ワイルドアームズクロスファイア紹介






・概要
2007年8月9日、WA5発売から半年以上を経てWAXFはPSP、シリーズ初の携帯機で発売された。
さらにジャンルもRPGではなくSRPGである。
シリーズの要素を整理してリファインしたWA5と比べると多くの冒険をしている作品と言える。

その一方でWAXFは金子彰史がシナリオを担当している。
WAXFはWAシリーズの王道を押さえた作品と言える。
そして、それはWAシリーズのファンが求めるものを押さえていることにもなる。
異端でありながら正当派であるWAXFであり、そのクオリティは歴代シリーズと並ぶほどに高くまさにシリーズファンが望んでいたWAである。

余談ながらWA5との連動を謳っていたが、発売から時間が経ちすぎたため、存在感が薄くなった。
連動自体もおまけだったため、あまり問題はなかった。


・異端のWA


WAXFにおけるもっとも大きな変化がSRPG化だろう。
WA4から始まった位置と行動順番の概念を突き詰めた結果、SRPGになったと言える。
ある意味ではHEXバトルの正統進化か。



カスタマイズの主体となるのはクラスとパーソナルスキルの存在である。
クラスにはいくつかの固有のパーソナルスキルが存在しており、クラスに付くことで使用することができる。
また、クラスがレベルアップするとパーソナルスキルを習得、限りはあるが他のクラスでも使用が可能になる。
カスタマイズの幅が非常に広く万能の組み合わせもないため、シリーズでもっともキャラカスタマイズが楽しくなっている。

このSRPG化とキャラカスタマイズの相性は非常に良く、プレイヤーが取れる戦術の幅が広い。
とはいえ、初のSRPGなこともあってバランスブレイカーとなる要素が多く、バランスがこなれているとは言い難い。
荒削りではあるがそれでも面白い。
戦闘が冗長と言わざるを得なかったWAシリーズでは例外的な仕上がりになっている。
WAXFのゲームとしての最大の魅力はバトルと言えるだろう。


・金子彰史作品として
WA5における金子彰史は自分を抑えてきた。
一方、WAXFは真逆に自分を隠さずに表現する道を選んだ。
つまりはいつものWAシリーズである。
それだけにWAXFは濃厚な金子彰史に満ちており、シリーズファンにとってたまらない内容になっている。





WAXFのイベントはバストアップイラストと一枚絵が中心で展開され、WA4以降に特に注力されたアクションは控えめとなっている。
そのため、必然的にテキストの濃度は高くなっており、金子節の本領を存分に発揮している。
親娘でパンチするなど無闇な盛り上がりも備わっている。
総じてWAXFはWA5の反動もあってか、金子彰史らしさが前面に押し出されている。

余談ながら一枚絵は豊富で見ていて飽きさせない。
WAXFは規模は小さいなれど手抜きはないのだ。


・シナリオに関して
WAXFは今までのシリーズとは異なり、金子彰史が今までに構想を練っていたシナリオを形にしたものではなく(WA1は中学生時代に考えていた)、
WAXF用に新規に考えたものである。
それだけに今までのシリーズよりも多くの設定が絡み合った結果、国を巡ったシナリオは複雑なものとなっており、それと同時に作り込まれている。
さらに金子彰史らしい無闇に盛り上がるシーンや変な方向に個性的なキャラ(エグララグとか)もある。
そして、大切な人を失うというラストはWA5と同じながらも、(漫画版でのアフターフォローもあって)その後味はまるで異なる。
(2013年現在)最後のWAに相応しい完成度と言える。

また、クラリッサとアレクシアの関係を初めとして、作中で明かされない設定も多い。
それを推測できるよう情報を散りばめられているため、設定を読み解く面白さもある。
not設定マニアの面目躍如である。


・ゲームとして
前述したが荒削りである。
行動回数を減らすのも増やすのも思うがままで、SRPGにあるまじきずっと俺のターンが容易くできてしまう。
序盤はシビアなバランスの中で攻略を楽しめるが、そこを越えるとプレイヤー側の戦力が圧倒的になり楽に進めてしまう。
だが、それでもWAXFは面白い。
プレイヤーの取れる戦術の自由度の高さと歯応えのあるバランスによって、プレイしていて純粋に楽しいのだ。

バランスブレイカー要素もSRPGに不慣れなプレイヤーの救済措置と考えると悪くない。
行動に関わるものを初めとする強力なパーソナルスキルを縛ってプレイをしてみると後半でもけっこうな歯応えがある。
懐が広いバランスになっている。

難点を挙げるとすると命中率だろうか。
特に序盤は命中率の不足を如何ともし難くストレスになりやすい。
また、マップ上のギミックを解くマップがいくつか用意されているのだが、
解法が固定されている上に手順が煩わしいため、WAXFの持ち味である自由度の高い攻略を楽しめない。
以下、キャラ及びクラス事情。

-クラリッサ(ダンデライオン)
パラメーターは中途半端。
専用装備のシュトラルゲヴェイアも決定力に欠ける。
だが、とにかくオリジナルが軒並み高性能。
周囲の仲間の行動を加速させるエンカレッジは便利だし、サクリファイスはクラリッサに不足している火力を補える。
物凄い活躍をするわけではないが、パーティに欠かせないキャラとなっている。

-フィアース(アックスバトラー)
戦士系パラメーターで扱いやすい。
加えてウェポンボルトは移動後に使え必中かつ射程が長く高低差も無視と地味に高性能。
他のキャラやクラスと比べると爆発力はないが扱いやすい。

-ラブライナ(レアルストレーガ)
初代できる女と評判の34歳。
オリジナル全てが高性能かつ魔術効果+25%によって魔力攻撃では他の追随を許さない。
その爆発力は弱点を突けば一発で敵を葬っていくため、非常に頼れる。
一方で装甲が紙で鈍足。
尖っている強みを活かし弱みを隠すための立ち回りが必要となり動かしがいのあるキャラとなっている。

-レヴィン(マーシャルメイジ)
対象の行動を1回分遅らせるディレイアタックはWAXFを代表する壊れスキルである。
それがレヴィンの価値の大半を担っていると言っても過言ではない。
ボスを1人まで追い詰めたらディレイアタックで延々と行動をさせないことも夢ではないどころか加入直後から余裕で狙える。
ディレイアタックを縛ったら縛ったで使いやすいブラストがあるので個性が失われるわけではない。

-ログナー(ストームライダー)
パラメーターはバランス型。
オリジナルは全スキルの中で唯一攻撃力を上げられるハイパーが使える。
ハイパーはログナーの特権でもありサポート役として活躍する。

-アレクシア(プリンセスフェンサー)


ゴリラ姫。
遅くて高火力な典型的な重戦士型。
だが、女性キャラなので打たれ強さは並み。
固有キャラで唯一属性耐性が並みなので、むしろ打たれ弱い部類に入りかねない。
高性能揃いの固有キャラでは使いにくい部類に入る。
それでもラギュ様戦ではアレクシアがいなければ先手を取られてまず全滅するため、アレクシアが必須となるのは影の主人公の面目躍如か。

足の遅さから使いにくさが先行するものの火力そのものは高く、オリジナルも抜けているものこそないものの使いやすいものが揃っている。
VPが減るほどRESが上がるあきらめない心があるため、
エンカレッジなどでアレクシアに行動を回すほど鈍足という弱点はなくなっていき火力という強みを発揮していく。
愛着に答えてくれるキャラとなっている。
だから、遅いからと言って見捨てないで上げてください。

なお、アレクシア専用装備、イスケンデルベイはシナリオ上の立ち位置からさぞかし魅力的な武器に見える。
が、手に入れた時点での店売り武器にさえ劣りかねないほどの微妙な攻撃力である。
当然、最強武器と比べると攻撃力は大きく離されることとなるため、残念ながら強さという点では劣っている。
とはいえ、敵を倒した時に再行動とクリティカルダメージ+25%は十分強い。
イスケンデルベイが弱いというよりも、他の武器が強すぎるのだ。
イスケンデルベイ自体は本編を攻略する上では十分な強さを発揮するし、その特性を活かしたプレイはなかなか楽しい。
そのため、あえてイスケンデルベイで攻略するのもまた面白い。

-トニー
異様に高い属性耐性やラスボスを退かせる咆哮などその存在がWAXF最大の謎。
PVで9999ダメージを出していたのも謎である(本編中でそのようなダメージを出すことは実質不可能)。
トニーの正体を物語るような設定も存在しない。
強いて言えば地味に存在するルシエドの設定がトニーに絡んでいる可能性が微レ存……?

-ウォーヘッド
物理攻撃特化。
初期クラスながら攻撃力は最高を誇る。
一方、オリジナルは使いにくく良くも悪くも殴るだけのクラス。
ATP+25%を取得したら御役御免になりがち。

-スペルキャスター
魔力攻撃特化。
こちらも初期クラスながら魔力攻撃においては最高を誇る。
オリジナルで弱点を突けば致命傷を与えられるのが強み。
SOR+25%も強い。

-ファンタスティカ
初期クラスだがオリジナルが軒並み高性能。
全てのオリジナルに使い出がある。
パーソナルスキルは特に欲しいものがないため、オリジナルを取得したら他のクラスに変えるのがいいか。

-ガジェッティア
序盤は貴重な回復役として活躍する。
中盤以降は回復役としてより有用なセイクリッドセイバーに取って代わられる。
パーソナルスキルでは行動を遅らせるディセラレイトが強め。
ディセラレイト目当てで攻撃役に取得させる価値がある。

-エスコートベッセル
遅くて硬い盾役。
癖はあるがオリジナルはいずれも使える性能となっている。
足の遅さから使いにくいが、強みは十分備えている。

-セイクリッドセイバー
オリジナルがいずれも使える。
回復できるヒールにアンデッド特攻のスティグマ、防御力を下げるフラジャイルはもちろん、ターンシフトはもはやバランスブレイカー。
パーソナルスキルは効果範囲を広げるエクステンションが凄まじく強い。
スキルが高性能な反面、パラメーターは決め手に欠け貧弱。
スキルを習得したら出番がなくなりがち。

-ワンダーシーカー
戦闘で役立つスキルが存在せずあまり頼りにならない。
無理に使う必要はない。
一応、HPとMPを入れ替えるチェンジは使い方を間違えなければ強い。

-ジオニックルーラー
レイポイントを見てリプレイスする。役目もとい出番終わり。
初回だけ出番があって初回以降は出番がなくなる。
もうちょっとでも能力が高くても……
一応、移動コスト無視は便利。

-アサルトバスター
最高のMOVを誇るが代わりに直線にしか動けないと癖が強い。
だが、それを踏まえて使ってみると意外と使いやすい。
有用なオリジナルとパーソナルスキルを揃えておりけっこうな使い出があるクラス。

-エニグマンサー
魔法系クラスでは能力値が高めとなっており、特にMOVが4なのが使いやすい。
飛び抜けているオリジナルやパーソナルスキルはないものの、それなりに使えるものが揃っているのも強み。
ある程度スキルが揃ったら魔法系キャラはエニグマンサーベースでカスタマイズするのも良し。

-ストライダー
とにかくぱっとしない。
パラメーター的に強みがなく、オリジナルやパーソナルスキルも特に惹かれるものがないのも辛い。
一応の物理攻撃系クラスなのにATP補正が低いのが伸び悩む最大の原因か。
とにかくぱっとしない。

-グラブデュエリスト
能力値のバランスが良く、オリジナルとパーソナルスキル共に高性能。
バスタースローなどの投げ技はダメージが高い上に好きな位置に敵を飛ばせるため、強い上に使いやすい。
弱点はダメージ予測が表示されないことくらいである。

また、パーソナルスキルの無条件に行動加速するアクセラレイトはWAXF屈指の強スキル。
これを装備するだけで難度がワンランク下がると言っても過言ではない。
加えて最初の1つ目で手に入るので入手も簡単で全員分揃えるのも容易い。
アクセラレイトは最高レベルで手に入っても良かったような……
なお、最高レベルで手に入るのはVP+25%。い、いらねえ……

-ナイトレイダー
RES馬鹿。
RES以外のパラメーターは軒並み平均以下だが、RESが高いだけでも十分強い。
オリジナルとパーソナルスキルも使いやすく、特にオリジナルのシックスバレットはインヴォークと組み合わせることで超火力を発揮する。
最終クラスらしい強みを持っている。

-エミュレーター
ある意味、シリーズ伝統のような青魔法使いポジション。
オリジナルもパーソナルスキルも強いのだが、如何せんオリジナルの収集に手間がかかる上に他のクラスが十分強いこともあって出番は少なめ。

-フェダーイン
高めのパラメーターを誇る物理攻撃クラス。
オリジナルとパーソナルスキルも使いやすいものが揃っており、パラメーターと合わせてとにかく使いやすい。
また、最高Lvまで鍛えると明鏡止水が凄まじい強さを発揮する。
もっとも、そこまで求められることはあまりないのだが。

-エクスキャバリア
遅く硬い魔法型クラスという矛盾したパラメーターを持っている。
最終クラスらしくオリジナルは高性能。
クラス装備もアタック時にSORで計算を行うなど地味に使いやすい。
鈍足以外は良好だが鈍足なだけで脚を引っ張りがちでもある。


・シンフォギアとの関連性
とにもかくにもできる女と評判の34歳だろう。
直接的な用法は少ないが地味にWAXFを連想させる台詞も多い。
また、女性キャラが主人公かつ他の女性キャラとの交流が描かれるなど、シンフォギアのプロトタイプとも言える部分が見受けられる。
物語の裏で複雑な政治事情が流れているのもシンフォギアらしい。
時期的にもシンフォギアにもっとも近いWAシリーズのため、シンフォギアに近い金子彰史を感じられるかもしれない。


・シンフォギアファンへのオススメ度
時期的にシンフォギアにもっとも近いWAシリーズだけあり、違う部分は多いなれどどこか共通する部分を感じられる。
金子彰史の技術的にも大分こなれているため、安心してプレイできる。
ゲームとしても面白いのでそちらでもオススメ。

PSPでUMD版とDL版のどちらも発売されている。
価格的にはUMD版の方がお手軽と思われるがロード時間が長め。
そのため、DL版を推奨する。

なお、WAXFには漫画版が存在しており金子彰史自身が監修している本当の意味でオフィシャルな漫画版である。
やや悲劇的なラストだったエンディングも後日談で補完しており、WAXFの物語はハッピーエンドを迎えることとなる。
WAXFをプレイして面白さを感じたのなら漫画版も見るといいかも。


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