範馬刃牙 第181話 闘争の不文律(おきて)



刃牙VSピクルついに本当に決着!
結局、決着は直後だったのか?
全然、直後じゃなかった気がする。
あれって烈先生にとって失言なんだろうな…
口を慎みたまえ。


妖術でピクルを翻弄し続けた刃牙だったが、最終的には力による勝負を挑み、敗れた。
粘る時は粘ったが終わる時はあっけなかった。
手品の種は割れればあっけないということなのだろうか。
もっとも、ピクルもその手品を最後に使ったのだが。

決着からどれほどの時間が過ぎたのだろうか。
闘技場には懐かしの小坊主たちが溢れ、刃牙の様子を見ている。
同じく懐かしの地下闘技場のドクターもいる。グラップラー刃牙以来の登場だ。
鎬紅葉にその立ち位置を奪われたドクターだが、ここに来てやっと出番が回ってきた。

担架が運ばれてきている。
当然、刃牙を運ぶためのものだろう。
完全に決着は着いたようだ。
でも、アオリは「勝者はどちらに」と未練がましく刃牙の勝利を捨てていない
ここから刃牙の逆転勝利となるのか?
試合で負けたけど勝負で勝ったと表彰台に立つのか?
表彰台に立てるのは試合に勝った人間だけだけど、刃牙なら試合に負けた上で表彰台に立ってもおかしくはない。

さて、数多いる小坊主のうち二人は体育座りしているピクルに近づいている。
一体何やってんすか、こいつら。
ピクルは動く爆薬と言っても過言ではないほどの危険度を持つぞ。
興味本位だけで近づくと死ぬぞ。あるいは掘られる!
アナコンダを見ようとした小坊主といい、小坊主の危機管理能力のなさは素晴らしい。

ともあれ、ピクルは動かない。
敗者を食うのがピクルの儀式だったのに、刃牙には手を出そうとはしない。
この勝利はピクルにとって、勝利と呼べるものではないのだろうか。
勝ちを譲られたような立場だけに、複雑な心境なのだろう。

なお、さりげなくティラノサウルスに噛まれた刺創が消えている。
極度の興奮状態でなければ浮き上がらない傷ということなのだろう。
ピクルの関節も謎だが、筋肉も謎だ。

「ご両人……」
「動こうとしないピクル 動こうにも動けん刃牙」
「この状況 お二人はどう見る」


さて、問題の判定の時間が訪れた
一見、刃牙の完敗だが、空気的にそうもいかないらしい。
ここからピクルの勝利が覆ることがあるのか。
覆りそうで怖いな。
「お前勝ったけど技を使ったから負けな!」とか言われたら、さすがのピクルの体育座りしちゃいますよ。

まずは烈が口を開く。
ここ最近の烈は恐ろしいほどに刃牙よいしょ派だ。
狂信者というくらいに刃牙を褒め称えている。
ツンを過ぎたデレはもはや狂信に等しいということだろうか。
好きなあの人のやっていることの何もかもが好きでたまらないんですよ。
今なら刃牙の勝利を押してもおかしくはない。
克巳を思い出せ!

「愚問です」
「ピクルに攻撃の意志が認められぬとはいえ
 生殺与奪が彼にある以上解答(こたえ)は明白」
「ピクルの勝利(かち)です」


だが、烈は冷静にジャッジを下した。
厳しい武術の世界に生きる男だけあり、勝敗には冷たくも正しい。
過程はどうあれ、結果として立っていた者が勝者。
その絶対不変の法則を貫き通すのだった。

中国武術界はブラック企業と言っても過言ではないほど厳しい。
不祥事を起こせば利き手を切り落とされる世界だ。
うっかりやってきた外国人には玉ピンするし、うかつな発言をすれば同じ社会の人間といえど無遠慮に気絶させる。
はい、全て郭海皇のことです。
そんな世界で生きてきた烈だけあって、結果には人一倍厳しいのだろう。

それに対して花山はどうなのか。
花山は義理と人情に傾いた世界に生きる男だ。
中国武術界よりずっと暖かい世界ですよ。
入社するためには人を刺さなければいけないけど(烈特集)。
…どっちもどっちだな、中国武術界とヤクザ業界。

「技術(わざ)ってやつぁそもそも 強え者とハリ合うため弱え者が作ったもんです」
「言い換えりゃ武器だ」
「ピクルにゃ体格(からだ)がある 体力(ちから)がある」
「その上さらに武器を手にするってのは……」
「強く生まれちまった者の不文律(おきて) 小細工をする権利はない」


花山は自分の視点で答える。
持って生まれた強さで戦う点において、花山とピクルは酷似している。
だからこそ、技術を使わない。むしろ、使う権利はない。
だが、ピクルは技術を使ってしまった。
花山判定としてはルール違反同然なのだろう。

でも、それを言い出したら刃牙だって強者グループでルール違反だ。
多少技術を使ったといえど、オリバと正面から殴り勝てるのが刃牙である。
あれで弱者を気取られるとアイアン・マイケルが怒っちゃいますよ。
妖術なんて技術ってレベルじゃないぞ。反則ってレベルでもない。
アイアン・マイケルも妖術を身に付けておけば良かったのに。
邪術師アイアン・マイケルの誕生だ!

「視点を変えるなら そこまでピクルを追い詰めた刃牙は…」

「心情的には 勝利(かち)としたいところです」


ピクルに技を使わせた。使わせるほどに追い詰めた。
だから、心情的には刃牙を勝者にしたい。
それが花山の意見だった。
心情的にはというのはポイントだろう。
ルール違反すれど勝ちは勝ち。それが第一前提だと花山もわかっているようだ。
あくまでも刃牙は努力賞レベルのようだ。
これで大々的に刃牙の勝ちと言われたら非常に困る。

「さすがじゃ…… 武に生きる烈 侠(おとこ)に生きる花山 共に正しく共に厳しい」

ということで、ジャッジは終了した。
結局、刃牙は負けたのか、勝ったのか。
明確な答えは出されていない。

範馬一族は強さのためなら技術も求める。
ドーピングで無双の筋力を手に入れたジャックだって、渋川流を闘争に用いた。
勇次郎も技術は弱者の使う者と言い放ってはいるものの、ピクルに力負けした時は技術を使った。
範馬一族的に考えれば、例えピクルに技を使わせようが刃牙の敗北に変わりはない。
リザルトでは確実に敗北だが、譲った勝利であることは変わりない。
負けたことは負けた。だが、勝とうと思えば勝てた。
刃牙は厄介な負け方をしたものである。
さすが敗北を知りたい死刑囚に敗北を与えることなく、放置プレイをした男だ。

刃牙が運ばれ、死闘を繰り広げた闘技場はピクルと小坊主だけになる。
いや、まだいたのかよ、小坊主。
さっさと逃げろ!
そのKYっぷりが悲劇を呼び起こすのだとなぜ気付かん。

ピクルは立ち上がる。いつまでも傷心に浸ってはいられないのだ。
だが、よろけた。
刃牙が与えたダメージは確実にピクルに残っていた。
…真マッハ突きよりもダメージが残っているのはどうなんだろう。
真マッハ突きって意外とダメージが残らない打撃なのか?

ピクルはいつの間にか握りしめていた地下闘技場の砂を見つめる。
そこには折れた歯や爪があった。
地下闘技場が築き上げてきた激闘の歴史だ。
おそらくはピクルが砕いたジャックの歯も、ここに眠っていることだろう。

これを見てピクルは何を思ったのであろうか。
そういえば、あのクソガキは何回殴っても歯が折れなかったとか思っているのかもしれない。
言葉はなく、一度握りしめてその砂を手放す。
戦いの余韻を感じているのかもしれない。
戦い=食事だったピクルにとって、これは初めてのことだろうか。

ピクルは刃牙を食うために戦ったのではなく、己の誇りを守るために戦った。
だが、最後に己を曲げて技術に逃げてしまった。
誇りを守るつもりが、自らの手で傷付けてしまった。
そんな想いがピクルに渦巻いているのかもしれない。
ピクルの心中は複雑極まりない。

ピクルは地下闘技場から立ち去ろうとする。
どこへ向かうのだろうか。
もちろん、徳川光成は無責任に見送る
一応のピクルの責任者なのにこの態度。職務放棄と言っても差し支えあるまい。

「慌てるだろうなァ…ペイン博士」

アンタも慌てろよ!
NO責任!

さて、病室。
そこには刃牙が眠っているはず…だったがいなかった。
脱走していた。
負けたとはいえ、嘘臭い回復力は健在だった。
ドクターだって呆れてしまうくらいですよ。
いや、医者。それでいいのかよ、医者。

ピクルに敗北した格闘家の中で、刃牙は一番ダメージが軽い
今後の格闘家人生が危うくなるダメージを全員が受けているというのに…
腕を食われろとまでは言わないが、腕が折れるくらいはやって欲しかった。

刃牙とピクルはどこへ向かったのだろうか。
東京ドームの近くにある東京ドームホテルの屋上に来ていた。
かつてジャックが吊し上げられた呪われた場所だ。
爽やかに健闘を称え合う場所ではないだろう。
ここから血まみれの第2ラウンドか?

「傷ついて――………」
「ヘコんで落ち込んだ時」
「見たい景色がある」


呆然と座っているピクルに刃牙は後ろから声をかける。
ピクルが凹んでいることを強調しているのが憎い。
刃牙の心情的には勝っているんだろうな。
負けてなお勝者を叩く。何という力技!
文化の戦いってややこしい。

肉体では負けた。だが、精神的にはあまり凹んでいない。
いや、刃牙君。もっと凹もうよ。
あるいは格闘技に徹していれば勝ったから、あまり負けたショックがないのか?
敗者が勝者を励ます。どういうこっちゃ。
刃牙ってややこしい。

「視界を遮らない」
「ここからなら――」
「見えるんだろうな 有史以前―― 遥か以前の手付かず……」
「大白亜の絶景が……」


ピクルは花が咲き乱れる白亜紀の絶景を見ていた!
…というのが刃牙の推測でした。

ピクルは野生だが心がある。
心があるから、今こうして傷心に打ちひしがれている。
そして、心があるから美しいものを理解することが出来るはずだ。
もしかして、白亜紀には戦いに明け暮れるだけではなく、花が数多く存在する場所を見つけていたのかもしれない。
その美しさに心を心を奪われ、癒されていたことがあってもおかしくはない。

そんな美しい景色を思い出すことで、傷ついた自分を見つめ直す。
何ともナイーブなピクルらしい。
言葉があったらBLEACH並みにオサレなポエムを奏でていたことだろう。
刃牙と違ってこういうところがあるから、ピクルはどうにも憎めない。

刃牙はピクルと共に白亜紀の絶景を見る。
って、見えるの!?
いや、見えちゃいけないだろう。それは見えちゃいけないものだ。
見えちゃいけないものを見せる達人だけに、見えちゃいけないものを見る達人でもあるらしい。
己の歴史に目覚めた刃牙にとって、白亜紀の風景が見えるのも必然なのか?
それなりにいいシーンだった気がするが、刃牙の変態っぷりによってツッコミどころに変わってしまった。

「センパイ…」
「たまには… 観にきていいかな…」


刃牙は何だかヒロインっぽく聞く。
告白して断られたが、それでも近くにいたい!
そんな気持ちが伝わってくる。
気がしないでもない。

イロイロな意味でひどい試合だったが、二人の間には絆が生まれた…かもしれない。
ピクル側の感情がわからないので、何とも言い難い。
隣にいる刃牙に対し何も手出しをしないことから、刃牙に対して替わった感情を抱いていることは間違いなさそうだ。
食うの忘れたと噛みつきもしないし。

範馬一族であるジャックはピクルの身体に消えることのない傷を刻み込んだ。
そして、刃牙はピクルの精神に傷を付けた。
範馬一族は歴史的な2連敗を喫したが、両者共に消えぬ傷を残している。
範馬一族ならではの意地は見せたといったところか。

これからピクルはどうするのだろうか。
刃牙の次に待ち構える敵は当然勇次郎だ。
刃牙との戦いのショックを引っ張っている場合ではない。
そのような精神状況で勝てる相手ではない。ヘタすれば逆に食われてしまう。

刃牙に敗北した…じゃなくて、刃牙に勝ったショックからピクルはどう抜け出すのであろうか。
ピクルのこれからに大きく関与してくる問題だ。
ピクルの復活劇に期待がかかる。
これで刃牙がウジウジしてんじゃねえ!とピクルを殴ったら、本気で怒ってもいいと思う。
次回へ続く。


今度こそ刃牙VSピクル決着!
気になるジャッジも何だかんで刃牙の敗北に傾いてくれた。
花山さんだって心情的には〜と、あくまでも刃牙の敗北を前提に語ってくれた。
これで刃牙の勝ちと言われても困っていたところだ。
ピクルの勝ちか、と言われると勝ちは勝ちでも譲られた勝ちっぽくて微妙だけど。

でも、冷静に考えればピクルは凹む必要がないと思う。
妖術という卑劣な手段ばっかり使ってきたのが刃牙だ。
ちょっとくらい技術で仕返ししてもいいじゃん。
ピクルは堂々と勝利を誇るべきだ。
まぁ、せっかくの最終形態がまったく通用しなかったのは凹むに値するけど。
読者だって凹みましたよ。

結局、刃牙は鬼の貌を使わなかった。
鬼の貌がピクルに通用するかどうか。
それは勇次郎戦に引き延ばされるのだろうか。
勇次郎と戦うというのも確定ではなく予想に過ぎないけど。

刃牙は一部…というか大半に胡散臭い部分があったが、ピクルに技術で戦った。
範馬一族ならではのインチキ力は使っていない。
いや、思いっきり使っていたけど、話的には技術オンリーです。
刃牙クラスまで発達した技術ならピクルにだって勝つる!
何だかピクルの限界値が設定されてしまった感がする。
刃牙以上の技術と力を持つ勇次郎を前にすると…

だが、ピクル編はピクル成長の物語だ。
持って生まれた強さに甘んじることなく、貪欲に強さを求めてこそ、史上最強の名に相応しいだろう。
ピクルは刃牙との戦いで挫折したかもしれない。
そして、この経験を糧に成長すれば、もっと強くなれる。
今、ピクルは分岐点に立っている。

勇次郎との対戦の暁には刃牙との苦闘が生きるのだろうか。
トリケラトプス拳をやったり、金的アッパーをしたり。
悶絶して勇次郎はコマのように高速回転する!
…見たくねぇ。

ピクルの今後が気に掛かる中、問題は刃牙だ。
ピクルを倒したら勇次郎との挑戦権をゲット!という瀬戸際で負けた。
勝ててあったかもしれないけど、リザルトで負けたら負けです。
今の刃牙は勇次郎に堂々と腑抜けがッッッとなじられてもおかしくはない。
ピクルだけじゃなく刃牙だって成長する必要があるのだ。
でも、どうやって成長するんだ?
もっとすごい妖術を身に付けておくか?

それにしても噛み切りにくい戦いだった。
刃牙が散々妖術を使って理不尽な展開にして、最後には勝者であるピクルの精神にダメージを与えた…
うーむ、ものすごい嫌がらせだな。
刃牙はもしかしたら最初からこんな展開を思い描いていたのかもしれない。
ピクルに安全パンチをされた時点でブチ切れ、敗北よりも苦い勝利を与えてやる!と意気込んだ結果なのだろうか。
だが、勘違いするな。挑発したのはお前が先だ!
ピクルは隣に座っている刃牙の頬を優しく叩いてやればいいのに。



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