範馬刃牙 第183話 範馬勇次郎/談
今回も刃牙の出番はなしだ!
壮絶な刃牙ヨイショの後は突如として出番がなくなった。
しかし、悲しむことはない。
そもそも、出番がないのが刃牙の通常形態なのだ。
最終形態になると5ヶ月くらい一切紙面に出てこない。
[合衆国アリゾナ州アリゾナ州立刑務所 通称ブラックペンタゴン]
舞台は前回に引き続き米国であった。
だが、今度は裏の建造物とも言うべき刑務所だ。
この刑務所が出てきたということは登場する男は決まっている。
ブラックペンタゴンを象徴するあの男だ。
全アイアン・マイケル入場!
ボクシング殺されは生きていた!! 更なる研鑚を積み人間玩具が甦った!!!
器具!! アイアン・マイケルだァ――――!!!
やられ役はすでに我々が完成している!!
元ヘヴィ級ボクシングアイアン・マイケルだァ――――!!!
現れしだい馬鹿にされまくってやる!!
ネタボクサー代表 アイアン・マイケルだァッ!!!
飽きたのでここまで。
まぁ、この刑務所が出てきたとなると、当然オリバさんの出番だ。
バキ世界屈指の実力者である。
米国の表の大統領がキング・オマハ…いや、バラク・オズマならば、裏の大統領はこのビスケット・オリバだ!
無茶を言ったが、刑務官一同にはそれくらい好かれているよね。
アメリカの象徴扱いされたし。
さて、オリバは膨大な書物を収める自慢の書庫にいた。
そこには勇次郎も同室していた。
勇次郎はグローブを付けている。
それも18オンスはありそうな大きなグローブ…
あの勇次郎がグローブを付けるというのも奇妙な光景だ。
刃引きしていない剥き身の拳を良しとする勇次郎らしくない。
グローブはボクサーにとっては武器になりかねないものだ。
拳を保護してくれるから思いきりパンチを打てる。
アイアン・マイケルだってグローブを外したら、柴千春に拳を壊されてしまった。
もっとも、勇次郎にとっては明らかに剥き出しの拳の方が危険だろう。
純粋に己の拳の危険度を下げるためか?
グローブを付けるということは当然戦うためだ。
ここで勇次郎VSオリバが勃発するのか?
究極の力と至高の力の激突であり、地上最強VS地上最自由だ。
だが、グローブを付けている以上、本気でやる気はないのだろうか。
対するオリバはベアナックルだ。勇次郎は実質ハンデを背負っている。
勇次郎にとって、オリバと戦うことすら前菜扱いなのか?
勇次郎の口ぶりからどうやらここを訪れたのは初めてのようだ。
この二人が知り合ったのは戦いの中でなのだろうか。
アニメ版では二人の出逢いが描かれていたが、あれを正史にするのも問題があるだろう。
「過剰に搭載した筋肉――――――」
「図書館並みの蔵書――――」
「所有する量はそのまま」
「不安の裏返しにも見て取れる」
勇次郎がオリバをDISった!
さすが不遜さも地上最強だ。
全米における表の一番偉い人も虚仮にしたように、裏の一番偉い人も虚仮にした。
今の勇次郎はオリバをあまり評価していないのだろうか。
しかし、この台詞は勇次郎が言うと説得力があるな。
何せ勇次郎は常に何も持ち歩いていない。
おそらく、いや、間違いなく漆黒の胴着には財布ひとつ入っていない。
何も持たず、己の力だけで生きていく。
勇次郎らしい発言である。
一歩間違えばニートだ。子はニートだ。学生だけどニートだ。
オリバは上着を脱ぎ捨てる。
これ見よがしの逆三角形が露わになった。
タキシードを破り捨てた時のように筋肉で脱がない。
スマートに、紳士的に、普通に脱ぎ捨てた。
野獣になるとパンツ破りすてるぜ。
脱ぎながらオリバは刃牙VSピクルの決着の是非を問いかける。
どうやらあの戦いはオリバの耳にも届いていたようだ。
誰だよ、漏らした奴は。
ファジーな結果であることも知っているようだし、仔細が漏れ出てしまったらしい。
…漏らしたのは徳川光成だな。
「地下闘技場のチャンピオンがピクルに勝った!地下闘技場最高!」と言いふらしたに違いない。
シベリアトラの時といい、何とも迂闊だ。
脱いだオリバは両腕を上げて構える。
やはり、戦う気のようだ。
オリバが構える姿は初めて見る気がする。
あ、ハンドパンツがあった。…あれは構えじゃないな。
あのオリバが構えるほどの相手…それが勇次郎なのだ。
「弱者として生まれ落ちた者が――― 純正の強者を追い詰め――」
「ついには格闘技という武器を使用(つか)わせた」
「故に―――」
「弱者の勝利(かち)………と」
襲い掛かるオリバを尻目に勇次郎は語り出す。
伝聞では刃牙の勝ちになっていたようだ。
あの場では勝利に1票、敗北に1票。どちらが勝ったとは決めなかったはずだ。
大分情報が錯綜していることが伺える。
やっぱり、徳川光成が情報操作したのかな。
オリバは勇次郎に殴りかかる。
工夫なし。力のみのオリバらしい一撃だ。
対する勇次郎は腕を下げたままだ。
そのまま、勇次郎の目の前に拳が迫る。
オリバの一撃が勇次郎に命中するのか?
[なんという………]
[なんという不純……………]
[なんという穢れ……]
[なんという汚濁(にご)り………]
[なんという不真面目……!!!]
勇次郎はモノローグで語りつつも(語りながら戦うのは不純じゃないのか?)、カウンターで拳をオリバの顔面に当てる。
拳がオリバにめり込むというより、グローブにオリバがめり込んだ。
遅れをものともしない神速の一撃であり、グラブが歪むほどの一撃だ。
勇次郎ならばこれくらいは出来るだろう。刃牙だってやれるかもしれない。
だが、この一撃であのオリバが水平に吹っ飛んだ。
そして、はるか後方にある本棚に激突する。
驚愕の打撃を出した勇次郎だが、まったく腰を入れていない。
鬼の貌だって出していない。ジャブのように全力で放った一撃ではないことが伺える。
だが、それでもオリバを吹き飛ばすほどの破壊力…
異常だ。異常な力だ。
まさしく勇次郎であった。
また、勇次郎と刃牙の力の差が明らかになってしまった。
刃牙はオリバとの打撃戦を制したものの、オリバを吹き飛ばすことは出来なかった。
つまり、鬼の貌を出した刃牙ですら素の勇次郎の打撃には勝てないのだ。
まぁ、刃牙には古代人を吹き飛ばす妖術がありますが。
…勇次郎のこれももしかして妖術の類か?
[感動……… 努力………勤勉………]
[それらの装飾(デコレーション)は――]
[しばしば]
[勝負の純正を][曇らせる………]
[勝利という単純(シンプル)な結晶を複雑にする………]
ともあれ、勇次郎は刃牙勝利に不服らしい。
勇次郎らしい哲学だ。
刃牙は努力賞ではあるが勝利したわけではないのだ。
これは天内悠を切って捨てた時の主張とよく似ている。
10年経てど変わらない勇次郎イズムであった。
さて、派手に吹っ飛んだオリバは書物に埋まる。
吹っ飛んだものの、勇次郎がグローブを付けていたからか、あるいは書物がクッションになったからか、
KOには至っておらず即座に立ち上がる。
だが、オリバは鼻血を流している。
あのオリバがパンチ一発で鼻血を流す…恐るべし、勇次郎。
「打撃勝負じゃ分がワルい…」
オリバが大得意の打撃戦からあっさりと降りた。
筋力とタフネスで押し切るのがオリバ流じゃなかったのかよ。
そこで降りてどうやって勇次郎に勝つというのだ。
可哀想なほどの実力差だ。
刃牙に負けたのが不味かったのか?
刃牙に負けた人間は大抵不幸になっている。
末堂は解説役になったし、夜叉猿は勇次郎に殺された。
柳とシコルスキーは言うまでもなくひどい目に遭った。
他にも数え切れない人間が不幸になっている。
オリバもその類なのか?
頑張れオリバ。パンツに手を突っ込め。
打撃で勝てないと悟ったオリバは勇次郎に手四つで挑む。
ルーザールーズで鍛えた握力ならば勝機があると踏んだのだろうか。
それで挑んでも勝ちに繋がらないんじゃないか?
というか、握力で勝るだけで勝てるのがバキ世界でもあるけど、よほど上回っていないとキツい。
筋肉で負けたからと言って筋肉で挑んでどうする!
頭がいいという設定のはずだったのに…
「決着の際の標高…… 海抜……」
「頭の位置を」
「より高きに置くもの」
「それが勝者!!」
勇次郎が語るに単純に立っていたものが勝者らしい。
うん、そうだよね。
刃牙は負けてやったのかもしれないが勝ったわけではない。
さすがにあれは勝利じゃないだろう。
刃牙の心の中では勝利かもしれないけど。
勇次郎はグローブ越しに握り返す。
握力比べを真っ向から受け止めた。
腰を入れて握ってくるオリバに対し、勇次郎はあくまでも棒立ちだ。
勇次郎はさっきから一歩も動いていない。
動かずしてオリバを圧倒している。
もしや、握力でも圧倒してしまうのか?
握り合ううちにやがてグローブが破け、ダイヤモンドの拳が曝け出す。
勇次郎もオリバに対抗した。
力と力の正面衝突だ。
勝つのはどっちだ?
「や……… やっぱりね………」
だが、次の瞬間にはオリバは身を縮めていた。
あのオリバが勇次郎に握力で完敗した!
相変わらず、勇次郎は棒立ちだ。力んでいる様子がない。
オリバなら力まずとも勝てる相手のようだ。
実力の差が気に掛かる二人だったが、その差は非常に大きいようだ。
[この時ビスケット・オリバの頭部
海抜千百五・八メートルに対し――――――
範馬勇次郎の頭部海抜千百六・三メートル]
地上最強と地上最自由の激突は地上最強の勝利に終わった。
勇次郎の言葉通りに頭の位置は勇次郎の方が上だ。
しかも、海抜で詳細に教えてくれた。親切!
オリバの台詞は勇次郎の刃牙VSピクル決着への評価に対してと、握力で負けたことに対しての両方の意味が込められていそうだ。
やはり、勇次郎は強い。
そして、埋まったかに見えた刃牙との差をさらに広げた。
刃牙が勇次郎に追いつく日は本当に来るのか?
妖術で無理矢理差をなかったことにしそうだけど。
とりあえず、ピクルとの差はなかったことにした。
かつて勇次郎はオリバVS龍書文において、オリバの頭突きを想像したくないと言っていた。
勇次郎にとってもオリバは十分な実力者…と思われた。
だが、違った。大人と子供くらいの差があった。
いや、いくら何でもありすぎるだろう。
ピクルがおかしい強さを見せたように、勇次郎もまたおかしい強さを見せ始めた。
刃牙の強さはもっとおかしい。
勇次郎は刃牙VSピクルの決着を過程はどうあれ、ピクルの勝利と見ているようだ。
そして、勝った方を喰うと言っていた(第154話)。
次に待ち構える戦いは勇次郎VSピクルの地上最強VS史上最強の最強決定戦のようだ。
その露払いとして地上最自由を一蹴してみたのだろうか。
とりあえず、しばらくは勇次郎準備体操編が続くのか?
オリバを一蹴したのはやりすぎな気がするが、ちゃんとトレーニングをしている。
息子とは大違いだ。
座って待つだけじゃないのだ。
次は誰が勇次郎に付き合うのだろうか。
米国に来たことだし、ここでゲバルが再登場してみるか?
放置していた伏線を回収してみるのもいいかもしれない(第50話)。
鬼哭拳VS地球拳!世紀の激突だ!
…絶対勝てる気がしねえ。
次回へ続く。
範馬一族は強者を喰うと共に、敗北した格闘家の処理を請け負うことでも有名だ。
範馬一族の長、勇次郎は刃牙の食い残しであるオリバを処理した。
一族の長だけあり、処理する残飯も豪華だった。
でも、勇次郎は悪食だから一級の残飯以外も喜んで食べる。
ムエタイとか。
それにしてもげに恐ろしきは勇次郎だ。
オリバすら一蹴とはちょっと強すぎやしないでしょうか。
だが、もしオリバの強さをジャックと同等と仮定すると、オリバを一蹴出来なければピクルにも対抗出来なくなる。
オリバはVSピクル戦前の試し割りの素材なのだ。
…オリバすら試し割りの素材なのか。
金剛拳を虚仮にした報いが今頃やってきたか?
ピクルは胡散臭い強さを持つ。
まぁ、刃牙との対決によってその異常性に陰りが見られてしまったが、基本的にはそういうことなのだ。
その対抗馬である勇次郎も異常な強さを持つことを再確認させられる話であった。
ピクルとの戦いは正統派異常者同士の壮絶な戦いになるのは想像に難くない。
なお、刃牙は異端派異常者です。
勇次郎の準備は万端に見える。
だが、ピクルの方はどうなのだろうか。
刃牙によって傷付けられた心をどう癒す?
ここでいっちょ烈とデートしてみるか?克巳やジャックでもいいぞ。
だが、刃牙よ。貴様は引きこもっていろ!
ピクルは格闘技を使った。
ここで今まで倒してきたライバルたちに格闘技を学んでみるか?
ちょっと少年誌らしい展開だ。
烈からは中国四千年の技術を学ぶ。克巳からは真マッハ突きだ。ジャックからはドーピングを学び、刃牙からは妖術を学ぶ!
…教えてもらうのは烈からだけにしていただきたい。
ここに来て親子対決をしたら展開が斜め上すぎるな。
今回の内容は何だったんだよって話だ。
正直、今の刃牙じゃ勝てる気がしない。
妖術を使えるけど勇次郎は格闘技にも精通している。
妖術など恐るるに足らずだ。
あるいは妖術でぶつかってみるか?
トリケラトプス拳VS鬼哭拳!バキ史上最大最後の激突だ!
もうオーガ拳をやればいいのに。
きっと出来るさ。妖術師、刃牙ならばきっと!
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