夢か現か、真紅に染まりし白日の中、真紅の根源を討たんと己を守り人と定め定められた一振りの剣は戦場を往く。
聖女は抜けば玉と散らんと白刃は己を鼓舞し、澱みなく戦場を駆け抜けるが、災厄は駆け抜ける様を嘲笑うかの如く圧倒する。
折れた剣は己の無力を嘆く暇なく流れる血と終焉へと向かう世界を見つめるより他なかった。
真紅が深紅へと移ろう刹那、災厄は流星にて穿たれる。
同時に流星となり戦場に降り立った身躯に聖女はその身を震懼させる。
そこに在るのは吸血姫。
最強と畏怖される女性であった。
戦場に降り立った最強は旋風となり、やがては暴力となり、己を嘲笑った災厄をいとも簡単に打ちて倒す。
戦いと呼ぶにはあまりに凄惨な戦いに瀕死の聖女は意識を喪心する。
その意識が戻る時、そこに在ったのは荒れ果てた野と己以上に血にまみれ斃れる吸血姫の姿だった。
聖女と吸血姫の物語はそこで終局を迎えるはずであった。
されど、ほんの僅かな偶然が必然を歪めたのか、二人の物語はさらなる先へと向かい始める。
そして、二人の邂逅より3年後――災厄さえもが戦く災厄が国を包み込む。