範馬刃牙 第164話 平等な打撃
妖術師刃牙の登場だ!
明らかに悪人面だが、妖術師ならば致し方あるまい。
ナイトよりも忍者を選ぶぜ、今の刃牙は。
汚いなさすが刃牙きたない。
ピクルは白亜紀を思い出す。
思い出すのはピクルが受けてきたダメージだ。
衝撃、重量、筋力、危険、そして猛毒…その全てに耐えてきた。
この経験で自分のタフネスに自負を持つようになった。
その経験は現代においても絶対的な効力を発揮してきた。
古代にはなかった激痛(いた)み…
マッハの痛みとか、金的の痛みとか、それをも乗り越えてきた。
金的は現代において超必殺級の破壊力を持つ。
ダメージだけでなくキャラ崩壊まで起こすほどの危険性を誇る。
シコルスキーやJr.は睾丸だけじゃなくキャラまで粉砕されている。
それほどのダメージをピクルは乗り越えたのだ。よく考えればすごいぞ、ピクル。
[―――――ところがだ]
[初めての体験……………… 想像を凌駕(こえ)る体験]
[大地を叩きつけられるという思いもかけない事件…………]
大地を叩きつけられる体験…ピクルにとっては想像しえないまさに事故だ。
事故だがダメージはあったのか?
未体験故にダメージよりも混乱の方が大きそうだ。
ピクルよ、冷静に考えればどうってことないかもしれないぞ。
とりあえず、寝てみるのはどうか。
さすがに大地を動かすのはピクルといえどないようだ。
動かせない。動かしたことがない。動かす気にもなれない…
でも、その気になれば大地の形を変えることくらいは出来そうだ。
ガーレンだってクレーターを作れたし、ピクルにだってそれくらいは出来るはずだ。
というか、刃牙は大地を動かしたわけじゃない。そう錯覚させただけだ。
刃牙が妖術師じゃなく詐欺師だとわかれば恐るるに足らずだ。
リアルシャドーは妖術としか言いようがないけど。
[原人はかろうじて踏みとどまっていた この大地を動かす小さな巨人を前に]
圧倒的な未知の存在である刃牙を前にしてもピクルは逃げない。
そして、脳震盪が回復していないはずであるのに倒れることなく立っている。
脳震盪は一流格闘家でさえダウンせざるを得ないダメージであるというのに…史上最強の誉れは伊達じゃない。
必殺級のダメージに耐えてみせたピクルであった。
でも、棒立ちなのはまずいと思う。
ここでピクルお得意の天然体質を爆発させないでも…
それとも天然だから刃牙の詐欺…もとい妖術に引っかかってしまうのか?
ピクルにはしっかり者の伴侶が必要だ。
(まだだ)
(俺の機能は――――― 未だ2度の落下のショックから回復していない)
優勢に立つ刃牙であったが、自分の背負ったダメージをはっきりと自覚していた。
…って、回復していねえのかよ!
2度目の落下は本当に何だったんだ…?
恐ろしいまでの虚勢だ。こんな生物、いねえよ。
同時にダメージだけを見るとピクルの方が圧倒的な優勢だ。
何せ30mからの落下を受けてもダメージはない。脳震盪も間もなく回復するかもしれない。
それに対して刃牙の肉体は自殺もとい自爆により大ピンチだ。
精神面では刃牙がリードし、肉体面ではピクルがリードしている。
両者の天秤は際どいところで水平を保っていた。
(真っ向勝負はまだ…………)
ダメージが残っている以上、真っ向勝負を仕掛けるのは時期尚早と見る刃牙であった。
刃牙の言う真っ向勝負はまるで信用できない。
力だけで戦う、と言っておきながら、オリバ戦では密かに技術を用いていた(第76話)。
そんな刃牙が真っ向勝負と言っておいて誰が信用しようか。
そもそも、ピクル戦では刃牙は直球なんて投げることもなく、変化球どころかビーンボールや自打球揃いだった。
まずはピクルを挑発します。
不意打ちのハイキックを放ちます。
殺す殺されるではないと言いながら殺す気の攻撃を連発します。
ピクルの気が逸れたところを殴ります。
いきなり自殺します。
カス当たりで脳震盪を狙います。
…し、信用性がまったくねえ…
真っ向勝負とか、本気で言っているのか。
ゆらり……
突如、刃牙の身体が脱力し力なく揺れる。
さすが、妖術師。不思議な動きなら一流だ。
いきなりの脱力にピクルは混乱し冷や汗を流す。…完全に刃牙のペースに呑まれているな。
ギャラリーの花山と徳川光成も驚く。何が起きたのか理解できないようだった。
だが、烈だけ刃牙の動きに勘付く。
(成る程ッッ それがあったかァ〜〜ッッ)
驚きの最上級、その手があったのか!だ。
コロンブスの卵的な発想を賞賛する際に用いる驚愕だ。
比較的新しい例だと郭海皇の消力を、勇次郎が工夫で破った時にも使っている。
でも、これって本部の役目じゃないか?
あられもなく驚く姿は烈には似合わない…そう考えていた時期が俺にもありました。
今じゃ似合いまくる。もっと、驚け。
もしかして、烈は本部に弟子入りでもしてたのか?
何かそう疑ってしまう。
右脚を食われちゃって…現役引退ですよ、これじゃ。でも、ちゃんと紙面には出たいので…いい考えはないでしょうか。
烈はん…真の解説を身に付けたのなら戦いは無用。
成る程ッッ。それがあったかァ〜〜ッッ。
――と、驚愕と解説に烈は目覚めたのかもしれない。あと萌えにも目覚めた。
(不本意だけど………………)
(チョト……… ヤラシイことするぜ……)
何が不本意って妖術師と戦うことになったピクルがではあるが、まぁ目を逸らしておこう。
脱力する刃牙はどうやら不本意らしい。
どうやら使いたくはない技のようだ。何を今更と言った感じだが。
ヤラシイこと…それはヤラシイことなのだろう。
例えば金的とか。
ヤラシイだけじゃなくダメージもデカいぜ。メメタァっとな。
ピクルは過去2度金的され、いずれも大ダメージを受けている。
しかし、ヤラシイを標榜する以上、金的では足りない気がする。
バキ世界では金的はジャブ同然のものだ。デファクトスタンダード故にヤラシイまで言いそうにない。
別の漫画の話になるが、シグルイでは金的が通じなかったため、足先を肛門に突っ込むという攻撃が存在した。
…よもや刃牙はこれを行うつもりなのだろうか。
男の処女を奪う攻撃だし、十分ヤラシイ。そして、何よりも痛い。
刃牙の狙いは睾丸ではなく肛門か?
まぁ、一番ヤラシイのはフンドシをはぎ取ることだ。
原人のくせにフンドシ履いてんじゃねえ!ともっともらしいような、らしくないような、そんなことを叫びながらフンドシを破る。
さながらエリナの唇を奪ったディオのようにズキューンとフンドシを破り捨てる。
貴様の全裸を見たのは烈だけではない!この刃牙だ!
そんなこんなで露わになったピクルの急所を刃牙は狙い撃つのだ。
蹴るぜぇ。超蹴るぜぇ!ワカメの霊なんて知ったこっちゃないぜ!
「ここにきてそれに気付くとは――――」
(あの時っ何故あれを思いつかなかったのだ〜〜〜ッッ)
烈は声と心の声の両方で驚く。
しかも、自分がピクルと戦った時に思いつかなかったことを後悔もしている。
思いつかなかったのだ〜〜〜ってものすごく間抜けな響きだよ、烈。
どうやら、刃牙のやろうとしていることは思いつきさえすれば烈にでも出来ることのようだ。
…烈には悪いけど…思いついてもピクルが相手じゃどうにもならなかった気が…
そもそも、絶望してグルグルパンチをやるくらいだったから思いつく余裕などあるはずもない。
本当にどぢっ漢(こ)炸裂だよ。
「やはり君は天才だッッ」
(やはり君は天才だッッ)
ついには烈の声と心の声が一致した。
声と心の声が逆転している、というのはよくある表現だが、烈はここで声と心の声を一致させるという技をやってのけた。
強烈な萌え表現である。
何かもうすっかり面白い人になってしまった。
そして、一人で盛り上がっている。これには花山だって引くかもしれないぞ。
バキが再びアニメ化されるとしたら、烈の声優は釘宮理恵で決まりだな。
ツンデレだしどぢだし。ぴったりだ!
こんな声を上げたらトラウマが呼び起こされる。
ゆらゆらと脱力している刃牙は、やがて背中を見せる。
脱力したまま、相手に背を向ける…
ピクルの経験にはない動きだろう。
冷や汗を滝のように流し「!?」「!?」「!?」と超びっくりする。
こっちもこっちで萌えキャラ炸裂だ。
バキ世界萌えキャラ頂上決戦が行われようとしている。
…いや、ピクルって萌えキャラかなぁ…
個人的にはけっこう萌えキャラの部類に入ると思いますが――格闘家を食ってもあまり憎く思わないのはきっとそのせい――
世間的にはどうなのだろうか。
と、背中を向けた瞬間、刃牙は大地を踏みしめる。
脱力という静の動きに、突然、動の要素が加わった。
その勢いで一気に振り向き、腕をピクルに振り下ろす。
ビタァァ
(ピクル…… 地獄だぞ…)
そして、平手でピクルの背中を叩いた。
一見、ただの平手だ。
だが、烈をして地獄と言わしめる平手だ。
ただの平手のはずがない。
「度々すまんが烈さん」
「秘拳……鞭打……」
「赤ン坊から範馬勇次郎まで――― 全人類に等しく平等な打撃技です」
〜〜〜〜ッッッ。
今更…いやこの期に及んで…いや、ここで鞭打を放った。
柳の必殺技にして女子供の護身技、鞭打だ。
…ヤバい。マイナスイメージしかないぞ、この技!
しかし、激痛で攻めるこの技はピクルにとっても有効と言えよう。
何せピクルは強固な筋肉の鎧を持ち、防御力自体は強い。
だが、痛みそのものには弱い。痛みに強いのではなく、痛みを筋肉により鈍く感じている程度なのだ。
だからこそ、激痛で攻める鞭打は有効打になり得る。
そんな鞭打を受けたピクルは…
大口を開け白眼でダウンしている。
いやあ…柳よりもひどいリアクションだ。
刃牙と戦ってからピクルのダウンが安くなってしまった…冷や汗も大安売りだよ、この野郎。
今の烈なら寂海王でも勝てるッッ。…そういえば、寂海王はどうしたんだよ!
ピクルの弱点をモロに狙えば、力を使わずともダウンを奪える…
そりゃあ、烈だってやっておけばと思っちゃうよ。
四肢を犠牲にダウンを奪った克巳が本気で可哀想だ。
…ダウンさせればいいというものでもなかろう。
真マッハ突きによるダメージでダウンさせた克巳は鞭打よりずっと偉い…そう思っておこう…
あと衝撃波で攻撃という前代未聞の打撃であるファイナルマッハ突きのことも忘れないでください…
本感想で度々ピクルに鞭打を使えば…と書いてきた。
実際に使ったらこうなった。むしろ、実際に使う奴がいたことの方がびっくりだ。
やはり、君は天才だッッ。けっこう悪い意味で!
そういえば、せっかく花山が本編に出向いたのに、解説を烈に奪われ面白アクションも烈が総取りしている。
いや、そのどちらも花山の仕事じゃないけど、烈の仕事でもなかったはずだ。
花山も何かやってみたらどうか。
ピクル、これを使え!とフンドシを投げてやるとか。
次回へ続く。
さて、刃牙の突破口その2は鞭打だった。
お前それで良いのか?
…いや、マジそれでいいのかよ。
勇次郎曰く所詮は女子供の護身技だ。
傍らに勇次郎がいたら阿呆がッッと血管を浮き立たせそうだ。
何か刃牙は卑屈な戦法にばかり走っている気がする。
カス当たりパンチという極小インパクトによる脳震盪攻撃の次は、鞭打という極大インパクトによる激痛攻撃だ。
対称的な2つの打撃でピクルを翻弄している。
まともな打撃じゃ効果がないからって…
まぁ、これは正面突破のための足場みたいなものだ。
これだけで倒そうと思っているわけじゃないさ、きっと。
でも、ピクル相手に正面突破は絶対無理だろうと思ってしまう。
…鞭打だけで潰してしまうか、いっそ。
さりげなく、烈はけっこうな問題発言をしている。
秘拳鞭打に範馬勇次郎にも有効という2つの発言だ。
秘拳鞭打ってどういうことだ。
烈も鞭打を使えるような発言をしていることから、何らかの経緯で体得してはいるようだ。
柳は鞭打を空道から学んだ。その空道には毒手がある。毒手は中国から伝来したものである。
もしかしたら、鞭打は毒手と同じように中国武術の技術だったのかもしれない。
空道独自のものと思っていた柳は涙目だ。
また、勇次郎にも有効という発言も見逃せない。
有効なのか、鞭打…
激痛自体は勇次郎に及ぶだろう。その意味では有効かもしれない。
だろうが、勇次郎なら耐えてしまいそうだ。
刃牙だって耐えたんだ。勇次郎も耐えますよ。
…勇次郎が傍にいたら殴られていたな、烈。
ピクルの弱点は何度も証明されているようにメンタル面だ。
ピクルのメンタルは本部と同じくらいに脆いのだ。言い過ぎた。本部よりは強い。
そして、鞭打の激痛による攻撃は肉体というよりも、精神に来るダメージだ。
刃牙は無意識かもしれないがピクルの弱点を狙った攻撃を行っているのだ。
範馬の血を受け継いでいるだけにエゲツのない攻めである。
カス当たりパンチと鞭打…防御無視のこの攻撃を続ければピクルを打倒できるかもしれない。
無論、これでピクルを倒しても誰も納得しそうにないが。
ダメージが回復したら真っ向勝負するしかない。
真っ向勝負で勝ったら勝ったで文句を言われそうだけど。
要するに刃牙だからまともにやってもセコくやっても文句を言われる。
悪いのは多分トレーニングを一切していないからだろう。
積み重ねて信頼を重ねていくって大切ですね。
ともあれ、鞭打という懐かしい技が出た。
もう7年も前の技だ。時が流れるのは速い。
この調子で刃牙は懐かしい技を連発するのだろうか。
史上最強の男、ピクルを相手取るには、己の人生を彩った懐かしの技を連発だ。うむ、主人公らしい。
転蓮華で回るぜ。首筋で吹き飛ばされる。
新コブラツイストで固めるぜ。全身で吹き飛ばされる。
幼年期の最大必殺技である目を閉じてからのカウンターだ。反応も出来ずに吹き飛ばされる。
…主人公らしくよりもヒールらしく戦った方がいいな。
対するピクルはどうするのだろうか。
畜生!こいつ何かセコい!とか思っても今なら許す。
烈さん…刃牙は天才なのではなくただ卑屈なだけでは…と花山が突っ込むのも許す。
克巳なんかが見ていたら言葉に出来ないくらいに落ち込みそうだ。
ピクルという強大な要塞を打ち砕くために、膨大な爆薬を体中に巻き付けて特攻したのが克巳なら、
刃牙はさながら要塞に繋がる水路に猛毒を流したって感じだ。
間違ってはいない。間違ってはいないけど、何だかなぁ…
刃牙はピクルの弱点を攻めている。
だが、ピクルだっていつまでもそこを突かれるだけではないだろう。
骨折した骨は以前よりも強くなるという。
刃牙が弱点を攻めることで、ピクルは鍛えられているのかもしれない。
やがてカスリパンチを見切り、鞭打の痛みに耐え、刃牙に手痛い反撃をおみまいしそうだ。
してください。むしろ、しろ。
その反撃を受けた刃牙は強くなったな、ピクル…俺に教えられることはもうない…と言ってバキハウスへと戻る。
一同、呆然とする。
ピクルは今までにないくらい冷や汗を流して、あいつは何?今までのは何だったの?と頭を捻り続ける。
花山とみっちゃんもぽかーんとしたままである。
烈だけピクルに文化の戦いを何たるかを教えたのかッッ。やはり君は天才だッッ。×2と大絶賛だ。
それ、詭弁だからと花山にぼそっと突っ込まれて、刃牙VSピクルの戦いは終焉を迎えるのであった。
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