ワイルドアームズ2nd IGNITION紹介






・概要
WA1の続編として1999年9月2日に発売された。
1999年当時は世紀末ということもあり、様々なRPGが発売された。
シリーズ最大の売り上げを記録したFF8にRacingPoemGameことレーシングラグーンなど、海千山千のRPGが並んでいる。
その充実したラインナップを見ると現在のゲーム業界が寂しく思えてしまう。

さて、翌月の10月28日に同じSCEの看板RPG、アークシリーズの最新作としてアーク3が発売されている。
WA2は成功を収めシリーズとして発展していくが、アーク3はそこでコケてしまい衰退していくことになる。
WA2はより多くのファンを獲得し、アーク3は逆にファンから見放されてしまった。
そうなった要因には諸々の理由が思い当たるが、前作の根底に流れる魂を受け継いだかどうかではないだろうか。
(なお、それは作風の変化とは別のモノである。シリーズものは作風が変わるなんてよくあることです)

WA2はWA1の奥底に流れる濃い血脈をそのままに世に出た。
むしろ、濃くしすぎてしまった。
だからこそ、他のRPGよりもWAシリーズを、そして金子彰史を愛するプレイヤーが増えた。
WA2はWAシリーズにとっても金子彰史にとってもその在り方を強く打ち出した作品と言えるだろう。


・WAシリーズの続編としての要素
WA2はWA1の要素のいくつかがリファインされている。
特に大きいものとしてはFPの扱いだろうか。
WA2ではMPの概念を廃し、オリジナルはFPが必要値を満たしていれば無制限に使用可能になった。
これによりリソースの管理という概念がほぼなくなり、大技も自由に使うことができる。
強力なスキルも後のことを考えて温存しなければならないというRPGの定石に異を唱えたシステムである。

ただそれが手放しに褒められたものかとなるとさにあらず。
このFPの縛りによって戦闘開始直後に使えるオリジナルが限られてしまい、
結局MPを節約するように仕方なく通常攻撃を行う場面が生まれている。
また、ARMを使うキャラは弾薬が必要となるため、このシステムがただの縛りになっていた感は否めない。
(それを踏まえてこうしたキャラは攻撃力が高めに調整されてはいるのだが)
リソース管理がなくなったのなら、1戦1戦の密度を高めなければRPGの戦闘は釣り合いが取れないものだが、
(リソースを無視して大技連発だけで切り抜けられると作業的になってしまう)
生憎とWA2のバランスは大分ヌルい。厳しい見方をすれば退屈でさえある。

この頃からWAシリーズのバトルが若干冗長なものとなっている感がする。
プレイヤーが構築できる戦術の幅が狭く、バランスがシビアでもなく攻略する楽しみがあまりない。
その点、スタッフも憂慮するものがあったのか、何作かこうしたペースで作った後にWA4で改革が行われるのであった。

一方、エンカウントをキャンセルできる「エンカウントキャンセル」の登場により、エンカウントすることへのストレスは大分軽減された。
特に謎解きの過程でダンジョン内を右往左往するWAシリーズと相性が良い。
また、敵のLv以上になるとキャンセルできるようになるため、エンカウントキャンセルができる=適性レベルと攻略の示すにもなる。
ゲーム進行を円滑なものとしているため、WA2のシステム面での一番の功績と言っても過言ではない。


・3D化

(エミュレーターでグラフィックを向上させているため、実機だと若干見栄えが悪くなります)

WA2はマップの3D化が行われた。
視点変更や高さの概念が生まれたことで、WA1にあったアクション性や謎解きが強化された。
また、操作もWA1を踏襲しながらも操作性の良さは変わっておらず、ロード時間も短さもあってストレスを感じずにプレイできる。
こちらは純粋な強化点と言え、またぱっと見でWA1から一番変わった部分と言える。



ハードがPS1のため、今見るとさすがにグラフィックは見劣りする。
だが、細かいオブジェクトを丁寧に作っており、その質感はなかなかのものである。
PS1後期のゲームとして十分なクオリティと言える。


・金子彰史作品として
トータルゲームデザイナーの肩書きを手にしてついにハジけた。
その本性を丸出しにした作風はひたすらに金子彰史。
WA2で金子彰史の虜になった人間も多いことだろう。
そのノリは以後も続いており、WA2で金子彰史は完全に開花したのである。



WA2における金子彰史の代表と言えるのが「怪獣」である。
WA2に出てくるモンスターはあくまでも「怪獣」なのだ。
パッケージ裏でもちゃんと「怪獣」と表記されている。



というわけで全てのボスに怪獣デモが割り当てられている。
バカである。心底、バカである。
さらにデザインも怪獣だ。
それもそのはず、WA2は円谷プロに怪獣のデザインを依頼しているのだ。
WA1の成功で増えた予算を怪獣に割り当てるという暴挙である。
そのおかげでボス戦が非常に印象深いものとなり、またWAシリーズの独自性と金子彰史のおかしさをアピールできている。
加えて怪獣カードと言った「わかっている」ものも用意している。
いわゆるモンスター図鑑は後のシリーズにも出てくるのだが、モンスター1体1体を書き下ろしている(色違いあり)のはWA2だけである。



また、それに伴い全体的に小ネタも増えている。
突然の合体ロボット演出をやってのけるなど悪ノリが光る。
(これはスタッフ一同が妙にノリノリなせいもあるが。金子彰史が自重しなくなったらみんな自重しなくなった)
イベントにおいても変身ヒーローをやったり、カエル怪獣を抱えてカタパルトから射出したり、とにかくノリがハチャメチャである。
このハチャメチャ感はシンフォギアに通じるものがある。

WA2で「前作と単語は同じだが意味や役割が異なる用語」が使われ始める。
その代表格が「ARM」でシリーズによってその意味が異なっている。
シンフォギアにおいてもカ・ディンギルや記憶の遺跡などWAシリーズと同じ単語ながら用法が異なる用語がいくつかある。
これはシンフォギアでも度々用いられた金子彰史お得意の表現である比較と対象のひとつと見ることができるだろう。
この演出は知らなくとも問題はないけれど、知ることでより深みが出てくる。
その点では金子彰史の持ち味は続編が出てから生きたと言える。
(なお、WA1の時点で金子彰史が以前手がけた天使の詩2の用語が登場していた)


・シナリオについて
WA2はシリーズでも特にシナリオの評価が高い。
「英雄」をテーマとしてヒーロー物の解釈を行っており、それはシンフォギアGに通じるものもある。
ラストバトルの盛り上がりは凄まじく、全RPG最高のラストバトルと言っても過言ではない。
金子節も濃度が上がっており、名台詞珍台詞の数々はストーリーを盛り上げている。

一方で全体的にお使いが多めでテンポが削がれる一面も少なからず存在する。
とはいえ、部分部分のイベントが妙に盛り上がるため、プレイしている最中はさほど退屈に感じないのだが。
WA2は特撮のノリを踏襲しているため、
「この流れはお約束のあれをやるのか?」と思った矢先に「ウオオオー! やったー!」と盛り上がれるのだ。
でも、「4つのダンジョンを自由な順番で攻略しろ」を2回もやらせたのはどうかと思います。
4つのダンジョンで苦労も4倍だな!


・ゲームとして
ダンジョン攻略は3D化もあって探索や謎解きの楽しみが増しており楽しい。
が、戦闘は微妙……
金子信者である私でさえ面白いとは言いがたい出来である。
WAシリーズで一番面白くない戦闘かもしれない。

その要因としてはもっさりとした戦闘アニメ、退屈なバランスに加えて各キャラの面倒な仕様だろうか。
アシュレー・ブラッド・リルカの3人はオリジナルの習得が単純であり、シナリオを進めながら楽に収集を行える。
問題は他の3人である。
ティムは倒した敵の数に応じてオリジナルを取得するというシステムが搭載されている。
そのために攻撃力が低く決定力に欠けるティムでわざわざトドメを刺すようにしなければならず、どうにも面倒臭い。
カノンはオリジナル使用時に確率で新しいオリジナルを取得するのだが、それを取得するために戦闘を重ねなければならない。
サガシリーズの閃きのようにゲームに上手く組み込めているとは言い難くこちらも面倒臭い。
極めつけのマリアベルはいわゆるFF5の青魔道師であり、敵からオリジナルを吸収することができる。
だが、マリアベルの加入タイミングは終盤のため、「ストーリーを進めながら自然な形で取得する」とはならず、
「世界を巡ってしらみつぶしに、それもノーヒントで収拾していく」ことになりあまり面白くない。
総じて面倒臭い仕様が絡んでおりテンポが悪くなっている。

もっとも、攻略に必須ではないので、そこが救いと言えば救いではある。
ティムの全体回復オリジナル「ファーストエイド」だけ覚えておけば何とかなってしまう。
一方で取得したからと言ってピンポイントで攻略に役立つということもないのだが。

バランスはやらされている感が強く退屈と言える。
軸となる戦術が決まりすぎており戦術を探す楽しみがなく、全編を通してやることがあまり変わらない。
また、ディスク2以降になると何故かボスのHPが頭打ちになったりと調整も怪しい。
(ディスク1のラスボスが12000、ラスダン道中のボスが10000+10000と差がほとんどない)

反面、戦闘で詰まることはなく、エンカウントキャンセルで面倒なら飛ばせるのでストレスにもなりにくくなっている。
WA2の戦闘は決して面白いものではないと評価はしているが、
その一方でそれが不快感になるほど脚を引っ張っているわけではないと付け加えておく。
何だかんだでなるけBGMの戦闘は盛り上がるものです。
そんなWA2でキャラ事情でも。

-アシュレー
オリジナルがARMのため、序盤は命中率に悩まされる。
パラメーター的にも(優秀ではあるが)どれもこれも2番手ポジションとなっている。
だが、「アクセス」を取得するとあっという間にパーティ最強キャラに変貌する。
変身ヒーローの面目躍如である。
「アクセス」を使わずとも(多額の投資を前提とすることで)万単位のダメージを出せる「フルフラット」も強い。

-ブラッド
HPと攻撃力が高いが鈍いと典型的な重戦士キャラ。
仕事が明確なため、使いやすい。
また、中盤の時点で最強のオリジナル「リニアレールキャノン」を取得するのが印象的である。
「リニアレールキャノン」は1発だけ装弾数を増やして、他は全て攻撃力につぎ込むのが妥当か。
HPの高さからラギュ様戦では主力となるのだが、そのラギュ様戦でも「リニアレールキャノン」は撃てて2発である。
余談ながら最強武器が桁外れの攻撃力のため、最終的には並みのオリジナルを使うより通常攻撃の方がダメージが高くなる。

-リルカ
典型的な魔法キャラ。
ティムと仕事は似ているが範囲に劣る代わりに効果は高めとなっている。
弱点を突けば火力を確保できるため、使い出はなかなか。
最終的には「せいめいのオーブ」を「ミスティック」で使うことで、全体回復+全体蘇生を両立する最強の回復役になれる。
そのため、ラギュ様戦はアシュレー・ブラッド・リルカで固まりやすく、その点では初期キャラ3人の面目躍如か?

-ティム
リルカと比べると範囲で勝っており、特に全体回復かつ行動が速くなる「ファーストエイド」は雑魚からボスまで重宝する。
普段の使い勝手はリルカよりも上か。
オリジナル取得の面倒臭さを除けば便利。
隠しボス戦では尖った強みがないため、控えに回りがちだが本編での便利さを考えると十分な役割を与えられているか。

-カノン
微妙な火力に微妙な体力と完全な2番手キャラ。
何をやっても輝けない悲しい立ち位置となっている。
行動が速さとそこそこの火力が雑魚戦でそこそこ便利なくらいだろうか。
とはいえ、パーティインした時点で最強のオリジナル「ビートイングラム」を覚えると十分頼れる。
難点は「ビートイングラム」を覚えること自体が手間なことと、
必要FPが99のため、そこまで溜めるならアシュレーで「アクセス」した方が手っ取り早いことである。
一応、「パワーブースター」の効果がオリジナルにも乗るため、運任せとはいえダメージ万越えのロマンを持っていたり。
……アシュレーで「フルフラット」すれば確実に万越えするけど。

-マリアベル
正直、弱い。
加入時期が遅く、パラメーターもいまいちと使い出がない。
オリジナルの取得も手間がかかる。
一応、隠しボス攻略において一部オリジナルが役立つため、実質対隠しボス専用キャラ。
それを考えるとカノンよりは立ち位置がいいか?

-アナスタシア
WAシリーズの元祖英雄兼エッチなお姉さんだけあり強い。
が、それを活かせる場面はダンジョンひとつだけで持て余し気味。
もし、ラギュ様戦で使えたら全体自動復活が高性能なのでブラッドの代わりにはなるか?
WAシリーズの期間限定加入キャラは設定上の強さが反映されて強いには強いのだがゲーム的な上限が見えてしまうことが多く、
そこに関しては金子彰史もWA:Fで不満を漏らしている。


・シンフォギアとの関連性
WA2から溢れる特撮のノリはそのままシンフォギアのノリでもある。
また、ノイズたちの怪人怪獣のノリも共通している。
要するに金子彰史の大好きなものがたくさん使われていることが共通している。

主人公のアシュレーと響は「望まぬ形で力を手にした」「変身する」「手にした力に身が苛まれていく」「ナイトブレイザー」と
WA1のロディ以上に共通点が多い。
熱血という点でも共通しているか。

印象的なネタとしては「へいきへっちゃら」「あったかいもの、どうぞ」「ご飯にザバー」はどちらもWA2が初出である。
そして、セレナとマリアの正体不明の聖遺物ことアガートラームはWA2における最重要アイテムだ。
英雄としてのアナスタシアとナスターシャ教授の繋がりも似ているのもファンからすると感慨深い。
作品全体のノリが似ているからか、シンフォギアとの関連性は深いと言えよう。


・シンフォギアファンへのオススメ度
前述した通り、戦闘の面白さでは今ひとつと言わざるを得ない。
だが、それ以外、特に金子節は全面に渡ってオススメできる。
金子彰史が我を出しまくっているので、シンフォギアのような作風に期待できる一品。
マムロケットやマム変形のようなシリアスな笑いも多いので、そっち方面でも楽しめるかと。

現在、PSNのゲームアーカイブスで600円で販売されている。
PSPやVitaを使えばどこでも手軽にプレイできるので、興味がある方は是非。


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