EPISODE9 英雄故事



貴重な普通の美少女、小日向未来が爆風に包まれた。
まぁ、貴重な普通の美少女なので大丈夫でしょう。
普通じゃなければ大丈夫じゃないのかと問われると、普通じゃないならまぁ大丈夫である。
あれ? 理屈が通らないぞ?



「未来……」

命と引き替えに格好良く変身したものの爆風に包まれる未来を見て響は絶望する。
ヤバい早く助けないと、とはならない。
これでも女子高生、それも入学したばかりの1年生なのだ。
友の死を見て闘争心が昂ぶることはない。




ここで未来との日々を走馬燈のように思い起こす。
第1期ラストの流れ星もイメージ画像とかではなく、ちゃんと2人で見た大切な想い出のようだ。
仲が良かっただけにその想い出を喪失した傷は大きい。



「何で……こんなことに……」

立花響、あっさりと折れました。
響のメンタルはさほど強くない。
第1期の翼のカ・ディンギル特攻によって変身は解けているし、ネフィリムに左腕を食われた時は自分を制御できなくなっている。
だから、最愛の人、あいや最高の友達が死んだとなれば戦意を失う。
絶望を前に一度は屈するのが立花響及び金子彰史主人公なのである。
無論、そこから立ち上がるのも立花響及び金子彰史主人公であるのだが。



戦意を喪失してもノイズの動きは止まらない。
空気を読んで徐々に響を射程内に捉えていく。
いい人ですね、ノイズさん。まるで早く助けろと言わんばかりじゃないですか。



「立花ッ!!」

ここで防人が駆けつけた!
今度は間に合ったしバイクで貯水槽を破壊することもないし数トンの水を叩き付けることもない。
最近は面倒くささが蘇っている翼だが仲間の危機に駆けつける頼れる一面も健在だ。



「そいつは任せたッ!」

クリスも「Bye-Bye Lullaby」と共に戦線に参加する。
任せている辺り、クリスは翼に信頼を置いていることがわかる。
シンフォギアGになってからのクリスは仲間に対する信頼が見える。
連携も行えるようになっているし、口とは異なり態度では相当に響や翼を好き好んでいるようだ。



「目障りだァッ!!」

「Bye-Bye Lullaby」の歌詞を叫びながらの「MEGA DETH PARTY」でノイズを一掃する。
イチイバルは射撃特化型シンフォギアだけあり空中の敵はお手の物だ。
スカイタワーでの戦いは初めてクリスが響たちと手を繋いだ場所だ。
そこでクリスが再び仲間のために戦うというのも象徴的である。
一方で友人である未来を失ったのも同時に象徴的である。



(少しずつ何かが狂って壊れていきやがる)
(あたしの居場所を蝕んでいきやがるッ!)


今度は十八番の「BILLION MAIDEN」だ。
口ぶりからすると二課とそれに連なる人間を自分の居場所としていることがわかる。
陽だまりを欲しているのはクリスもなのだ。
作中における未来とのコミュニケーションが見られていないが、クリスにとっても陽だまりなのは違いあるまい。
クリス×未来の薄い本もあるし。あるし。




(やってくれるのはどこのどいつだッ!)
(お前かッ!? お前らかッ!?)
(ノイズッ! あたしがソロモンの杖を起動させてしまったばかりにッ!)
(何だ――悪いのはいつもあたしのせいじゃねえか)
(あたしは……ッ!)


ノイズに怒りを露わにしながらクリスはガトリングを拳銃のように振り回す大立ち回りをする。
最近、いいところはないがさすがは設定で保証されるほどのバトルセンスの持ち主である。
そして、怒りを感じるのはノイズだけでなく自分にもだった。
ソロモンの杖を起動させてしまったことは未だにクリスの中に後悔として残っている。
クリスは歌による平和を夢と見ながらも、その歌で争いの火種を生んでしまったのだ。
慚悔するばかりだろう。
それにしても物語における重要度が随分上がったソロモンの杖であった。



そして、新技「MEGA DETH FUGA」で大型飛行ノイズを破壊する。
新技と言っても第1期第11話でロックオンシリーズと共に使ったのと同じ技だと思われる。
また、「MEGA DETH QUARTET」の縮小版でもあるのだろう。



同じスカイタワー戦であるとはいえ、苦戦した第1期第10話とは異なり快勝を収める。
第1期からのクリスの成長が伺える。
だが、クリスは憔悴している。
気持ちのいい勝利とは行かなかった。
駆けつけるのが遅れた結果、響を変身させて未来を失ってしまった。
むしろ、負けと言っても過言ではない。



米国政府の存在は二課も掴んでいた。
F.I.S.と米国政府に何らかの取り引きがあったこと、それを良しとしない何者かが取り引きを妨害したと見る。
第1期から変わらず米国政府に困らされる二課である。
シンフォギア世界において外交問題は大きな問題として存在している。
大人たちの抱えた問題は一筋縄ではいかないのだ。



(絶対に離しちゃいけなかったんだ……)
(未来と繋いだこの手だけは……ッ!)


一難去ったものの茫然自失とする響だった。
未来の死を受け止められていない。
響にとって未来の存在は大きく、また二課にとってもガングニールの侵食を止められる未来の存在は大きい。
大切な人でありキーマンを失ってしまった。

響が押さえるのはかつて失った左腕であり、未来と繋がっていた左手である。
シンフォギアGの響の左腕には厄が詰まっている。
左腕の厄が祓われることはあるのか。



「あったかいもの、どうぞ」
「少しは落ち着くから」


WAシリーズのお約束である「あったかいもの、どうぞ」である。
だが、今の響に「あったかいもの、どうも」と返す余裕はない。
WAシリーズのお約束を守れないほどに今の響は落ち込んでいる。
「おおおぉおおッ!」と振られても「アクセスッ!」と返せないくらいに重傷だ。



「でも……わたしにとって一番あったかいものは……もう……」

陽だまりを失い響は涙する。
偽善と否定されるし左腕をパクつかれるし身体がヤバいし陽だまりも失うし、シンフォギアGの響は災難続きだ。
シンフォギアGは響が全てを失う物語なのか。
呪われているかも……



「この手は血に穢れて……セレナ……私はもう……」
「うあぁあああッ!!」


悲しみに暮れるのは二課だけではなくF.I.S.もだった。というか、マリアさんです。
米国政府のエージェントをその手にかけたことを悔やんでいた。
童貞を捨てた現実に耐えられていない(人を殺すことの隠語。覚えておくとオシャレな会話をできますよ)。
作中でエージェントを殺したかどうかは断言されていないが、マリアの後悔を見るに殺してしまったのだろう。
ただの優しいマリアがその手を血で穢した……この意味は大きい。

マリアはセレナの名前を出している。
みんなを守るために命を引き替えにしてでも歌ったセレナと比べると、今の自分は命を奪った立場である。
戦うためにしか歌を歌えていない。
そして、そこから一歩進めば装者として成長する。
翼もクリスも自分の歌を見つめ直して成長することができた。
マリアも成長できるのか、それとも。



「ナスターシャは10年を待たずに訪れる月の落下より
一つでも多くの命を救いたいという私たちの崇高な理念を米国政府に売ろうとしたのですよ」


この状況で何一つ悪びれず現れるのがウェル博士である。
これっぽっちもちっともまったくもって悪びれていない。
それどころかナスターシャ教授を糾弾している。
まさに外道!

ともあれ、米国政府を敵視するF.I.S.としてはナスターシャ教授の行動は想定外だろう。
現地にいたマリアだって驚いていた。
それもこれもナスターシャ教授が見通しもなしに動いたのが原因なのが笑えない。
研究は得意でも計画を立案し実行するのは苦手なのか。



「それだけではありません」
「マリアを器にフィーネの魂が宿ったというのもとんだデタラメ」
「ナスターシャとマリアが仕組んだ狂言芝居」


さらに重要な事実をここでバラしてくる。
F.I.S.にとって重要な行動理念であり、計画の遂行を支える要因でもある。
それをフェイクだと遠慮なしにバラした。
ウェル博士はF.I.S.を内部崩壊させる気なのだろうか。
無論、この人なら堂々と内部崩壊させてくる。
顔芸と台詞がやたら面白いがノイズだけで装者たちと渡り合えるほどの知将でもあるのだ。



「ごめん……2人とも……」
「ごめん……ッ!」


切歌と調に対してマリアは謝ることしかできない。
2人を騙してきたのだ。
ただの優しいマリアにとってこの事実は裏切りにも等しいのだろう。
手を血に穢すことを悔いて、嘘をついたことも悔いる。
この人、何でこんなにすれていないんですかね?
マリアの名の通り、聖母のようなお方だ。……褒めすぎか。



「僕を計画に荷担させるためとはいえ、
あなたたちまで巻き込んだこの裏切りはあんまりだと思いませんか?」
「せっかく手に入れたネフィリムの心臓も無駄になるところでしたよ」


散々独断専行したくせにこの言い様である。
お前が言うな大賞を地で行く人だ。
立場的にはナスターシャ教授の行動を責められるのだが、散々ノリノリに好き勝手やってこの台詞である。
なかなか言えることではない。さすがのウェル博士である。

そういえば、ネフィリムの心臓があった。
存在感ダダ漏れのソロモンの杖と違って、期待の新完全聖遺物なのにいまいち出番がない。
手に入れた時のウェル博士の喜びはどこへやら。
実際に使った時にウェル博士はさらに喜ぶから大丈夫か?



さて、敵も味方も不穏な事情に包まれる中、緒川さんは小川に落ちている通信機を発見する。
二課の必須アイテム通信機。
通信以外にも自動販売機などで使用できるのが便利だぞ。
そんな通信機がこんなところに落ちている。
相応の意味があるはずだ。
そして、こんなものを見つける辺りはさすがの有能な現代忍者、緒川さんである。
忍法か? 忍法なのか?



さて、また場面は変わってファミリーレストラン「イルズベイル」である。
イルズベイルはWAシリーズに登場した監獄島の名前だ。
WA2とWA4で二度登場した伝統のダンジョンである。
露骨なWAネタだ! そういえば、記憶の遺跡とかどうなったんですかね!



そこでナポリタンをパクつくのが雪音クリス(16)である。
食い方汚えなこの子!
麺をすすり上げて音を立て放題だし、口を汚し放題でマッシュルームを頬に付けて、おまけにフォークの持ち方が、その歯ブラシですか?
これっぽっちも食の作法がなっていない。
残念な美少女を地で行っている。
なお、未来を除く全員が残念な美少女である。

だが、クリスの過去を考えると道理である。
何せ幼い頃に両親を失い治安の悪い国で生きてきたのだ。
言葉遣いが汚くなるし当然食の作法どころではない。
この食べ方からクリスの悲惨な過去がわかる。
なお、「やっさいもっさい」などは両親の薫陶を受けたことによるものらしい(漫画版第3巻より)。
もしかして、この作法も両親が緩やかだったからか?



「何か頼めよ、奢るぞ」

「夜の9時以降は食事を控えている」


そんなジャリンコクリスと一緒にファミレスにいたのは翼であった。
(なお、口に物を含みながら喋る。こういうところまで作法のなってなさに余念がない)
アーティストだけあり体型の管理に気を遣っていることがわかる。
というか、気を遣う人だった。
けっこう女子力高いんじゃないっすかね? 部屋汚いけど。



「そんなんだからそんななんだよ」

「何が言いたいッ!」
「用がないなら帰るぞッ!」


これは食べないからカリカリしているという意味か、あるいは乳ねえんだよという意味なのか。
私は後者の意味を一番に思いついた。
そのバストは実際貧相であった。
まぁ、好き勝手飲み食いしてクリスのような体型になられると、体型の管理を行っている翼としては溜まったものではあるまい。
圧倒的な才能を見せつけられた心持ち、なのかも。



「怒ってるのか?」

「愉快でいられる道理がないッ!」
「F.I.S.のこと、立花のこと、そして……仲間を守れない私の不甲斐なさを思えば……ッ!」


小汚い食い方をするジャリガキを前にしても相変わらずの剣モードである。
何か徹底していますね、この人。徹底して面倒臭い。
そして、クリスはイスの上にあぐらである。
誰か作法教えてあげてください。弦十郎さん、あんたが一番保護者に近い人間だと思うからちゃんと教えてあげればいいのに。
だが、その弦十郎に育てられた(思われる)のが翼なのだからクリスのジャリガキっぷりも道理か。
……あれ、弦十郎が残念な美少女たちを生み出しているのか?



「呼び出したのは一度一緒に飯を食ってみたかっただけさ」
「腹を割っていろいろ話し合うのも悪くないと思ってな」
「あたしらいつからこうなんだ?」
「目的は同じはずなのにてんでばらばらになっちまってる」
「もっと連携を取り合――」


けっこうみんなのことを考えているのが雪音クリスである。
そんなわけで話し合うために翼と飯にしようとしたのだった。
面倒くさそうで絡みにくそうな翼とも話し合おうとしている。
相変わらずいい子である。

しかし、かつては連携を取ろうとしなかったクリスが連携を取ることを打診するというのが意外だ。
皆の心が離れていく現状に一番の不安を感じ、それを一番何とかしようと思っているのが伺える。
いい子ですね。
相手がとことん面倒臭い人なのが運の尽きだが。



「雪音」
「腹を割って話すならいい加減名前くらい呼んでもらいたいものだ」


翼がクリスは自分を名前で呼ばないことについて触れた。
翼だけでない。響も名前で呼んでいない。
おそらくは全員を名前で呼んでいないのだろう。
思えば名前で呼んでいるのはフィーネさんだけだった。
クリスにとってフィーネさんは敵であれど大切な人だったということか。

皆との距離が大きく縮まった今でも名前では呼んでいない。
そのことに触れていくのは意外だ。
だが、名前で呼べば距離はより縮まる。仲間との絆を示すには最適だ。
そして、百合度が高まる。薄い本が厚くなる。
なお、0には何を乗算しても0のままです。

あとアンタも名前じゃなく名字で呼んでいるじゃないかと突っ込まないであげてください。
名前で呼んでいるのは奏だけだよ。
皆、恥ずかしがり屋だ。



「はぁッ!?」
「そ、それは……おめー……」


ジャリガキ爆発中のクリスだったが、可愛いところもあるんだよと可愛いところを見せる。
翼にはとてもじゃないができないことだ。
あの人、可愛さと引き替えに面白さを手に入れたから。
ともあれ、クリスの提案はもっともなものだったが、翼は巧妙に話題を逸らして退店してしまう。



「結局、話せずじまいか……」
「でも、それで良かったのかもな……」


ふとそんな言葉を口にする。
その真意は如何に。
面倒臭い人が相手だから話し合っても平行線、という意味ではなかろう。
連携を取ると言いながらも、クリスも自分を誰かに曝け出すことに躊躇いがあるのか。



「にっがいなぁ……」

ふと呟く。
二課は待ち望んだ自分の居場所だったが、そこでの生活は順風満帆なものではなかった。
困難があってもみんなと乗り越えられると思っていたが、現実はそう甘くもなかった。
そういうことなのだろう。
学園祭で歌った時のような希望に満ちた時は今はない。
苦い。
ところでマッシュルームをさっさと取りなさい、このジャリガキ。



なお、このジャリガキとこの暗黒聖闘士は同一人物です。



「本当よ」
「私がフィーネでないことも、人類救済の計画を一時棚上げにしようとしたこともね」


さて、場面は変わってウェル博士の発言を肯定するマリアだった。
棚上げとナスターシャ教授の行動を批判している。
マリアはナスターシャ教授にもっとも振り回された人間だ。
振り回された結果、米国政府に裏切られた。
謙虚なガングニールのマリアもその怒りが有頂天になってもおかしくはにい。

ナスターシャ教授の行動には切歌と調も不満を口にする。
米国政府、信じられない。
信じられないから行動したというのに、その米国政府を勝手に頼ったのだ。



「あのまま、講和が結ばれてしまえば私たちの優位性は失われてしまう」
「だから、あなたはあの場にノイズを召還し会議の場を踏みにじって見せた」

「嫌だなぁッ!」
「悪辣な米国の連中からあなたを守って見せたというのにッ!」
「このソロモンの杖でッ!」


それに対して話題を逸らすナスターシャ教授に対し、一応の正当な理由を返すウェル博士であった。
敵も味方も平行線だ。お前ら、会話しなさい。
でも、ウェル博士は好き勝手してみたかっただけとしか思えない。
フィーネさんから教えてもらったソロモンの杖のコマンドを試したかったとしか。
格ゲーの凄いコンボを教えてもらったみたいな感じで。



ウェル博士に敵意を見せる切歌と調をマリアが遮る。
散々体育座りで迷ったマリアだったが、今のマリアには迷いはない。
迷いなくウェル博士の側に立った。



「偽りの気持ちでは世界を守れない」
「セレナの想いを継ぐことなんてできやしない」
「全ては力」
「力を以て貫かなければ正義を為すことなどできやしない」
「世界を変えていけるのはドクターのやり方だけ」
「ならば、私はドクターに賛同するッ!」


マリアはついに本当に悪になる覚悟を決めた。
ウェル博士道は邪道だが、その道を往く気だ。
でも、「決意」や「覚悟」というよりも「自棄」という言葉が似合う。
ただの優しいマリアがあまり無理や無茶をしても……

いずれにせよ正義のために悪を貫く気概だ。
ウェル博士のやり方を嫌悪していたというのに……
童貞を捨てたことで裏返ったらしい。
多分、悪い方向に。



「そんなの嫌だよ……」
「だって、それじゃ力で弱い人たちを押さえ込むってことだよ……」


マリアの決意だったがウェル博士以外には評判が悪い。
弱い立場にいた調としてはウェル博士の流儀は正義と言えどそれを貫くのは嫌なのだろう。
実力行使を匂わせる台詞を何度か言いながらもそういう行為を嫌う人だった。
「目的達成のためならば手段を選ばない」がまったくのフェイクである。
「常識人」と同じくらいのフェイクだ。デスデス言う常識人がいるかァー!



「それが偽りのフィーネではなくマリア・カデンツァヴナ・イヴの選択なのですね」

ナスターシャ教授はマリアの決意を問う。
それを真っ直ぐな視線で返す。
が、僅かながら視線が泳いでいる。
つまりはそういうことである。無理をしているのだ。



ナスターシャ教授はまたも死にかける。
だが、悪を貫くと決意したマリアはナスターシャ教授から目を逸らす。
正義のために悪を貫けない半端者にかける情けはないのか。
もちろん、一度反応してから目を逸らしているのだが。
もう無理しまくりですね。根はただの優しいマリアである。



「あとのことは僕に任せてナスターシャゆっくり静養してください」
「さて計画の軌道修正も忙しくなりそうだ」
「来客の対応もありますからね」


F.I.S.の諸葛孔明、ウェル博士は悪い笑みを浮かべながら退室する。
静養してくださいと言ってもそのナスターシャ教授の体調を見れるのはウェル博士だけだ。
無茶振りである。
そして、ここから先は完全に好き勝手できるようで嬉しそうで楽しそうだ。
好き勝手できなかった今まででさえ好き勝手やっていたのだ。
好き勝手できるようになればさらに好き勝手やってしまう。
危険だ。問答無用に危険だ。顔芸もさらに好き勝手やってしまう。

そして、来客……?
トカゲの人でも呼んだのか?
博士だから案外気が合うかもよ!



「響……」

囚われのヒロインになった未来がいた!
無事に無事である。
そして、ついに囚われた。
普通のヒロイン度アップで普通の美少女度アップだ!
このアニメにおいて普通という称号は存外貴重である。
いい人と思われた人が実は忍者だったり、常識人を名乗る人が普通ではなかったり普通じゃないと判明するばかりの今ではなおさらだ。

それにしてもさすがのしぶとさである。
ノイズの襲撃を幾度も潜り抜け、フィーネさんのビンタを受けても未だなお生きているだけのことはある。
死なないことに関しては装者以上に定評がある。
響にそのしぶとさを分けてあげてください。



「これは……?」

「スカイタワーから少し離れた地点より回収された未来君の通信機だ」


緒川さんが拾った通信機は響たちに見せられる。
拾われた未来の通信機。
破壊されるまで一定の速度で移動していた。
そして、スカイタワーから離れた地点で見つかった。
それが意味することは未来は爆風で死んだわけではないということではなく、何者かに拉致された。
二課はその事実に辿り着いた。それが意味することはつまり――



「師匠ッ! それってつまりッ!」

「こんなところで惚けてる場合じゃないってことだろうよッ!」


未来の生存が判明したことで二課にも光明が見えてくる。
光明かは置いておいても、暗い事情ばかりなところに久し振りに明るいニュースだ。
さすがは未来(みく)……未来(みらい)の名を持つ者……



「さて、気分転換に身体でも動かすかッ!」

「はいッ!!」


吉報に響の表情に明るさが戻る。
空元気の明るさでない。心からの明るさである。
このような本当に明るい響は久し振りだ。
未来の生存のニュースは立ちこめる暗雲を振り払う力があるのだ。



ならばじっとしてはいられない。訓練だ。鍛錬だ。修行だ。
朝焼けの中で身体を動かせ。
ここから2013年のアニメで最高のギャグシーンが始まるぞ!
え? あれ? ギャグ?




イッたァアアアアアアッ!!
指令が歌ったァッ!!
英雄故事をォオッ!!
これでェエエエエッ!!!

……歌った。弦十郎が歌った。
今回のサブタイトルの「英雄故事」を歌った。
しかも、日本語訳とか半端なことせずに原文そのままで歌った。
BD特典として弦十郎が歌う「現着ッ! 電光刑事バン」さえオトリ!
本命はこれ! 英雄故事!



こちらがオリジナルの「英雄故事」である。
これを歌いました。
美少女変身アニメで歌いました。
狂っています。普通のアニメでこんなことをやればスタッフの脳みそを心配してしまいます。
普通じゃなくても心配しちゃいます。
ホントバカじゃねえの、金子彰史!
アンタ、頭おかしすぎるよ!

予告した通りにブレーキを踏まないというかブレーキを忘れているようで良かった良かった。
シンフォギアGでは英雄故事を歌って金子彰史は頭がおかしいと思わせた。(追加)



「何でおっさんが歌ってんだよッ!?」
「そもそも、これ何の歌だぁ?」
「大丈夫かぁ?」


たしかに(頭)大丈夫かぁと言いたいですよ。
大丈夫かと問われる歌というのも凄まじい。
何か恐ろしいです、このアニメ。
もう8人目のキャラソンは弦十郎で確定ですね。



「ったく慣れたもんだな……」

そんな全身これ突っ込みどころの状況でも元気いっぱいに走る響を見て呆れる。
でも、どこか嬉しそうだ。
何にせよ元気いっぱいなのだ。
仲間想いのクリスとしては嬉しいのだろう。
イベントの異常さになかなか気付きにくいのだが。



(そうだ――うつむいてちゃダメだッ!)
(わたしが未来を助けるんだッ!)


こんな狂った状況下でも明るい響である。
そして、歌う! 響も「英雄故事」を歌う!
この英雄故事は師弟協力技である。
響も弦十郎の秘蔵の「香港国際警察」を見たのだろう。
ならば歌える! 道理! 必然!




というわけで映画トレーニングの開始だ。
逆立ちし腹筋で身体を持ち上げ桶に水を移す、縄跳び、茶碗を身体に乗せて站椿(たんとう)である。
過酷なトレーニングにクリスは音を上げています。



站椿に耐えきれずクリスは転んでしまう。
いかにバトルセンス抜群と言えど映画でしか見ないトレーニングには対応できないようだ。
一方で防人の翼は余裕でこなしている。
こんなところで笑いを取らんでも……
これはつまり日常的にこのようなトレーニングをしているのか?
翼がこうなってしまったのは弦十郎の責任だ間違いない。



そして、冷凍室における肉をサンドバッグに見立てたトレーニング!
って、ロッキーじゃねえか!?
「英雄故事」を歌いながらのロッキーである。
意味がわかりません。
わかることは金子彰史が楽しんでいるということだけだ。
楽しみすぎだ! アニメをオモチャにするな! いいぞもっとやれ!



防人の翼は普段から慣れているのだろう。
大分堂に入っている。
さすがである。さすがすぎる。



そして、雲の上まで山を登り生卵を飲む!
またロッキーだ! 金子彰史の趣味モロだしで丸出し!
もちろん、飲み慣れていないであろうクリスは生卵に耐えられないのだった。
どうしてこの人はこんなにも可愛いんだろう。ズルい。
物凄い堂々と飲む防人さんが笑いを誘う。
どうしてこの人はこんなにも面白いんだろう。ズルい。

なお、適合者の身体能力は高い。
サンドバッグを吹き飛ばす響、バイクから脅威の大ジャンプをした翼、ノイズの突進をかわしたクリスなど、随所でそれが描写されている。
その適合者に負けず劣らずの体力を弦十郎は見せている。
そして、その体力はシンフォギアにさえ匹敵するのが恐ろしい。
久し振りにOTONAとしての凄さ(とおかしさ)を見せている。



そして、何故か山頂にあるフィラデルフィア美術館で各々がポーズを決める。
どこの日本ですか。
いや、シンフォギアの世界は日本によく似たファルガイアなのでフィラデルフィア美術館があってもおかしくない。
なお、フィラデルフィアはWA3のダンジョン名として登場している。
これはシンフォギアにロッキーを彷彿とさせるシーンが出ても文句を言えない……
遠大な伏線であった……



(どいつもこいつもご陽気で……)
(あたしみたいな奴の場所にしてはここは暖かすぎんだよ……)


異常空間を骨の髄の芯まで味わったクリスであったが、何だかんだで悪くないものらしい。
暖かいと言うよりも生暖かい気もするが。
ともあれ、みんな陽気である。
響も、弦十郎も、翼も。
師弟コンビがノリノリなのは仕方がないにしてもアンタがノリノリなのが凄いよ。

連携を取ることを考えた矢先にこれである。
二課はクリスの理解を超えた場所のようだ。
だが、暖かい。暖かいクリスの居場所だ。
ちょっと、いやそれなりに、いやかなり、いや大幅に、いや絶対におかしいけど、暖かい。
あと金子彰史は頭がおかしい(褒め言葉)。



さて、マリアは未来を監視しながら「Apple」を歌っている。
見るのはセレナの形見のペンダントだ。
何だかんだで暇があればマリアは歌っている。
悪の道を往くと決意した今でも歌が好きであることがわかる。



「どうしたの?」

「いえ……ありがとうございました……」


監視者が歌を歌われると困りますよね。私だったら困る。
そりゃあ困るというものだが、未来は礼を述べる。



さて、ここで回想だ。
ガングニールドリルで天井をブチ抜いた先に未来がいた。
おそらく響が落下して数秒後の出来事なのだろう。
神がかり的なタイミングのズレであり、主人公とそのライバルの邂逅としては神がかり的なニアミスである。
イメージ画で向かい合っているのにこれっぽっちも接点がない。
同じガングニールだというのに……



マリアはセレナの面影を未来に重ねる。
2人とも普通の美少女ですからね。
セレナは血涙を流しているけど。



「死にたくなければ来いッ!」

差し伸べられたマリアの手をほんの僅かに迷った後に手に取る。
迷いは一瞬だけだ。決断が早い。
目の前にいる人間が誰なのかは十分にわかっている。
それでもこの決断の速さは響が必ず助けてくれるという信頼の為せるものか。
さすがの行動力である。



「どうして私を助けてくれたのですか?」

「さあね」
「逆巻く炎にセレナを思い出したからかもね」

「セレナ……?」


口べたです、この人。
初対面の人にセレナと言って意味が通じるか。
セレナのことを聞いて欲しいのか?
チラッチラッと見ているマリアの意志を何となく感じ取れるような。



そんな中に怪しい博士がやってくる。
(さりげなく、セレナが死んだ妹だと解説してマリアの昔話を妨害した)
博士に痛い目を見たのが未来である。
当然、警戒する。それでなくとも怪しさ満タンだから警戒するだろう。
と思っていたけどそもそも未来とウェル博士は面識がある。
そりゃあ警戒する。
何にせよウェル博士は怪しいから警戒されるだろうけど。



「この子を助けたのは私だけれど、ここまで連行することを指示したのはあなた」
「一体何のために?」

「もちろん、今後の計画遂行の一環ですよ」


未来が助かったのはマリアのおかげだが、未来が未だに解放されないのはウェル博士のせいだった。
ぅゎはヵせぁゃιぃ……
一命を取り留めたと安心できない。
何かエロ同人みたいなことをされても文句は言えない。
薄い本の材料がこんな形で提供されることになろうとは……



「そんなに警戒しないでください」
「少しお話でもしませんか?」
「きっと、あなたの力になってあげられますよ」


まったくもって信用できない笑みである。
警戒しろと言わんばかりだし、お話しちゃいけないし、力になってあげられない笑みだ。
むしろ、お前の力にするんじゃないだろうと疑ってしまう。
連帯保証人という言葉並みに信用してはいけない。
気を付けろ! エロ同人にされるぞ!





なお、ウェル博士の本当の笑顔はこちら。
あかん。



(マリアがフィーネでないのならきっとあたしの中に……)
(怖いデスよ……)


切歌はマリア本人からフィーネさんではないと言われ、自身のフィーネさんに不安になる。
今までは疑問の方が勝っていたが、今は確信の方が勝っているのか。
自分が塗り潰されてしまうのが怖いと言ったのは当の切歌本人だ。
こういうところは常識人である。こういうところは。



「わたしはマリアだからお手伝いがしたかった」
「フィーネだからじゃないよ」


「身寄りがなくて泣いてばかりのわたしたちに優しくしてくれたマリア」
「弱い人たちの味方だったマリア」


自棄になった、いや覚悟を決めたマリアの変化に戸惑う調だった。
響を偽善と糾弾しながらも、調本人のモットーはわりと響に似ている気もする。
困った人を助けようとする響、弱い人を守ろうとする調。
その差はどれほどのものか。

マリアは弱い人の味方だったから世界中に受けたのだろうか。
その基準は様々で一様に表せないが、世界全体で見れば強い人間よりも弱い人間の方が多い。
マリアはそんな人たちの心に届くような歌を歌っていたのかもしれない。



「調は怖くないデスか?」
「マリアがフィーネでないのならその魂の器として集められた
あたしたちがフィーネになってしまうかもしれないんデスよ?」

「よく、わからないよ」


フィーネさんの魂に怯える切歌はその可能性を示唆するが、調はよくわからないと言う。
魂を食われるという予兆がなければ自覚もないのだ。
いきなり不治の病で死ぬビジョンを思い浮かべろというものである。
それに対して切歌はなぶり殺しのように爆弾を背負わされている。
2人の認識が異なるのも道理だろう。

だが、調の答えに得心のいかない走り去ってしまう。
仲良しだった2人の間にも不和は広がる。
F.I.S.の陽だまりも崩れようとしている。
マリアさんもヘボキャラで売っていくのを捨ててしまった。
修羅道はここからか。



(もう少し――もう少しだけ待って、未来)

一方、爆弾を抱えながらも未来へ向かって歩む響であった。
英雄故事も歌ったし準備万端だ。
心が離れ離れになるF.I.S.とは真逆に、爆弾を抱えながらも心をひとつに近づけていく二課だった。



だが、ここで響の中のガングニールがきらめく。
響は激痛にうめく。
このガングニールの意味は何なのか、まだわからない。
マリアのガングニールの共鳴が一番に思い当たるが、それなら前回の時点で同じことが起きている。
何にせよ吉報ではなさそうだ。



さて、ナスターシャ教授はまた死んでいました。
最近、死んでばかりだ。
そんなナスターシャ教授を気にとめないようにしているマリアだ。
ただの優しいマリアを捨てるのは難しい。
この明らかに無理している感がたまりませんね。可愛いデス。



「つまり、のんびり構えていられないということですよ」
「月が落下する前に人類は新天地にてひとつに結集しなければならない」
「その旗振りこそが僕らに課せられた使命なのですからッ!」


新天地、つまりはフロンティアのことである。
そこに集まる……それが何を意味するのか。
でも、フロンティアの起動に関するウェル博士の言葉からは穏やかなことではなさそうだ。
千人砲とかじゃないでしょうね。



「米国の哨戒艦艇デスかッ!?」

そんな中で米国の哨戒艦艇を視界に収める。
F.I.S.は兵力では劣っている。
今のエアキャリアはウィザードリィステルスを展開していないし、対空ミサイルでも撃たれればシンフォギアとソロモンの杖があっても即詰みだ。
そう、何故かウィザードリィステルスを展開していない。
神獣鏡(シェンショウジン)を使っていないのだ。



「こうなるのも予想の範疇ッ!」
「精々連中を派手に葬って世間の目をこちらに向けさせるのはどうでしょう?」

「そんなのは弱者を生み出す強者のやり方」

「世界に私たちの主張を届けるには格好のデモンストレーションかもしれないわね」


半ば自分の享楽のために艦艇の殲滅を提案するウェル博士である。
当然、調は異を唱える。
だが、マリアはウェル博士の提案に賛成する。
例え防衛のための出撃さえも躊躇ったただの優しいマリアなのに……
不必要な争いでさえ自分たちの正義を通すためならば迷わず遂行する。
明らかに優しさを捨てる構えだ。修羅に入ってしまった。



「マリア……」

「私は――私たちはフィーネ」
「弱者を支配する強者の支配構造を終わらせる者」
「この道を往くことを恐れはしない」


今までとはまったく異なる主義主張に戸惑うが、マリアは頑なにその路線を捨てようとしない。
米国政府と戦うことを躊躇った結果、罪なき人間が命を散らせてしまった。
マリアの甘さが招いた惨劇である。
だからとて、無用な殺生をすることが命を救うことに繋がるわけでもないだろう。
やっぱり、この人は自棄になっているんじゃないだろうか。
マリア・カデンツァヴナ・イヴ。自棄にならなければ優しさを捨てられない優しさを持つ者……



大好きなマリアの変貌に戸惑う。
金子彰史が萌えアニメを作り始めたような困惑なのだろう。
大丈夫。英雄故事を歌わせるくらいには変わっていないから。
だから、マリアさんも中身はマリアさんのままに違いない。



そんなわけで米国の艦艇をノイズたちが襲う。
対人では圧倒的な強さを持っているノイズを前に為す術もなく、すぐさま近隣を潜行していた二課に応援要請が入る。
この状況でも制服な3人である。
制服が女子高生の正装なので、マリアも制服を着ればいいんじゃないですかね、最低20歳さん。



「死ぬ気かお前ッ!」
「ここにいろって、な」
「お前はここからいなくなっちゃいけないんだからよ」


出撃しようとする響をクリスは制止する。
未来が響の帰るところであると同時に、響が未来の帰るところだ。
そのためにまだ戦わせるわけにはいかない。
未来の帰る場所でなければいけない。
クリスの説得に響は戦うことを堪え待つことを選ぶのだった。
いやあ翼さんの不器用な突き放し方は一体何だったんですかね!
同じ不器用でも天と地の差だよ!

やはり、クリスの仲間を想う心はストレートにみんなの心に届いている。
それはクリスがその心に救われてきたからか。
翼は困った時に自分を追い込むタイプなのがいけないか。



「頼んだからな」

さらに乱したタイを直してあげる。
衣服もそうだしクリスは身嗜みに注ぐ女子力はけっこう高い。
その女子力を食の作法に少しは回せばいいのに。
あと口調にも回せばいいのに。
もっとも金子彰史が普通の美少女を生み出せばそれはそれで反感を買う。
未来が奇跡のようなものである。



さて、出ました! ブドウさんです! ブドウさんです!
ノイズの代表選手である。
OPでもその存在感をアッピルしている。
そんなブドウさんが登場! マリアも唇を噛むくらい喜んでいるぞ!
おめでとう!



「こんなことがマリアの望んでいることなの?」
「弱い人たちを守るために本当に必要なことなの?」


艦艇をノイズが蹂躙する光景を前でもマリアは笑ってみせる。
唇を噛んでも笑いを作ってみせる。
悲壮な覚悟だ。やっぱり、自棄だ。
この人は頑張れば頑張るほど悪い結果を生むタイプの人じゃないだろうか。
二課にもそんな人がいましたね。防人剣という人です。
どこの国の防人も……



「マリアが苦しんでいるのならわたしが助けてあげるんだ」

しかし、明らかであからさまなマリアの無理に調は気付く。
だからこそ、出撃する!
調もまた仲間想いなのだ。
除くウェル博士。




そして、ついに調の、シュルシャガナの変身だ!
正直、今までで一番性的な変身です。
エロさと胸は無関係! 安心だ、翼!

さて、とにかく回転する。グルグル回転する。さすがはノコギリのシンフォギアだ。
そして、ヒールの中にあるローラーのギミックが判明した。
不思議ホバーとかじゃなくて普通にタイヤだった。
グリップ力なさそうだしこりゃあ踏ん張れない。



「連れ戻したいのならいい方法がありますよ」

単身出撃する調に不安を感じる切歌である。
そこでウェル博士が策を授ける!
乗っちゃダメぇ! キテレツな策を与えられちゃう!
だが、混乱する情勢である。いつもは乗らないでも今回は乗ってしまいそうだ。



無用な殺生を止めるために落下からの「α式・百輪廻」だ。
シュルシャガナ版BILLION MAIDENと言ってもいいくらいの使いやすさである。
調が一番使っている必殺技だ。
ゲドラフとか、使いにくそうだからなぁ……



また、ノコギリを巨大化させてローリングノコギリアタックで周囲のノイズを薙ぎ払う。
相も変わらず回転大好きだ。
アームドギアを回転させるばかりか自分も回転!
回転すれば強くなるんです。1200万パワーになるんです。



だが、雑魚ノイズを倒せど本命がいる。
ブドウさんが調に牙を剥く! もとい果肉を飛ばす!
それをイナバウアーしながら調べはかわす。
わざわざ面白いかわし方をしなくてもいいのにとは思うが、わざわざ面白い選択肢をとことん選ぶのがシンフォギアである。
英雄故事とか。



ウワアアアアアアアアア! ブドウさーん!
無残! バラバラ! ナムサン! サヨナラ!
我々が愛したブドウさんは海の藻屑になってしまった。
喪失(さようなら)――ブドウさん。



「きりちゃん、ありが――」

ブドウさんを倒すと他のノイズが仇を討とうと調に襲いかかる。
それをフォローするのが切歌であった。
フィーネさんの件で少しいざこざを起こした2人だったが何だかんだで仲良しだ。
仲間のピンチには駆けつけるのだ――



「な、何を――……」

だが、薬物ゥ!
最愛の人に突如薬物を打ち込まれた。
目を見開く。そりゃあショックだろうて。



「LiNKER……?」

「いいえ、これはアンチLiNKER」
「適合係数を引き下げるために用います」
「その効果は折り紙付きですよ」


切歌が調に打ち込んだ薬物はウェル博士のとっておき、アンチLiNKERだった。
悪くて怪しい大人が差し出した怪しい薬を打ち込むというのは博打が過ぎる。
それほど切歌も追い詰められているということか。
危機的な状況を生み出し判断能力を鈍らせていく……
ウェル博士のやり口は大胆かつ狡猾だ。



「ギアが――馴染まない……ッ!?」

アンチLiNKERはちゃんとアンチLiNKERだったため、調の変身は解ける。
LiNKERの過剰投与とかでなくて良かった。
しかし、薬物漬けのF.I.S.だ。
薄い本で媚薬を打ち込むネタが流行るんじゃないっすかね。薄い本があればな……



「あたし――あたしじゃなくなってしまうかもしれないデス」
「そうなる前に何か遺さなきゃ調に忘れられちゃうデス」
「例えあたしが消えたとしても世界が遺れば、あたしと調の想い出は遺るデス」
「だから、あたしはドクターのやり方で世界を守るデスッ!」
「もう……そうするしか……」


切歌もまた覚悟完了した。
だが、切歌もまた覚悟というよりも、自棄である。
F.I.S.は負の連鎖に巻き込まれている。
そして、それを自在に操っているのがウェル博士である。
まさに巨悪……外道……
この外道さはフィーネさんには備わっていなかったものであり、それだけに恐ろしい。



その時、海中からクリスと翼が出撃だ!
既に変身は完了。
臨戦態勢は整っている。
F.I.S.としては一難去ってまた一難である。



「邪魔するなデスッ!」

ここで初めて切歌と翼が激突する。
二課とF.I.S.の戦いはF.I.S.側が戦う相手をコントロールしていた。
響と調、翼とマリア、クリスと切歌と二課が苦手とする相手をぶつけ、優位を保っていた。
だが、今回は違う。そして、第7話とは違い数で勝っているわけでもない。
それがどういう結果を生むのか――



はい! やりました! ついにクリスが装者に勝ち星を挙げました!
クリスは装者との戦いでは負け通しだった。
翼に絶唱で吹き飛ばされ、響のデュランダルで殺されかけ、響に腹パンされ、翼に盾されて、切歌に翻弄され、切歌に腹をやられ、
あとおまけ気味にガスで自爆して、ネフィリムに吹っ飛ばされた……
そんな真っ黒くろすけな星の歴史でついに白星! 偉業だ! クリスの輝かしい歴史はここから始まるぞ!
相手ェ生身だけどな!



「おい、ウェルの野郎はここにいないのかッ!」
「ソロモンの杖を使うアイツはどこにいやがるッ!」


あ、名前で呼ばれた! ウェル博士が名前で呼ばれた!
クリスにとってはフィーネさん≧ウェル博士>その他大勢ということらしい。
そりゃあ翼も怒る!



さて、翼VS切歌はスピード決着である。
あっという間にアームドギアを突きつけられて勝負あり!
さすがは技術においてはシンフォギア世界最強格の風鳴翼である。
常識人が防人に敵う道理はなかった。
常識人には(笑)が付くけど、防人には(笑)が付きませんものね。
翼の防人っぷりを笑える人間はいない。



「ならば傾いた天秤を元に戻すとしましょうよッ!」
「できるだけドラマティックに」
「できるだけロマンティックにッ!」


F.I.S.は大ピンチだ。
そもそも、無理にアンチLiNKERを使わせた理由がわからない。
だが、ここでこんなこともあろうかととっておきたかったとっておきを隠しているのがウェル博士である。
策は何重にも隠している生粋の策士なのだ。
故に策が破られたからと動揺することはない。



あ、忘れてください。



ウェル博士の入力と共に閃光が戦場に走る。
そして、聞いたことのない新たな聖詠が聞こえた。
その聖詠に含まれているのは神獣鏡(シェンショウジン)だ。
だから、ウィザードリィステルスを使えなかったのか。
神獣鏡の装者がウェル博士のとっておきなのか?
でも、F.I.S.にもう弾はないんじゃ……ナスターシャ教授は死んでるし……




誰も知らない新たな装者が戦場に降り立った。
皆の注目がそれに集まる。



新たな装者、神獣鏡(シェンショウジン)の装者……
未来だ。シンフォギア世界の陽だまりの小日向未来がついに戦場に立った。
お、落ち着け! 適合者は狼狽えない!
素数を数えて落ち着け! 2!



「未来……ッ!?」

響の前に望まぬ未来が待ち受けた。
レイプ目だから決して痴情のもつれから敵に回ったわけではないことはわかる。
だからとて、安心できるものではない。
友人を敵にするというウェル博士最大級の外道策である。
まさに外道!

シンフォギアGは響が全てを失う物語だと思われた。
失うモノは陽だまりもだった。
ある意味、響にとって最大の喪失だ。
最大の友人が敵に回るという以上の喪失はあるまい。

だが、覆すべく瞳逸らさない。
響は失うだけ失ったのだからもう残高ゼロだ。あとは取り返すだけである。
響が立ち上がる物語はこれから始まるかもしれない。
でも、金子のおっさん、容赦しないからなー。
残高がゼロなら借金させるかもしれない。
次回へ続く。


さて、「英雄故事」は置いておく。
未来が敵に回った。回ってしまった。
そこで問題となるのは未来が真の適合者なのか、あるいはLiNKER使用による似非適合者なのかだ。
おそらくは真の適合者だろう。
何せリディアンは適合者の調査を行う学校だった。
だからこそ、元より適合係数の高い学生が多いだろうし、
その学生が集まって歌ったからこそ第1期の最終決戦における合唱でXDモードが解放されたと見るべきだろう。

ならば、未来にも相当の適合係数があるだろうし、適合者の資質はあったと見てもおかしくはない。
今まで戦場に立たなかっただけで立てるだけの資質はあったのだ。
行動力あるし、身体能力もなにげに高いし。
まぁ、未来まで薬物漬けにされると救いがないという願望も混ざっていますが。

未来は陽だまりだから装者にはしないというのが金子彰史のモットーだった。
響と肩を並べて戦うキャラにはしたくなかったのだろう。
だが、敵として戦わせるのなら別か。
陽だまりメモリアならぬ血だまりメモリアが炸裂してもおかしくはない。
やっぱり、痴情のもつれです!

聖詠から未来の聖遺物が神獣鏡(シェンショウジン)だと推測できる。
未来が鏡の聖遺物を身に纏うというのも運命的だ。
ホラ、未来(みらい)にミラーの聖遺物ですから!

【審議中】
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  ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
 ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
 | U (  ´・) (・`  ) と ノ
  u-u (l    ) (   ノu-u
      `u-u'. `u-u'


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