範馬刃牙 第302話 壁画が表すもの…



数々の人間を屠ってきた鼓膜破りが刃牙にも決まった。
鼓膜を破るだけに留まらず、脳内出血も免れない致命の一撃だ。
それさえも勇次郎にとっては前哨に過ぎない。
刃牙、今度こそヤバいか?


「森羅万象 諸行無常」
「全てに終了(おわ)りがある」


鼓膜破りを受け、刃牙の両耳から血が飛び出る。
範馬脳の持ち主と言えど、鼓膜破りを受ければどうにもならないようだ。
ショッギョムッジョ。
刃牙はこのまま散ってしまうのだろうか。
ナムサン!

刃牙の脳裏に浮かぶのは鼓膜破りを喰らった母、朱沢江珠の姿だ。
独歩や郭海皇と言った格闘家のみならず、女で母の朱沢江珠も鼓膜破りを受けている。
そして、殺されている。
母の最期を思い起こしたということは、自分の最期を感じたということか?
刃牙が終わる時がついに訪れたのだろうか。

パンッ

鼓膜破りを受けた刃牙をさらに両手で叩く。
前代未聞のダブル鼓膜破り?
違う、頬を叩いた!
え? ナンデ? ナンデ頬!?

ここに来て変顔を披露する刃牙である。
鼓膜破られた直後なのに……
うーむ、格好付ける場面で格好付けず、悲惨な場面で悲惨さを感じさせない主人公だ。
範馬刃牙、健在である。

さて、場面はギザのピラミッドへと移る。
第283話で鬼の壁画が見つかった場所だ。
って、また出てくるのかよ。どうなってんだよ。

クリス教授は未だに戻ってきていないようだ。
そう、さらなる発見をしていたのだ。
それは巨大な鬼と小さい鬼が向かい合う壁画だ。
エジプトの未来予知力、半端ねえな。
もうピラミッドから格闘家が蘇ってもいいんじゃなイカ?

「親子……」
「父親と息子だろう」


識者だけありクリス教授は鋭い分析をする。
刃牙と勇次郎の戦いははるか過去より定められていた運命だったのか。
人類のバランスが変わりかねない一戦だ。
時の霊感あらたかな人たちが何かを感じても不思議ではないか。

この二つの鬼はただ向かい合っているだけではない。
勇次郎の後ろには多くの人たちが象られている。
クリス教授の見立てでは人種、性別、年齢もバラバラだ。
共通性のない集団だからこそ、それが集っているのが不思議であるというものだ。

「一見部下に見えるこれらの群れだが……」
「或いは彼父親悪魔(デビル)を讃える存在なのではないだろうか」

「カリスマだと……」

「うむ………」
「………多分だけど……」


鋭すぎるよ、クリス教授。
悪鬼羅刹と言わんばかりに恐れられている勇次郎だが、それと同じだけ畏敬の念を皆から抱かれている。
力なき一般市民から権力者に至るまでだ。
同業者とも言える格闘家からしても、勇次郎と戦うことは一種の夢である。
まさにカリスマだ。

で、その数多の人々の壁画は小さい方の、刃牙の壁画には存在していない。
それって刃牙にカリスマがないってことですかー! ヤダー!
……実際ないよね、カリスマ。
都市伝説でも刃牙は後付けだし。

刃牙は最後も最期も間近に迎えて古代文明からダメ出しされてしまった。
刃牙ってこんな奴だよね、一切合切ブレないね。
瞬間接着剤というかボルトというか溶接で固定されてしまっている。

「聴覚のないまま」
「聴こえぬまま聞け」


で、カリスマ溢れる父はカリスマ溢れぬ息子に語りかける。
鼓膜破りをした上で語る。
もしかして、よっぽど恥ずかしいことを言うんじゃないだろうな。
そのために鼓膜破ったとしたらラノベやエロゲーでも見られないくらいに画期的な告白方法だ。

しかし、刃牙さん、鼓膜を破られたのにわりと平気そうだ。
もうタフネスのレベルが高すぎて何がどうなっているのかさっぱりわからん。
そういえば、オリバは鼓膜を事あるごとに破られているけどわりと平気だ。
同じように刃牙クラスになると鼓膜を破られても音が聞こえなくなる程度なのか?
でも、脳内出血とかもあるからなー。
範馬脳ならむしろ出血くらい血行が良くなるというものなのだろうか。

遅れて花山と千春も駆けつける。
刃牙の友と言えば花山だ。
もっともユウジョウと言えるものを形成している。
花山以外に友と言える友は烈、ギリギリ克巳か。
刃牙は友達が少ない。
……加藤と花田はハブでいいか。

が、せっかくやってきたのに観衆に阻まれて先に進めない。
とても刃牙の戦いは見られそうにないが、花山は観衆を押しのけず遠くから見つめる道を選んだ。
距離は関係ないということか、それとも友の最期は間近で見たくないのか……

「勇次郎と刃牙」
「今から成すこと」
「これまでの継続(つづ)きではない」
「ましてや」
「開始(はじ)まりでもない」
「これを以て〆とする」
「これを以て終了(おわ)りとする」


勇次郎は刃牙を持ち上げながら(実力の差が表れている気がする)、今度の今度こそ終わらせることを語る。
それは戦いを終わらせるだけではなく、二人の関係さえも終わらせる気でいるのだろう。
息子大好きな身としては直に聞いて欲しくないのかも知れない。
言葉以上の感情があるからただ感じ取って欲しいのか。
そのために鼓膜破られたとなるといい迷惑であるが。

意図を理解したのかしていないのか。
刃牙は冷や汗を流し呆然とする。
敬愛し追い続けた父から終わりを宣告された。
別れようと言われたものである。
そりゃあ呆然とする。
聞こえているのか、理解しているのかは、定かではない。
だが、もし理解していれば刃牙はもう何も考えられないほどのショックを受けるだろう。
梢江の全裸以上の破壊力だよ。

「小指から」「こう……」
「順に……」
「そう……」


勇次郎は拳を握らせた。
まるでパンチのやり方を教えるように、丁寧に握らせた。
鼓膜破りは決着を着けるための布石ではなかった。
相も変わらず決着が着きそうで一向に着かない。

勇次郎は刃牙に拳を握らせてどうするのか。
むしろ、今更握らせるのか。
その狙いは何なのか。
ここから刃牙が初めて勇次郎から格闘技を教えてもらったことを思い出して、数週間経過してもおかしくはない。
次回へ続く。


エジプト文明は範馬親子の決戦を予期していた!
何か凄いところに話が飛ぶと同時に、話が進まなかった。
慣れたものである。
それでいいのかは別として。

勇次郎は刃牙との関係を終わりにする気でいる。
何だかんだでバキシリーズは刃牙が勇次郎を追いかける話だ。
その構図が終わると言うことは、バキという物語が終わるということでもある。
最終回が近付いていることが伺える。
この調子では親子関係と同時にボクシングも終わってしまいそうだ。

勇次郎は何の意図を持ってバキに改めて拳を握らせたのか。
鬼哭拳の撃ち合いでもやる気だろうか。
二人の決着を着けるにはこれ以上ないフィナーレだ。
刃牙が不利だけど。
ゴキ哭拳がノーダメージだったのだから、ただの鬼哭拳で勝てる道理はない。

ピンチなのに刃牙への応援が少ないのではないだろうか。
勇次郎はすげえと幾度も驚かれているが、刃牙は何をやったのかよくわからないことが多い。
ゴキブリダッシュなんてもっともたるものだ。
アピール力が足りないし、そこがカリスマの不足に繋がっているのかもしれない。

とりあえず、格闘家たちの熱い友情があれば、刃牙も息を吹き返すかもしれない。
まず、独歩さん。……『バキ』最終回で勝負を断られていた。根に持っていそうだ。
次にピクルさん。言うまでもない。命とも言える牙をへし折られて恨みたっぷりに違いない。
オリバさんはここぞとばかりに刑務所での恨みをぶつけるかもしれぬ。
花山は観客が邪魔で応援に行けません。それを是としました。
梢江は頑張らなくていいです。
……ピラミッドの壁画は的確すぎるな。
刃牙が死んだら誰がおんぶしてくれるんだろう。
ピクルが愛羅承魂と刃牙を食べ始めないことを祈ります。



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