範馬刃牙 第189話 恋に殉ずる
ストライダムは星になりました。
死因は自爆だ。
なるほど、拳の火薬は自爆スイッチだったのか。
ならば得心もいくというものだ。
そんなわけで後編はストライダムがまったく関係ない話である。
さて、路地裏で刃牙がいきなり殴られていた。
読者の恨みが込められた一撃だ。多分。
殴っている男は…克巳!?
いや、ダメだった頃の克巳に似た不良だった。
克巳本人ではなかった。
不良克巳が刃牙に要求するものは財布だった。
刃牙は不良によく絡まれるな。
何がいけないのだろうか。呪われた闘気を出しているはずなのに。
澄ました態度を取る刃牙に不良克巳はナイフを取り出す。
刃牙はナイフにもよく絡まれるな。
だが、ここで呪われた闘気を出す!
不良克巳はナイフがキーホルダー並みに小さくなった錯覚を覚える。
刃牙と不良克巳の戦力差を物語っていた。
今の刃牙は妖術師で外道だ。
何だかこのまま不良克巳を叩きのめしてしまいそうな気がする。
だが、その時、その場の仲裁に現れる人物がいた。
栗谷川さんだ。
幼年編ラスト以来の登場となる懐かしい人物だ。
梢江といい懐かしキャラが最近増えてるな。
梢江は懐かしいままでいて欲しかったが。
栗谷川さんは不良克巳に顔面骨折や脳挫傷の危機が迫っていたと告げる。
いや、刃牙はそこまでやる気だったのかよ。
あくまでもこれは栗谷川さんが語っていることだ。
脅すためであって、実際にやろうとしていたわけではないかもしれない。
でも、本気でやろうとしていたなら、刃牙の精神は相当ダークサイドに踏み込んでいるな。
そりゃあ梢江のことがまだ好きですよ。
更生するためにも梢江を捨てろ!
刃牙と栗谷川さんはとある喫茶店へ行く。
話すことは当然勇次郎との決戦についてだった。
どうやら本当に決戦間近らしい。
ストライダムと遊んでいる暇ではなかった。
栗谷川さんにとって、勇次郎は自分の主人である朱沢江珠を殺した憎むべき敵だ。
刃牙と勇次郎の戦いを仇討ちとして見ている。
だが、刃牙にとっては違った。
「憎き父親――――」
「俺は本当に憎んでいるのだろうか」
刃牙の勇次郎に対する感情は複雑だ。
ピクル戦でその一端が語られている(第172話)。
強さのみで生きる世界にいる刃牙にとって、勇次郎の存在は憧れるに値する。
である以上、憎悪という想いを抱くことは難しいのかもしれない。
「父 範馬勇次郎が―――― 母
朱沢江珠の仇というのは真実だろうか」
刃牙はさらにもうひとつのことに触れる。
勇次郎が仇なのか。
これには栗谷川さんも疑念を抱く。
刃牙は朱沢江珠を親子愛より恋に殉じた女性と語る。
幼年編で見せた朱沢江珠は我が子を愛する男の餌として扱っていた。
異常とも言える勇次郎への愛を見せたのだ。
恋よりも愛。
こういうところも何となく梢江と朱沢江珠は似ているな。
強烈な雌度が刃牙を引きつけたのか?
勇次郎に完敗した当時の刃牙だったが、勇次郎に抱きしめられる朱沢江珠の姿はかろうじて見ていた。
砕き殺すほどに勇次郎は抱きしめ、朱沢江珠も抱きしめ返し、泣いていた。
幼年編のクライマックスを彩った残酷なまでの愛を感じるシーンである。
あの涙の意味は何だったのか。
栗谷川さんは疑問であった。
「やだな…からかって……………」
刃牙がコイツわかってねえな的なことを口走る。
あの頃はわからなかったことが、今ならわかる。
狂信的なまでの母の勇次郎への愛が、今の刃牙なら理解出来るのだろうか。
SAGA効果か?
「報われたにキマってんじゃん」
「女性としてのお袋の悲願はあの瞬間
成就したんだ」
〜〜〜〜ッッッ。刃牙がスゴいことを言った!
朱沢江珠は死んだ。
だが、それは不幸なことではなく、むしろ幸福であったと言い切った。
…少年誌の主人公としてこういう発言はどうなんだろう。
あの時、刃牙への愛に殉じた朱沢江珠を、勇次郎はいい女と評した。
あれは朱沢江珠という女性を勇次郎が認めた瞬間なのだ。
それは死と同時に訪れた、というのは皮肉なのだが、勇次郎に対する女性としての愛はあの瞬間報われた。
死という代償はあったが、朱沢江珠は女として勝利した瞬間であった。
しかし、刃牙さんや。
朱沢江珠は刃牙のために命を賭けたことを忘れないで欲しい。
刃牙という存在があったからこそ、朱沢江珠は勇次郎に認められた。
朱沢江珠は勇次郎への恋だけではなく、刃牙への愛も持っていた人間なのだ。
そんな刃牙の非情とも言える答えに…栗谷川さんは涙した。
「バキさん」
「いいのですかあなたはそれで」
勇次郎は仇ではなく、殺された朱沢江珠はそれが幸せ…
刃牙が今まで掲げてきた戦う理由を全て否定してしまう言葉だ。
刃牙の戦う理由をよく知っていた栗谷川さんとしては、こんな台詞を言いたくもなる。
勇次郎と戦う意味。朱沢江珠への想い。
二つのものが刃牙の中で渦巻いている。
この二つに結論を見出さない限り、勇次郎との対決を迎えられないだろう。
そして、刃牙は精神面も勇次郎に近づいている。
今回、刃牙が話したことは一般人の倫理観から完全に逸脱したものだ。
それでいて範馬的なものである。
倫理観に縛られず、己の欲求に素直に従う…
範馬的だ。
今の刃牙は末堂を連帯保証人にして、サラ金から金を借りることすらしかねない。
かつて嫌悪した勇次郎の思考に刃牙は近づいている。
刃牙は一体どこへ辿り着くのだろうか。
刃牙が辿り着く終着駅は、一筋縄でいくものではないことが伺える。
正月明けの次回へ続く。
…前編とは違った重い話だった。
ストライダムがギャグ100%なら、こっちは刃牙のくせにシリアス100%だ。
ストライダムでシリアス方面に話を転げろという方が無理だ。
あれで正解だったと思う。
勇次郎との戦いから5年。
あの頃、わからなかったことが今の刃牙にはわかるようになっていた。
理解して、納得して、一体刃牙はどうするのだろうか。
憎悪も仇もなくなった時、刃牙には純粋に勇次郎と戦いたい気持ちが芽生えるのだろうか。
戦いに愛や友情は不純物…
天内悠を壊した時に勇次郎はそう言っていた。
今の刃牙も同じ気持ちなのだろうか。
刃牙は妖術師で卑劣なクソ野郎(言い過ぎ)だけど、そうした思想になると主人公らしくないな。
いや、元から主人公らしくないけど。
特に最近は主人公成分がまるで足りない。
ピクルを主人公と勘違いすることが何度あったことか。
今の刃牙はダークヒーローになりつつある…気がする。
卑劣な手段ばっかり用いたピクル戦はまさにそうだ。
一般人とは異なる黒い倫理観で生き続ける。
今の刃牙なら梢江を殺して一生俺の物だ!と言い出してもあんまり不思議じゃない。
そんなことをしたらやり返されそうだけど。
ヤンデレ梢江の登場だ!
朱沢江珠の病んでいる感情を刃牙は理解しているっぽい。
きっと、ヤンデレが好きなんだな。
でも、何で梢江が好きなんだろう。
あれはもはや言葉では表し尽くせない異次元の萌えを内封している。
梢江がいわゆるキモカワイイって奴か?
それにしても特に展開のないまま、二本立てが終わった。
ストライダムなんて1回きりのギャグだった。
ストライダムに何を期待していたんだ、私は。
次からは刃牙VS勇次郎が秒読みに入るのだろうか。
いや、ピクルさんのことを忘れないでください。
ストライダムはあんな感じに投げっぱなしでも問題ないが、バキ世界を大きく騒がせたピクルを投げっぱなしにするのは不味いだろう。
このままだと幼年編クライマックスにおけるガイアの役割になってしまうぞ。
実はここからストライダムが本気を見せるのかもしれない。
自爆したのは不要な武器に頼ることを止めたためだ!
真の徒手空拳になった時にストライダムの輝きは増すのだ。
新年からは怒濤のストライダム編が開始される!
ストライダムリアルシャドー編とかどうかな。
体重1トンのストライダムはティラノサウルスよりも強い。
ストライダム四天王編でもいいな。
ストライダムの兄弟、ストライダンやストランダムが刃牙に戦いを挑む。
刃牙最大の挑戦が今始まる…
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