怪獣のことを解説する弦十郎である。
す、すげえ。
突然何を言っているのかさっぱりわからないが、妙な説得力と納得力がある。
台詞の節々からシンフォギア!

さて、滅びの聖母ことマザーはWAシリーズのラスボス常連だ。
マザーはWA1(WA:F)、WA2、WA3、WAXFと多くのシリーズのラスボスを務めている。
シンフォギアで4回目だ。
なお、マザーは全次元で9体いるという設定である。
シンフォギアのベイバロンを含めても9体に満たないけど。
金子彰史の世界はまだ広がりを秘めているということか。



「ええと――やってみますッ!」

響は二人の考えを悟り託され、受け止める。
そして、この心強い笑顔である。信頼の証だ。
響は信頼する側から信頼される側になっている。
それだけ成長したのだ。



「ええい、ままよッ!」

「私と雪音で露を払うッ!」

「手加減なしだぜッ!!」

「わかっているッ!」

幾度も死闘を演じただけあり、お互いの考えが手に取るようにわかるのか。
早速、作戦開始だ。
適合者3人がそれぞれ独自の関係を構築しているのが面白い。



蒼ノ一閃?
いや、強化版の蒼ノ一閃滅破だ!
カットインで出すからこそ、こうした強化もわかりやすく伝わり映えるというものだ。
アームドギアを巨大化させての蒼ノ一閃である。
ベイバロンが爆煙に包まれるが大きなダメージはない。



蒼ノ一閃滅破で開いた穴にクリスは突っ込み、内部からのフルバーストだ。
外部からダメなら内部から!
こんな無茶な作戦を即興で考えつく辺り、絆というか似た者同士だ。
二人とも絶唱しているし、無茶する辺りが似ている。
歌を愛する人を失ったのも似ている。
キャラソングの歌詞も似ているのだった。



が、続く翼が本命だ!
翼が道を開き、クリスが引きつけ、さらに翼が締める。
実に連携が取れている。
さすが戦場(いくさば)に生きたベテランだ。




「そいつが切り札だッ!」
「勝機をこぼすなッ! 掴み取れッ!」

「ちょっせえッ!」


二人の連携でデュランダルをはじき飛ばした!
さらにクリスは射撃でデュランダルを飛ばして飛距離を稼いでいるのが心憎い。
脅威の射撃精度の高さだ。
クリスのバトルセンスの高さは設定でも保証されている。絶唱3より)
見事な技術である。
うん、格好良いよね。
格好良いと思ってしまうのは何かおかしい気がしなくもないけど、それがシンフォギアの恐ろしいところか。




「デュランダルをッ!?」

響はデュランダルを手に取る。
すると再び暴走状態になる。
かつてデュランダルを手にした時と同じ現象だ。
新生シンフォギアを纏った身でさえ例外ではなく身が黒く染まっていく。

そこで流れるのは主題歌「Synchrogazer」だ!
最終決戦で主題歌が流れる。
WAシリーズでは幾度か用いられたお約束の演出だし、WAシリーズでなくともそれを行う作品はたくさんある。
だが、あえて言おう。
この演出はズルい! 汚い! 最高だ!



「地上に出ますッ!」
「響は、響のままでいてくれるってッ! 変わらずにいてくれるってッ!」
「だから、わたしは響が闇に呑まれないよう応援したいんですッ!」
「助けられるだけじゃなく、響の力になるって誓ったんですッ!!」


響の危機を今度は見ているだけじゃない。
響を支えるために自分なりの戦いを決意する。
響を理解して受け入れるだけでないのだ。
登場人物の成長を如実に感じられるのがシンフォギアの魅力である。



響は聖遺物の破壊衝動と戦っている。
ギリギリ抑えられているがそれを凌駕するには至っていない。
こうした完全聖遺物と仲良くできているフィーネは超先史文明期の人間ならではか。
その最中にシェルターのシャッターが爆発する。



「正念場だッ! 踏ん張り所だろうがッ!」

まずは弦十郎が駆けつけた!
って、シャッター爆発しましたよね?
今の面子でそんなことをできるのはあなただけですよね?
そういえば、腹を貫かれましたよね?
いや、弟子の正念場に師匠がただ黙している道理はない。
この場に駆けつける理由と駆けつけられる理由は十二分!



「強く自分を意識してくださいッ!」

「昨日までの自分をッ!」

「これからなりたい自分をッ!」

(みんな……ッ!)


緒川を初めとした脇役陣も響を応援する。
みんないいことを言っている。
やっぱり、シンフォギアの大人は格好良い。
自分を信じろという言葉はたしかな信頼から来る言葉だ。
響の意志を信じているのだ。



「屈するな立花ッ!」
「お前が構えた胸の覚悟を私に見せてくれッ!」

「お前を信じ、お前に全部賭けてんだッ!」
「お前が自分を信じなくてどうすんだよッ!」


翼とクリスも響を支える。
二人とも響を信じている。信じているから託した。
翼のみならずクリスも信じているのが胸熱だ。
ユウジョウ!




「あなたのお節介をッ!」

「あんたの人助けをッ!」

「今日はあたしたちがッ!」


そして、クラスメイト一同も声援を送る。
ここはお節介という言い回しが実にいい。
響が応援がなくとも大丈夫だと信じており、その上でのお節介であると言わんばかりだ。
助けられる側も一生懸命だから、お節介。
それでも一生懸命助ける。
響の人助け精神をクラスメイトたちは理解している。
その上で応援しているのだ!



「かしましいッ!」
「黙らせてやるッ!」


フィーネは触手で妨害しようとする。
デュランダルを奪われた今、ビームは使えないということか。
それでも戦闘能力は残っているのだった。
触手ということでエロ同人のネタに使えないだろうか。
いや、シンフォギアはどのキャラも絶望的なまでにエロくないから無理か。



触手攻撃をバリアで防ぐのだが、それがデュランダルを刺激してしまったのか。
響は暴走直前になってしまう。
このままではまた力に振り回されて多くの物を壊してしまうことになる。



「響ィイイイイイッ!!」

その時、未来の叫びが響き渡る。
皆が多くの言葉を投げかけ、最終的にはただ一つの名前を叫ぶに至った。
最後に伝えるのはシンプルな一つの想いだ!




「そうだ――」
「今のわたしはわたしだけの力じゃないッ!!」
「そうだッ! この衝動に――塗り潰されてなるものかッ!!!」


弦十郎の声で、二部の声で、クラスメイトの声で、そして未来の声で響は目覚める。
そして、ついに破壊衝動を克服した!
黄金の翼が光る。
熱い! 熱さが爆発しすぎている!
これぞ金子彰史の真骨頂にして、シンフォギアの真骨頂だ!



「その力……何を束ねたッ!?」

ヒトの意志が完全聖遺物を凌駕する。
今シンフォギアが玩具を越え、先史文明の遺産を越えた証左だ。
フィーネは困惑する。
これは来るか?
WAシリーズ恒例の決め技アークインパルスが来るか?



「響き合うみんなの歌声がくれたシンフォギアで――ッ!!」

ついに出た響の必殺技「Synchrogazer」だ!
みんなの手を取り合い心をひとつにして初めて使える必殺技であろう。
心を繋ぐアームドギアを持つ響にしか使えない響ならではの必殺技である。
今、響はアームドギアをたしかなカタチにして手に握っていると断言できよう。

必殺技はアークインパルスではなかった。
だが、この震え! 熱さ! 感動!
どれもがアークインパルスに匹敵する破壊力だ。
主題歌をBGMにしながら同じ名前を技を放つのも心憎いばかりだ。
うむ、これはアニメ史に残る必殺技だな。間違いない。



「完全聖遺物同士で対消滅――……」

無限のエネルギーを誇るデュランダルと無限の再生力を持つネフシュタンの激突で対消滅を起こす。
対消滅は金子彰史の好きな要素だ。
対消滅バリアとか。
うん、でかいものとでかいものをぶつけて勝負なんて男の子なら大好きで当然ですよ。



で、相変わらずの火薬過積載大爆発だ。
繰り返すがとんでもない火薬量だ。
そして、ここまででAパートという恐ろしい密度である。
舞台裏を語るとキャプチャもこの時点で100枚を越えている。
シンフォギア最終回の恐ろしさを感じるばかりだ。



「お前……何を莫迦なことを……」

さて、夕暮れ。
響はフィーネに肩を貸していた。
倒すべき敵にも肩を貸す。実に立花響である。



「こぉのスクリューボールが」

……はい?
何を仰っているんですか、雪音クリスさん(16)。
毎度毎度よくわからん言葉遣いをしているのだが、今回ばかりはどんな比喩なのか本気でわからない。

だが、視点を変えよう。
スクリューボールは当たり前のことだが、野球の変化球のことだ。
金子彰史と言えば野球大好きでWA3の企画を野球ゲーでどうかとSONYに提案したほどである
(そうしたら100%の本気で却下された。当たり前だ)
そして、WA3のインタビューにおいて野球スピリッツは作品全編に活かされているとコメントした。
つまりはそういうことではないだろうか。
スクリューボールとは野球スピリッツの証左ではないだろうか。
わかりませんか。私も理解に困る。
これが金子彰史でどうしようもないんだよ!

※追記
web拍手で教えてもらったのですが、スクリューボールは変人を意味するスラングだとか。
スクリューボール・コメディという映画ジャンルもある。
実に金子的。



「もう終わりにしましょう、了子さん」

「私はフィーネだ……」

「でも、了子さんは了子さんですから」
「きっと、わたしたちわかり合えます」


伝えられる言葉があるのなら、話をしようということか。
第6話でクリスに語った心情は今になってもまったくブレていない。
相手が黒幕だからこそか。
今の響は怒りに流されるばかりではない。
みんなの想いを背負い、自分の想いを貫いているのだ。



「ノイズを作り出したのは先史文明期の人間」
「統一言語を失った我々は手を繋ぐことよりも相手を殺すことを求めた」
「そんな人間がわかり得るものか」
「だから、私はこの道しか選べなかったのだッ!」

先史文明は現代よりも高い技術を築いていたのは間違いない。
分かれたとはいえ統一された国家があったのだろう。
それが崩れて人と人で傷付け合うようになり、先史文明崩壊の理由となったに違いない。
だから、フィーネは痛みで人と人を繋ごうとした。
相応の挫折と哀しみを抱えていたのだった。



「人が言葉よりも強く繋がれること」
「わからない私たちじゃありません」

それでも真っ直ぐに響は自分の想いを伝える。
言葉よりも強く繋がれるものがあったから、フィーネに勝つことができた。
歌の力の力は偉大だ。
シンフォギア自体が歌の持つ力をとんでもない熱量と圧力で伝えてきた。
説得力がとんでもない。



だが、精神の怪物、フィーネは懲りない。わかり合おうとしない。
ネフシュタンの鞭を振り下ろす。
が、響はかわして寸止めだ。
だが、狙いは響ではなかった。はるか彼方に鞭は伸びていくのだった。



「私の勝ちだァッ!!」

そう、鞭は月に向かって伸びて……
え? 月?




月を引っ張っちゃったよ、この人!?
欠けた月が地球に降り注ぐ。
そこまでは多くの人が予想できた。私もそう予想した。
だが、その要因がフィーネの人力による牽引だなんて誰が予想できるんだ!
凄い。とにかく凄い。
何度繰り返したかわからないけれど、シンフォギアすげえ。
世界遺産に残してもいい発想ですよ。



「月の欠片を墜とすッ!!」
「私の悲願を邪魔する禍根はここでまとめて叩いて砕くッ!」
「この身はここで果てようとも魂までは絶えやしないのだからなッ!」
「聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形がある限り、私は何度だって世界に蘇るッ!」
「どこかの場所、いつかの時代、今度こそ世界を束ねるためにッ!」
「私は永遠の刹那に存在し続ける巫女、フィーネなのだァッ!!」

そして、これである。
月を引っ張ったのだ。相当な負荷がかかったようでネフシュタンの鎧は崩壊していく。
けれど、最後までこの調子だ。
フィーネの恐ろしさはその執念か。
金子彰史、イカれた人間が大好きだからナァ。
フィーネもご多分に漏れないのだった。



そんなフィーネの胸に響は拳を当てる。
叩きつけず、殴らず、ただ拳を当てた。
一陣の風が吹くのだった。




「うん――そうですよね」
「どこかの場所、いつかの時代、蘇る度に私の代わりにみんなに伝えてください」
「世界をひとつにするのに力なんて必要ないってこと」
「言葉を越えてわたしたちはひとつになれるってこと」
「わたしたちは未来にきっと手を繋げられるということ――」
「わたしには伝えられないから」
「了子さんにしかできないから」


精神は未来に遺るフィーネをどう解決するか。
シンフォギアが最終回を迎えるに当たって抱えていた大きな問題であった。
そこで響はフィーネに未来へと想いを伝えることを託したのだった。



「お前、まさか――」

「了子さんに未来を託すためにも」
「わたしが現在(いま)を守ってみせますねッ!!」

フィーネは響の口ぶりに何かを感じ取る。
響は和解が叶わずとも自分たちをフィーネに遺そうとしている。
フィーネが人間に哀しみを伝えてきたのなら、強さも伝えられるのではないだろうか。
人と人がわかり合うということは和解のみに限られたことではないのだ。




「ホントにもう――放っておけない子なんだから」
「胸の歌を、信じなさい」

最後にフィーネは了子に戻り、風と消えた。
胸を触るのは第2話でやったことだ。
あの時はからかってのことだが、今は響の想いを後押ししている。
同じ行為でもその意味合いが異なってきている。
シンフォギアはこのような表現が多い。

了子はフィーネに支配されていたといえど、その中には了子が残っていた。
さすがにあの部分は演技では出せないか。
フィーネと比べると短い人生ではあるが、了子も34年間生きてきた。
その34年間はなかったことにはならないのだ。
あ、了子はサントラの曲名「できる女は34歳」から察するに34歳で半ば確定です。
できる女だから34歳なのはむしろ自然。



最期に自分を取り戻した了子と別れ、皆涙を流す。
付き合いの長い二課のみんなは泣くし、クリスも泣いている。
何だかんだでフィーネは自分を地獄から救ってくれた。
フィーネには了子の一面もあることがわかったわけだし、本物の情を受けてきたのかもしれない。
クリスがフィーネを気に掛けていたのはだからなのだろうか。



「軌道計算、出ました」
「……直撃は避けられません」


フィーネは去っても問題は解決されたわけではない。
引っ張られた月の欠片の問題が去っていない。
隕石などの大質量物質が地球に墜ちる危機を迎える。
よくある出来事だ。
だが、引っ張られて地球に墜ちそうになるのは人類史上初めてだろう。
初めてあって欲しいよ、こんな清々しいバカ。



「何とかする」
「ちょーっと行ってくるから」
「生きるのを、諦めないで」


響は未来に言葉を残して飛び立つ。
フィーネもとい了子が響の言動に何かを感じたのは、命を犠牲にしてでも月の欠片を止めると感じたからか。
自分を犠牲にしてでも誰か守ろうとする決意を感じたからこそ、
人と人は傷付け合うばかりと考えていたフィーネの心を揺るがしたのかもしれない。



そして、ついに響の絶唱だ。
来るか来るかと思ったらついに歌うことになってしまった。
歌詞にはフィーネ、終わりを意味する言葉がいくつも出てくる。
絶唱は終わりを意味する歌ということか……
未来は涙を流しながら見送ることしかできない。
「わたしの大切な親友は戦場で歌を歌い続けた」という第1話の前振りがついに訪れようとしている。



(そんなにヒーローになりたいのか?)

(こんな大舞台で挽歌を歌うことになるとはな)
(立花には驚かされっぱなしだ)

響にのみ任せることなく、翼とクリスも駆けつける。
守りたい大切なものを抱いているのは響だけではないのだ。
みんながみんな、一生懸命。
あとさりげなく成層圏突破済み。
よもや宇宙に出ることになろうとは……




3人は歌い始める。
合唱「FIRST LOVE SONG」だ。
死に場所に赴くのに、爽やかな歌に爽やかな笑顔だ。
3人は死にに行くのではなく、守りに行くのだ。

しかし、いい歌なのだけれど。
なのだけれど、「本当の剣になれた」とか歌われると思わず吹き出しそうになってしまう。
卑怯だよ、剣さん……




(それでも私は立花や雪音ともっと歌いたかった)

(……ごめんなさい)

(ばーか)
(こういう時はそうじゃねえだろ)

(ありがとう、二人とも)


歌いながら念話で話す。
成層圏だし口頭では話せない。
(歌っているのは忘れい)
あのクリスがこういうことを言っている。
いい子だ。本当に友達になれた。



「解放全開ッ! 行っちゃえッ! ハートの全部でッ!」

「撃槍・ガングニール」の歌詞を叫び、一気に月の欠片に突っ込む。
ここで「撃槍・ガングニール」だ。
出し惜しみがない。
本当にハートの全部だ!



(みんながみんな、夢を叶えられないのはわかっている)
(だけど、夢を叶えるための未来は、みんなに等しくなきゃいけないんだ)

(命は、尽きて終わりじゃない)
(尽きた命が遺したものを受け止め、次代に託していくことこそが人の営み)
(だからこそ、剣が守る意味がある)

WAシリーズならエンディング中に行われる各自のモノローグが始まったところだ。
クリスは夢を、翼は奏を語る。
クリスは夢を見失い、翼は奏の喪失を引きずっていた。
今ではクリスは新たな夢を見つけ、翼は奏の意志と意思を継承した。
持っていたコンプレックスの払拭に成功している。



(例え、声が枯れたってこの胸の歌だけは絶やさない)
(夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れッ!)
(これがわたしたちの――絶唱だッ!!)

響は「FIRST LOVE SONG」を絶唱と言う。
一人で歌うだけではなくみんなの心を合わせる最大最後の絶唱か。
まさに絶唱を越えた絶唱!



まず、翼は超巨大アームドギアを生成した。
かつてクリス相手に行った絶唱はアームドギアなしで行う未完成絶唱だった。
今度は完全なカタチによる絶唱だ。
天ノ逆鱗以上の巨大な剣こそが真・絶唱である。
剣さんらしいですね。あ、翼さんでした。



クリスは大量のミサイルを構える。
ものっそい構えている。
超物量主義だ。
増やせばいいと思っているだろう。
そうだよ、増やせばいいんだよ!
そんなスタッフの叫びが聞こえてくる。



そして、響はハンマーパーツをメチャクチャ伸ばした!
いや、設定にあるけど。(響の腕部ユニット
まさか伸ばしに伸ばしてパワーアップを図るか?
いや、伸ばせばパワーアップすることは既に実証されている。
ならば、最大級の破壊力を求めるなら伸ばしまくるしか選択肢はない。

実にシンフォギアはロジカルな構成がされている。
ロジカルな構成がされていることを理由に極限まで無理無茶無謀をやってのける。
だが、それがいい。




「「「うおおおぉおおおおおぉぉおおぉッッ!!!」」」

3人の絶唱がついに解き放たれる。
アームドギアは傷付き、響は吐血をしている。
それでも大切なものを守るために最大最後の絶唱だ。

フィーネには完全聖遺物を自分たちの力で制御することで立ち向かった。
対する月の欠片には自分たちの力を限界まで引き出して立ち向かっている。
ただの消化試合ではないのだ。



「流れ星……」

3人の犠牲によって月の欠片は爆発四散する。
そして、降り注ぐ流星雨を見て、未来は泣き崩れる。
流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そして――



「あの日から3週間」
「響たちの捜索は打ち切られることになりました」
「弦十郎さんからは作戦行動中の行方不明から死亡扱いになると聞きました」


第1話の冒頭に場面は移る。
荒廃した町並みはフィーネとの最終決戦によるものだったのだ。
むしろ、あれだけ火薬を使って原形を留める程度に済んだものだ。

荒廃した町中でもフラワーは経営している。
おばちゃん、生存確認。
そりゃあ簡単に死ぬタマじゃありませんよ。



「郊外にお墓が建てられましたがそこに響はいません」
「機密の関係上名前も彫られてはいません」
「外国政府からの追及をかわすためだと言われましたがわたしにはよくわかりません」
「わたしが弦十郎さんに渡した写真が飾られていれば、
 それだけが立花響の墓標であることを示す寂しいお墓です」
「それでもわたしは響が辿った軌跡の終着に通い詰めている」


戦いは終わったが全てが解決したわけではない。
度々囁かれてきた米国との不和が残されたままだ。
フィーネの問題と米国の問題は別物なのだ。

墓碑銘が刻まれていない墓についても言及されている。
響は生きていなければ死んでさえいない人物ということか。
宙ぶらりんのままである。



「逢いたいよ……もう逢えないなんて……わたしは嫌だよ……響……ッ!」
「わたしが見たかったのは響と一緒に見る流れ星なんだよッ!」


第1話の冒頭を締めくくった場面だ。
写真はBD基準で修正されている。
ちゃんと第8話の写真になっている他、引き裂かれた後が垣間見えるのが痛々しい。
二人の関係が閉ざされてしまったのを示しているようだ。
この修正は整合性を保つ他に物語の意味をより深いものにしている。



「イヤアァアアアアアアアッ! 助けてェッ!」

さて、ここからは第1話にはなかった先の物語だ。
未来の耳に悲鳴が聞こえる。
女性がノイズに襲われていたのだ。
ノイズはフィーネの配下であると同時に根本的には災害だ。
そして、人と人の不和の象徴である。
争いがなくならないように災害もなくならず、ノイズも消えて尽きはしない。



「こっちへッ!」
(諦めないッ! 絶対にッ!)


脅えて動けない女性の手を取り未来は走り出す。
響の人助けの心は未来に継承されている。
奏の心が響と翼に引き継がれたように、響の心は未来に引き継がれている。
人は悲しみにくれるだけではなく、力がなくとも悲しみを乗り越えて前に進める。
未来はそんな人の強さを象徴しているキャラだ。



「お願いッ! 諦めないでッ!」

女性はやがて倒れる。
そこで諦めるなと叫ぶ。
第1話で響が幼女に生きるのを諦めるなと叫んだのと似ている。
あの時は響の裡のガングニールが目覚めた。
だが、未来にそれは期待できないだろう。
それとも密かにガングニール刺さっとくか?



絶対の危機を迎えた時、ノイズが爆発四散!
ナムアミダブツ!
吹き飛んだノイズの色は青い。
実体化しているということだ。
それはシンフォギア装者が現れたということになり……




「ごめん……いろいろ機密を守らなきゃいけなくて……」
「未来にはまたホントのことが言えなかったんだ」


響も翼もクリスも帰ってきた!
空気を読みすぎた登場だ。アンタら、超ヒーローだよ。
未来の驚愕から安堵への表情の変化が実にいい。
未来の感情の移ろいが手に取るようにわかる。
(倒れた女性はまぁあのままで大丈夫だろう)

金子彰史は物語をバッドエンドで終わらせない。
綺麗に物語を畳むことが非常に上手い。
だから、夢を見つけた響たちがただ果てて終わることなどありえないのだ。
わかりきっていたのに、この震え……まさしく金子彰史だ!





「ノイズの脅威は尽きることなく人の闘争は終わることなく続いている」
「未だ危機は満ちあふれ、悲しみの連鎖は留まることを知らない」
「だけど、うつむかない」
「諦めない」
「だって、この世界には、歌があるのだから――」


未来は響と、みんなとの再開を果たした。
だが、世界は未だに悲しみを背負っている。
多くの問題を抱えたままだ。
だが、この世界には歌がある。
気持ちを伝えて繋ぐことのできる歌が存在する。
だから、きっと大丈夫。
生きることを、諦めないッ!



戦姫絶唱シンフォギア完ッ!


そんなわけで長くもあり短くもあった3ヶ月が終わった。
私は金子信者と言うことでシンフォギアにまず期待したのは金子彰史であり、そうした視点から感想を書いた。
だが、いざ始まってみると金子彰史のみならず、監督や声優などのその他スタッフのパワーに圧倒された。
脚本の力、監督の力、声優の力、歌の力、アニメの力をこれでもかと言わんばかりに見せつけられた。
スタッフ一同の全力が尽くし込められたアニメがシンフォギアと言える。

それもスタッフがシンフォギアの可能性をどこまでも信じ切って、高いテンションで作ったからだろう。
シンフォギアはスタッフの熱意を節々から感じることができた。
だからこそ、スタッフが楽しい面白いと思ったことが検閲で省かれることなく、ストレートに視聴者に届いている。
ある意味、狂気に溢れている。
常在戦場言い出す女性キャラや月を引っ張る発想なんてまともじゃない。
そんな後先考えずにその場その場で楽しいと思ったことをそのまま組み込んでいる。
実にシンプルな幼心で作られており、だからこそ視聴者の心を極めてシンプルな形で震えさせるのか。

これをやれば面白いけどギャグになる。だから、普通はやらない。
だが、金子彰史は、シンフォギアは躊躇せずにやってしまう。
そんな要素に満ち満ちている。
そんなハチャメチャな要素をたくさん集めながらも、結果的には熱くなって感動できる作風になっている。
神業とも言える構成だ。

シンフォギアは大人が格好良いアニメだ。
弦十郎は言うまでもなく、緒川も優しさと有能さを兼ね備えたキャラとして要所で活躍している。
フラワーのおばちゃんなどその他大人も魅力的なキャラばかりだ。
だが、それと同じくらい格好良い大人こそがシンフォギアスタッフではないだろうか。
人気を得る、売り上げを出す、時勢に乗る。
そうしたことよりも自分たちの信じる面白さを一番に追求しているようにしか思えない。
そして、その姿勢に甘えることなく最大限の面白さを実現しようと努力している。
ホント、かっこいいです。

さて、本編に絡んだ話。
最終回を迎えたがシンフォギア世界にはまだまだ諸問題が残されている。
ノイズを代表として米国との外交問題がある。
また、いつか蘇るであろうフィーネが何か悪さをする可能性もある。
金子彰史はいつもこのように「当面の危機は去ったけど、根本的な問題は解決できていない」という締め方が多い。
WAシリーズでも黒幕は倒すことに成功すれど、ファルガイアの荒野化は止まることはなかった。
そのことは金子彰史自身がWA3のインタビューで触れている。

だが、それでもシンフォギアは最高のハッピーエンドと断じることができる。
響たちは脅威を打ち払っただけではない。
困難に負けない強い心を手にしたのだ。
そのことはエピローグの未来を見ればわかる。
戦う力がないことを知りつつも、生きることを諦めず誰かを助けようとした。
ならば、困難が残されていることがどれほどの意味を為そうか。
今後の響たちの未来は明るいものに違いないし、困難があってもそれに負けることはない。

WAシリーズ、金子彰史作品はどれも強いテーマ性が掲げられ、それが物語に深みを与え感動をもたらしている。
金子彰史作品を語る上でテーマという存在は切っても切り離せないのだ。
シンフォギアにテーマがあることは疑いようもない。
だからこそ、ブレずに最初から最後まで一貫した物語を貫き通せたのだろう。

そんなシンフォギアのテーマは何なのだろうか。
やはり、歌だろうか。
事実、シンフォギアにおける歌のポジションは他のアニメとは一線を画する。
キャラソンが本編の添え物ではなく、欠かせない要素として独立していることからも明らかだ。

また、歌自体が物語のキーワードとして絡んでいる。
敵となるフィーネは統一言語を復活させ、人類を統一することを目的としている。
対して響たちはそれを歌で阻止しようとする。
響たちの歌はそれぞれバラバラだ。必殺技のカットインの文字だってバラバラである。
だから、ダメなのではない。それでも響たちは歌を通じて力を手にして心をひとつにできた。
(心で会話する念話もそれを表現するためのギミックでもありそうだ)

人は心や言葉がバラバラでも歌があれば通じ合える。
むしろ、バラバラだからこその素晴らしさを歌を通じることで表現しようとしたのではないだろうか。
そのために翼はバベルの塔、カ・ディンギルを破壊している。
あれはテーマに強く密接した素晴らしい演出である。
バラバラでいいのだ。

シンフォギアという作品自体がそのように感じる。
金子彰史を初めとした各自のスタッフがどれもとんでもない個性を発揮している。
尖りに尖っている作風からもそれは明らかだ。
それがシンフォギアという作品を通じてひとつとなり、とんでもない熱量と感動を実現している。
これは統一言語がないからこそ、バラバラだからこそ為せた領域だ。

その歌と主人公たちも絡んできている。
響は生きることに、翼は奏から継承したことに、クリスは夢に歌が関わってきている。
響は現在(と書いていまと読ませる金子彰史)、翼は過去、クリスは未来を象徴している。
現在に迷い、過去に囚われ、未来を見失った主人公たちが抱えていたものを歌によって解決している。

シンフォギアが最終回が迎えたわけなので、感想はこれでおしまいとなります。
閲覧ありがとうございました。
当コンテンツを見てよりシンフォギアを楽しめたのならすごく嬉しいです。
ただ余韻はまだまだ残っているし語れる要素はいくらでもある作品だと感じているので、
今後はコラムめいたものを書いていこうかなと思っています。
とりあえず、風鳴翼考察なんてやってみようかと。
更新周期は不定期になりますが、まったりやっていこうと思います。
ではでは。


・おまけ
度々言及してきたけれど、シンフォギアの作風はWAシリーズとよく似ている。
WAシリーズにあってシンフォギアにないのは荒野成分くらいだ。
そんなわけでシンフォギアに魅了された人々、適合者もといシンフォギアンにオススメできる特にWAシリーズを紹介します。
いや、全作ブレない作風を貫いているので全作オススメとも言えますが。

・ワイルドアームズ2ndイグニッション
特筆すべき部分はいくつもあるが、何よりもその特撮ノリ。
WA1が売れて資金ができたからと円谷プロにモンスターデザインというか怪獣デザインを依頼ほどだ。
全編に満ち溢れた特撮ノリに満ち溢れた気違った作風はシンフォギアの原点とも言える。
シナリオもヒーロー物の解釈であり、シリーズ中でも屈指の人気を誇る。
特にラストバトルの熱さはRPG随一である。
シンフォギアに燃え上がった層にオススメ。
PS1でPSNのゲームアーカイブスで配信中。

・ワイルドアームズアドヴァンスド3rd
初のPS2WAシリーズ。
全てのテキストにルビを振るという驚愕のアイディアを実行した。
それだけに全編に渡って金子節が冴え渡るというか爆発している。
「喋った」に「マシンボイス」というルビを振る発想力はまさに月を牽引したそれだ。
強烈な金子節という点ではシリーズ随一と言えよう。
また、シンフォギアに特にWA3ネタが使用されているので、にやりとできる要素も多め。
なお、今年で発売10周年。

・ワイルドアームズ4thデトネイター
おっさんがパンチしてミサイルを破壊する。
それだけで何がオススメなのかは十分伝わるかと。

・ワイルドアームズクロスファイア
現状におけるWAシリーズ最終作。
唯一、ジャンルがRPGではなくSRPG。
アレクシアとラスニールの関係を初めとして、シンフォギアのキャラやシナリオと類似した部分がいくつも確認できる。
できる女34歳も出てくるし、ある意味ではシンフォギアのプロトタイプとも言える。
PSP。PSNでダウンロード購入も可能。


前述した通り、ここに挙げたシリーズ以外も金子彰史丸出しなので興味のある方は是非。
なお、WA5は金子彰史がシナリオを担当していないので、ちょっと覚悟が必要なのかもしれません。
いや、金子彰史が一部担当した部分は面白いのですが、それ以外は普通のRPGであり金子作品でもWAシリーズでもないというのが私見です。


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