範馬刃牙 第213話 起動
巨漢×胸毛!こいつは負ける!
そんなかませ犬の空気がする巨漢ボクサーが現れた。
このボクサーに一片の希望でも持てるものなら、その人は『グラップラー刃牙』から一度読み直した方がいい。
それほどまでに負けフラグを集めている。
ついでにモデルとなったボクサーはロシア人のようだ。
巨漢×胸毛×ロシア人…
ムエタイ戦士でないことが惜しいくらいの完璧なプロフィールだ。
「カイオーォォォォ レツッ」
烈がリングに上がった。
特に打ち合わせはなかったが、うまくカイザーに合わせた。
烈はデモンストレーションがけっこう得意だ。
サンボ使いにはサンボをやってみたり、握力自慢には握力で勝負してみたり、観客を沸かせるのが上手い。
一流にはこうした魅せる要素も必要ということか?
「熱き友情に感謝する」
「一か八か
思いきって君を紹介してはみたが 正直冷や汗ものだったよ」
「君が気をきかせて上がってくれなければ」
「今ごろわたしは袋叩きにされていた……」
「心から感謝する」
え?そんな覚悟で烈を売り込んだの?
そんな覚悟があるなら、烈に話を通しておけばいいのに。
烈は立場上敵の関係だし、ラスベガスを嫌い!と言い張る男だ。ノリが悪いと見るのが妥当だろう。
ゲリラプレゼンテーションに参加しない可能性だって…
というか、袋叩きにされるのかよ。カイザーさん、アンタはボクシング界では有名なプロモーターなんだろうに。
ラスベガスのボクシング関係者はフーリガンのように猛っているのか?
烈に感謝の握手をするカイザーの手は震えていた。
カイザーの抱えている緊張が伝わってくるようだ。
胡散臭ェ…
とんでもなく、胡散臭い。
演技じゃないのか?
何はともあれ、烈のプレゼンテーションは成功した。
だが、巨漢胸毛ロシア人ボクサー、アンドレイ・ワーレフとしては溜まったモノではない。
(名前が非常にロシア人っぽい。だったらイケるぜッッ)
ここはアンタのリングじゃないと抗議する。
同時にさっきまで沸いていた観客はブーイングを浴びせる。
ベガスの観客は手厳しいな。手の平を返すのが早い。
本来の主役は勝者であるアンドレイだ。
誰もが祝福する。巨漢胸毛ロシア人でも祝福する。
31KOを達成しているらしい、アンドレイにとっても、勝利の意味は大きいのだろう。
「この男を除いてッッ」
「この男は君を侮辱しに来たッッ」
「否――君1人にとどまらず―― ボクシングそのものを踏みにじりにきたのだッッ」
ここでカイザーがいきなり手の平を返す。
元々は烈の喧嘩を買いに来た人間だ。こんなことを言うのもしょうがない。
だが、烈は思いっきりびっくりする。
カイザーさんは味方じゃなかったの?という裏切られたような表情だ。
先ほどのカイザーの謝礼は烈に信用させるための方便だったのだろうか。
ツンデレは純情だ。
あれで思わずカイザーを信用しちゃったのかもしれない。
ツンデレの初な心を弄ぶカイザーは相当な手練れだ。
ラノベの主人公よりエロゲーの主人公である。
これでますますカイザー×烈路線が固まったな。
だが、そんなこと言われてもアンドレイとしても困る
烈ってちっちゃいじゃん。片脚ないじゃん。
何をどう侮辱するんだと。
詰まるところ、お前弱そうなんだよとアンドレイは挑発した。
そんなアンドレイの言葉を聞いて、カイザーは微笑む。
計画通りって感じだ。この調教師…じゃなく策士め。
「日本にはこういうコトワザがある」
「「大男
総身に知恵が回りかね」………と」
「君らアメリカ人には理解できまい 人体を肉の塊としかとらえられぬ君の理解力では」
「4000年という悠久に育まれた“武”というものを」
普通に侮辱した!
そう、これだよ。
対戦相手を侮辱して叩きのめすのが蛮勇烈海王の本領だ。
「バキ」以降は紳士…それでいてツンデレになった烈からは失われた要素だ。
今の烈は水たまりですら全力で叱るぞ。人を決してさん付けしないぞ。
ボクシングに介入してから、烈は蛮勇らしさを取り戻してきてちょっと嬉しい。
烈はピクルという超生粋の野生と戦った経歴がある。
ピクルと比べればアンドレイなど、本当に肉の塊なのだろう。
胸毛も生やしているし。
そんな挑発にアンドレイは乗らない。聞き流す。
スポーツマンかよ、アンドレイ。
スポーツマンはバキ世界において、二流の代表的な要素だ。
始めようと思った時には始めている。そんな荒々しい殺生本能(キラーインスティンクト)が一流には必要なのだ。
ここでカイザーは烈に見せ場を…試し割りの場を用意する。
コンクリートブロック4枚をΠの形に積み上げたものだ。
2枚を縦にして足場に、2枚を横にして割るために乗せている。
試し割りの王道、瓦と違ってコンクリートブロックは厚みがある。
これを砕くのは瓦よりも大変だろう。
でも、たった2枚かよ。
それはカイザーも重々承知していたらしく、例え2枚でも観客に烈の実力を示すには十分と考えていた。
あるいはたった2枚で観客を黙らせるようなパフォーマンスを要求しているとも捉えられる。
カイザーの未だ底は知れない。
「こんなものを壊して誰が喜ぶというのだ」
「あるじゃないか」
「ここにもっと大きくて もっと頑丈で もっと壊しがいのあるものがッ」
再び蛮勇烈海王が炸裂した!
もう敵地で生き生きしている。
ここ10年間、溜め込んでいた鬱憤を晴らすかのように蛮勇っぷりを披露している。
やっぱり、アウェイなのがいいのだろうか。
アウェイだとツンデレのツンが強調されるのかもしれない。
そして、アンドレイを公式試し割り発言した。
うん…巨漢の立ち位置ってそんなもんだよね…
巨漢胸毛ロシア人ボクサーなんて試し割りの材料にしかならない。
まったく、容赦がない。
さすがにこれにはビキッと来たのか、アンドレイはブロックに拳を振り落とす。
2枚のブロックは真っ二つに砕けた。
ボクサーは空手家などと比べて拳を鍛えない。
故に試し割りに適さないと思ったが、ブロック2枚程度なら大丈夫らしい。
「わたしの人を殴るキャリアはカラテから始まった」
「君が望むなら素手(ベアナックル)でもかまわんが ミスターレツ」
う、うわぁ…アンドレイはゴールデングローブに出場したレベルの発言をしてしまった。
昔、空手をやっていたなんて何の自慢にもならない。
外見や経歴だけでなく、発言でも自分を貶めるか。
別の見方をするとかませ犬としての評価を次々に高めていっている。
こいつ、既に負ける覚悟は出来ていると見てもいいな。
アンドレイの試し割りに対して、烈はどう答えるのか。
何も言わず、腰を落とした状態で五指を立てて、足場になっていたブロックを静かに突く。
站ッ
出た。久し振りの站(タン)だ。
烈が何かをする度に挿入されていた擬音が站だ。
一体どういう意味なのかさっぱりわからないが、站という擬音を見る度に烈に独特の雰囲気が宿ったものだ。
実に懐かしいな。
当然のことながら、横よりも縦の方が衝撃に強い。
アンドレイのように真っ二つに砕くのは難度が高い。
だが、烈海王は格が違った。
ブロック全体に亀裂が徐々に入っていき、やがて粉々になってブロックが倒壊した。
これには観客一同は驚愕するより他ない。
アンドレイも冷や汗を流さざるを得ない。
ほう、東洋人はパフォーマンスが上手いな、くらいは言わないとダメですよ、アンドレイさん。
五指で叩くだけでブロックに衝撃が行き渡り時間差で破壊される…
謎の技術だ。
特定のブロックだけ破壊する技術(第89話)や拳を当てた状態で氷柱を破壊する技術(第103話)といい、武術には不思議な技が多い。
何にせよ極限まで練られた技術が必要なのは確実だ。
ただデカくて胸毛生やしてロシア人なお前には出来ないんだよなんていう主張が込められていそうだ。
「ウォ〜…(戦争だ)」
「ドラゴンVSゴリアテ」
「史上――最大最強最豪華 空前のエキシビションマッチ(模範試合)だ」
カイザーは再びウォ〜を口にした。
これが口癖なのだろうか。
でも、今回は戦争は戦争でも、
./ ;ヽ
l _,,,,,,,,_,;;;;i <いいぞ ベイべー!
l
l''|~___;;、_y__ lミ;l 噛まれる奴はボクシングだ!!
゙l;| | `'",;_,i`'"|;i |
噛まれない奴はよく訓練されたボクシングだ!!
,r''i ヽ, '~rーj`c=/
,/ ヽ ヽ`ー"/:: `ヽ
/ ゙ヽ  ̄、::::: ゙l, ホント ボクシングはかませ犬だぜ! フゥハハハーハァー
|;/"⌒ヽ, \ ヽ:
_l_ ri ri
l l ヽr‐─ヽ_|_⊂////;`ゞ--―─-r|
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l,|`゙゙゙''―ll___l,,l,|,iノ二二二二│`""""""""""""|二;;二二;;二二二i≡二三三l
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レベルの戦争の気がする。
要するに虐殺だ。
もちろん、烈が虐殺する。アンドレイが虐殺される。
なお、カイザーが比喩として挙げたゴリアテは石で負けている。
ついさっきブロックが砕かれたし、現代のゴリアテことアンドレイも砕かれちゃうか?
だが、アンドレイもブロックを砕いた。
石になど負けないという意思の表れだろうか。
いや、それはない。
こうして、ガングロツンデレ中国武術家烈海王と、巨漢脇毛ロシア人ボクサーアンドレイの試合が決定した。
史上最大にして最強にして最豪華…いや、これは誇大広告だが、ビッグカード…かな?
見所はどうアンドレイが砕かれるかに尽きる。
烈は馬鹿ではない。対峙した相手の戦力くらいわかるだろう。
わかったからこそ、軽んじたに違いない。
アンドレイの戦力はその程度なのだ。
本場ラスベガスのボクサーはどう砕かれるのだろうか。
注目の一瞬だ。
大擂台賽では本場の中国武術が外来武術に砕かれまくったため、これは復讐のチャンスなのかもしれない。
本場でボクシングを砕く!中国武術サイコー!
…もしかして、蛮勇烈海王になっているのは中国武術の復権のためか?
次回へ続く。
とりあえず、アンドレイッッ。貴様は負けるッッッ。
負ける要素しかないな。
勝てる要素がひとつでもあったら教えて欲しいくらいだ。
本気で何一つ思い浮かばないんですけど。
デカい…そんなものは何のメリットにもならない。重さも半端だ。
元チャンピオンなんて自慢にすらならない。おまけに空手やっていた発言で品位を下げる。
そもそも、冷や汗流しまくりだ。烈の挙動ひとつひとつにビビりすぎである。
もう負けでいいんじゃないか?
烈は酒を飲んでいるというのに退かぬ媚びぬ省みぬの蛮勇スタイルである。
ここで襲われれば烈でも困るだろうに…
いや、ブロックを粉砕したから酩酊でも余裕か?
それとも、酔ってるからこそ、蛮勇スタイルなのか?
そういえば、烈が過去もっとも大暴れしたドイルとの戦いは酒を飲んでいたな…
烈って酔っちゃえば貴様は中国武術を嘗めたッッッモードになるのだろうか。
まぁ、アンドレイよりもカイザーですよ。
カイザーのやること為すことに烈は感情を揺り動かしている。
特にカイザーにボクシングの敵呼ばわりされた時の驚きようはすごい。
彼氏が他の女性とデートしている場面を見かけたような感じだ。
寝取られモノ展開になろうとしているのか?
カイザーもアンドレイで烈を倒せるとは思ってもいまい。
だって、アンドレイは絶対グローブ貫けないよ。
今回の試し割りの時点で大きな差がある。
最大トーナメントなら1回戦負け確定だ。
アンドレイは烈の力が身長体重を上回るか、それを試すための試金石なのだろうか。
たしかに試し割りの相手としてはこれ以上のない逸材だ。
本命はアンドレイの後に控えるボクサーかな。
烈は身長176cmと格闘家の中では小柄だ。
それだけに長身の相手を相手にするのが得意だ。
ピクルとの戦いでは推定40cm以上の身長差を苦にせず立ち回った。
圧倒的なパワーの差があったものの、ピクルタックルまではそれを封じることが出来た。
何が言いたいかとなるとアンドレイとの身長差などまるで苦にしない。パワー差も意味がない。
まぁ、不安要素があるとしたら、やはり片脚であることだ。
でも、それがまったくハンデになっていない。
義足を狙われたら困りそうだけど、下半身への打撃はボクシングではタブーだ。
ボクシング選手のアンドレイはそれを行うこともないだろう。
やはり、杞憂か。
何はともあれ、これで久し振りのバトルが行われそうだ。
週殺されそうだけど(1週間で決着がつく試合のこと)。
ただ負けるだけでは許されない。
アンドレイは面白い負け方をしなければいけないのだ。
面白い負け方をすれば名試合。でなければ凡敗。
アンドレイは確実に追い詰められている。
とりあえず、ストライダムのAッCHIIッを超えないとなぁ。ハードルが高いなぁ。
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