範馬刃牙 第257話 溶解
ゴキブリダッシュの構えを取った!
刃牙がこの日のためにゴキブリに弟子入りして身に付けた技だ。
正直、この技の経緯は誰にも話したくない。
誰だって渋い顔するよ。
ん?
でも、勇次郎に「今の俺はゴキブリそのものなのだ!」とか言っておけば心理的なダメージは与えられるかも。
[父が初めて見せた……]
[おそらくは自身初の“お願いごと”]
[逆立つ髪をしおらせて]
[見せた弱気の百面相]
[わからず屋の息子へ対し――]
[愛してくれぬ恋人に不満をぶつけるかのように]
[気位(プライド)をかなぐり捨てた]
前回見せた勇次郎の変貌は、挑発ではなく本気で懇願していたようだ。
余裕あるように見えた勇次郎だったが、意外にも必死だった。
そりゃそうか。
刃牙を高級ホテルの食事に誘うほどだ。
もう自分にできる精一杯のもてなしを尽くしている。
余裕なんてあるわけない。
親馬鹿の勇次郎にとって、最愛の息子、刃牙との勝負は人生の中でももっとも大きいイベントのひとつであろう。
そんなイベントが刃牙のいらぬ手加減で盛り上がらないとなれば困る。
だからといって本気でやっては刃牙を倒しかねない。
そうなると盛り上がらないまま、終わってしまう。
ならば、懇願する。
地上最強の男らしからぬ弱気な選択であった。
逆に捉えればそれほどの価値が刃牙にはあるということだ。
あるんだよな。
あるのかなぁ。
ありますよね……
刃牙の動向をずっと見てきたこちらとしても、そこだけはいまいちよくわからぬ。
[手こずることにすら]
[手こずる日常……]
[男は孤高に退屈していた]
勇次郎は強さという点においては、バキ世界の誰よりも優れている。
そして、その誰もを凌駕している。
それだけに並び立つ者がいない。
昔は独歩のみならず本部も勇次郎に挑んだものだが、今ではそれさえもない。
あのオリバでさえも今の勇次郎にはまったくかなわない(第183話)。
強さの世界に生きているのに、その世界でできることがないのだ。
何かもうLv99まで上げたドラクエ状態だ。
どの敵も雑魚になってしまい、戦闘が退屈になってしまった。
強すぎるのも困りものである。
たたかうだけを選択していれば敵がみんな倒れているのだから退屈だろう。
刃牙は千春のような超格下相手でも、それなりに長引かせることができる。
が、勇次郎はそうもいかない。性格上、遠慮なく叩き潰す。
長らくその強さが期待されていた劉海王だって一瞬で砕いたほどだった。
あれは瞬殺すぎてもったいなかった。
自分と釣り合うだけの強者と戦いたい。
だが、遠慮はできない。
勇次郎の持つ唯一の悩みと言えそうだ。
それならピクルと戦えば良かったのに……
勇次郎がピクルと戦わなかった理由だけはよくわからない。
刃牙がピクルを圧倒した理由よりはわかる気がしなくもないが。
[やがて着手する]
[自身の“敵作り”]
[地上最強のDNA]
[最も高濃度で継承する我が子刃牙]
勇次郎が刃牙を作った理由は自分と戦わせるためだった。
自らを満足させるために自らで敵を作る。
それも自分の子を育て上げて……
エラく遠大な計画だ。
軽く10年以上はかかるよ。
そんな計画をやっと実行に移したのに、当の本人はぬるく戦っていれば懇願したくもなる。
しかし、それならそれでちゃんと刃牙を鍛えれば良かったのに。
全てを全て、自分の手で作り上げれば、いざ戦った時にサプライズがないということだろうか。
未知の創作物というモノは自分では知らない世界を見せてくれるからこそ面白い。
漫画だってアニメだって映画だってゲームだって最初の1回目が一番楽しいものだ。
自分の息子という土台を作った上で、それを放任することで未知の進化を期待する……
エラく遠大な計画の上にエラく運任せな計画だ。
……そりゃ、本当に懇願するよ……
まぁ、勇次郎曰く世界中に自分の種をバラまいたらしい。
放棄されてしまった伏線ではあるが……
もしかして、そんな息子たちの元を巡っていたのかも。
それで鍛えてみたものの、刃牙ほどの勇次郎遺伝子を受け継ぐものがいなかったから、刃牙に固執するようになったりして。
臨場感を凌駕してリアルに於いて反映実現される、有質量の全ての結果であった。
[かつて抑え切れずに犯してしまった愚……………]
[未完成のままの“つまみ喰い”]
ここで思い返されるのは幼年編に行った刃牙との勝負だ。
あの時点で刃牙は勇次郎が一流と認めるレベルの強さだった。
だが、戦ってしまった以上、勇次郎は刃牙を全力で壊しに行ってしまった。
せっかく立てた計画を自ら砕いてしまった……
あの時、勇次郎が見せた陰鬱な表情はそんな想いがあるからなのだろうか。
だが、刃牙は勇次郎への道を諦めなかった。
勇次郎まであと少しと幾度も勘違いをしながらも、勇次郎に一歩ずつ近付いていった(どれくらい近付いたのかは置いておく)。
[見上げていた目標達(ライバル)から]
[見上げられるほどの存在となる]
独歩……花山……渋川先生……本部……
かつてはかなわない存在だった彼らをも刃牙は上回った。
………………
え?
本部?
刃牙って本部を見上げて目標にしていたのか?
馬鹿な!
そいつはおかしいだろ!
そもそもアンタが本部をリスペクトしていたのは稽古を付けられていた時だけだろうが!
それ過ぎたら完全に見下していましたよね。
最大トーナメントの時には指捕り(笑)だったし。
本部も本部だ。
解説もしていないくせにちゃっかりと顔を出しているんじゃないよ。
そもそも、アンタはライバルでも何でもなかろうよ。
アンタが刃牙に誇れるのは稽古を付けて圧倒した時くらいだよ。
「範馬刃牙?
知っとるよ。今じゃ大したもんだが、昔はわしが稽古を付けていたもんじゃ」と門下生にドヤ顔で語れることだけマシか?
門下生にドヤ顔をジト目で見つめられるかもしれないが。
[そのレベル もはや史上最高位!!!]
いつの間にか刃牙が史上最強クラスになっちゃった!
(何故か)ミヤモト・マサシ……いや、宮本武蔵と並ぶほどである。
まぁ、ピクルを圧倒したし間違っていないかもしれないが、猛烈に納得できない。
刃牙ほど強さが納得できないキャラもいない。
ついでに強さが納得できないキャラの2番手は日本刀を持った本部かな。
たしかに実績だけなら刃牙は最強クラスだ。
けれど、然るべき理由がどうにも伴っていない。
いきなり格上を圧倒できるようになるのが良くない。
せめてSAGAればいいのに。SAGAは勘弁。
さて、やっと前回のラストに繋がり、刃牙は脱力する。
筋肉を液体化することで超高速移動を可能とするゴキブリダッシュだ!
言っている意味がわからないと思いますが、理屈としてはそういうことなのです。
筋肉、関節、内臓、水分……
全ての脱力を心がける刃牙であった。
たれぱんだならぬばきぱんだになったりして。
JCやJKに人気のマスコットになれるかも。
でも、たれぱんだって盛りが過ぎて久しいな。
近年のゆるキャラ、せんとくんにでもなっておくか?
「たまらねェ」
「抱き締めてやりてェ…」
ゴキブっている刃牙に勇次郎は実に嬉しそうに語りかける。
刃牙の動きが止まる。
いや、元々止まっていたけど、脱力は止まる。
「止めるな!!!」
「緩めて……」「緩めて……」
「水よりも…」
「大気よりも」
ゴキブリダッシュがバレていた!
刃牙自慢の新必殺技であったが、勇次郎には既にバレていた。
新手のスタンド使いが現れると同時に能力を見破られていた状態だ。
お前の能力ゴキブリになることだろと言われる。
そうなると勝てませんよ。
その上で勝つなんてジョースター一行でないと無理だ。
相手の技術を知っている。
それだけで優位に立てるのがバキ世界だ。
鞭打を使われたら鞭打だなと言い、消力を使われたら消力だなと言う。
さらに真似ることでその破壊力は増大する。
その時、相手の技術に駄目出しをしながら使えばさらに良しだ。
それを振り返ると刃牙も勇次郎もそれぞれ鞭打と消力の時に同じことをやっているんだな。
やはり、親子ということか。
本部も「ほう小指か……」くらいは言っておけば金竜山に勝てたかもしれない。
だが、刃牙はもはや止まれない。
ゴキブリダッシュの発動だ!
対する勇次郎は両腕を大きく広げたオーガスタイルである。
ゴキブリVSオーガ!
……無理だ!
ともあれ、ここからが本番だ。
本番をいきなり叩き潰すのが範馬一族の伝統だけど。
……勇次郎もその辺は無遠慮だ。
刃牙はゴキブリダッシュで逃げておくか?
まぁ、勇次郎は瞬間移動じみた移動速度があるから逃げ切れないかもしれないが……
次回へ続く。
勇次郎の遠大な計画が明確なカタチで言及された。
いわば、貴様らは息子どころか対戦相手!
俺は貴様らの造物主にして地上最強の生物なのだ!
まぁ、ここまで遠大だと必死になる気持ちもわかるというものだ。
でも、計画のわりには刃牙は幾度も回り道をしている。
そして、勇次郎にかなわず吹き飛ばされることが多数だ。
それでも刃牙を見損なわなかったんだから、勇次郎の評価は異常に高かったことが伺える。
意外と勇次郎は気長なのか?
ゴキブリダッシュは勇次郎に通用するのであろうか。
もう種はバレているから、ゴキブリダッシュで勇次郎を驚かすのは難しそうだ。
こうなるくらいなら刃牙の方から秘密を言っておけば良かったのに。
「親父……俺、この戦いが終わったらゴキブリになるんだ」みたいに。
勇次郎ならいい返し方をしてくれるに違いあるまい。
ゴキブリダッシュはスピード自慢の必殺技だ。
でも、スピード+破壊力のピクルタックルがある以上、どうもインパクトで負ける。
筋力のみで超スピードを達成した白亜紀闘法もあるし……
そういえば、何で刃牙は白亜紀闘法についていけたんだっけ?
勇次郎もスピードで対抗してみてはいかがか。
刃牙の技術によるスピードに対抗して、筋力によるスピード!
まぁ、白亜紀闘法なわけだが。
昆虫のスピードと獣のスピードの激突だ。
……昆虫じゃ勝てそうにないな。
タフでは作中随一の実力者、鬼龍の目と喉と金玉が潰されて大変なことになっている。
勇次郎も同じ目に遭ったり……はしないか。
さすがに刃牙では無理だろう。
何かそう思わせる時点で史上最強クラスというのが疑わしい。
でも、速ければ速いほど弱い力で逸らせるんじゃなかったか?(第170話)
刃牙自身が立証した理論だ。
もしかして、ゴキブリダッシュも軽く吹き飛ばされちゃったりして。
意外と自爆の線、あるかもよ。
ゴキブリダッシュが通用しなかったらどうするのだろうか。
せっかくの必殺技だから何とかして使いたいところだ。
そこで液体度を上げてみるってどうよ。
例えば失禁してみるとか。
失禁することで液体度アップでスピードアップ!
うん、刃牙と言えば失禁ですよ。最大トーナメント決勝で失禁してピクル戦では放尿した。
この大一番で失禁しない理由の方がない。
息子の失禁に合わせて勇次郎も失禁してみてはいかがか。
地上最強の連れション!
とでかでかとアオリを入れておけば何かが許される気がした。
そういえば、勇次郎って小便したことがないな……
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