刃牙道 第2話 王者(チャンピオン)



刃牙は退屈を紛らわせる(かもしれない)新たな強者が現れる。
新シリーズと言えば新たな強者である。
そう、死刑囚のように! アイアン・マイケルのように!
すまん、後者はなしにしてださい。

「飽きている……」
「ベルトに飽きている」
「パウンド・フォー・パウンド(全階級を一階級に見立てて最強)と呼ばれることに辟易しているッッ」


金網に囲まれた8角形のリングの中で王者サム・アトラスは試合前にこう思っていた。
ベルトにはUECと刻まれている。UFCが元ネタだろ うか。
その身体には入れ墨が刻まれている。
これが連載開始前のインタビューで述べられていた入れ墨を彫ったキャラなのか。

サム・アトラスはがっちりとした肉体で肉付きがいい。
入れ墨を彫ったキャラは花山といいスペックといい強者揃いだ。
うむ、期待できるぞ!
なお、表の王者ってアイアン・マイケルみたいな人が多いんだよな。
うむ、期待できそうにねえ!
あと顔は髭を生やしたシコルスキーって感じですね。
不安が!

アトラスは王者になって7年。
あまりに多く勝ちすぎたようでそれが退屈に繋がっているようだ。
だからなのか、試合開始前によそ見をしてブツブツと呟いちゃっている。
戦場で何を莫迦なことをッ!

ともあれ、対戦相手からしてみると完全にアウトオブ眼中となるとプライドが傷付く。
怒りに任せて一気に駆け寄る。
油断していそうな相手に襲いかかるのは雄弁な負け フラグだ。
発想が小物ですよ。
そんなんで勝てるのはアイアン・マイケルだけだ。

「もう…十分だ」
「このスポーツはもう十分だ………」


アトラスは襲いかかってきたことを気付いてからの右でアゴを撃ち抜いた。
反応が遅れているはずなのにいとも簡単に制した。
これで勝負ありだ。脳震盪で気ぃ失っていますよ。
アゴ狙いもとい脳震盪の必殺率は極めて高い。
独歩や渋川先生と言った達人級の格闘家を倒し、ピクルのような超生物にだって大ダメージを与えている。

「最高(ベスト)で はなく…」
「最強と呼ばれたいッ!」


さらにフロントスープレックスで追い打ちだ。
アトラスは高度なレベルで打撃と投げを使える優秀な選手らしい。
これによって意識を失った挑戦者は受け身を取ることも敵わず、頭蓋骨にヒビが入る。
これにて勝負ありだ。
まさしく圧勝である。

さて、アトラスは試合終了後のインタビューで日本へ向かうと答える。
唐突な答えに記者は困惑する。
だが、バキ世界は困ったら日本が基本だ。
死刑囚だって、ピクルだって、とりあえず日本へ行ったら何とかなった。
刃牙の毒だけは中国頼りです。
あれも李海王に渡日してもらえば良かったんじゃないか?

「あの国にこそ誰もが認める最 強があるのだから…!!」

そして、渡日! 向かう先は徳川光成の屋敷だ!
バキ世界の諸悪の根源もとい戦争仕掛け人が徳川光成である。
最強を求めるのなら避けては通れない。
そして、関わるとロクなことにならない。
範馬一族とは別のベクトルで巨凶である。
そんな徳川光成の病が治ったのは幸か不幸か……

「何故闘いたい」
「君は地上で 十分な評価を得ているではないか」

「アノ親子喧嘩ヲ観マシタ」


やはり、そこであった。
刃牙と勇次郎の決戦は海を越えるほどのインパクト があったらしい。
あんなものを見せられると並みの興行が色褪せてしまいそうだ。
でも、アトラスはちゃんと客を呼び寄せられていたし、格闘家全員の地位が下がったわけではなさそうだ。

ともあれ、最強を目指す男としてはあれを観たらたまったものではない。
戦いたいと思わざるを得ない。
強いんだ星人とは即ちそういう生き物なのだ。
アトラスだって強いんだ星人だ。
それも強すぎることに退屈するくらいの強いんだ星人である。

「アレを観て 何を思う」

「人間ノ身体ガ」
「アレホド美シク動クノヲ初メテ観タ」


納得できるような、納得できんような。
ドレスなんて美しさ飛び越えたただの惨劇だったし。
美しさよりも凄いことになっていたとは思うが。

まぁ、ストロングイズビューティフルがバキ世界の 価値観だ。
強いことは美しい。
餃子耳をした歴戦の勇士ならばその美しさを感じ取れることだろう。
ピクルも美しさを感じさせていたし、強者には美しさも大事な要素なのだ。

「―――で闘いたいと………」

「ショーグン徳川」
「アナタがアノ少年」
「バキ・ハンマヲプロモートシテイルト」


って、やっぱりそこで刃牙なんだな! 勇次郎には触れないんだな!
どいつもこいつも刃牙とは戦いたがるが、勇次郎とは戦いたがらない。
刃牙を無視して勇次郎との戦いを望んだのは独歩・花山・郭海皇くらいだ。
ピクルの時もそうだったし、刃牙と戦いたいというよりも勇次郎は戦いたくない何かがあるのだろうか。

まぁ、気持ちはわからなくもない。
やっぱり戦うなら弱い方だ。
高すぎる目標は目標にならんのだ。

「勝てるか 範馬刃牙に」

「ソレヲ確認スルタメ 太平洋(パシフィックオーシャン)ヲ渡ッタノデス」


アトラスは闘争心を剥き出しにする。
ルールに守られた試合じゃない。上等。
1試合4億円を稼ぐが無報酬の地下闘技場も上等。
最強を手に入れるためならば上等。

「強ええぞ あの少年(ガキ)は」

「ミートゥー(わたしもだ)


闘争心全開のアトラスである。
ううむ、シコルスキーに似ているとかちょっと侮ったが意外とできるかもしれぬ。
コンディションも万全らしく今夜にでも始められるようだ。
時と場所を選ぶのは二流ですよ。
今すぐにでも始められるのが一流だ。
あれ? じゃあ、今夜からだと一流じゃない?

「ヨシッ今夜じゃ」

「…………」
「え!?」


あ! フツーに驚いた! この人、フツーに驚いた!
常識的な驚きではあるが、そこは常識に染まっちゃいけないデス!
ちょっとできるかと思ったがやっぱダメだな、この人。
そもそもまともな格闘技をやっている時点でダメだった。
ちょっと胡散臭いくらいが丁度いいのだ。
あ、本部流柔術とかってなってもダメ。

そんなわけで今夜が試合!
今夜やれると言い出したのはアトラスだから仕方がない。
でも、自分はいいけど刃牙は突然だから大丈夫じゃないのでは?
そんな常識的なアトラスの疑問を学生だから夜は暇だからOKと返す。
当然だがそれでもアトラスの疑問は解けない。

「断らんよ刃牙は」
「何時でも何処でも誰とでも 断らんから最強なんじゃ」


常在戦場である。
行住坐臥、戦いを志す人間の心意気である。
さすがはもっとも強く最強の遺伝子を継ぐ男、範馬刃牙である。
Jr.千春? 知らない子ですね……

徳川光成は刃牙に電話をして試合を伝える。
相手の情報も「アメリカのナントカって格闘技のヘヴィ級」とあやふやにもほどがある。
それでも受けた。
勇次郎との戦いを越えて退屈を知ったから、それを紛らわせるためなら何時でも何処でも誰とでも戦うようになったのか?
何か勇次郎が雑食(主 にムエタイ食い)になったのもわかる気がする。
戦わないと退屈。戦えば退屈ではなくなる可能性がある。
そういうことなのだ。

しかし、チャンピオンへの挑戦権がゆるゆるになったものである。
花田の時のように昔は挑戦するだけでも一悶着あったんですけどね。
刃牙が強くなりすぎた結果、挑戦権を簡単に得られるようになってしまったのか?

ともあれ、アトラスは地下闘技場に降り立つ。
Jr.戦以来の満員の地下闘技場だ。
懐かしい空気である。
ピクルは地下闘技場で3回戦ったけど、観客ゼロで寂しかった。
それにピクルがいると試合もできないしで、ピクル在籍中は閑古鳥だったんだろうな。

さて、サム・アトラスは1日で4億円を稼ぐビッグネームである。
それだけに急の試合ながら観客は押し寄せている。
さすが強いのが大好きな人たちだ。
あるいは刃牙が楽しみなのかもしれない。
神話となった人間と激闘を繰り広げたのだから、その人物の一挙一投足に注目してもおかしくはないか。

さて、刃牙が入場する。
軽くアップするアトラスとは対称的にけだるそうに柔軟をしている。
オーラも何もない。
憎たらしさ30%くらいアップかな。

(こんなに小さいのか…!!?)
(身長は5フィート半(167.64センチ)程度か… 体重も154ポンド(70キロ)前後…………)
(わたしの半分ではないか!!)


身長はリーチに直結する。
相手の身長を見切り把握する能力は欠かせない。
そんなわけで王者のアトラスは刃牙の身長を見切るのだった。
でも、身長はともかく体重までわかるものなんだ。
体つきから推測したのだろうか。体重が格闘技においては重要なのだからある意味必然か。

刃牙は格闘家としては異例の小ささと軽さである。
刃牙よりも小さく軽い格闘家は渋川先生・柳龍光・郭海皇くらいだろうか。
そんな人物が最強でいる。
恵まれた体格のアトラスとしては違和感だらけだろう。
だが、目の前にいるのは宇宙人疑惑さえある男だ。
常識は意味を為さない。まぁ、今更ですが。

「“地上の王者(チャンプ)” サム・アトラスは後に語る」
「“そのときだった”…………と」
「わたしの眼前に」
「見たこともないようなあるような… 謎の生物が立ち現れた」


その時、アトラスの前にエイリアンのような化け物が現れた!
刃牙と言えば妖術である。
「範馬刃牙」なんて最初から最後までリアルシャドーという妖術のオンパレードだっ た。

この技術を研鑽することで対戦相手に幻覚を見せることに成功している。(範馬刃牙第167話
おそらくこれは刃牙の妖術の進化形なのだろう。
対峙した相手にモンスターを見せる!
でも、それって格闘技とあんまり関係ないですよね。
テニスみたいな奴になったな、刃牙。今更か。

外見で圧倒できないなら幻像で圧倒する。
範馬刃牙の新たな境地をアトラスに見せつけた。
こんな進化はどうかと思うが、勇次郎と対等に戦ったのだから化け物級ということか。
妖術を披露しながら第3話に続く!


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