天使の詩2紹介






・概要
天使の詩2は1993年3月26日にPCエンジンで発売された。
一見、シンフォギアと関係なさそうなタイトルであるが、天使の詩2は金子彰史が初めて脚本を担当した作品である。
それ故に作中にはWAシリーズと共通する単語がいくつも出てくる。
また、WAシリーズのBGMを作り上げてきたなるけみちこやキャラデザやグラフィックに関わってきた伊藤志彦、
メディア・ビジョンの創設者である福島孝と言ったWAシリーズの主要スタッフも関わっている。

金子彰史の処女作とも言え、金子彰史を語る上では欠かせないタイトルである。
そして、WA1と共通するデザインが多く見られることから、WA1のプロトタイプとも言える。
天使の詩2はWAシリーズの原点なのだ。


・ゲームとして
今やるととにかく古い。グラフィックが古ければインターフェイス周りも古くて不便が多い。
(グラフィックは後期SFCのようにドット絵のレベルがやたら高いわけでもなく、凡庸なものに留まっている)
PCEのゲームでは名作と言われているが、今やると古さによる辛さの方が勝ってしまう。
CD-ROMなこともあり、当時のクオリティで考えるとBGMや音声の質は抜きん出ている。
特になるけみちこの音楽はこの段階でも十分なクオリティである。後期フィールドBGMの完成度は極めて高い。
こうした部分が天使の詩2の評価を上げているのではないだろうか。
とはいえ、こうしたクオリティが当たり前となった今では他の部分で脚を引っ張られるため、どうしても厳しいのだが。


・シナリオに関して
まだ黎明期だけあって金子彰史の魅力が十全に発揮されているとは言い難い。
展開も飛び飛びでシナリオが練られているわけでもない。
詳細は後述するが主人公フェイトの友人、シオンの心変わりの速さにはなかなか感情移入しがたい。
他にも町中で1度だけあったキャラが次の登場時にはムービー付きで仰々しく殺されたりと、描写が端折られすぎてついて行きにくい面もある。
WAシリーズやシンフォギアで見られた丁寧さは感じ取れず、率直に言って雑だと評価できる。

だが、単純な善悪で括られない物語を初めとしたところどころにある金子彰史らしさはこの時点で健在である。
また、当時を考えるとこの時点で金子彰史らしいメッセージ性を盛り込んでいるのはさすがである。
こうしたメッセージ性はWA1で開花することとなる。


・WAシリーズとの共通点
さて、ここからが本題である。
天使の詩2はWAシリーズとの共通点が極めて多い。
その点においてWAファンなら欠かせない作品である。



まずは通貨であるが「ギミル」である。
WAシリーズの通貨は「ギャラ」のため、一見関連性はない。
だが、WAシリーズには「1ギミルコイン」という名のアイテムが出てくる。
当然、その元ネタはこれとなる。



また、屋内に入ると天井が透けるのはWA1と共通している。
インタビューでWA1の建物の内部をこうした構成にしたことを伊藤志彦が述べていたため、そのため構成が共通しているのだろう。
教会で状態異常を治すのもWA1に共通している。



主人公のフェイトは青髪とロディと造形が似ている。
何らかの意識したものがあるのだろうか。



さて、ここからが特にWAシリーズとの共通点を感じられる事項である。
まずはシンフォギアファンにも馴染み深い「カ・ディンギル」である。
用語だけでなくテレポーターがあることも共通している。
さらにテレポート中に戦闘し、その影響で転送先が狂ってしまうことも共通している。
そのまんまWA1のカ・ディンギルなのだ。



小さなネタだが主人公フェイトの母の墓には花束が置かれている。
これは母の墓に小さな花が献花されていたWA3のヴァージニアと共通している。
なお、この誰が置いたのかはわからないままである。
少なくとも本筋の中で触れられることはない。




また、モンスター名も共通している。
多くのRPGは何らかの神話をモチーフにしているのだから、名前が共通することはままある。
だが、WAシリーズ同様に最弱のモンスターが「バルーン」である辺りはもはや偶然などでは済まされないレベルである。
他にも印象深いものとしてWA3に出てきた「バラル・クォ・ナーガ」や守護獣の「ヌァ・シャックス」によく似た「ラ・シャックス」がある。
「ガンガー」はWA2で出てきた「ガンガル」のプロトタイプか?
なお、ガンガルはパチモノガンダムです。



アイテム名にも共通点がある。
「ルミエナの鏡」は順番を少し変えればWA1のキャラ、エルミナになる。
偶然か意図したものかはわからないが、天使の詩2にはWAシリーズとの関連性を深読みできる部分がいくつもある。




他にもWAに登場するアイテムが出ている。
「仙草アルニム」はシリーズに度々登場している重要アイテムだ。
「月狼牙」はクレッセントファングそのものである。
「フラガラッハ」と「クラウ・ソラス」はWAシリーズの固有名詞というわけではないが、こうした用語にも金子彰史のらしさが伝わってくる。



極めつけは「ルシエド」と「魔剣ルシエド」である。
完全に一致。
天使の詩1ではちょい役扱いだったようだが、天使の詩2では最重要アイテムとして存在している。
WAシリーズでもルシエドは常に好待遇であるが、その存在感は天使の詩2時代から健在であった。
なお、アイテムは他にも「斬り姫の戦装束」や「アースガルズ」などもある模様。
レアアイテムなので入手を断念しました。




地名にもWAシリーズとの共通点が見受けられる。
「古代の闘技場」はWA1にもそのまま登場しているし、「ウラルトゥ山」はWAシリーズに地名として何度か登場している。
WAシリーズの守護獣、エクイテスの名前が登場している。
そして、町の名前に二つ名があるのもWAシリーズと似ている。
この同じ単語をシリーズ間で使うのは実にWAシリーズであり金子彰史の手法である。




さて、登場キャラにも共通点がある。
まず、ハンペンである。ハンペンは古い言葉で「竜巻」の意味を持つという設定がある。
つまりはそういうことである。
ハンペンの設定を見るとマスターと生き別れており、天使の詩2との繋がりを感じ取れる。
WA1発売当時に雑誌で掲載されたザックとハンペンとの出逢いを描いた漫画には、
その生き別れたマスターの影が映っておりそれがトルネードの語るアニスのものとそっくりだったとか。

余談ながらこのハンペンことトルネードは以前金子彰史が参加したゲーム、「ぽっぷ'n まじっく」に登場している。
金子彰史らしさはこうした部分にも生きている。



メス版ハンペン、フィールはWAシリーズとの直接的な関連性はない。
だが、WA1体験版のセーブデータのアイコンはこのフィールだとか。
(WA1製品版のアイコンはハンペンとなっている)




その次はWA3の地味な重要キャラ、ラミアムである。
WA3のラミアムと違って悪人でラスボスだ。
宗教団体のボス以外の設定は被っておらず性格も別物である。
WA3のラミアムは金子彰史自らが天使の詩2との関連性を出したと言っている。
何でも天使の詩2を知っている人ならラミアムを怪しいと疑ってくれることを期待したとか。





金子彰史の特徴である金子節はこの時点でその片鱗を感じ取れる。
キャラの主張や台詞回しは黎明期とはいえ金子彰史であることには変わりない。
妙に愉快な敵を用意する辺りも金子彰史らしい。


・シオンというキャラ


さて、天使の詩2を語る上で欠かせないのがフェイトの友人、シオンである。
天使の詩2のツッコミどころのほとんどを担っているのが熱い。
見た目通りと言うべきか、思慮深い金髪イケメンキャラである。
そのくせ、MP0のガチ戦士キャラなのがちょっと矛盾している気がしないでもないが、それは置いておく。

シオンの凄まじさはその行動である。
シオンはラミアムが教祖を務める宗教、ダーク教団の信徒だ。
だが、フェイトたちの住む町にモンスターの集団が襲いかかり、それがダーク教団の仕業という噂が流れる。
そこでダーク教団を信じるシオンは無実を晴らすためにフェイトと別行動をする。

さて、そこから大体ダンジョン3つ分くらいの時間を経る。
こうして再会していた時には村を滅ぼすクレイジーサイコビリーバーと化していた。
どうしてそうなったのかはロクに語られない。
あまりの急展開に笑いさえ出てくる。



一応、フェイトに劣等感を感じていたこと、出逢って間もないヒロイン、リアーナを寝取られたと説明もとい言い訳はされる。
だが、フェイトのリアーナに対するアプローチは「とりあえず、可愛いから声をかけてみた」レベルのものであり、
シオンはリアーナに対してこれといったアプローチを仕掛けておらず大変逆恨みな印象を受ける。
挙げ句、叫ぶ台詞がこれである。
ダーク教団もといラミアムの真意を知らず、言われるがままに虐殺をした男の言う台詞とは思えないのが熱い。



とはいえ、シオンは根は善人である。
ラミアムの真意を知ると反旗を翻す。
でも、その時もちょっと言い訳臭いのがシオンという男である。
言い訳も私怨が大半なのでちょっとどうしようもない。
それでも最終決戦には駆けつけてくれる。
作中においてシオンは正義らしい正義を為していない気もするが、まぁそれは置いておく。



だが、このシオンという男、ただ力を貸すだけでは済まない。
ラスボス戦後にフェイトを刺すという無茶をやってのける。
これは決して裏切ったわけではなく、自らの命を犠牲にラミアムを打倒するため、つまりはフェイトを守るための行動である。
だからといって刺すというのが凄い。
普通なら良くわからん結界で足止めするところだが、MP0だから脳筋的な行動しか思い浮かばなかったのか。
ともあれ、シオンは最後の最後までプレイヤーを驚かせ続ける。
そして、金子彰史の思いきりの良さを感じ取れる。



そんな生死不明となったシオンだったが、エンディングでは夢か現かはわからないが姿を見せている。
何というか、さすがである。
その行動と言動はツッコミどころだらけだが、だからこそどこか惹かれてしまう。
極めて金子彰史らしいキャラ造形と言える。

さて、ここまで書けばシオンのキャラにWAシリーズのファンはあるものを感じ取れたかもしれない。
主人公に劣等感。
主人公とヒロインを巡っての確執がある。
敵対組織に身を置いている。
敵対組織から離脱する。
知らぬ間に遠い地にいる。
主人公を守るために命を落とす。
ヒロインを主人公に任せる。
行動に迷いが多い。
自分の正義を貫く。
私の目指す正義は君とは異なる。
金髪イケメン。
ヘタれ。
そう、WA4のクルースニクである。
シオンはクルースニクとそっくりのキャラなのだ。

シオンをクルースニクのプロトタイプとして見るとなかなか感慨深いものがある。
クルースニクのようなキャラはこの時点で設計図が出来ているのだ。
シオンは金子彰史伝統の自分の正義を貫けないヘタれキャラなのだ。
マリアさんもな!


・シンフォギアとの関連性




 完 全 に 一 致 。


・シンフォギアファンへのオススメ度
シンフォギアファンというよりもWAシリーズファン向けの一品である。
加えて入手の難度や古くさいゲーム性など今やると辛い部分が多く、なかなか勧められるものではない。
だが、金子彰史に魅了されWAシリーズも走破したような重度の適合者もとい金子信者なら、金子彰史をより理解するためには欠かせない。
それほど天使の詩2には金子彰史らしさが詰め込まれているのだ。

現在、PCEのゲームを扱っているPSアーカイブでも配信はなし。
人気はあると思うのだが発売元の日本テレネットが既に倒産しているため、版権問題がややこしいのかもしれない。
PCEというマイナーハードなこともありソフトハード共に入手が困難である。
それでもプレイするのならエミュレーターが一番か。


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