範馬刃牙 第218話 家族会議



ついに刃牙と勇次郎の家族団欒が行われる!
〜〜〜〜ッッッ。
本当にやるのか?
でも、梢江の嫁入りよりは情景が頭に浮かぶ。
だったらイケるぜ!


ズチャリ

刃牙ハウスへの一本道に足音が響く。
バキファンならこの擬音を聞いただけで、足音の主がわかる。
濃厚なまでの範馬足音だ。
(範馬一族特有の重々しい足音。本部には一生かかっても出せない)

足音は徐々に刃牙ハウスへと近付いていく。
あまりに危険度の高い状況だ。
些細な日常があっさりと瓦解する可能性があるが、刃牙ハウスに日常は存在しないので特に問題はなかった
あそこではSAGAとかリアルシャドーの魔窟だ。
今更家族団欒が起きても何の問題があろうか。

(このタイミングで……ッッ!?)

範馬足音の襲来に刃牙の髪が逆立つ。
危険な来訪者の存在を刃牙もニュータイプ並みの直感で感じていた。
…髪の毛で。いや、それってそういう使い道があったんだ。
とにもかくにも、現在進行形でコーヒーを作っていたが、そんな場合じゃなくなった。

「カップをもう1つ………と」

って、コーヒーを用意するのかよ!
バ、バカがぁ。そんなことをしている場合か!
刃牙はカップにお湯を入れて即捨てる。カップをきちんと洗っている。
範馬一族のくせに細かい男だ。
勇次郎には水とコーヒー豆だけを渡しておけば勝手にコーヒーにしてくれる気がする。

やがて勇次郎は刃牙ハウスに踏み込む。
あの勇次郎がきちんと靴を玄関で脱いでいた。
土足であがる印象があったのに…
というか、あの靴を玄関に脱いでいるというのがたまらない違和感だ

そして、刃牙がお盆にコーヒーを乗せてちゃぶ台に置こうと振り返った瞬間には、勇次郎はあぐらで座っていた
刃牙に気付かれずいつのまにか接近していた。
相変わらず恐ろしい速度だ。そして、恐ろしく偉そうだ。

(え〜〜〜〜〜〜!!?)
「おや いらっしゃい」


このドッキリに対して、刃牙は内心では動揺しながらも、表向きは平静を保っている。
本部だったらコーヒーを用意するどころか、裸足で逃げ出していたところだ。
刃牙も成長しているということか?

勇次郎は何も言わず差し出されたコーヒーを飲む。
飲むの!?
砂糖なしでブラックで飲む。
コーヒーそのものの味を味わっておられる。
さすが、食通の一面もある勇次郎だ。

(うッわ〜〜〜ッッ飲んでるよコーヒーッッ)

お、お前のその反応は何なんだ…
まるで毒物を飲ませたかのようなレスポンスである。
いや、でも、勇次郎が刃牙のコーヒーを飲めばこんな反応をせざるを得ない
私だって同じようなことを思い浮かべた。

「キサマの希望(のぞ)む親子関係とは…… こういうことか……」

コーヒー一杯飲むことだけでも多大なエネルギーを使う凄い家族団欒だ。
海原雄山を接待するよりも神経を使う。
というか、全然団欒じゃないし。
でも、刃牙は肯定する。勇次郎と一緒に過ごす時間が大事なんだろう。

これは勇次郎には茶番と言われても仕方ないものだ。
お互いに上っ面だけ合わせている。
シャドー家族団欒だよ。

(出るか……ッッ)
(ちゃぶ台返しッッッ)


期待するところを間違えている!?
刃牙は家族団欒じゃなく喧嘩をしたいのか?
いや、範馬一族にとっての家族団欒は喧嘩なのかもしれない。
闘争こそが肉体言語だ。

でも、ちゃぶ台返しはリアルシャドーで対策済みだ
いつ返されてもいいぜ!
初めてリアルシャドーが役立つ気がする。

刃牙は勇次郎を恐れていなかった時間なんて1秒だってないと語る。
大擂台賽で生意気を言って壁ごと吹き飛ばされた時もあったが、あれも昔のことです。
恐れ、おののき、慕い、憧れ、尊敬し、憎悪した…
勇次郎に抱いてきた様々な感情を語る。
慕っていること、憧れていること、尊敬していることを本人に話したのが今までの刃牙と大きく違うところだ。
母への想いが明らかになると共に、勇次郎への想いも明らかになった。

ならば、何故憎悪をぶつけないのか?
是全て闘争の勇次郎にとっては、家族団欒というものを闘争に挟もうとするのが理解できないのだろう。
刃牙のやりたいことはよくわからない。私だってわからない。

「仮に俺が親父と戦うとしたら それは試合じゃない」
「決まった日時までに トップコンディションを作り」
「双方納得の上で行われる そんなものじゃない」


「ほんの些細なきっかけで 小さないさかいが始まる」
「やがてそれは口論(くちげんか)に発展し――」
「そして遂には抑えていた憎悪が――」


それに対してあくまでも親子同士の喧嘩であることを強調する刃牙であった。
刃牙と勇次郎が親子であることを強調されている。
そこが勇次郎との相違点であった。

勇次郎は刃牙の主張に白目で納得する。
…納得しちゃうんだ。
親馬鹿だし親子関係を強調されると急所を突かれた心持ちなのだろう。
ウブいのう…

「この俺に」
「不味いコーヒーを飲ませるとはどういうことだ!!?」


そう思ったらいきなり来た!
これには刃牙も「え…ッッ」「まさか!?」「もう!!?」と驚愕する。
勇次郎の髪がゾワァ…と逆立つ。刃牙の髪もぞわ…と逆立つ。
擬音の読みは一緒だが意味合いがまるで異なる。
髪の逆立て方一つとっても、範馬一族のそれは奥深い。

勇次郎は海原雄山のごとく、このコーヒーを作ったのは誰だぁ!モードに入った。
こうなると良三をクビにするしか選択肢がない。
刃牙は一体どうやってこの窮地を切り抜けるのだろうか。
後編へ続く



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