ワイルドアームズフォースデトネイター紹介






・概要
2005年3月24日、WA:Fの発売からおよそ1年半で発売された。
WA4はWA:Fの発表の時点で並行開発が行われていると公言されており、その発表が待ち望まれていた。
その第一報からWA4は今までのシリーズとは異なるものとなっていたことが伺えた。
起爆剤を意味するDetonatorをタイトルにしただけあり、WAシリーズの様々な要素を再統合、改革を起こしたタイトルである。
同時に様々な事情から本来想定していたであろう仕上がりに出来なかった不遇のタイトルでもある。
(当初はアニメとの同時展開なども考慮されていた)
WAシリーズでもっとも大人の事情に振り回されており、WA4の経験から金子彰史はトータルゲームデザイナーから降りるようになり、
それがウィッチクラフト創設の伏線にもなっていたのだろう。

1年半という月日は改革を起こすには短かっただろうし、シナリオを初めとしてスケールダウンした部分がいくつも見受けられる。
金子彰史に続くシリーズの顔とも言えたなるけみちこも一部作曲を務めるに留まっており、またWA4が最後の参加となっている。
万全とは言い難い制作状況であったが、その中で起こした改革はシリーズに新しい風を吹き込んだのは間違いなく、
金子彰史も自身のこだわりは確実に貫いており間違いなくワイルドアームズと言える仕上がりになっている。
諸々の事情とその煽りを受けた仕上がりから発売当初の評価が伸び悩んだが、
今思い返すとWA4はWAシリーズとしての務めを十分に果たしていると言える。


・WA4における改革



一目でわかるのがグラフィックの大きな進歩である。
フェイシャルモーションの搭載により今まで鳴かず飛ばずと言わざるを得なかったグラフィックは十分なクオリティに達している。
この作風をWA4で確立させ、WA5で完全に物にするに至るのだった。




それに伴いマップのクオリティも上がっており、風に揺れる草木や湖面を泳ぐ魚などの環境表現が進化している。
特にフィールドマップは荒野から雪山、果てはピーカンの空までやたらと多岐に渉っている。
ファルガイアの象徴、荒野って何だっけ? (一応、WA4の荒野は戦後の疲弊した社会として表現されている)
カメラワークによる見せ方の上手さもあって今見ても不満に感じることはないのではないだろうか。
だが、こうした作り込みの結果、スケジュールが圧迫されたような……

また、WA:Fで実験的に組み込まれたボイスはWA4では本格的に採用、イベントシーンでもボイスが取り入れられている。
それに伴いイベントシーンの動きも強化されており、金子彰史らしいハチャメチャな演出が増えている。
WA3がテキストにおける金子節の極地ならば、WA4はアクションにおける金子流の目覚めとも言えるものになった。



ダンジョン攻略におけるアクションもWAシリーズのお約束であるグッズを部分的な採用に留め、
ジャンプやスライディングなどのアクションを大幅強化している。
フロアによっては横スクロールとなりちょっとしたジャンプアクションを楽しめる。
これによりキャラを動かす楽しさが増しており、
同時に本編の流れを阻害しかねなかったダンジョンギミックもシンプルかつ直感的に解けるものになっている。



戦闘もがらりと変化、ターン制から反応の高いキャラから順番に行動するようになり、
キャラの位置取りを表現したHEXによるバトルが採用された。
(なお、HEXはHyper Evolve X-fire sequenceの略称。金子のおっさんはこういうのが大好き)
バランスなどの詳細は後述するが、HEXバトルに加え演出も短くなっており戦闘のテンポが格段に良くなっている。
こうしたテンポの良さは意識して作られたものであり、
シナリオやフィールドアクションなどと合わせてWA4はテンポ良く進められる作品になっている。

総じてWA4が試みた多くの改革は良い方向に働いており、成功と言えるものになっている。
WA:Fが旧来のWAシリーズの集大成なら、WA4は新しいWAシリーズの一歩と言えるものである。


・金子彰史作品として
WA4で表現は大きく変わった。
ならば、金子彰史の表現も変わることとなる。
変わった結果、どうなったか。
いつも通りの金子彰史だったのでさすがとしか言いようがない。



前述通り、イベントシーンのアクションが強化されている。
強化された結果、水の上を走る、チャリンコを全力で漕ぐなどやりたい放題好き放題やっている。
どちらもシンフォギアに採用されており(マリアさんが号泣したチャリンコジャリガキ野球部とか)、
金子彰史がこの頃から変わっていないことが伺える。馬鹿さ加減が。
なお、これらの演出はジュードの能力、アクセラレイターを如何に描写するかを考えた結果の産物らしい。
だからってチャリンコ漕ぐ馬鹿がいるか。いいぞ、もっとやれ。



WA4の金子彰史と言えば初代OTONAとも言えるガウンである。
大人らしい深い言葉にOTONAらしいハチャメチャアクションとWA4を象徴するキャラだ。
そんなガウンが爆発するあるシーンはWAシリーズ屈指の名シーンと言えよう。
WA4未プレイの人は是非ガウンの生き様を目にして欲しい。
そして、金子彰史を味わって欲しい。


・シナリオに関して
WA4は進行の都合上、シナリオが想定していた長さの半分になったとインタビューで語っている。
結果、プレイ時間20時間程度とRPGとしては短いと言わざるを得なくなっている。
だが、その短い時間をノンストップで進むスピード感のある展開と
「進化」をテーマに大人の生き様とそれを見た子供の歩みを描いたシナリオはよくできている。
WA4の大人は敵として存在する。
だが、ガウンを初めとした大人はいずれも格好良いのだ。時に弱さや脆さ、醜さも見せているが、だからこそ格好良い。
WA4はシンフォギアのように格好良い大人を描いたシナリオである。

また、短めのシナリオであるが故に水増しと感じさせる部分は少ない。
もし足りない部分があると感じたら攻略本で補完すれば補えることだろう。
WA4のシナリオは初見では物足りなさを感じるかもしれない。
だが、攻略本と合わせて読むことで味わいが増すものとなっている。
振り返ることで増す味わいはシリーズトップクラスだろう。


・ゲームとして
様々な改革を施したWA4だがバランスがいいとは言い難い。
ラクウェルの異常な強さや下手すれば何もせずに全滅するHEXなどバランスが不安定故に起伏が激しくなっている。
これはある種退屈だったWAシリーズのバランスにおいて革命と言える。
ラクウェルが動き出した瞬間、敵が一掃されていくのは爽快感がある。
あっという間に全滅してもすぐにリトライできるのでそれがストレスになることはない。
WA4はよく出来ているとは言い難いバランスだが、同時に退屈しないバランスなのだ。
格ゲーで例えるなら北斗の拳。言い過ぎ……でもないか。
そんなWA4のキャラ事情。

-ジュード
最高のHPと反応という変わったパラメーター。
一方でその他ステータスは今ひとつと資質は全キャラ才能だがそれを使いこなせないというキャラクター性が反映されている。
反応が速いということで仕事もある。
だが、その他キャラもそうなのだが、ラクウェルの印象が凄すぎて今ひとつ印象が薄い。

-ユウリィ
ヒロインらしく回復補助役。FP25で全HEX攻撃できるのも強み。
とりあえず、プロテクトが便利。
防御を固めれば全員同じHEXから動く必要がなくなるほど。
装備によっては殴れるようになったり、活躍の幅は広い。

-アルノー
ボスの反応が高い場合が多いのでディセラレイトで行動を減らせるのが大きい。
また、ジャンプを活用することでWA4で唯一移動とその他行動を両立することができる。
頭脳明晰キャラらしく頭を使う活躍ができる。
あとホスト。この頃の金子のおっさんは妙にホスト押し。そして、それはシンフォギアGでも変わらず。

-ラクウェル
ガウンに並びWA4を象徴するキャラ。
行動はとにかく遅い。だが、その火力はとんでもなく他のキャラの数倍はある。
これだけならただの鈍足高火力キャラなのだが、イントルードがヤバかった。
イントルードは自分の行動を増やすフォースでラクウェルの弱点である反応の低さを補える。
だが、イントルード中の行動でFPを自給自足できるため、補えるどころで済まなかった。
敵を倒せばFPが増加するという仕様が高火力のラクウェルとの相性が良すぎて、
ラクウェルが1度でも行動すれば敵が全滅するまでイントルードがループすることもよくある。
それどころか最終的にはイントルードループさえいらぬとラギュ様を1発で打倒するまで至る。
WA4のバランスを崩壊させていると同時に、その爽快感からWA4の戦闘を楽しくもしている。


・その賛否
WA4は賛否が分かれる作品だった。
それはやはりボリュームの少なさに起因するだろう。
当時、WA4は新品で6800円。
6800円出して20時間でクリアできるとさすがに不満が出るのもわかる。
少なくとも物足りなくは感じるだろう。

だが、攻略本で設定やシナリオが掘り下げられ、WA4の面白さを改めて感じることができた。
今では大分値下がりもしておりボリュームに不満が出ることもないだろう。
こうして気分を改めてからWA4に触れてみると短いがまとまっておりテンポ良く進むシナリオや作り込まれた世界観を楽しめるのではないだろうか。


・シンフォギアとの関連性
OTONA。以上。


・シンフォギアファンへのオススメ度
OTONAが出てくる。これだけでシンフォギアファンにとって十分な価値があるだろう。
テンポが良くさっくりとクリアできるため、金子彰史を気軽に味わうこともできる。
そして、攻略本を読むことでよりのめり込めると存外WAシリーズの入門に向いているのではないだろうか。
ただ、例によってアーカイブ化されておらず、プレイはPS2の実機が必要とやや不便。
ただWA:Fと異なり二層式DVDではないため、動作に困ることはないと思われる。


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