刃牙道 第23話 衝撃映像



武蔵は強者を求めている。
いるから、さっさと戦わせい。
武蔵にも戦いそうで戦わない範馬の血が流れているのではないだろうか。
加藤や本部の血を入れると無軌道に戦いたがるかもしれぬ。
なお、致命的な弱体化を覚悟する必要がある。


さて、混迷の日本に姿を見せるのがこの男だ。
範馬刃牙だ。
刃牙のあずかり知らぬところで武蔵戦線が展開するかと思いきや、意外にも話しに関わってくるのだった。
勇次郎との戦いを越えたことで出不精を止めたのだろうか。

刃牙は徳川光成の豪邸に招かれていた。
徳川邸では珍しく洋室だ。椅子とテーブルがありますな。
徳川邸と言えば和室しか出番がなかったのでちょっと意外だ。

刃牙の服装は私服である。
刃牙は留年疑惑が漂っているだけに油断ならない。
制服を着ていないということは卒業できたのか。
あるいは。

徳川光成が語るのは勇次郎と花山の戦いだ。
このビッグカードには刃牙も驚く。
って、事後かよ!?
読者はそっちに驚いたよ。ビックリだよ。
時間軸が一切謎のまま、既に事を終えていた。
花山は外伝が始まってから本編の出番に恵まれていませんね。

「きっと……」「範馬勇次郎なら救えると…」
「退屈で退屈でやりきれない日常を打ち消してくれると」

「男過ぎる」

と、花山をべた褒めする刃牙だった。
何せ勇次郎の戦力は年々高まっている。
結果、今では誰も挑まなくなった。(範馬刃牙第244話
武道家は特攻隊ではない。勝てる見込みのない勝負には挑まない。
なお、本部流柔術の元締めであるIさん(匿名)は華麗な特攻を見せつけましたが名誉のために忘れておきましょう。

そんな誰も挑まなく、挑めなくなった勇次郎に花山は果敢にも挑んだ。
武道家ではないからできる暴挙とも言えよう。
まさに鉄砲玉である。花山は組長だけど。

これを男過ぎると刃牙は賞賛した。
刃牙は勇次郎に挑もうと思っても挑めなかった男だ。
やると言い出してから6年近く待たせた。
牛歩にもほどがある。
ならば、やろうと思って即座に挑んだ花山の行動力を褒め称えるより他ない。
刃牙は千春とやることさえ億劫になっていたから、勇次郎云々はあまり関係ないか。

さて、徳川光成は2人の戦いを語り出す。
まず、語るのは勇次郎が細胞が怖じているという言葉を花山に向けたということだ。(第19話
発言の真意は掴みかねるが、多分にはお前ビビってんだよってことですね。
それを花山に言ったことに刃牙は驚く。
あの花山を侮辱する言葉を言ったのだ。勇次郎とて並みならぬ覚悟が必要なのだろうか。

でも、わりと刃牙も花山をバカにしてましたよね。
知らぬ間に刃牙の花山評価が下がったのだろうか。
そして、勇次郎の行動に驚いている刃牙は実に小物っぽい。
うむ、刃牙とはこうでなくてはな。
肩を並べるどころか存在感の大きさにビビるくらいがちょうどいいのだ。
ちゃんと自分の仕事をわかっているじゃないか。
何やかんやで勇次郎と刃牙の力関係は変わっていないようで安心した。

「その日イチバンの踏み込み」
「その日イチバンの一パツを」「オーガは誘惑(さそ)い出したんじゃ」


勇次郎の言葉は花山を誘うためのものだった。
花山は如何にフィジカルはトリケラトプス級とはいえ格闘技の素人。
こういった駆け引きは不得手とするのか。
そして、言葉ひとつで相手を操作する勇次郎の駆け引きの上手さである。
勇次郎は肉体や技術はもちろん、戦術や戦略においても長ける。

「刹那 勇次郎は自身の左拳をポケット内で加速」「そして抜拳…」
「花山 薫 渾身の一撃」「加えることの勇次郎(オーガ)珠玉の居合拳」
「そんなシロモノが花山の顔面を打ち抜いた………」


ここで居合い!
初出のオリバVS龍書文が思い当たる居合いだが、刃牙VS勇次郎でも用いられた技術である。(範馬刃牙第276話
かつて勇次郎は刃牙へ学べと言った。
それは勇次郎自身が居合いの有用性を認めていたからだろうか。
龍書文はキャラの魅力と格好良い立ち回りのわりに出番に恵まれていない。
が、その技術は今も生きている。
誰か郭春成と範海王を思い出して差し上げろ。

最高の一撃に最速の一撃を合わせた勇次郎であった。
掌底というのはちょっと加減している。
それでも十分以上の破壊力に花山は吹っ飛ぶ。
吹っ飛んでコンビニに突っ込む。
そして、陳列棚4列を吹っ飛ばし一番奥の棚まで飛ばされた。
危惧していた一般人への被害が出ましたな。
ちゃんと地下闘技場で試合をさせないからだ、じっちゃん。
たくさん客を呼べそうなカードなのに……

これで勝負ありだった。
たった1発で絶大なタフネスを誇る花山は倒れた。
如何に勇次郎とはいえ異常事態である。
カウンターのタイミングが精妙ならピクルのタフネスさえ大きく下がる。範馬刃牙第178話
勇次郎が狙ったのはその一撃だったのかもしれない。

「幸せ者だ……………花山さん」

「確かにな…」
「い〜〜〜い風貌(かお)で笑っとった」


花山はたった一撃で敗北した。惨敗である。
だが、笑っていた。
満足の行く戦いのようだった。
刃牙も幸せ者と言っているし。
……刃牙が言うと嫌みにしか聞こえない。

勇次郎はその危険度も極めて高い。
かつて花山が戦った時は四肢の骨を砕かれ、一時は再起不能だと本人が言っていたほどだ。
並大抵の覚悟では挑めない。
なのに、花山は挑んだ。そこにどれほどの勇気が必要だったか、想像に難くない。

その上で戦ったら、惨敗こそしたものの致命傷は負っていない。
これは間違いなく幸せと言えるものだ。
昔の勇次郎ならとりあえず相手を壊していたところだが、今は大分丸くなったと言えるか。
刃牙との戦いを経験したことで、相手を壊す戦いを止めるようになったのだろうか。
刃牙にトドメを刺さなかった結果、生涯で唯一にして最大の強敵となった。
同じように成長することを期待して壊さないようになったのか。
この1年で勇次郎の心境にも大きな変化がもたらされたのかもしれない。

こうして花山VS勇次郎は幕が下りた。
戦った理由はよくわかりませぬ。
まぁ、花山が五体満足のままなのでそこは安心ですな。
ピクル編から再起不能レベルのダメージを負う格闘家が多くて困ったのだが、今回は穏便に済んだ。

「――で…」
「ジッちゃん…………」
「誰だい…?」

「誰とは…?」


さて、花山は無事だったので置いておきます。
刃牙は誰だといきなり問いかける。
いきなり何を言っているのだ、お前は。
あまりに唐突な質問に徳川光成は質問を質問で返す。
だが、その表情は笑いに染まっていた。
た、楽しんでやがる。このジジイ、楽しんでやがるぞ。

この徳川光成の言葉を聞いた瞬間、刃牙の額に血管が浮かぶ。
いきなり怒りゲージが蓄積した。
さっきまで男過ぎるとか幸せ者と言っていた男とは思えぬ豹変である。

「隣の部屋の野郎だよ!!!」

刃牙が唐突にキレた!
まるで勇次郎のようなキレっぷりである。
どうかと思うキレっぷりは今までにもあったが、今回のもなかなかのものだ。
このキレ芸は勇次郎から学んだものだろうか。
全身駆動も身に付けたらどうか? (範馬刃牙第255話

この刃牙の怒りを見て徳川光成は最高に悪い笑みを浮かべる。
おそらく刃牙のやる気のない試合によって地下闘技場は盛り下がっていただろう。
客が減っていたのかもしれない。
客の刃牙に対する態度からもそれが伺える。

最強にしてにっくきチャンピオン、範馬刃牙を手玉に取れた……
ならば徳川光成が笑う気持ちもわかるというものだ。
もしかしたら武蔵はそのために生み出された存在かもしれんな。
刃牙に一杯食わせるという難題を満たすために。

ついに刃牙と武蔵が相まみえるのか。
思ったよりも早かった。
こういうイベントには思いっきり乗り遅れるのが刃牙の作法みたいなところがあるし。
死刑囚と戦ったのもピクルと戦ったのも大分後だ。
その刃牙がいきなり武蔵と出逢うのか。
これで本部流柔術の元締めであるIさん(匿名)が控えていたら……まぁ、それはそれで刃牙が怒るのもわかる。
ラストダンジョンでリップスが仲間になったような気持ちになるわな。
次回へ続く。


花山敗北!
絶望的なカードだっただけに敗北は必定。
ならば五体満足だったことを喜びましょうか。
地味ながら勇次郎の変化を感じられる一戦であった。
刃牙道は今までのシリーズと比べて、キャラの変化が主題になるかもしれない。

刃牙と武蔵が接近している、かもしれない。
こういうのは他の格闘家が先乗りするのが伝統だった。
死刑囚編で刃牙が狙われたのはけっこう後だし、ピクル編でも刃牙本人からまさかの無関係発言をしていた。
スタートダッシュの遅さが範馬刃牙である。

しかし、今回はロケットスタートできるのだろうか。
とりあえず、ブチ切れておいてエンジンが暖まっていることをアピールだ。
散々退屈だったわけだし刃牙は常在戦場な心構えか。
刃牙にやる気ありそうだ。武蔵にもやる気はある。
やる気がある者同士、いきなりぶつかれば話は早い。

だが、それでは話が続かない。
いきなり主人公とボスキャラが戦っても仕方ないのだ。
いや、徳川光成は様々なクローニングを行っていたようだから、他の歴史上の猛者が眠っているかもしれないが。
呂布とか持ち出したり。いっそヘラクレスも実在の人物にしてしまえ。

だが、隣の部屋にいるのは武蔵とは限らない。
例えば加藤とか。
せっかく呼ばれてみたら微妙に弱そうなオーラが……
イライラしてキレかけると加藤!
もちろん、刃牙はアクビする。

ここで花田再登場も熱いかもしれない。
何せ刃牙のライバルに名乗りを挙げて潰された男だ。
加藤に負ける程度の強さを見せつけるぞ!
もちろん、刃牙はアクビをする。

意外性重視なら範海王だ。
板垣先生さえ忘れていた徒花のようなキャラである。
今更父親は勇次郎!とか言い出してみたらどうか。
もちろん、刃牙はアクビする。

これで武蔵がちゃんと人を斬れる刀で重武装していたら、刃牙の怒りも納得だな。
いくら何でもそれは聞いていないと怒れるぞ!
刃牙のアクビを止めたのは武蔵ではなく日本刀かもしれない。




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