範馬刃牙　第225話　グローブ


刃牙VS千春の決着だ！
速ェ！超速ェ！
刃牙と千春の差は春成のそれよりもずっと大きいだろう。
当然の結果か。
当然すぎて、何で戦ったのか。さっぱりわからぬ。


「だからさっきから言ってるでしょう　無抵抗だったんですってば……」
「ただジッと立っていただけで　ニンジャボーイのストレートパンチを受けたのです」
「何で倒れたのか………！？　知りませんよそんなこと」

ウィリアムスの証言通り、ただ千春が倒れたようにしか見えない。
顔からは生気が抜け落ちている。
このまま、死後硬直が始まっても何の不思議もないくらいだ。
あの恐怖の4連撃は白日の中に消えた。

しかし、ウィリアムスの話し方が大分くだけているな。
ウィリアムスはNINJANINJAしか言わないので、別の人から事情聴取したのかもしれない。
そもそも、あれだけの見学者がいたのに、何故に外国人のウィリアムスを選んだのやら。

刃牙は千春が何故勝負を挑んできたのか。
最後までわからなかった。
拳を交えればわかるものがある…とはいかなかった。

そして、千春を放置して刃牙はその場を立ち去る。
歯牙にもかけないとはこのことだ。
けっこうやばい感じだと思うけど、堂々と放置だ。
範馬に傾いた刃牙は容赦しないしフォローもしない。
まぁ、千春だからしょうがない。

「ヤレ……　刃牙と………」
「おまえだからいい……………」

倒れた千春は花山の言葉を反芻する。
千春だからいいのは何故なのだろうか。
今回の勝負で千春は自分の持ち味をまったく活かせなかった。
不良ならではの奇抜な戦法も、持ち前の根性もまるで引き出せていない。
さすが、相手の長所を潰すのが得意な刃牙と言ったところか。
まぁ、今回はそれ以前の問題の気もするが。

花山の思惑は何にせよ、千春は刃牙に何の影響も与えなかった。
刃牙の心に残るものは何もなかったのだ。
多分、明日になれば忘れている。
千春…殴られ損だな…


さて、動乱のベガス。
烈はリングに大の字に倒れていた。
その表情は驚愕と冷や汗に包まれている。
うわ、本当にダウンしちゃってるよ。
烈海王不可解也。

烈はクレーザーに拳をたしかに当てたが、同時にカウンターを食らったことを自覚していた。
不覚であった。
郭海皇がいたらタマピンされるくらいの不覚だ。
というか、多分TVとかで見ているよ。
激怒して烈を去勢して、ボクシングに戦争を挑んでもおかしくないよ。

（かつての修行期…………………　幾度も使用（つか）ったものだが――）
（これほどの重さと切れ味は初…………）
（素拳ならではの――　硬さと鋭さこそないものの―――――――）
（グローブその物の重さが加わる故―――――――
　脳へのダメージ自体は明らかに素手を上回る）

烈は自分の経験を振り返る。
というか、中国武術もグローブを用いていたのかよ。
何かただでさえ大擂台賽恐慌で危うくなった中国武術の株がさらに下がった気がする。
修行期の烈がハゲじゃないことは無視しておこう。

烈はクレーザーの打撃の秘密はグローブにあると見抜いた。
今まで破かれるだけだったグローブがまさかの大躍進だ。
じゃあ、かわせよ。
受けるだけじゃなく捌くことだってできるはずだ。
全盛期の烈なら楽勝の相手だろうが、片脚を失った現状ではクレーザーは強敵なのだろうか。

（まるで巨人の掌により―――　直接頭をシェイクされるような……）
（このダメージの感触は――――　刃牙さんの拳にはなかったもの）
（ピクルの拳にはなかったもの）

ミギャアアアアアアアア！？
局地的にとはいえ、ボクシング＞ピクルになっちまった！？
…いやいや、烈さん。
それは失言にもほどがある。
今すぐ前言撤回しよう。
ピクルとボクシングを比べるなんて史上最強に失礼だ。
海原雄山にカップラーメンを出すくらいに失礼だ。

クレーザーのグローブ付き打撃はあくまでも一部分とはいえ、刃牙やピクル以上の効力を持っていた。
脳を揺らすことなら、こいつらよりも上だ！
クレーザーと刃牙ピクルの筋力は雲泥の差だろうし（特にピクル）、グローブ云々の問題だと思うのですが…
ピクルのパンチに至ってはまともに受けると並みの範馬までなら死ねる。
それに烈はピクルのパンチを直撃していない気が…

やっぱり、片脚が不味いのだろうか。
打撃のショックを吸収するには、足腰の強さが肝要だ。
だが、今の烈は脚の力がピクル戦時の1/2、おそらくはそれ以下だろう。
だから、クレーザーのパンチが余計に効いたのかもしれない。
…そうだ…そうに違いない…
ピクルがボクシングに負ける要素なんて点数稼ぎくらいなんだ…
でも、ボクサーの筋力を2倍にしてもピクルには届かないよなぁ。

烈は何とか立ち上がる。
その表情は苦しい。未だにダメージが残っているようだ。
ピクル以上のパンチを受けたんだ。
仕方ない。
仕方ないが、その前提には納得できない。

深町コーチは汗を流しながら見守る。
その手にはタオルが握られていた。
試合続行が危ういようなら投げ入れるつもりだったのだろう。
深町コーチはセコンドとしての責を全うしようとしている。
恐ろしいまでのデレっぷりだ。

（彼等一流ボクサーの強み……）
（それは………）
（グローブという道具の――　使用法に長けているという事実ッッ）

烈はグローブの使い方に長けていることに気付く。
リバーブローやフリッカージャブといった各種パンチはグローブを使ったものだと。
ボクシングは150年の時をかけて、グローブを武器にした格闘技だと。
グローブを握ったパンチは脳に響く。
小さいグローブよりも大きいグローブの方がダメージが蓄積するため、危険と言われるくらいだ。

しかし、ボクサーにとってグローブが武器だなんて千春ですら知っていたことだ。
今更気付くなんて千春並みだぞ。
それに烈は何かの解説の度にボクシングを挙げていた。（第170話）
片脚だけじゃなく脳も抜け落ちてしまったのか？
大丈夫か、烈…

烈はグローブというものを侮っていた。
片脚を食われる前の烈ならば、「鋭角な切れ味を出せぬグローブなど重石に過ぎぬ」と言ってしまいそうだが今の烈は嫌に弱気だ。
と言うか、グローブについて知らなかったのか、烈。
…うーん…こいつ、本当に烈か？
劣海王になってしまっているんじゃないだろうか。

まぁ、クレーザーの打撃の秘密はわかった。
グローブに気を付ければいい。
烈ならグローブを切り裂くことは容易い。
グローブを奪ってしまったボクサーなんて雑魚なんですよ。
アイアン・マイケルがマウスに負けたのだってグローブを着けてなかったからに違いない。
グローブを奪ってしまうんだ、烈。
ボクシングじゃなくなるけど。

（この損傷（ダメージ）の現実を！！！）

烈の視界はどろどろに溶けていた。
ピクル以上の脳への打撃を受けたのならしょうがない。
大ピンチだ。
…ピンチなんだよな。

烈はグローブに追い詰められている。
爆薬すらものともしなかった烈がグローブに追い詰められているのも違和感がある。
武器としては最低ランクですよ。
冷静に考えるんだ烈。所詮はベアナックル以下だ。
グローブを脱いでしまえ！
次回へ続く。


千春は捨てられた。
烈はとんでもないことになっていた。
烈はいくら何でもボクシングを持ち上げすぎだと思う。
たしかに煙に包まれた気持ちだ。
一体何がどうなっているんだか。

とりあえず、鍵はグローブだ。
烈はグローブを用いた打撃に慣れていない。
慣れていないだけであって、決して刃牙やピクルの打撃に匹敵するわけではない。
でも、今の烈的には化け物クラスの打撃らしい。
やはり、片脚のハンデか？

Jr.はボクサーながら戦いにおいてはグローブを着けなかった。
グローブには限界があるのだ。
烈がそこに気付き、どう攻めるかが要点だろうか。

烈は様々な拳の握りを用いて打撃を行える。
それはグローブに保護されている上にひとつの握り方しか知らないボクサーにはできないことだ。
その点で烈にアドバンテージがあるのだが、いかんせんグローブによって封印されている。
そして、烈はグローブの使い方を知らない。
烈はパンチひとつ取ってもハンデを背負っている。

かといって、身体能力もやっぱり義足だと随分下がっているようだ。
ボクサー相手に五分っちゃうほどだ。弁解できません。
マッハ突きでもやっておいてはいかがか。

烈はボクサーのパンチの弱点を握りにあると見た。（第201話）
クレーザーもグローブを握っている以上、握りは甘いのかもしれない。
少なくとも刃牙やピクルとは比べものにならない、はず。
というわけで頭突きはいかがか。
もちろん、反撃の余地を残さないために、追い打ちで腕の骨を真っ二つにする。

ボクシングの歴史、150年。
その150年でグローブの扱いに関しては中国武術を凌駕した！
…グローブかよ。
MSがたくさんいる中で高性能な戦車を作ったと自慢するようなものだ。

一昔前の烈なら小細工と投げ捨てていただろうが、今の烈は弱気だ。
弱気すぎてボクシングに手こずっている。
ヘタすればムエタイと握手するハメになるかもしれない。

まぁ、グローブを上手く使った打撃よりもグルーブを貫く打撃の方がずっとすごい。
きっと、何とかしてくれるはずだ。
…あ、そういえば、グローブを突き抜ければいいのか。
グローブを貫いたのは不可抗力！反則ではない！と言い張れる。

何にせよグローブを凌駕する中国武術を見せてもらいたいものだ。
今になってグローブとか正直しょぼい。
こんなのに苦戦したら中国武術、ひいては烈もしょぼくなってしまう。
でも、グローブがこんなに強いのなら、ピクル相手にもグローブをつけていたら脳震盪させられていたのかも。
もしかして、刃牙もリアルシャドーでグローブを作っていたりして。
グローブすごいからピクルにだって効くさ！


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