範馬刃牙 第220話 選択



勇次郎に飯炊きをお願いできるぞ。
ぶっ倒せばな!
いくら何でも無理だろう…常識的に考えて…
でも、刃牙はイケるような気がするようだ。
何か秘策があるのか?


勇次郎はちぎったちゃぶ台を投げ捨て玄関から立ち去る。
刃牙は去り際の言葉を反芻する。
無理矢理やらせれば勇次郎に家事をさせられる。
簡単じゃんと思う。全然簡単じゃないが、刃牙は簡単だと捉えた。

だが、刃牙の表情は強張り、冷や汗が滝のように流れている。震えてもいる。
何かどこかで同じ光景を見たような…
そう、それは大擂台賽で勇次郎に喧嘩を売った時のそれと同じ反応だ。
あの時の刃牙は口では強がっていても、その脚は震えていた。
勇次郎の前に立つことに恐怖していたのだ。

(俺は……………安堵しているのか!?)

刃牙は手と膝を床につけうなだれる。
勇次郎が立ち去ったことに、刃牙は安堵していたことに愕然としていた。
って、大擂台賽で壁をぶち抜かれた時とまるで変わらない
今も刃牙はホッとしていた。

…うん、刃牙君。成長していないね。
ピクルを圧倒したから何か変化があるかと思いきや、まるで勇次郎との差は埋まっていない
大体ピクルに対してもかなりイカサマ臭い戦い方をした。
ピクルの精神面を責めるような戦いだったし、力と力のぶつけ合いには大敗した。
次やればおそらくは完敗してしまうだろう。
未だ勇次郎の域に達しているとは言い難い。

あれってティラノサウルスの肉を食べて、刃牙の体細胞が無闇に活性化した結果なのかもしれない。
改めてティラノサウルスの肉を食えば勇次郎に対抗できるかも。
ついでに雷を浴びればなおよしだ。
…オカルトに頼るしかないのかなー…

だが、この刃牙。いつまでも恐れてはいられぬ。
刃牙はウオオーッ!と言わんばかりに外に出て、親父と叫ぶ。
裸足で飛び出してやる気満々だ。
勇次郎に(無謀な)戦いを挑むのか?

「……玄…………関……」
「そっと……閉めなきゃ」


って、何だそのツッコミは。
何を言い出すかと思いきや、そこかよ。
思わず数ページ前を読み直してしまうほどにさりげないツッコミだ。
…うん、たしかにバンッと大きな音を立てて閉めている。
でも、玄関が壊れていない以上、勇次郎だって力を抜いている。
いっそのこと玄関を壊してしまった方が面白かったのに。

それが刃牙の張れる精一杯の虚勢だった。
勇次郎の髪は逆立ち、白目で笑う。
矮小な刃牙を見て、それが滑稽に思えたのだろうか。
読者としては滑稽の極みだ。

勇次郎は刃牙の発言を肯定し、背景を歪めながら今度こそ立ち去る。
虚勢をモノともしていない。
刃牙の土下座で勇次郎のツッコミは無力化され、勇次郎は劣勢に立たされたかに見えた。
だが、最終的な勝者は勇次郎で間違いがなかった。
この期に及んで勇次郎との差を見せつけられた。埋めがたい差だ。
原始人と戦ったんだから、もうどうやって埋めればいいんだか。

(“戻ってやりなおせ”は―――― 言い過ぎだ)
(父親にそこまで言うのはやり過ぎだ このくらいが丁度いい)


刃牙は虚勢を自己肯定して自己完結する。
…ダメだ、この人。
もういっそのこと、柴千春と一緒に暮らした方がいいんじゃないだろうか。
ダメな者同士の相乗効果でダメっぽさが加速するぞ!
ただ、戦えばそれなりに強いのが刃牙なので、柴千春には嫉妬される。

こうして刃牙は「いつもと変わらぬいつもの午後」を過ごした。
勇次郎がやってくるのはいつものことじゃない。
だが、勇次郎にビビるのはいつものことだ
いつもと何も変わっていなかった。
それがいいことなのか、悪いことなのか。判別はつかない。
とりあえず、手遅れということは痛いほどにわかった。

刃牙は勇次郎とは違って静かに玄関を閉める。
それは刃牙の弱気を象徴しているようにも思える。
ウオオーッ!と叫ぶ気力は、もはやない。


場面は変わって徳川邸。
座敷には徳川光成と鎬紅葉がいる。
話は当然徳川光成の抱えている病巣についてだ。
地下闘技場で呑気に談笑している場合ではないのだ第208話)。

治癒をするか、しないか。
選択の機会はこれが最後だと鎬紅葉は告げる。
治せる病気なのか?
転移しきっていることから延命処置に過ぎないのかもしれないが、
スーパードクター鎬紅葉が全力を尽くせばいい方向に向かう可能性は高い。

徳川光成は返事を言う前に煙草を吸う。
それ自体が返事であるかのようだ。この現役中二病ジジイめ。

「悔いなき道を歩む」

徳川光成の返答はこうだった。
…すまん、言っている意味がわからない。
治癒するのか、しないのか。答えずにこう言い放つ。
この現役中二病ジジイめ。

とりあえず、大事を終えた時に悔いを持ちたくない気持ちはわかる。
わかるけど、病気とは別の話だ。
徳川光成は何を言いたいのか、何をしたいのか、サッパリわからない。

とりあえず、俺のやりたいようにやらせろ!ということか?
やりたいことをそろそろハッキリさせて欲しいのですが…
その、第2回最大トーナメント(仮)とか…
中二病には付き合っていられないのか、さじを投げたように鎬紅葉は徳川邸を立ち去るのだった。


またまた場面は転換してラスベガス。
今地球上でもっとも危険な場所だ。
2番目は東京かな。罪なき人々を達人たちが襲うぞ。

烈は観客席で試合を見ており(なお、深町コーチはいない)、フックによるKOシーンを目撃する。
そういえば、ワーレフの時もフックで決まっていたな。
さすが、もっともKO率の高いパンチだ。
今回のフックはワーレフのそれとは違って、重さとスピードを感じるフックだった。
マウスピースだって吹っ飛ぶよ。

「ニックネームは――――― スモーキン……………」
「煙のように追いすがる 煙のようにまとわりつく」
「過去――試合中一度も後退したことがない タイトルに一番近い男だ」


烈の隣にいるカイザーは勝負に勝った選手を語り出す。
煙のようにまとわりつく一度も後退したことがない男…
うーん、あんまりインパクトのない肩書きだ。
そんなスモーキン君が烈の次の相手なのだった。
ジョジョ第2部に登場したスモーキーを思い出したことは言うまでもないだろう。

だが、スモーキン君はタイトルに一番近いぞ!
元チャンピオンだったワーレフよりもレベルが低いということだ!
いやいや、カイザーさん。何レベル下げているんですか。
まぁ、巨漢胸毛ロシア人ボクサーなんてムエタイ海王みたいなものだ。
名無しの洋王の方が強いってもんですよ。
というわけで、スモーキン君はワーレフよりは強い気がする。

スモーキン君の容姿は黒人・坊主気味・うっすらと髭のアメリカ人格闘家のテンプレをなぞったような容姿だ。
どことなくアイアン・マイケルっぽさを連想してしまった。
こいつ強くない。噛まれるだろう。そんな予感である。
…ま、またなのか?

大体タイトルに近いなんて全然自慢になっていない。
タイトル保持者でも足りないくらいなのがボクシングだ。
一時期はもてはやされた海王だって、持っているだけでは何の意味もない称号になってしまったのだ。
今更そんな経歴など何の意味があろうか…
厳しいことを言えばスモーキン君はボクシングのタイトル程度も取れない男なのだ
その戦力もお察しか?

だが、カイザーとて馬鹿ではない。
スモーキン君が曲者だとわかっているからこそ、刺客として送り込むのだろう。
煙のようにまとわりつく…つまり、ステップが機敏ということだろう。
ボクサーのステップは烈だって唸らせる。
そして、それは片脚を失った烈にとっては苦手分野であることは間違いない。
烈の苦手とする技術で勝負させるためにスモーキン君を選んだのかもしれない。

でも、相手の弱点を突けば勝てるというほどバキ世界は甘くない。
結局、強い方が勝つのだ。
強さという価値が絶対的である以上、小細工のほとんどは意味を為さない。
スモーキン君は何だか小細工臭いのが…

しかし、スモーキンという通り名には意味があるのかもしれない。
刃牙の液体化を越える気体化!
それをスモーキン君は成し遂げる可能性は否定できない。
でも、気体になってどうするんだろう…いや、液体になってどうするって話でもあるけど。
次回へ続く。


第一次家族団欒は今度こそ終結した。
わかったことは刃牙はまるで成長していないという事実だ
刃牙はワケがわからない感じに強くなる時があるけど、肝心要の勇次郎との距離は一切縮まらないんだよなー。
やはり、勇次郎の背中は遠い。そして、別格だ。

とりあえず、勇次郎に皮肉のひとつは言えるようになっただけ進歩はしているか?
5年かけてこの領域というのも悲しいものがある。
問答無用で殴りかかるようじゃないと辛い。
今そんなことをやればかかと落としを食らうことは想像に難くない。
…リアルシャドー、止めておくか?

一方で烈の話はとんとん拍子に進んでいる。
溜めが長かっただけに展開が早いのはありがたい。
そして、試合の方も早く終わってしまいそうだ。
スモーキン君には何の意外性も感じないのが…

結果は負けだったが、郭春成や龍書文には期待できるものがあった。
だって、狂獣に凶人ですよ。実に強そうだ。
彼らには負けたとはいえ、期待感があったのだ。
郭春成とか惨敗にもほどがあるけど、期待感はとんでもなかった。
悪いのは刃牙だ。

それに対してスモーキン君は何だ?
タイトルに一番近いとか恥ずかしくて履歴書にすら書けないレベルだ。
せめて裏ヘヴィー級チャンピオンとかアンリミテッド級チャンピオンとかムエタイ殺しくらいは名乗って欲しいものだ。
すまん、ムエタイは誰でも殺せる。

スモーキン君はボクシングに捕らわれないアンチェインボクサーだったりして。
煙というのがポイントだ。
気体化するスモーキン君を対戦相手は見つけることができない。
レフェリーも見つけることができないので、気体化すると試合放棄扱いになって負ける。
…気体化はダメだな。

忘れられているようだが、烈の肺活量はガイアに匹敵する。
その気になればガイア並みの大声を出せるかもしれない。
つまり、煙を吹き飛ばすことも自由自在なのだ
…スモーキン君も吹き飛ばされたりして。

リングにかけろみたいなボクシングをすれば、スモーキン君には未来があるかもしれない。
とりあえず、対戦相手を場外に吹き飛ばす。
他にも運動神経をマヒさせたり、真空のパンチを撃ったり、普通のパンチにしか見えないけど必殺パンチだったりする。
でも、今回の決めパンチはフックだった。
あかん…それじゃあかん…

逆転の発想として玄人好みの判定勝ち狙いのボクサーを出すとか。
判定勝ちなんてバキ世界の辞書にはない言葉だ。
基本、ノールールで戦っていた烈にとってはなおさらだ。
スモーキン君は判定勝ち職人として烈に挑む!金的アピールで点数を稼ぐぞ!
って、一歩も後ろに下がったことないんだっけか…
ボクサーとはどこまでも不遇なものであった。

やっぱり、ボクサーはPRがヘタだな。
スモーキン君だって強そうとか面白そうとかって気がまるでしない。
Jr.くらいの立ち回りはしないと面白みがない。
そのJr.もけっこう地味目だけど。
パッと見て華のある戦い方のできるボクサーは現れないものか。

その辺、烈は華のある戦いができるんだよなー。
興業不可解と言いながらも興業を理解している。
烈が多額の賞金をもらったのも、ワーレフを華のある倒し方をしたからなのかも。

次はどんな興業を魅せることやら。
烈は知らないうちにカイザーの罠にハマっているのかもしれないのだった。
次は土偶のきぐるみを着て出てみるか?
ミスター土偶!烈海王!
…似合いそうだなぁ…やっぱり、烈は興業向きだよ。



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