ワイルドアームズアドヴァンスドサード紹介






・概要
2002年3月14日に発売されたPS2初のWAシリーズである。
PS1からPS2へのハード的な変化と進化は大きく、WAシリーズもそれに伴いグラフィック以外の部分でも大きく変わっていく。
だが、ゲームに限らずアニメでも3作目(3期目)というものはなかなかに難しい立ち位置である。
「2作目までは面白かったが3作目はいまいち」というシリーズが頭に浮かぶ人も多いだろう。
WAシリーズもとい金子彰史が3作目という課題に出した答えはそのシリーズ独自のこだわりより深化していき、
シリーズとして、金子彰史としての個性をより強めていく方針だった。
その結果、より賛否が分かれていくこととなるのだが、金子彰史の作風により惚れ込む人も増えたと感じる。

2002年はPS2が発売されて2年目ということもありメーカーがPS2での開発に慣れてきたのか、前年以上に多くのゲームが発売されており、
その中には「ゼノサーガ エピソードI」「キングダム ハーツ」「幻想水滸伝3」「テイルズ オブ デスティニー2」など有名RPGが数多く並んでいる。
WA3もそうした流れに従って出て多くのRPGと戦うこととなった。
その中で負けず劣らずの個性を発揮したことがシリーズの存続に繋がったと言えるだろう。


・PS2になっての変化


一番に挙げられるのは今では当然のこととなったフルポリゴン化であろうか。
それに伴いカメラワークが多彩になり、キャラクターのアクションも豊富なものとなった。
結果、金子彰史のこだわりがより作品に反映されることとなった。

また、PS2の性能を活かしキャラクターはトゥーンレンダリングが行われており独特の質感がある。
地味な部分ではゲーム全体に斜線のシェーダーをかけることでどこかかすれたようなグラフィックになっている。
そのおかげでモデリングなどは今見ると上等だとは言い難いものの、
その雰囲気は十分な味があるものであり今見ても色あせないものとなっている。
そうした意味では現在も通用するグラフィックとなっている。



また、金子彰史曰く「PS2になって一番最初にやろうとした要素」であるルビもWA3を語る上では欠かせない。
解像度の向上に伴って細かいフォントも描写できるようになったため、ここぞとばかりにルビを入れたのだ。
結果、参重層術式防護(ヘルメス-トリス-メギストス)のような果てしなく頭の悪い単語(なお、この場面でしか出てこない)を出したり、
興味(キョーミ)のようにルビで投げやりな感情を表現したりと設定とキャラクターの心情の双方を事細かに表現することが出来ている。
誤解されやすいのだがルビは決して可読性を高めるために追加されたものではない。
単語の読み方を一つ一つ細かく描写することでキャラクター性と金子節をより深く細やかに表現するために追加されたものである。
テキストにこだわる金子彰史の進化としては極めて妥当であると言えよう。


・WAシリーズとしての要素
思い切った要素としては武器も防具も削除したことだろうか(武器に関しては改造で強化という形で搭載されているが)。
代わりにパーソナルスキルという形で強化を行うようになっている。
パーソナルスキルは属性耐性や状態異常耐性を初めとして、カウンターや防御無視など多岐に渡る。
これによって武器や防具を買うためにお金を稼ぐ必要がなくなったのだが、一方でダンジョンで新しい装備を手に入れた喜びなどはオミットされた。
(一応、パーソナルスキルは手に入るが、アイテムとして手に入るものは外せば消滅というリスクがあるため、なかなか装備しにくい)

また、オリジナルことアルカナの使用にはWA2から引き続いてFPが必要となる(使用にはFPを消費しない)。
フォースアビリティはキャラごとに1種類に減ったものの逆に使い道のないフォースアビリティは減っている。
FPを維持してアルカナを使うか、あるいは消費してフォースアビリティを使うかという選択となっている。
だが、FPの増加に伴うステータス上昇が非常に大きく、攻撃に限って言えばFPを維持した方が楽である。
FPを使った方が効果的な場面も多いものの、それはそれでFP全回復の「フォースキャロット」が便利すぎてリソースの管理が成立していない。

そのため、戦闘に関わる各要素が上手く噛み合っているとは言い難い。
バランスもWA2同様にヌルめで冗長になっている感がある。
結果、最強の敵であるはずのラギュ・オ・ラギュラ戦でさえ消化試合になってしまっている。

そんな中、エンカウントキャンセルはENCゲージを消費することでキャンセルできるように変更された。
WA2のように無制限にキャンセルできるわけではなくなった反面でLvに関係なくキャンセルできるため、
ダンジョンのルートさえ把握していればほとんど戦闘することなく先に進めることもできる。
良くも悪くもエンカウントキャンセルに考える要素が生まれている。



WAシリーズの特徴であるダンジョンギミックに関してはぶら下がりや忍び歩きなどのアクションが増えている。
これらは煩雑さや面倒さを感じさせるほどのものでもなく、上手くゲームに馴染めていると思う。
また、詰まってしまうような難しい謎解きもなくなり、ゲームの進行を妨げにくくなっている。
戦闘と合わせて良くも悪くもゲーム部分のアクが抜けていると言えるか。



また、町人一人一人に名前と立ち絵とポリゴンモデルを用意するなど、町人に対する妙なこだわりを見せる。
それに伴い町人の設定も掘り下げられ、会話もより個性が表れている。
こうした町人に対するこだわりは後のシリーズでも活かされている。
町人単位で世界観を緻密に描写しようとしていることが伺える。


・荒野


荒野が舞台となっているWAシリーズだが、WA3は特に荒野である。
フィールドのほぼ全てが荒野な上に海が砂海(と書いてデューンと読む)である。
他にも馬などの荒野アイテムが配置されており、徹底して荒野を描いている。
正直、WA1とWA2は言うほど荒野ではなかった。滅び行く世界ファルガイアというのも雰囲気だけだった。
だが、WA3は本当に荒野でその設定がシナリオに密接に絡んできている。
ある意味で金子彰史の思い描いた荒野はWA3で初めて描写されたのかもしれない。


・金子彰史作品として
WA2は怪獣に変身ヒーローに特撮ノリと凄まじく特濃な金子彰史だった。
それに対してWA3は怪獣デモはなくなった。変身ヒーローはむしろ変身モンスターだ。特撮ノリも薄くなった。
WA2の濃かった要素が軒並み変質した。

ならば、WA3の作風は薄いのか?
まったく薄くない。
それどころかWA2に勝るとも劣らない濃さを実現していたのがWA3である。
WA3は特にテキスト面で金子彰史らしさが爆発している。
ルビを初めとして独特の言い回しが多く金子節がとにかく炸裂している。
ことテキストに関してはWAシリーズでもっとも暴走していると言えよう。
ルビも搭載してあまりにも嬉しかったのか、はしゃぎすぎてよくわからん読み方が頻出しているし。



そのノリは台詞に収まらずシステムメッセージまでもやたらとハイテンションである。
このおっさん、力の入れ方がおかしい。
金子彰史だからこその味付けと言えよう。
WA2は触らずともわかるおかしさなら、WA3は触ってわかるおかしさである。



戦闘中の小ネタも増え、ヘンテコな名前の攻撃を行う敵が増えた。
これらを絡めた攻略本のモンスター紹介は必見である。
WA3に限って話ではないが、WAシリーズの攻略本はファンブックとしての価値が非常に大きい。
WAシリーズと金子彰史の理解のために攻略本は欠かせない。


・シナリオに関して
最初に述べるとWA2のラストバトルのようなカタルシスはWA3にはない。
だが、WA3は極めて練り込まれているシナリオである。
キャラの心情が丁寧に描かれ、世界観とシナリオが密接にリンクしており、序盤から多くの伏線が張られている。
特にキャラの成長に関しては作り込まれており、主人公ヴァージニアの成長はWA3の最大の魅力のひとつである。
シンフォギアで見せた金子彰史の丁寧さがよく現れている。
また、テーマの「想い出」を随所に使っているのはシンフォギアで多用された比較表現の一つと言えるか。

WA3のキャッチコピーは「…それはきっと、いつか「想い出」になる物語…」である。
当時はテーマに即したキャッチコピーかと捉えたものだが、今思い返すとWA3は本当に想い出になる物語だったと思う。
味のあるグラフィックや誰しも一度は抱く想い出への数々の想いなど、振り返ることでWA3は味わいが出てくる。

また、WA3は魅力的なキャラが多い。
せっかくなので紹介したい。

-ジェイナス



THE・外道。
この言動のひとつひとつが格好良すぎる外道だ。
そこに至るまでの設定を練り込んでいるのだが、あえてそれを作中では描いていない。
噛ませ犬として描ききった潔さも良しだ。
WAシリーズというより金子彰史作品に外道は毎回のように出てくるのだが、
その中でもジェイナスはその過去とそれから来るヴァージニアとの対立など特に印象深い。

-マヤ



ヒロイン(断言)。
元はギャグキャラとして作られただけのことはありオモシロ言動が多いが、ヴァージニアの成長にもっとも強く関わっている重要キャラでもある。
共に戦うライバルと設定されており、その見せ場もサブキャラとは思えないほど多く、全編に渡って活躍している。
ヴァージニアと反発し合い、それでも認め合い、最終的に助け合う関係になるのはまさに名場面である。
なお、年齢は21歳。
何で金子のおっさんはマリアさんといい主人公と比べるとちょっとだけ寂しい年齢にするのだろう。

-リヒャルト



一人称が「小生」。
それだけで個性が成り立つというのが何かおかしい。
なかなかに陰湿な性格をしたダメな人なのだが一人称といい「シュシュシュ」という笑い声といい、何かと面白い要素が目立つ。
金子彰史が意識しているかはわからないが妙に面白い人になってしまった。
金子彰史の悪役はそういう人が大半である。


・ゲームとして
ダンジョン攻略は相変わらず楽しい。
楽しいが、やっぱり戦闘が……
通常攻撃のもっさり感はなくなったのだが、テンポが早いというほどではない。
やや退屈なバランスも変わっていない。
面倒な要素が軒並みなくなっており、そこは評価できるのだが。

なお、ボス戦は特定のアルカナを使うことで大きく楽になる謎解きのような要素が加えられている。
そうした部分でメリハリを付けようとしていることが伺える。
一方、戦い方を嫌でも合わせられるため、その点で窮屈さを感じることも。
総じてあまり褒められない。
以下、キャラ事情。

-ヴァージニア
攻撃力こそ低いもののもっとも高い反応とミスティックを活かした援護が得意。
攻撃役としても雑魚戦ならジェムを使って弱点を突けば一掃できたりと活躍の幅は広い。
最終的には10連ガトリング+バリアントで(ファイネストアーツを除けば)攻撃役としての十分な活躍ができる。

-ジェット
カノンの悲劇再び。
高い能力が攻撃力そこそこ反応そこそこで一番高い能力が存在しない。
これという仕事が存在しないため、パーティで一番仕事が余ってしまう。
そこそこはそこそこなのでそこそこなりにできる仕事もそこそこあるのだが。
ま、まぁ、カノンよりは強いよ? 補助使えるし!
パーティのどれか1人削って3人パーティにしろと言われたら真っ先にクビにしますが。

-ギャロウズ
最高の魔力によるアルカナが非常に強力。
フォースアビリティのエクステンションを使えば攻撃も援護も思いのまま。
クリティカルさえ出れば物理攻撃だって悪くない。
(金子のおっさん的に)イケメンキャラだけあり、なかなか頼れる。
ただ、エクステンションを最大限に活用しようとするとミーディアムを頻繁に入れ替えることとなり面倒臭い。

-クライヴ
攻撃力が非常に高くアタッカーとしてとにかく頼れる。
反応の遅さも愛嬌レベルである。
弾数の少なさに頭を悩ませるものの、ATP補正を付ければ弾切れでも十分なダメージを叩き出せるため、弱点になりにくい。
余談ながら武器名が「ガングニールHAG35」とシンフォギアファンにとって馴染み深いガングニール(なお、これが初めてのガングニール)。


・シンフォギアとの関連性


前述したばかりだがガングニールが共通している。
また、シンフォギア第1期がちょうどWA3発売10周年だったからか、マヤのくしゃみや「素直になって、自分」など細かいネタを引用している。
極めつけは小滝興産に那須英嗣であり(共にカスケード興産とジェイナスが元ネタ)、WA3ネタは全体的に渋い使われ方をしていると言えよう。
徹底的に凹まされてから復活と成長をする構図はヴァージニアとマリアで共通している。
まぁ、さすがに最終回まで引っ張るほどではないが。


・シンフォギアファンへのオススメ度
シンフォギアらしいノリがあるかと言われるとそうではない。
だが、もっとも金子節が濃いため、金子節に惚れ込んだ人は是非。
また、シリーズで特にキャラクターの成長が描かれているため、シンフォギアのキャラの成長に面白さを感じた人にも勧められる。
グラフィック的にも見劣りはするものの味のあるものなので、今見てもさほど違和感は感じないかと。

ただし、アーカイブ配信はされておらず、PS2実機かエミュレーターでプレイする必要がある。
そのため、WA1やWA2と比べるとプレイはあまり手軽ではない。
なお、エミュレーターの場合、WA専用の画像処理を行う項目が存在する(それを適用することでフォントのちらつきがなくなる)。
WAシリーズ、エミュレーターでも愛されている?


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